No.647174

新世紀より~エヴァンゲリオン 3 《第壱話 使徒、襲来》 第三新東京市へ

列車砲さん

数年前、碇シンジの前に現れた奇妙な「研究所」。「ねぇ君、こっちに来ないかい?こっちにくれば、地球なんかを守ったり出来るかもよ?」
それから数年後、2015年。第3新東京市。ここから、物語は始まる。
エヴァ以外に、日常、ロストプラネット、地球防衛軍などとのクロス?です。
TV版(たまにコミック版、新劇場版)を元としますが、進むにつれ原作とはどんどん乖離します。
にじファンからの移転作品です。

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2013-12-22 13:14:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:674   閲覧ユーザー数:674

時は、少しさかのぼる。

人っ子一人見えず、ただ陽炎だけが揺れる町を一台の青い車が疾走していた。

むちゃくちゃな速度で車を駆るのは手紙と一緒に来た写真に写っており、碇シンジを迎えに来るはずだった葛城ミサト29歳、花の独身である。

 

「まいったわね~このタイミングだなんて…」

 

彼女はシンジを迎えに来たはずだったのだが、特別非常事態宣言発令の混乱のせいで見失い、片っ端から車を走らせているのだが、まったくもって見つからない。

上空には、国連軍機がひっきりなしに飛んでいる。

 

「やっぱ何人か連れてくるべきだったかしら…うわっとっと!」

 

急ブレーキが踏まれ、車は軽くスリップしながら止まる。

車が止まったすぐ先には道路が足跡の形に大きく陥没していた。

 

「あっぶな~」

 

周囲には、同じく陥没した地面、崩れたビル、墜落した国連軍機の残骸が散乱している。

 

「彼が巻き込まれてなきゃいいんだけど…ん?」

 

ふと見た方角には、山の間へと消えていく使途の姿。

そして、その周囲を飛び回っていた国連軍機があっという間に散開していく。

 

「ちょっとまさか、N2地雷を使うわけ~!?」

 

ミサトがとっさに伏せた直後、閃光が車を襲った。

「うおおおお!」

 

「ひゃあああ~!」

 

「ぎゃふっ!」

 

ハシビロコウ-05の機内は阿鼻叫喚に満ちていた。

N2の爆風にあおられ、錐もみ状態になった機内では、乗組員たちが洗濯機の中の衣服のように床、壁、天井を跳ね回り、機材やお互い同士でぶつかり合ってもみくちゃになっていた。

「きゃああああ~!」

 

一方、ミサトの乗った青い車は猛烈な爆風にあおられ、道路から外れて回転を繰り返していた。

一方、NERV本部。

 

その第一指揮所において、爆発に飲まれる使徒の姿がモニターに映し出されていた。

 

「やったぞ!」

 

「みたかね、これが我々の誇るN2の威力だよ」

 

「どうやら君の新兵器の出番は無かったようだね」

 

並ぶ地位が高そうな軍服姿の男たちが勝ち誇ったような顔で言い放つ。

 

その一段下にいる髭とサングラスの男、碇ゲンドウはそんな野次にも反応せず、相変わらずの仏頂面で砂嵐のモニターを見つめていた。

 

「その後の目標は?」

 

『電波障害のため、確認できません』

 

「あの爆発だ、ケリはついている」

 

余裕の態度でモニターを見つめる男たち。

おそらく、彼らの頭の中ではすでに目標は倒されており、胸の勲章の数が増えた自分たちの姿までイメージされていることだろう。

しかし、彼らのそんな確信は、あっさりと裏切られる。

 

『爆心地に、エネルギー反応!』

 

「なんだとぉ!?」

 

予想外の事態にうろたえる男たち。

そしてモニターが回復すると、そこにはまるで彼らをあざ笑うかのように、さしたるダメージも受けていないような目標の姿があった。

 

「何てことだ…我々の切り札が…」

 

「化け物め!」

 

気の抜けたように椅子に座り込む者、顔面蒼白で硬直している者、机を拳でたたいてモニターをにらみつける者、男たちの反応はさまざまだ。

そんな様子をゲンドウは相変わらずの仏頂面で眺めていた。

『いつつ…おーい、大丈夫かー?』

 

なんとか安定を取り戻した機内で、操縦席から放送がかかった。

 

「なんとか…」

 

「一応…」

 

「とりあえず生きてます…」

 

個々が反応を返し、全員が無事であることが確認されたが、今度は彼らを取り巻く状況が問題だった。

 

「!ちょ、ちょっと!何触ってるんですか!」

 

「不可抗力だ!おい、ちょっと待て、銃を抜くな!」

 

「おい、見てみろ。すごいぞ」

 

機内の混乱は、誰かが発したその言葉によって収束した。

見ると、二、三人が窓に張り付いて外を見ている。

機内の相変わらず絡み合っていたり、銃を向けられたり向けたりしていた者たちも、彼らに続いて窓を覗き込んだ。

 

「おお…」

 

人々の間から嘆息が漏れる。

窓の外には、大きく口を開けたクレーターと、その中心にいる影が見えた。

その影は、本来なら非常に大きく見えたはずだが、クレーターがあまりにも大きいゆえに相対的にひどく小さく見えている。

そして、そこまでの破壊をもたらす兵器を使用してもなお健在なカテゴリーGとその展開するATフィールドの耐久力には驚かされる。

 

「派手にやりましたね」

 

「地図が書き直されるな」

 

そんなことを言っている内に、放送がかかった。

 

『あーこちらパイロット、進路を変更する。クレーター上空は熱量が大きく、アクティブステルスが乱される可能性があるとの事だ。さらに、爆発時の混乱により迎えのNERV職員との合流は困難と判断する。これより第三新東京市に直行する』

 

ハシビロコウ-05はその頑強な翼を翻し、一路第三新東京市を目指した。

ハシビロコウ-05が進路を変えて飛び去ったとき、地上では、

 

「いっつつ…ったく、何してくれんのよっと」

 

ひっくり返った車からミサトが這い出てきていた。

 

「あ~あ、早くもボッコボコ…」

 

車は爆風によりころころと転がされ、早くもスクラップ同然となっていた。

 

「くぉらぁ~!ローン33回プラス修理費、あと一張羅弁償しろ~!」

 

低空を飛ぶ国連軍機に拳を振り上げてむなしく叫ぶミサトだった。


 
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