No.690437

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第46話

2014-05-31 00:02:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2048   閲覧ユーザー数:1953

 

その後バリアハートに到着したリィン達は依頼人がいる宝飾店へと向かった。

 

~バリアハート・ターナー宝飾店~

 

「あ、皆さん……」

「……………」

リィン達が依頼人である店員に近づくと二人とも暗い顔をしていた。

「えっと、どうかしましたか?」

「その……とりあえず約束の品をいただけますか。」

「???はい、では……お渡しします。」

店員の様子に首を傾げながらリィンは手に入れた材料を渡した。

 

「さてと……」

そして店員が疲れた表情で呟いたその時

「おい、店員、何をしている!品が手に入ったのなら、さっさとよこさんか。」

高慢そうな声が店員に指示をした。

「は、はい、ただちに……」

「え……どういうことですか?」

「その宝石はベントさんの為に今から加工するんじゃないんですか?」

声に反応した店員の様子をエマとツーヤが戸惑いの表情で見つめたその時

「まったく……ぐずぐずしおってからに。これだから、平民の連中はなっていないのだ。」

メイドを連れた貴族の男性が不愉快そうな表情で店員やリィン達を睨んでいた。

 

「あの、お持ちしました。」

そして店員はリィン達が手に入れた宝石を貴族に渡した。

「ほう、これが……」

手渡された宝石を貴族は目を丸くして見つめ

「はい、正真正銘”ドリアード・ティア”で間違いありません。少々硬いと思われますが……元は樹液なので、直接採取して問題ないかと。」

目を丸くして宝石を見つめている貴族にメイドは説明をした。

 

(いま、採取って言った?)

(え、何かの聞き間違えじゃ……)

フィーの小声の言葉を聞いたリィンが首を傾げたその時

「ふむ、なるほどな――――」

なんと貴族は宝石を口の中へと放り込んだ!

 

「なっ……!」

「え……」

「ええっ!?」

貴族の行動にリィンやエマ、ツーヤは驚き

「なんてことを……!!」

マキアスは怒りの表情で貴族を睨んだ。

 

「ガリッガリッガリッ………ボリッボリッボリッ……ほひほーは(おいノーラ)、ひふ(水)!」

「はい、こちらに……」

「ゴキュル……ゴキュル……ゴキュル……ぷは~~~!」

そして貴族は口の中に放り込んだ宝石を噛み砕いた後メイドから渡された水と共に宝石を飲みこんだ!

 

(……さいあく。)

(酷すぎます……!)

(ど、どうしてこんなことに……)

その様子を見ていたフィーはツーヤと共に怒気を纏って貴族を睨み、エマは戸惑い

「……っ……………!き、きさま……!今自分が何を……!」

貴族の行動に我慢できなかったマキアスは貴族を睨んだその時

「―――マキアス!!」

リィンが真剣な表情で制止した。

 

「……おい、平民。今このわしに向かって”貴様”と言ったか?」

「そ、それは……(しまった……貴族を相手に僕は何を。)」

貴族に睨まれたマキアスは口ごもり自分の言葉に後悔し始めた。

「ふう……まあこれしきのことで事を起こすわしではないが。くれぐれも言動には慎むことだな。わしがその気を出せば貴様なんぞの首の一つや二つ―――」

そして溜息を吐いた貴族がマキアスを睨んで脅迫しようとしたその時

「やれやれ、言動を慎むべきなのはそちらの方ではないか……?」

ユーシスが呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「ああ?って、あなたはユーシス様ぁああっ!な、なぜ、あなたがこんな所に……!」

ユーシスの言葉を聞いた貴族は一瞬ユーシスを睨んだが、すぐにアルバレア公爵家の次男が目の前にいる事に驚いた後慌てだした。

「あなたには関係のないことだ。だが……俺達がそこにいる男性のために手に入れた”ドリアード・ティア”……一体どういう了見でその腹の中に収めたのか詳しく説明してもらおうか?」

「せ、説明も何も。あ、あの石ころは、その男との正当な契約にて手に入れたもの。咎められることは何もありません!」

静かな怒りを纏ったユーシスに質問された貴族は表情を青褪めさせながら答えた。

 

「……そうなのか?」

貴族の話が真実かを確認する為にユーシスは旅行者に視線を向け

「は、はい……伯爵閣下の仰る通りです。品物を譲る代わりに……ミラをいただきました。」

視線を向けられた旅行者は恐縮した様子で答えた。

 

