幽州・楼桑村
河東郡から旅をしてここまで辿り着いた人影が二つ。
??「も、もう、お腹と背中がくっつきそうなのだー」
??「だらしないぞ、鈴々!」
??「そうはいっても愛紗のお説教でお腹はふくれないのだぁ・・・」
二人のうちの一人は見事な長髪の黒髪をたなびかせた少女。名は関羽雲長という。
もう一人の少女は、赤い髪で短躯ではあるがその背丈以上の武器を背負い空腹の為に重い足取りで歩いていた。名は張飛翼徳という。
愛紗「あちらが市場のようだな。そこで宿を探して今夜のねぐらを・・・」
鈴々「・・・宿を見つけても泊まるお金がないのだ・・・」
愛紗「先に仕事を見つけるしかないようだな・・・」
二人は意気揚々とはいかないが、市場のほうにむかって歩き出した。
しかし市場に近づくにつれ様子がおかしいことに気付く。
愛紗「なにか雰囲気がおかしいな・・・鈴々、急ぐぞ!」
その声をまたず、鈴々は走り出していた。
すると丁度市場の真ん中の広場で、5人の無頼の輩と対峙してる少女がいた。それを民たちがぐるっと囲んでいて人垣ができていたのであった。
??「お願いです、引いていただくわけにはいきませんか?」
無頼1「はぁ?おねーちゃん、この状況がわかってんの?五対一だぜ?」
無頼2「とっと生け捕りにして、その見事な乳と尻を肴に楽しもうぜ!」
無頼3「はは!まったくだぜ!」
??「そうですか、あなた達が普通に楽しんでるなら文句はいいませんが、皆に乱暴狼藉をはたらくのなら、黙ってられません!」
無頼4「もう、四の五のはいいんだよ!」
無頼5「うりゃー」
と叫びながら打ち込んできたのを少女はひらりとかわし、その背中を打ち据える。
無頼5「ぐはぁ」
そういって、無頼の一人が気を失った。
愛紗「いかんな」
鈴々「うーん、ちょっと危ないのだ」
それを側で聞いていた村民が尋ねた。
村民「どうしてだい?玄徳ちゃんが倒したじゃないか?」
愛紗「あの方は玄徳というのか、勇気があるのはいいのだが、腕前が基本はできているようだが、それほど強いわけではなさそうだ」
鈴々「一対一なら大丈夫だけど、一斉に来られると、あのおねーちゃん危ないのだ」
愛紗「そういうことだ・・・それを最初の一人を倒したことで、相手に気付かせてしまった。」
村民「そんな・・・」
と言ったところで、彼女たちの武器に気付く村民。
村民「あ、あんたたち、武器をもってるじゃないか!武人かい?もしそうなら玄徳ちゃんを助けてやってくれないか?」
愛紗「もちろんだ、この状況で助太刀せぬとあっては武人の名折れだ」
鈴々「でも、倒したら、ご飯食べさせてほしいのだ!」
愛紗「こ、こら、鈴々!なんてことを言うのだ、あさましい><」
村民「はは、まかしときな、腹いっぱいくわせてやるさ!」
鈴々「それを聞いて百人力なのだ!」
愛紗「ま、まて、鈴々!」
勢いよく広場の中央に飛び出していく二人に無頼共もきづく。
無頼1「ほー、またしても見事な乳のおねーちゃんが出てきたな、あと一人は・・・ガキか」
鈴々「ガキとはなんだ!」
玄徳「あ、あなたたちは?」
愛紗「河東郡から旅をしてきたものでな、多勢に無勢の様子。よって助太刀いたす!」
無頼のものに槍を向け、
愛紗「そちらは一人減って四人、こちらは三人。男なら卑怯とは言うまいな?」
無頼1「あぁ、文句はねーぞ!やっちまえー」
四人は一人が愛紗に、一人が玄徳に、組し易しと思ったのか、鈴々に二人が襲い掛かった。
鈴々「おじさんたち、考えが甘いのだ!」
身長以上の槍を構えた鈴々は、槍を相手にむかって走り出して、いきなりしゃがみながら槍を回転させ、二人の足を払い転倒させた。
そして、そのまま槍を回転させながら位置を上げて起き上がったところの後頭部に叩きつけ気絶させる。
無頼2&3「ぐはぁ」
愛紗に向かって太刀を振り上げながらくる無頼に対して、槍を下げたまま半身を前にして佇む愛紗。
愛紗「遅い・・・」
そして槍の届く範囲に無頼が入った瞬間に神速の速さで、槍の柄のほうを腹にむかって突き出してめり込ませた。
無頼4「きゅぅ・・」
そのまま倒れこむ無頼その4。
無頼1は玄徳と打ち合っていたが、まわりの状況をみて焦りはじめる。
