No.690305

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第45話

2014-05-30 15:14:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1844   閲覧ユーザー数:1692

 

その後街道で依頼人から頼まれた宝石を手に入れたリィン達は帰り際に気になっていた建造中の建物に近づいた。

 

~メンフィル帝国軍拠点・ケルディック要塞~

 

「こ、これは……」

「圧倒的、ですね……」

「建造中だけど要塞、だね。」

「こ、これは一体……確かケルディック方面に要塞なんてないはずだぞ!?」

建物を見たリィンとエマは呆け、フィーは静かに呟き、マキアスは驚きの表情で声を上げ

「……………ケルディックがメンフィル領となった事で建造され始めた要塞か?」

建物の周囲に見かけるメンフィル兵達を見たユーシスは事情を知っていそうなツーヤに視線を向けて尋ねた。

 

「ええ。――――”ケルディック要塞”。ケルディックがメンフィル領となった事でエレボニア帝国との国境ができた為、国境付近を守る為に建造され始めたのです。」

「あ………」

「そ、それは……」

「………………」

ツーヤの説明を聞いたリィンとエマは心配そうな表情でユーシスを見つめ、マキアスは真剣な表情でユーシスを見つめていた。

 

「へえ。導力砲に加えて弩砲(アーバレスト)に投石機(カタパルト)、長遠距離矢砲(シューター)まで配備って、珍しいね。現代と中世の兵器を同時に使うなんて。」

一方フィーは建造物の屋上に配備されている兵器に視線を向けて呟き

「……元々メンフィル帝国の本国がある世界―――ディル・リフィーナは科学技術より魔法技術が進んでいる世界だからな。勿論魔導技術という独自の科学技術もあるが……ああいった古い兵器も防城戦では凄まじい威力を発揮するから今でも使われているんだ。」

「魔法技術が発展した世界か……一体どんな世界なんだ?」

「…………………」

フィーの疑問に答えたリィンの説明を聞いたマキアスは考え込み、エマは真剣な表情で黙り込んでいた。

 

「―――ツーヤ!」

その時空から声が聞こえ

「え………」

声を聞いたツーヤは呆け

「な、なんだ……!?」

「一体どこから……」

マキアスとエマは戸惑って周囲を見回し

「上だよ。」

「へ―――」

「な――――」

声が聞こえた方向を知っていたフィーの言葉を聞いたリィンは呆け、ユーシスは空を見上げると驚くべき光景が見えた。すると飛竜に跨った女性騎士がリィン達の前に着地し、飛竜から飛び降りた!

 

「な、なななななななっ!?」

「り、竜……!?」

飛竜を見たマキアスは混乱し、エマは信じられない表情で飛竜を見つめ

「―――”竜騎士(ドラゴンナイト)”。”空の王者”の異名を持つ自由自在に空をかけるメンフィル帝国の騎士だね。」

「ほう……という事はあの竜が噂に聞く”竜騎士(ドラゴンナイト)”が駆る”飛竜”か。」

フィーの説明を聞いたユーシスは興味ありげな表情で飛竜や女性騎士を見つめ

「あ、貴女は……!サフィナ元帥!」

「か、義母(かあ)さん!?」

一方女性騎士―――サフィナの正体を知っていたリィンとツーヤは驚いた。

 

「何……?」

「か、義母(かあ)さんって…………」

「そ、それに今”元帥”って言わなかったか!?」

二人の言葉を聞いたユーシスは眉を顰め、エマは戸惑い、マキアスは驚きの表情でサフィナを見つめた。

 

「――――初めまして。我が名はサフィナ・L・マーシルン。メンフィル帝国軍竜騎士軍団を率いる者して現在はケルディック地方の臨時領主も兼ねています。”Ⅶ組”の方々ですね?いつも妹(プリネ)と義娘(ツーヤ)がお世話になっています。」

「きょ、恐縮です。」

「世話になっているのはむしろこっちの方。」

サフィナに微笑まれたエマは恐縮した様子でサフィナを見つめ、フィーは静かな表情で答え

「そ、それより今ツーヤが貴女の事を”母”呼ばわりしていましたけど……」

「それにメンフィル帝国の皇族の”マーシルン”を名乗っていましたが……まさか皇族の方なのですか?」

マキアスは戸惑いの表情で、ユーシスは真剣な表情で尋ねた。

 

「ええ。妾の娘になりますが皇族に連なる者です。」

「め、”妾”って……」

「正室や側室と違って公式には認められていない妻……ぶっちゃけ”愛人”だね。」

「お、おい、フィー!」

サフィナの説明を聞いたエマは冷や汗をかき、静かな表情で呟いたフィーの言葉を聞いたリィンは慌てた様子でフィーを見つめた。

 

「フフ、気にしないで下さい。私は今でも母上の事は誇りに思っていますし、父上との仲も良好で、妾の娘だからと言って忌み嫌われずに大切に育てられ、他の腹違いの兄弟姉妹達とも仲がいいですから。」

「す、すみません。わざわざ気を使ってもらって。」

「……………………」

サフィナに微笑まれたリィンは恐縮した様子で答え、サフィナの説明を聞いたユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。

「それでツーヤさんとの関係は……?」

ある事が気になっていたエマは尋ねた。

 

