No.737046

なのは×Fate = Extra Story = Another Prologue

Blazさん

新作の試作です。
予定的には目処がついてないので何時やるかは考えてません(え
ですが、ストーリー自体はかなり地固めは出来ているのでもしかしたらやる・・・かもね?
ちなみに、今回は番外編と言う位置づけのプロローグです。

2014-11-14 11:48:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2160   閲覧ユーザー数:2117

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Another Prologue   「熟練者たちの茶会」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 海鳴町 》

 

 

 

 

潮風が心地よく風に乗り、空にはその海風に乗って海鳥たちが空を優雅に舞っている。

天気も良く、日がほんのりと暖かい日差しを差し込ませており、まだ少し肌寒いこの時期にはとて良い心地の日の光だ。

 

潮風は時に切なく、そして何か新しい何かを与えてくれそうな匂いを乗せ、その近くにある公園に自然の木々の匂いに混じって流れていく。

 

 

 

 

『彼女』はその風が好きで、時折ココに来ては海風にあたりながら海を傍観する。

 

ただ波に従い、優雅に流れ、岩肌に辺り跳ねる。

そのリズムの整った波の音を聞き、彼女は海辺近くの公園に居た。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

表情は明るい。規則良く響く音と潮風に心が落ち着いているのだろう。

嫌な事を全て忘れてしまうそうな風。それにゆられ、彼女の髪はなびいていた。

ゆったりと風になびく髪は、美しい黒の色の髪だ。

小さくゆらぐ髪は、まるで今の彼女のゆったりとした心境を表している様だ。

 

 

 

 

 

 

其処に。誰かが一人、彼女の元に現れ、彼女に声を掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・随分気に入ってるそうだな。いっそコッチに越したらどうだ?」

 

「あら。遅かったじゃない。レディを待たせるなんて、男子失格よ?」

 

「・・・。相変わらずの性格だなお前は」

 

現れたのは彼女と同じ位の歳の青年だ。

その親しい話し方からして彼女とは友人と言う関係なのだろう。

その証拠に、彼は声掛け代わりの挨拶に対して返答をしない彼女に何時もの事だと思い、ため息を吐いていたのだ。

そして、苦笑交じりの返答をする青年に、彼女は軽く微笑んだ。

 

「ふふっ・・・まぁコッチに越すってのも悪くないと思うけど、生憎あそこが私の居場所よ」

 

「・・・そっか。なら仕方ねぇな。ウチの割引券は無しって事で・・・」

 

「・・・ってちょっと!それとこれとは話しが違うわよ!!」

 

「だってしゃーねーだろ。割引券はこの町限定で配布されたんだからよ」

 

「うぐっ・・・」

 

 

甘い物に気が変わったのか、先程までの冷静な言い方とは一変し、子供の様な口調で青年の言葉に食いかかる。

どうやら彼女にとって割引券と言う物はかなり大切なものらしい。

 

それも無理は無い。

彼女の家計は毎度毎度とある事情でギリギリの状態なのだ。

枯渇した家計を、彼女は日々節約と言うだけの生活を送り、何故かバイトと言う収入方法を行わなかった。

その理由は唯一つ。彼女は壊滅的に、というか遺伝子的にとでも言うぐらいなのか機械が大の苦手だったのだ。お陰で大半のバイトというバイトは出来ず、力仕事も論外。結果、彼女は日々の生活費を節約して使うという事しか出来なかったのだ。

 

その彼女がどこぞの金にがめつい守銭奴の様に、週に一度は砂糖水だけと言うひもじい生活をしていると言う事など到底言えることではない。

 

 

故に、彼女はそういった割引券と言う物に敏感になっていたのだ。

が。それを餌に彼に茶化されたと言うのは過去に何度あっただろうか。

彼女は歯を食いしばり、其処に喉から手が出るほど欲しいものがあると言う顔で彼を睨みつけていたのだ。

 

 

 

 

が。青年は彼女の表情を見て軽く笑い、彼女に近づいてそれを手渡しで彼女の手の上に置いたのだ。

 

 

「あ・・・」

 

「今は時間的に人も少ないし。四人で久しぶりに楽しもうってよ」

 

「・・・・・・!タダで!?」

 

「そこかよ!?」

 