無頼1「ど、どうなってやがる!」
玄徳「二人とも強いなー、さてどうします?まだ続けますか? 私を倒せても二人に、やられちゃいますよ?」
無頼1「うるせー、貴様一人でも倒さないと面子が丸つぶれなんだよ!」
玄徳「いまなら、そちらのけが人を連れて貴方が帰るまで手出ししませんよ?」
無頼1「・・・本当か?」
玄徳「えぇ、約束します。」
と、微笑む玄徳。
無頼1「わかった、剣を収める」
玄徳「助かります」
そこから先は村民の大歓声が起こり、無頼達はスゴスゴと村を出て行った。
玄徳は、それを眺めながら一人の村民に耳打ちした後に、二人に向かって話しかける。
玄徳「二人ともありがとー、助かっちゃったよー」
愛紗「いえ、たまたま通りかかったのと、五人に一人で立ち向かう貴女の勇気に感服したまでのこと」
鈴々「それと、ごはんのご褒美にもなのだ!」
愛紗「こ、こら、鈴々!それは言うな!」
顔を真っ赤にして鈴々の口をふさごうとする愛紗であった。
玄徳「うふふ。よし、ご飯食べようか!」
村民「おいらが約束したんだ、おいらの店でご馳走してやるよ!」
玄徳「おー、お言葉に甘えちゃおうかな?」
そうして、三人だけでなくたくさんの人々が店に集まり大宴会となった。
夜もふけ、人々が少しづつ帰っていき、玄徳、愛紗、鈴々の三人だけになったところで、お酒で少し顔が赤くなってる玄徳が二人に向かって話し始めた。
玄徳「遅くなったけど、私の名前は劉備、字は玄徳と言います。今日は本当にありがとうございました」
愛紗「我が名は関羽、字は雲長と申します。礼など言われるようなことはしておりませんので、頭をお上げください。」
鈴々「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ!真名は鈴々なのだ!」
愛紗「おい、鈴々、真名を授けるのか?」
鈴々「このおねーちゃんは、いい人だし、信用できそうだからいいのだー」
少し考えたあと、愛紗も
愛紗「玄徳殿、私の真名をも預かっていただけますでしょうか? 我が真名は愛紗と申します」
すると玄徳は背筋をのばし、
玄徳「ありがとう、では私も真名も預かってください。桃香といいます。」
鈴々「よろしくなのだー!桃香おねえちゃん」
桃香「よろしくね、鈴々ちゃん、愛紗ちゃん」
愛紗「こちらこそ、よろしくお願いします、桃香殿」
桃香「ところで二人は旅の途中みたいだけど、明日には出発するのかな?」
愛紗「あ、いえ、行き先があったわけではないので、まだ予定は決めてないのでが正直なところです」
鈴々「路銀もないので、ここから先には進めないのだ!」
愛紗「こ、こら、鈴々!・・・」
桃香「あはは!ならしばらくはこの村に滞在してよ、泊まるところなら狭いけど私の家もあるし」
愛紗「よろしいので?」
桃香「うんうん、それに今日の人たちをどうにかしないとまたやってくるので、協力してほしいの」
愛紗「なるほど、ああいう輩は悔い改めるくらいに徹底的に懲らしめないと、いくらでもきますからな・・・・」
桃香「うん、そうなんだよね・・・人が人を懲らしめるとか、おこがましいんだけど、やらないと繰り返すばかりだしね・・・」
鈴々「鈴々にまかせろなのだ!」
桃香「ありがとね、鈴々ちゃん。さっき、後をつけてもらって拠点は把握してあるの」
愛紗「ほぉ、なかなか手はずがよろしいですな」
ほわんとした風貌にしては、なかなか頭がまわることに愛紗は意外な印象を受ける。
鈴々「なら、いまからいくのだー」
愛紗「ふむ、それもいいな」
桃香「え、さすがにそれは・・・拠点に乗り込むんだから相手は五人どころではなくて、30人近くいるという話よ?」
鈴々「余裕なのだ!」
愛紗「先ほどのことなど児戯にも等しいことです、我らの武にかかれば賊の30人ほどなど物の数でもありません」
キラキラと感動した目で二人を見つめる桃香。
桃香「ほんと!?」
そして三人で乗り込み賊の頭を討ち果たし、無傷の賊たちは散りじりになり怪我して逃げれなかった手下は朝を待って役人に引き渡された。
桃香「二人とも、ほんとに強いね!」
鈴々「フフフ、なのだ!」
その後、三人は桃香の家を拠点にしながら、村の周囲の賊達を退治してまわった。