「―――あたしが爵位と同時に貴族の家名を頂いた時、義理の親娘関係にして頂いたのです。元々”L”――――”ルクセンベール”の名は義母さんや義母さんの子供達の隠し名として使われている家名ですので。」

「それは初耳だな……」

ツーヤの説明を聞いたリィンは驚きの表情でツーヤとサフィナを見比べた。

 

「それで本日は一体何の御用でしょうか?”Ⅶ組”の事は聞いていますが……”特別実習”の課題を出した覚えはありませんが?」

「い、いえ。この建物が気になったので少しよっただけです。」

「そうですか。―――そう言えばツーヤ、貴女に良い知らせがあるわ。」

「良い知らせ、ですか?」

サフィナの言葉にツーヤは首を傾げて尋ねた。

 

「―――ケルディックの遊撃士協会支部にエステルさん達が1週間前に到着したわ。」

「エステルさん達が……じゃあ、ミントちゃんもいるんですね。」

サフィナの説明を聞いたツーヤは目を丸くした後嬉しそうな表情をした。

「え………ケルディックに遊撃士協会の支部、ですか?」

「……俺の知る限りでは2年前に撤退したはずですが……」

一方ケルディックに遊撃士協会の支部が無い事を知っていたリィンは不思議そうな表情をし、ユーシスは尋ねた。

 

「私達メンフィル帝国が遊撃士協会に支部の復活を依頼したのです。中立の立場であり、市民の味方である遊撃士達は突如他国領となった事で不安な気持ちを抱えているケルディックの民達に必要な存在ですので。」

「そ、そうなんですか。」

「………………」

サフィナの説明を聞いたリィンは頷いた後、心配そうな表情で目を伏せて黙り込んでいるユーシスを見つめ

「その……随分と平民達の事を大切にしていらっしゃるのですね。」

マキアスは複雑そうな表情で尋ねた。

 

「ええ。”民あっての国”ですから。皇族の一人として民達の気持ちや生活をないがしろにするなんて、もっての外です。」

「そ、そうですか………………」

「……………………」

サフィナの答えを聞いたマキアスは戸惑いの表情でサフィナを見つめ、ユーシスは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「―――団長!」

その時メンフィル兵の一人がサフィナに近づいてきた。

 

「どうした?」

「ハッ!”大市”に店を出す事を希望する新たな商人達が団長の許可を求めて訪ねて参りましたが……いかがなさいますか?」

「わかった、すぐに行く。―――それでは私はこれで失礼いたします。”Ⅶ組”のみなさんの事は私も応援させていただきますね。」

そしてサフィナは飛竜に跨って空へと飛びあがり、建造中の建物へと向かって行った。

 

「何と言うか……同じ女性なのに、見惚れる部分がありましたね……」

サフィナが去るとエマは呆けた表情で呟き

「―――それに武術も相当の腕前。最低でもサラよりは強い。」

「なっ!?サ、サラ教官よりもか!?た、確かに背中に何やら物騒な武器を背負っていたようだが……」

フィーの推測を聞いたマキアスは驚き

「―――メンフィル皇族の方々はイーリュン教の信徒であるティア様を除けば全員武術、魔術とそれぞれの分野で相当な腕前らしい。サフィナ元帥が今の地位にいるのも自らの実力で元帥として認められたと聞いている。」

「なるほどな。”大陸最強”の称号を持つ国の皇族の名は伊達ではないという事か……」

リィンの説明を聞いたユーシスは目を細めてサフィナが去った方向を見つめていた。

 

「そう言えばツーヤさん。先程の会話でケルディックに派遣されてきた遊撃士(ブレイサー)の方達とお知り合いのような口ぶりでしたけど……」

「ええ。派遣されてきた遊撃士の一人―――ミントちゃんはあたしの親友で、その関係で知り合った方達なんです。多分、エステルさんとミントちゃんの事はもしかしたらですけど、皆さんも知っていると思いますよ。」

「そ、そんなに有名な遊撃士なのか?」

エマの疑問に答えたツーヤの説明を聞いたマキアスは戸惑いの表情でツーヤを見つめた。

 

「エステル…………ミント……―――思い出した。その二人って”ブレイサーロード”と”黄金の百合”じゃん。」

「フィーちゃん?」

フィーが呟いた言葉を聞いたエマは首を傾げ

「―――俺も耳にした事がある。”ブレイサーロード”と”黄金の百合”……理由は知らないけど元々平民だった二人は現メンフィル皇帝シルヴァン陛下から貴族の爵位を貰って、貴族へと成り上がった腕利きの遊撃士達だ。」

リィンは静かな表情で説明した。

 

「へ、”平民”が”貴族”に成り上がる……!?」

「ふ、普通なら考えられない事ですね……」

「それも皇帝直々となると、相当の功績を残したという事になるな………平民が貴族に成り上がるという普通に考えてあり得ない事も”実力主義”のメンフィルだからこそ、あり得る事か。」

平民が貴族に成り上がるという信じられない話にマキアスは信じられない表情で声を上げ、エマは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟いた後ツーヤに視線を向けた。

「そうかもしれませんね。――――それより、そろそろバリアハートに戻りませんか?ベントさん達も首を長くして待っているでしょうし。」

「そうだな……寄り道をしてしまったし、駆け足で戻るか。」

そしてリィン達はバリアハートに向かって戻り始めた。

 

 

 

 


 
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