明るく無邪気な子供の様に嬉しそうな顔で喜ぶ彼女が先ず金銭面に喰いかかったのに突っ込む青年だったが、その彼女の顔を見て彼は仕方ないかと言う顔で諦めたのだ。

「くすっ」と小さく笑うと、青年は彼女に声を掛けて場所を移動する為に歩き始めた。

 

 

 

 

「ホラ。行くぞ」

 

「分かってるわよ。早く行きましょ、恭也」

 

「・・・あんまりはしゃぐなよ。凛」

 

 

 

 

 

片や、暗殺の家業を継ぐ家に生まれた青年。 高町恭也。

そしてもう片や。それとは相成らない筈の家、魔術を持つ家に生まれた者。

 

 

名は、遠坂凛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 翠屋 》

 

海鳴の町にある小さな店。それが翠屋だ。

町だけと言う限定的な事ではあるが、この店の賑わいはかなりのものだ。

町の人々にこの菓子店の事をいえば大抵の人は旨いと好評の声を上げる。菓子だけではない。ランチなどで訪れる者達も多く、女性などに特に人気があると言うのも特徴の一つだ。

時折手伝っている恭也曰く、彼のお勧めはシュークリームらしい。

 

生地はもっちりと弾力のあるものに仕上がり、中のクリームはとろける様に甘い。

チョコバージョンもあるらしいが、特にノーマルの方が売れ行きは凄まじい物だという。

 

 

 

《カランカラン♪》

 

 

 

「いらっしゃい・・・ってあら恭也、お帰りなさい」

 

「ただいま」

 

木製の扉を開け、気分のいい金属のベルが鳴り響き客が中に入ってきたのを知らせる音がする。

奥にある厨房から顔を出した女性は愛想良く声を出すが、その客が自分の息子だと言うのを見て、直ぐに普段の様な声で入ってきた恭也に声を掛けた。

恭也も客と間違われるのは何時もの事だと言う事で特に何も言わず、彼は何気ない家に居る様な態度と声で奥から姿を現した女性。自分の母に返答した。

 

すると、母は彼の後ろに見知った顔が居るのに気づき、その彼女にも挨拶をしたのだ。

 

「こんにちは、おば様」

 

「あら。凛ちゃん、いらっしゃい。二人はバルコニーよ」

 

「ありがとう御座います。行くわよ恭也」

 

「・・・ココはお前の家かっつーの」

 

「家の様なものでしょ?おば様とは親しい間柄だし」

 

「・・・それ、ウチの父さんの時も似たような事言ってなかったか?」

 

凛の堂々とした言葉に恭也は呆れ気味で、大きくため息を吐く。

確かに彼の母、桃子とはそれなりの付き合いと仲だが、そこまで堂々とする理由にはならない。寧ろココはそれでも遠慮するべきだ、と言いたい恭也だが母はそうは思っていないので、どうにも言えないという事になってしまっていたらしい。

母である桃子も凛に対しては好印象を持っており、時には彼女を実の娘の様に慕う時もある。凛自身も彼女の暖かさには感謝しており、幼い頃に貰えなかった『母の温もり』という物を彼女から教えてもらい、それに感謝していた。

 

 

相互的に特をしたというのか。いや。どちらも望んでなのかもしれない。

恭也は二人が長い間求めていた何かを互いに互いから受け取ったと見ている。

それがどれだけ大切な物か。それは彼からすれば計り知れないものなのだろう。

 

恐らく、彼女達二人にとってもだ。

 

 

 

 

 

 

 

ほのかな暖かさの日差しがさすバルコニー。

翠屋の外にある客席の中で、最も人気のある場所だ。

凛もそこでお茶をするというのは、この町に来たらの楽しみの一つでもある。

そこで夏の身体を冷やす風に当たり、冬の身体を温める紅茶を飲み、一人分のケーキを頬張る。

まさに彼女からすれば小さな至福の時の一つだ。

 

 

「お、来た来た!」

 

「待ってたわよ、凛」

 

「お待たせ、二人共」

 

その彼女のお気に入りの場所。其処が今回の小さな茶会のメイン会場だ。

既にそこには二人の先客が座っており、その二人が今回の茶会の参加者のメンバーでもあるのだ。

一人は凛と同様に黒い髪をしており、後ろを三つ編みの様に髪を巻いている。

そして、眼鏡を掛けているというのも、ある意味彼女の特徴の一つだ。

対し、その反対側には紫のロングヘアーの髪をした女性が座っている。

目が少し細いめなので、その所為もあってかすこしおっとりとした雰囲気を出している。

実際はそうではないが、彼女の表情はそれが標準といえるのだ。

 