三人の活躍に村民たちは大感謝で、村の治安は上がっていき、賊達も村をさけるようになっていく。
桃香「愛紗ちゃん、相談があるの」
ある日、いきなり桃香が愛紗に真剣な顔で切り出した。
愛紗「なんでございますか。桃香殿」
桃香「殿はやめてほしいんだけどなぁー」
愛紗「人として桃香殿のことを認めておりますので、殿をつけるのが我が性分と申しますか・・申し訳ない」
桃香「愛紗ちゃんらしくて、いいんだけどね」
そういって満面の笑みを浮かべられると、なぜか愛紗は女同士なのに心臓がドキドキするのだった。
桃香「愛紗ちゃんと鈴々ちゃんのお陰で村の周囲に賊はいなくなってかなり平和になったけど、この村だけが平和では仕方ないの思うの」
その言葉を聞き、愛紗は桃香の目をじっと見つめだす。
桃香「私の力でどこまでできるかわからないけど、この村だけじゃなくて、幽州を、さらに隣の州も、隣の隣の州も、そしてこの国すべてを平和にしたいの!」
桃香の言葉に頭を殴られたかのような衝撃を愛紗は受けた。
愛紗「桃香殿。いえ、桃香様。私と鈴々はこの国の役に立ちたく思い故郷を出たのですが、どうしたらいいかわからず、ただただ旅を続けていたのですが、桃香様のお話を聞き目指していたものがわかりました、我が志は桃香様と同じものです!」
鈴々「なのだー!」
愛紗と鈴々は興奮して叫ぶ。
愛紗「今後は我が主と仰ぎたく思います」
桃香「え、私が主だなんて、とんでもないよ!な、仲間、そうだ仲間でいこうよ!」
愛紗「いえ、桃香様は主と仰ぐに足るお方です」
その日から三人は旅に出る準備を始めた。
そして、その噂を聞いた村民たちが相談して贈り物をもって尋ねてきた。
村長「この村はお三方のおかげで平和になり、幸せに暮らせております。しかし、この村だけでなく他のところも平和にという皆さんの御志はとても素晴らしい!よって、旅立ちにたいして、なにか出来ないかと相談して、こちらを用意しました、どうぞお受け取りを」
そういって差し出したのは、三つの武器。
村長「玄徳様には「靖王伝家」でございます。これはお母上からお預かりしてたものをさらに鍛え上げたもの。それにこの剣は中山靖王劉勝様の末裔の証。」
桃香「ほぇー、そんな剣があったんだ! うん、手にしっとりくるよ、ありがとう!」
村長「張飛様には、こちらを。蛇矛といいまして、刃の部分が蛇のようになっておりそう名付けました」
鈴々はその感触を確かめるように、振り回し始めた。
鈴々「おぉ!これはいいのだ!おじさんありがと!」
村長「そして、関羽様にはこちらを。偃月刀を作らさせていただきました。かなりの業物ですが、関羽様ならば使いこなしていただけるかと・・・」
愛紗「これはかたじけない」
そういって、偃月刀を受け取った愛紗は鈴々と同じように振り回して感触を確かめる。
そして柄に青龍が刻まれてるのにきづく。
愛紗「ほぉ、見事な青龍だな。ならばこの偃月刀とは青龍偃月刀と名付け、死ぬまで我が友として使い続けよう」
村長「お三方とも、喜んでいただき我らも考えた甲斐があったというもの、お活躍を心からお祈りしております。そして、すべてが平和になった暁には是非またこの村にお越しください」
桃香「村長さん、村のみんなホントにありがと!私たち頑張るよ!」
そういって旅立っていく三人、ずっと見送る村人たち。
三人の先には数々の出会いと別れ、喜びと悲しみ、そして戦乱が待ち受けている。
しかし、三人は辛いことすべてを吹き飛ばす勢いと笑顔で旅立っていく、この大陸すべてを平和にするために。
荊州 水鏡村
司馬徽「この荊州は温暖な気候で水も緑も豊かな土地です。治める劉表殿の温厚な性格もあり、腐敗した都を嫌った文人なども移ってきて、かなり栄えた州となっています。」
??「はい!水鏡先生!」
ここは荊州にある水鏡村。そこで隠棲してた司馬徽が開いた私塾の水鏡塾である。そこに師である司馬徽と二人の門下だけがとある部屋で話していた。
司馬徽「なにかしら?朱里」
朱里「はい、先生の言うことは最もなのでしゅが、劉表殿の健康状態が良くないという噂も入ってきてましゅ! はわわ、かんじゃった><」