「というわけです、どうですかな。」

「そうだったのか……」

「でも、どうして口の中に……」

「それは……”ドリアード・ティア”が東方では、漢方薬として利用されているからです。」

「か、漢方薬……」

「東方に由来する薬、か……」

エマの疑問に答えたメイドの説明を聞いたマキアスは戸惑い、リィンは考え込みながら呟いた。

 

「で、何に効くの?」

「はい、主な効果は滋養強壮剤となりますが……一説には、若返りの効果すらあると言われています。」

「わ、若返り……」

「そんな事の為に……」

「フン、くだらんな。」

フィーの質問に答えたメイドの答えを聞いたエマやツーヤ、ユーシスは呆れた。

「と、ともかく……この場は失礼させていただきます。ユーシス様もなにとぞ――――」

「ああ、わかったからさっさと行くがいい。」

「ご配慮痛み入ります。では。」

「失礼いたします。」

そして貴族とメイドはその場から去って行った。

 

「お騒がせして……すみませんでした。」

貴族達が店からいなくなるとマキアスは店員に謝罪し

「フン、相変わらず頭に血ののぼりやすいことだ。」

「………くっ……!」

呆れた表情で溜息を吐いたユーシスの言葉に反論が返せず唇を噛みしめた。

 

(う~ん、この二人は相変わらずだな……)

二人の様子を見たリィンは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ああいや……それより何の説明もなしにあんなものを見せてしまってすまない。君達がせっかく手に入れてくれたのに……」

「ちょっといいですか?さっき伯爵は正当な契約と言っていましたが……その辺りはどうなんでしょうか。」

「ああ、もちろん正当は正当だよ。でもね……このエレボニア帝国で暮らす以上、伯爵クラスの貴族に物申すことなんてとてもじゃないけどできやしない。帝都なんかでは、徐々に事情は変わってきているみたいだけど……オズボーン宰相の息が届きにくい地方の州では、これが実情なのさ。」

「やはり、そうですか……」

「……………」

暗い表情で説明した旅行者の様子をマキアスは重々しい様子を纏って見つめ、ユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「とりあえず、指輪の方は……伯爵様から頂いたミラを頭金にして地元で用意することにしたんだ。君達には不快な思いをさせて本当に申し訳なかったね。それじゃあね……僕はそろそろ駅に向かうとするよ。」

そして旅行者はリィン達から離れて店を出て行き

「フフ、どんなドラマに巡り合えるかと見届けさせてもらったが……まるでくだらない喜劇だったな。」

その様子を見守っていたブルブランは苦笑していた。

 

(この人は……まだいたのか。)

(一体何の為にバリアハートに……)

ブルブランの声に気付いてリィン達と共にブルブランを見つめたツーヤは真剣な表情になっていた。

「そう言えば店員に聞いたんだが……君達は士官学院の生徒でこの街へは実習で来ているそうだね。老婆心ながら言わせてもらうが人生とは思うようにいかないからこそ面白く、そして美しいもの。先程の茶番は見るに耐えないが……しかしそれに苦悩し、もがき苦しむ君達は美しい。」

「何のことですか……」

「さて―――私もそろそろ次の美を探しに行かなければ。それでは、また会おう。」

そしてブルブランはリィン達に恭しく一礼をして店から出て行った。

 

「結局、あの人は何が言いたかったんだ……」

「えっとまあ、要するに『頑張れ』ってことじゃないですか。」

「フン、目的はよくわからんがな。」

ブルブランが去るとリィンは疲れた表情になり、戸惑いの表情のエマの言葉を聞いたユーシスは鼻を鳴らし

「しかし……一体、この依頼はどうなるんだ。」

「確かに………結婚指輪どころじゃなくなったね。」

「肝心の宝石が別の人に渡す契約を交わされた挙句、食べられちゃいましたからね……」

ある事に気付いたマキアスの言葉にフィーとツーヤはそれぞれ疲れた表情で答えた。

 

「いえ、それでも皆さんはやるべき務めを果たしてくれました。今回の件に関しては、不運だったと思うしか……とにかく、報酬をお渡ししておきます。」

その時店員がリィンに報酬であるクオーツを手渡した。

「あの、これは……」

「お気持ちはわかりますが、それは皆さんの仕事に対する報酬です。なので、どうかお受け取り下さい。」

「………わかりました。」

「…………………」

 

そしてリィン達は他の課題をこなす為に行動を再開した。

 


 
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