三つ編みの少女は恭也の義妹である高町美由紀。

そして紫のロングの髪の少女は月村忍と言い、恭也の彼女的立場の少女だ。

無論、凛とは親しい仲なのは確かである。

 

 

「なんとか時間が空いてよかったわ。お陰でココのシュークリームが食べられなくてノイローゼになりそうだったし」

 

「ノイローゼって流石にそれは無いでしょ・・・」

 

「けど、そこまで向こうで忙しいの?」

 

「・・・そうね。こっちもコッチで色々と後始末とかがあるし、暇じゃないってのは確かね」

 

 

椅子についた凛は率直に思っていた事を口にし、自分がどれだけココに来たかったのかを言い示していた。それに美由紀は苦笑していたが、忍はそれをスルーし、彼女が変わりにその後凛が言う事を先に訊いたのだ。

凛は椅子に付くと、自分が持って居た小さなカバンを下に置き、「はぁ・・・」とちいさなため息を吐いてだらける様にテーブルに片方の腕の肘をつかせた。

 

彼女との会話。それは自然と周りに居た三人も真剣な眼差しとなり聞くほどの事であるのか、彼等は凛から目線を離さず、彼女のある今の状況についての話しを聞いていた。

 

 

「で。現状どうなってるんだ?」

 

「・・・結論からすると、あの町は殆ど意味を無くしたって所かしらね。私たちが集う理由である『アレ』が無くなって、しかもどこにあるのか行方知れず。オマケに面倒な連中の横槍と来た・・・」

 

「・・・多忙の毎日だったんだね、凛って・・・」

 

「まぁね。けど、進展もあったわ。それが・・・」

 

 

 

 

「三体の『サーヴァント』の再召喚・・・」

 

 

 

忍の言葉に、凛は軽く肯く。

恭也は変わらず冷たい表情ではあったが、彼なりに事態を深刻に受け止めていたというのは確かだ。その証拠に、彼の表情は何処と無く険しい物となっている。

美由紀は分かりやすく「やっぱりか・・・」と声を漏らすと、頭をかき面倒そうな様子を見て表していた。余り深く考えないというのも美由紀の良い面なのだろう。それが時に災いする時もあったが、今はそれは無い。

 

「魔導師や魔術師、魔術遣いなどか居るこの世界で召喚されたから、別に不思議は無かった。けどねぇ・・・」

 

「確か・・・忍さん所に居ましたよね」

 

「ええ。正直あの子が召喚したって聞いた時には思わず腰を抜かしたわよ・・・」

 

美由紀の言葉に、忍は数週間前に起こった出来事について思い出し、その時の鮮明な気持ちを重い口に出して話した。正直、今の彼女でもその出来事はにわかに信じがたいことでもあったのだ。身近な人間、特に身内でしかも妹となると、その効果は倍増される。

その彼女の言葉に付け足すように恭也が話に補足の様なことを付け足す。

それこそ一番彼等が信じられないと思ったことでもある。

 

「しかも召喚したのは全員七歳ほどの子供とは・・・クラスはどうなってるんだ?」

 

「確か・・・忍の所が『ライダー』。そして、現在マスター不明のサーヴァント・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーチャー』と『セイバー』」

 

「けど、サーヴァントが居るってことは、この町にマスターが居るって事は確かなんでしょ?」

 

「まぁマスターの事も考えれば、基本サーヴァントの行動範囲は限られているわ。けど、逆にサーヴァントの支援なしでも戦えるって言うバケモンがマスターだと、自由気ままにって事にする可能性も十分あるわ」

 

「だが、サーヴァントは使い魔の類だ。マスターから魔力を供給して貰わなければ・・・」

 

「サーヴァントはこの世に居続ける事はほぼ不可能・・・」

 

その場にいる四人が当然知っている事だ。

今更な事を再認識し、そんな事を言う為に話を切り出したのかと思うことだったので、四人はため息を吐く。

このままでは話は進展しない、どうするべきか。

しかし、そこで凛は間話ついでにある事を思い出し、それを恭也と美由紀に訊く。

それは最近では電話でしか聞けていなかった事なので、彼女としては直接聞きたい事でもあった。

 

