上空から降り注ぐ矢が、身を起こす麗の顔の脇を抜け
トトッと小さい音とともにスカートに突き刺さる。
それを欠片も気にもせず・・・
恰も当然であるかのように受け入れる麗の姿は
『魔王』に下ったとはいえ、その『魔王』をして、最も覇者に近かった者と言わしめる
上空からの矢など当たるものかと、傲慢なまでの自信は・・・正に王者の風格
もって生まれた巨乳と強運によって、致命傷を受ける事を回避した麗は、微笑を浮かべたまま秋蘭に足を踏み出し・・・よろける。
流石に、ちょっともらいすぎましたわね・・・
自分よりも強者である秋蘭の目を欺くため、突きで正面からの致命傷になり兼ねない矢を叩き落とし
それ以外を当たるに任せたツケは、軽いものではない・・・
が、それをしなければ、秋蘭に一撃入れることなど出来ない・・・
冷徹に自分の判断は正しかったと、今もって言える。
麗の決断は早い。
悩んだ末に正解を出せ、とは教えられていないのだ。
止まるな、その瞬間に答えを出し行動せよ。
一影は徹底的にそう教え込んできた。
振り上げた方天画戟が、地響きを立てる轟音とともに地に着き刺さり
地響きとともに土煙を上げ、麗の姿を秋蘭の目から隠す。
それが収まるころには、血の糸を引きながら麗は馬上の人になっていた。
「では御機嫌よう、今日打ち込んでくれた矢の数だけ、次会ったときは体に穴を開けて差し上げます」
言い捨てるように馬の腹をけり、胸を張って味方を集め敵陣を蹂躙しながら突き抜けていく。
御主人様は、秋蘭さんの首をもってこい、とは仰りませんでしたものね
今にも倒れそうな体に鞭打って、指一本動かしたくない疲労と痛みの中で
体に刺さった矢も、細く糸を引く鮮血も・・・
自身を飾る装飾品でしかない・・・
そんな余裕の笑みを無理やりに浮かべながら、敵兵をなぎ倒していく。
「鏃矢陣形、さぁ何時『魔王』様がいらっしゃられても良い様
真紅の広い道を作りますわよ」
応、の低い声が無限に連なり、麗は微笑を湛え一気に軍の先頭へ駆け抜ける。
・・・御主人様なら、きっとそうせよと御命じになるのだから
そう考えると、麗の口元に自然に微笑が浮かぶ。
あの方のように気高く美しくありたいなどと、おこがましくも口にした私が・・・
それが出来なくてどうすると言うのです。
Tweet |
|
|
55
|
4
|
追加するフォルダを選択
GW特別企画、本日の朝の便です
どなたか一人でも面白いと思っていただければ僥倖です