第二章
十二話「ぶっきらぼうな優しさも時には、とても心地い」
修行二日目
今日はイッセーとアーシアのための勉強会だ。
最初はイッセーが天使、悪魔、堕天使の幹部の名前を覚えているかのテストと天使、堕天使についてを祐斗が簡単に教えていた。
次にアーシアが俺達に教える番だ。
教える内容は・・・
「コホン。では、僭越ながら私、アーシア・アルジェントが
パチパチパチ。
そんなアーシアに拍手でエールを送るイッセー、途端にアーシアは顔を赤くしてしまった。
「え、えっとですね。以前、私が属していた所では、二種類の悪魔祓いがありました」
「二種類?」
「ひとつはテレビや映画でも出ている悪魔祓いです。神父さまが聖書の一節を読み、聖水を使い、人々の体に入りこんだ悪魔を追い払う『表』のエクソシストです。そして、『裏』が悪魔のみなさんにとって脅威となります」
まあ、お前も含まれるんだがな・・・。
アーシアの言葉にリアスが続いた。
「イッセーも出会ってるけど、私たちにとって最悪の敵は神、あるいは堕天使に祝福された悪魔祓い師よ。彼らとは歴史の裏舞台で長年にわたって争ってきたわ。天使の持つ光の力を借り、常人離れした身体能力を駆使して全力で私たちを滅ぼしてくる」
俺も何度かエクソシストと対峙したことがあるが確かに強い奴もいたな・・・。
「では、聖水や聖書の特徴をお教えします。まずは聖水。悪魔が触れると大変な事になります」
「そうね、アーシアも触れちゃダメよ。お肌が大変な事になるわ」
「うぅ、そうでした・・・。私、もう聖水を直に触れられません・・・・」
リアスの言葉にアーシアはショックを受けている。しょうがねぇよな、悪魔だし。
「作り方も後で教えます。役に立つかどうかわかりませんけど、いくつか製法があるんです」
どうやら得意分野みたいでアーシアは何時もよりはきはきとしている。
「次は聖書です。小さい頃から毎日読んでました。今は一節でも読む頭痛が凄まじいので困ってます」
「悪魔だもの」
「悪魔ですもんね」
「・・・・悪魔」
「うふふ、悪魔は大ダメージ」
「悪魔だからな。諦めな」
「うぅぅ、私、もう聖書を読めません!」
俺達の言葉にアーシアは涙目になってしまった。
「でもでも、この一節は私の好きな部分なんですよ・・・・。ああ、主よ。聖書を読めなくなった罪深き私をお許し―――――あう!」
自分で祈りをしてダメージを喰らう悪魔って、初めてじゃねえか?
「アイツ、いつか自分の祈りで死んじまうんじゃねぇか?」
「静雄、それは笑えないわよ」
俺の率直な意見にリアスは真顔でツッコミ、朱乃達もウンウンと頷いた。
そうして、俺達は午前の修行を終え、午後の修行へと入った。
山にこもって一週間が過ぎた日の夜。
その日、俺はあまり寝付けなかったので一服しようと考え寝巻の上にジャージを羽織り外に出ようとした時にリビングにリアス本を読みながら座っているのを見つけた。
「よお、リアス」
「静雄?どうしたの」
「ちょっと、一服しようと思ってな・・・」
そういって煙草を見せると、リアスはあからさまにため息をついた。
「ほどほどにしなさい。幾ら薬草煙草でも吸い過ぎては体に毒よ」
「わかってるよ・・・・。ゲームのマニュアル本か?」
「ええ。気休めだけど、やらないよりはマシだわ」
そう言いながらペラリと一枚ページをめくった。
「・・・・」
リアスの様子が少し気になり、俺は向かい側のソファーに座った。
「吸いに行かないの?」
「吸う前に少しな・・・・」
「??」
そう、吸う前に少し確認しなくちゃならねぇ事がある。
「お前。今回のゲーム、どう見る?」
「・・・・・あなたはどう思ってんの?」
質問を質問で返すなよ・・・・。
「・・・正直にいえば、よくて七:三、悪くて八:二でこっちが不利だな」
「・・・・・」
「単純な戦闘力なら俺達が上だろうが、俺達はゲームは今回が初めて、対して向こうは公式戦経験豊富な奴らだ。この差はデケェな」
あの焼き鳥野郎の実力は言わずもながら、アイツの下僕も見た限りそれなりに強い。何よりアイツ等はレーディングゲームをよく知ってる。そのアドバンテージはデカイ。
「・・・・・そう」
俺の言葉にリアスは目を伏せて沈んでしまった。
そんなリアスに俺は気まずくなり視線を外してしまう。
「チッ・・・・言っとくが俺も朱乃も他の奴らもあんな焼き鳥野郎に負けるつもりはねぇ。その為に修行を積んでんだ。だから・・・」
恥しさを抑えながら俺はリアスに向き直ると、
「だから、テメーは何時ものように堂々としてりゃあいいんだよ」
「・・・・・プッ!あ、アハハハッ!!」
「んなっ!?」
こ、このアマ。噴き出しやがった!!あまつさえ笑いだしたぞ!