 

「・・・そういえば・・・話は変わるけど、アンタの所のなのはちゃん。その後、どうなってるの?」

 

「・・・どうって、どう言う事だ?」

 

「そのままの意味よ。あの子、あの歳で魔導師になったって電話で聞いてアタシ、腰抜けそうだったわ」

 

「・・・その事か。前にちょっと帰りが遅い時があったが、一応のひと段落はしたらしい。今は時々公園で魔術の練習をしてるってさ」

 

「ふーん・・・」

 

「けど、今は本人が必死に隠しているんだし、今はそれに騙されているフリをするだけ。ね、恭ちゃん?」

 

「・・・俺は、正直心配だ。だから、アイツを見守るぐらいはするさ」

 

変わらない妹への考えに、忍と凛は苦笑する。

しかし、ココで一言多いのが凛の性格といえる。

確かに妹を思うのもいいが、それか過ぎると大変な事になるかもしれない。

それを茶化しを交え、凛は恭也をからかうようにして言ったのだ。

 

「・・・シスコンも大概にしなさいよ。でないと早めに嫌われるわよ」

 

「オメーには言われたくねーよ。このすっとこどっこい」

 

「五月蝿いシスコン」

 

ジト目で互いににらみ合いを始める二人。

その二人の間には小さく火花が飛び散って見えるのがそれを見ていた忍と美由紀の二人には見えていた。

コミカルな話でもあるまいし、流石に大人気ないのではと思い忍は呆れ、美由紀はこめかみをかくのだった。

 

 

其処に丁度四人にお茶をと思い、トレイに三つのティーカップと一つのマグカップを置いて桃子が姿を現す。

しかし、そのトレイには更に幾つかの皿も乗せられている。翠屋お手製のケーキ達だ。

色とりどりのケーキが皿の上にちょこんと乗っており、その見た目の可愛らしさを見事に表現させていた。大きさが少し小さいのも特徴とも言えるだろう。

女性が簡単に、かつカロリーなどをあまり考えすぎないように材料も作り方も工夫がこらされている。

これもこの店が評判である理由の一つだろう。

 

 

 

「あらあら。相も変わらずの仲のお二人さんね」

 

「「・・・・・・ふんっ」」

 

 

「うふふっ・・・さてと。それじゃあ抹茶ケーキは誰だったかしら?」

 

「ッ!!」

 

「あ。それは私です」

 

桃子のケーキの話となった瞬間。凛は声にはしなかったが大きな反応を見せ、恭也には彼女の頭に猫の様な三角耳が現れたという幻覚が見えた気がしてならなかった。

彼女の反応からして恭也の見方はある意味正しいのかもしれない。

凛はココのケーキを好んでいるのは事実だ。その好みの物が現れた時。彼女の表情が一変して明るい笑みになったのもまだ事実。

 

忍の前に抹茶。美由紀にはショート。そして凛の前にはモンブランが置かれる。

この時の彼女表情はまるで子供の様に明るく、無邪気なものだった。

本当にココのケーキが好きなのだな、と恭也は苦笑しながら彼女の笑顔を横目で眺めており、その彼の目の先には少し小さいフォークを持ってモンブランにその先端を刺そうとする凛がいる。

彼の目線に気づき、凛は自分が無邪気な笑顔をしていたのに気づいた彼女は頬を赤らめ、恭也に喰いかかる。

 

「・・・何よ」

 

「いや。お前もそんな顔をするんだってな」

 

「・・・五月蝿いわね。いいじゃない別に」

 

「はいはい」

 

「・・・・・・。」

 

膨れる凛とそれを見る恭也。

傍から見れば恋人の様な二人だが、実際は二人は恋人ではない。

 

友人以上恋人未満の関係。それが二人の互いの距離の置き方だ。

恭也には既に忍が居るのに対し、凛もそんな相手が居る。

だが、だからと言って相手との距離を今までよりも取る必要はあるのだろうか。

互いに相手が居る事を二人は既に知っている、そこで友人以上恋人未満の関係でいようという事になり、今の二人の関係があるのだ。

 

それは凛のことも知っている忍も了承している。何より、友人であるのに変わりは無いのだ。嫌う理由も無ければ敵対する意味も無い。

これまで通りの関係で居られると言う事、なのだが。

 

 

「むうっ・・・」

 