伏龍と称される、諸葛孔明、真名は朱里である。
司馬徽「朱里、落ち着きなさい。」
優しげな目を孔明に向けながら、孔明の興奮を抑えるように頭を撫でる。
司馬徽「そうね、朱里の言うことは最もです。先日、お見舞いにいってきましたが、決して安心できる状態ではありませんでした。」
??「あわわ・・・それは荊州にとって危険な状態なのです!」
司馬徽「雛里も落ち着きなさい。あなたの言うことも正しいですね。劉表殿という重しがなくなれば無主の地となる恐れもあります。たとえ後任が都から派遣されたとしても、劉表殿ほどの治世ができるかは疑問ですね」
こちらは、鳳雛と称される鳳統士元、真名は雛里という。
雛里「ここ荊州は、水運による物流と交通のの一大拠点となってます、軍閥化しつつある諸侯たちが狙ってきても不思議ではありません!」
司馬徽「確かに。この荊州は兵家必争の地となるでしょう。ただ、すぐに誰かのものになるということはないでしょう、たとえ劉表殿が病だとしても、支える群臣のなかにも優秀な方はおられます」
そして考えたあと、いくつか名を上げる。
司馬徽「北には文聘殿、江夏には黄祖殿、長沙には黄忠殿など、素晴らしい武勇をもつお方たちが健在です。しかし、いつまでもという訳にはいかないでしょうね・・・」
朱里&雛里「・・・・」
司馬徽「そして戦乱となると苦しむのは力のない人たちです」
朱里「ここで先生に学んだことや書で勉強したことで、そういった方々を救いたいです!」
雛里「戦乱になってしまえば、物流も乱れ・・・新刊が・・・」
朱里「!!!!それは大変でしゅ!!!」
司馬徽「あんたたち・・・!」
朱里「はわわ」
雛里「あわわ」
二人を叱りつけた後、司馬徽は声を低めて話し出す・・・
司馬徽「新刊は必要です、しかしたとえそれが手に入る状況でなくても、すれ違う人々、目に入る豊かな自然、人工物などなど、全てのものに妄想できるのが○女子という生き方なのです!二人とももっと精進しなさい!」
二人は頭からお尻まで突き抜けるような衝撃をくらう。
朱里「せ、先生!私が間違ってました><」
雛里「先生のいう通りです、もっと精進しましゅ!」
(だめだこいつら・・・早くなんとか(ry)
司馬徽「そ、その話は置いておいて・・・、朱里、そして雛里。あなた達は、力のない人たちを救うためにはどうしますか?もう考えなくてはいけない時だと思いますよ。」
朱里「私達には相手を倒す個人の武はありませんが、集団の武での戦術や戦略を学んできました。」
雛里「そして、民を治める方法なども学んできました。」
朱里「この知略をもってお仕えする諸侯を、見つけたいと思います。」
雛里「荊州は物流と共に情報も集まるところ、その諸侯の情報も集めたいです。」
司馬徽「あなた達が仕えるべき諸侯の条件は?」
その問いに二人は見つめあいうなずき返事する。
朱里「この大陸を平和にするにあたって、覇道ではなく王道で考える諸侯をお探ししたいです!」
雛里「決して覇道を否定するつもりはありませんが、王道こそが朱里ちゃんや私と近い考えだと思うのです!」
その答えに司馬徽は微笑む。
司馬徽「二人ともとても素敵よ。がんばって仕えるべき諸侯、いや王をみつけなさい」
朱里&雛里「はい!」
外はまだ明るく、三人の話はまだまだ続いた。
笑い声は絶えず、とても楽しい会談だったのだが、三人の心の中にはこの大陸の中心である都からの拭うことのできない闇が大陸中に広がっていくのが感じられていた。
幼き少女である、伏龍と鳳雛は仕えるべき主君を見つけることが出来るのであろうか?
そして、その主君を支えて平和な大陸にすることが出来るのであろうか?
それを考えると楽しい会談でも心から笑うことが出来ないのであった。
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つづきです。
今回は都から離れた場所にいる恋姫達のお話です。
真の本編の始まる以前を妄想してみました。
初投稿ですので、至らぬ点は多々あると思いますが、よろしくお願いします。
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