「て、テメェ!な、何がおかしんだよ!?」
「フフッ・・・ご、ごめんなさい。相変わらず、不器用な優しさね、静雄?」
それから、といいながらリアスは微笑み、
「ありがとう」
「・・・・・」
月夜に照らされたリアスの微笑に不覚にも見惚れてしまった。
「どうしたの?」
「・・・・チッ。慣れねぇ事はすんじゃねぇな」
頭を掻きながらソファーから立ち上がると台所の方に視線を向けると、イッセーが飲み物を飲み干している所だった。
どうやら、さっきまでの俺達のやり取りに気付いていないみたいだ。
「長居し過ぎたからな、一服して寝るんだよ」
「そう。もう少し話したかったけど・・・・おやすみなさい」
「ああ、お休み」
若干寂しそうに言うリアスに背を向けながら俺はリビングを後にした。
何より、火照った顔を冷ますのには夜風に当たるのが一番だ。
「フ~・・・・」
庭に設置されているベンチに腰掛け、煙草を吸いながら夜空を見上げていた。
今夜は雲が一つもなく満天の星空がとても綺麗だ。都会じゃあ、こうもいかねぇからな・・・。
「クゥ~~ン」
足元で丸くなっている黒い毛並みの大型犬―――使い魔の『朱里』は気持ち良さそうに寝ていた。
「・・・・アイツ等にも見してやりてぇな。この星空・・・・」
今は別の場所で暮らしている
「あら、私には見せてくれないのかしら?」
「うおっ!?」
「キャンっ!?」
突然目の前に朱乃の顔が現れた。
突然の事で驚き、足元にいた朱里も驚きで飛び起きてしまった。
「あ、あぶ、危ねぇだろうが!?」
「うふふ。そんなに驚く事ないじゃない、シー君」
慌てて煙草を消し朱乃の睨みつけるが、朱乃は悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら隣に腰掛けた。
「・・・・オイ」
「なぁに、シー君?」
「肩によりかかんな。擽ってぇだろうが」
「だって、寒いんですものシー君の人肌で温めて?」
「だったら、そんな恰好で外でんな!ってひっつくな!」
因みに今の朱乃の服装はいつもポニーテールにしている髪を下ろしリアスとは色違いの黒のネグリジェ姿にストールをかけたといういくら今日は比較的に暖かくても薄着すぎる。
「クシュンッ!」
「・・・たくっ・・・ほら」
「あ・・・・ありがとう。シー君」
寒そうにしていたので俺が羽織っているジャージを朱乃の肩にかけてやった。
「うふふ」
「何にやけてんだよ?」
「だって・・・シー君の服、温かい・・・」
「っ!?ば、馬鹿じゃねぇのか、いきなり何言いやがる////!」
「フフッシー君顔真っ赤よ?」
「うるせぇ!つか、やっぱ上着返せ」
「ダーメ♡それにそんなに騒ぐとリアスとイッセー君に気付かれちゃいますわ」
「ちょっと待て」
今コイツ、聞き捨てならないことを言わなかったか?
「テメェ何時から見てた?」
「えーと、リアスがシー君に煙草の吸い過ぎを注意した所からかしら」
「ほとんど最初の方じゃねぇか!?」
マジかよ・・・。全然気配が感じなかったんだが・・・。
「リアスの事、気にかけてくれたんでしょ?」
「・・・・さぁな」
「フフッ相変わらず素直じゃないのね?」
「うるせぇ」
ったく本当にコイツは・・・。
「オラ、明日も早いんだ。さっさと寝るぞ」
「え~もう少しいいじゃない?」
短くなった煙草を携帯灰皿に入れてベンチから立ち上がると朱乃は子供みたいに駄々をこねた。
「アホか、明日の朝食の当番はお前だろうが。それにいくら今夜は温かいといってもそんな薄着じゃ風邪ひくぞ」
「・・・・ふふっそうね♪」
そして、朱乃も立ち上がり俺の隣に並ぶと・・・・・って、
「オイ、何で腕を組むんだよ?」
「あら?だってこうしないと寒くて風邪をひいちゃうわ」
「何のために上着貸したんだよ。つーか、当てんな!」
腕がテメェの胸の間に挟まってんだよ!!
「うふふ、当ててるの。というより挟んでるのかしら?」
「確信犯かテメェ!!」
結局、俺は朱乃を振り払えないまま寝室まで共に腕を組んでいった。
力だったら俺の方が強えはずなのに何で振り払えねぇんだよ・・・。
「知らないの?恋する乙女は最強なのよ♪」
「心を読むんじゃねぇ!!」
その後、俺達は山籠りの修行を終えて、決戦当日を迎えた。
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平和島静雄の肉体に悪魔の駒の『戦車』の能力をプラスしたら?という妄想で書いた小説です。