 

矢張り少し未練があるというのも嘘ではないらしい凛である。

 

 

 

 

 

何気ない会話もあった。ちょっとしたからかい合いもある。

大人に近づく彼等はその残り僅かな時間を大切に活用している。

もしかしたらもう二度と会えないのかもしれないという考えを何処か頭の隅に置いていたが、少なくともそれはない筈だ。と。

 

そして、話は自然と最初の話題に近しいものに移行する。

 

 

「で。今後はどうするんだ?」

 

「・・・どうって言われてもね・・・この件私達だけじゃ負えないのは確かだし、何より私、もう直ぐイギリスに行くし・・・」

 

「あ。そういえば凛ってイギリスの魔術教会に行くんだったね」

 

「そう。色々とやる事もあるしね。けど、出来るだけバックアップはするつもりよ。何せサーヴァント絡みですもの、場合にっては・・・ね」

 

「サーヴァントは残り四体。『ランサー』『キャスター』『アサシン』『バーサーカー』・・・いずれも面倒な奴等ね・・・」

 

「いずれにしても今居る三体も面倒な奴等だけどね・・・はてさて。何処に居るのやらね・・・」

 

 

 

凛はそう言い、ティーカップを両手で取ると、その手で少し温くなった紅茶を口の中にすすり込む。

暖かい服装をする彼女だが、それでも頬などから時折吹く風に肌寒さを感じているらしく、手に持つカップは彼女にとって大切な暖房器具の様なものだった。

 

だが、ソレももう直ぐ冷たくなる。凛は食べ終えたモンブランの皿の上に使っていたフォークを置き、残る紅茶を一気に喉に流し込む。

これでいいのだ。と頭の片隅で飲み干した紅茶を満足げにテーブルの上に置く。

久しぶりに飲んだココの紅茶は格別だった。

考え事が薄れそうだった凛は満足した顔で深く椅子にもたれかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あ」

 

時を同じくして。町のとある道路に一人の少女が歩いていた。

ブラウンのロングヘアーをなびかせ、肌寒さを避ける為に白い上着を一枚羽織り、両手ではビニールの買い物袋を持っている。

買い物帰りというのは誰の目からも明らかだ。

小さな鼻歌と共に少女は自宅への帰路をステップを踏むように歩いていた、のだが。ココで彼女はある事に気づき、一人呟いたのだ。

 

 

「いけない、買い忘れがあったんだ・・・」

 

『買い忘れですか?』

 

「うん」

 

 

ポツリと呟いた彼女は自分が買い忘れがあったというのに今気づき、空を見上げて、まるで空に語りかけるようにして言ったのだ。

すると。彼女の言葉を聞き、何処からか声がする。

声からして女、大体二十代に近しい物だ。

凛としたその声は彼女の独り言を拾い、彼女に対して尋ねた。

 

それに答えた彼女からしてどうやら相手は親しい仲の様だ。

 

 

『一体何を?』

 

「ルー忘れてた・・・これないとカレーは出来ないよね・・・」

 

『何と・・・ルーは辛口でお願いします!』

 

「あ・・・うん。了解・・・」

 

事食に関しては抑止の無い相手なのだろうか。その先程よりも覇気のある声に少女は苦笑に近い声と顔で「ははははは・・・」と何処か空しい声で笑ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路を反転し、少女は先程行っていたスーパーに戻るために歩き始めた。

スーパーからは其処まで距離は離れていない今からなら間に合うだろうと判断したのだ。

 

反転した少女は急ぎ足の様子でスーパーに向い歩き始める。もしあのまま帰っていたら、唯の野菜炒めになってしまっていたのかもしれないのだ。思い出して正解だったな、と彼女はスーパーへの道を歩きながら思っていた。

その途中、彼女に話しかけていた女性の声がまた何処からか聞こえ、彼女に対し一つ注意をする。

 

『そういえば、最近町で魔導師が襲撃されるという事件が相次いでいましたから、それには注意してください』

 

「大丈夫だよ。だってあの事件は何時も夜だし、今は夕暮れ時だよ?まだ時間があるからそこまで焦らなくても平気だよ」

 

『・・・ですが、冬至は日が沈むのが早いですし、幾ら襲撃されたのが奴等だけだからといって油断していては・・・』

 

「分かってる。一応警戒もしているし、町には先生が張ってくれた結界だってある。前みたいに結界の網に相手がかかる筈だよ」

 

『・・・それで済めば良いのですがね・・・』

 

「もぉ、心配しすぎだよ・・・」

 

少しは自分を信用して欲しいな、と思う彼女たが、彼女を信頼しているからこそ。大切に思っているからこそ相手の女性は彼女を心配してくれているのだ。

それには気づいているが、もう少し信用して欲しいものだ、と少女は苦笑する。

 

 

 

 

だが。矢張り女性は彼女を心配しているのだろう。

 

 

 

 

 

《フッ・・・》

 

 

 

 

 

「・・・あ・・・」

 

「・・・矢張り、危険ですから私も付いて行きます」

 

「霊体として何時もいるのに」

 

「確かにそうですが、マスターである貴方の事が心配です。それに・・・」

 

「カレーのルーを私が間違えそうだと思っているから?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・図星か」

 

「・・・・・・兎も角!主を守るのは剣である私の務め!ですから・・・」

 

「はいはい・・・分かっているよ」

 

 

 

突如として少女の隣に一人の女性が現れた。その彼女はさっきまで外を歩いていたかのように服もきっちりと着込んでおり、しかも問題なくブーツを履き、マフラーを巻いていた。

凛とした雰囲気と金色の髪が肩まで伸びており、整った顔つきの中には美しいエメラルドの瞳が鮮やかに煌いている。美女と言うべきか、容姿はかなり整っていたのだ。

 

その彼女が何の事も無く突如として隣に現れたのにも関わらず、少女は平然としており、寧ろそれが当たり前だという顔でいた。

しかも、その言葉の一つはまるで彼女がそうやって現れるのを知っていたかのような物言いであり、何事もなかったかのように彼女達は話をしていたのだ。

 

 

 

「今夜は満月・・・ですかね」

 

「そろそろその位かな。月も綺麗なことだし・・・偶には皆でお月見でもする?」

 

「・・・老師殿は納得するとは思いますが、彼のサーヴァントが問題かと・・・」

 

「あー・・・確かにアーチャーって気難しいそうだもんねー・・・」

 

「いえ、それ以前に私と彼はある意味敵で・・・」

 

「・・・そうかもしれない。けど、それって昔の話でしょ?今は、今。私達マスターが同盟を結んでいるんだし・・・そんな事を気にする事は無いよ」

 

「・・・そう・・・ですかね・・・」

 

「そう。だって・・・」

 

「・・・?」

 

 

少女はそう言うと次の台詞を言わずに、おもむろに空を見上げる。

見上げた空は茜色に染まっており、太陽は段々と西の空にへと沈んでいっている。

その太陽は赤く燃え上がるような色で輝いており、海へと沈むその太陽はとても美しいといえる物だった。

 

だが、その後ろでは既に月が昇り始めている。

赤く光る太陽が沈むと共に白く光る月が昇り、夜が始まろうとしていたのだ。

 

幻想的だ。それが、彼女が見た空への感想だ。

 

隣を歩いていた女性も、同じく彼女が見る太陽に目を向け、その太陽が沈む海を眺める。

彼女もその夕焼けが美しいと思い、自然と小さく笑みを浮かべていた。

今日と言う日が終わろうとする時。それは何とも幻想的なのだろうかと。

太陽を見る二人は、やがて自分たちがスーパーに用事があると言う事を思い出し、それを二人は顔を見合わせて小さく笑う。

気づけば二人とも太陽に見とれていたので、目的を忘れそうになっていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、そろそろ行こっか。『セイバー』」

 

「ええ。目指すはスーパーですよ、コノハ」

 

 

 

改めて二人は沈む太陽の日を浴びながら歩き始める。

目指すは自分たちの小さな幸せのある場所、日が沈む前に急いで向おうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、いずれ語られるであろう物語の一片。

刻に捨てられ、刻を渡った二人の少年と少女の物語。

その世界は二人が知る世界ではない。

 

 

 

その世界は、既に『魔法・魔術』といった力が世界に知れ渡る世界だった。

 

 

 

その世界で、二人は辿る。歩んだはずの過去を。

彼等は戦う。その世界で出会った

 

 

『サーヴァント』と呼ばれる、時の英雄達と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのは×Fate = Extra Story =

 

 

 

 

「それは、ある筈の無い物語から外れた物語(Extra)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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