第二章
第十三話「この世には敵に回してはいけない奴がいる」
決戦当日。
~旧校舎オカルト研究部部室~
深夜十一時四十分頃、オカルト研究部部室にはリアスの眷属達が思い思い過ごしていた。
手甲と脛当てを装備し剣を壁に立てかけている祐斗、椅子に座り手にオープンフィンガーグローブをはめて本を読んでいる小猫、リアスと朱乃はソファに座り優雅にお茶を飲み、イッセーとアーシアは椅子に座って静かに過ごしている。静雄は窓を開け窓枠に体を預け外を見ながら煙草を吸っていた。
「静雄、部室内で煙草を吸うのは禁止よ」
「ああ?別にいいだろうが。ちゃんと中に煙が入らないようにしてるし、吸い殻を落ちねぇ様にしてんだからよぉ」
「ダメ」
「チッ」
にべもなくダメというリアスに静雄は舌打ちしながら煙草を携帯灰皿に入れた。
「シー君、こっちにきて紅茶でも飲まない?」
「いらねぇよ。それにどうやら、始まるみてぇだしな」
静雄の言葉と同時に魔法陣が現れグレイフィアが現れた。
「皆さん、準備はお済みになられましたか?開始十分前です」
グレイフィアの言葉に全員が立ち上がる。それを確認するとグレイフィアは説明に入った。
「開始時間になりましたら、ここの魔法陣から戦闘フィールドへ転送されます。場所は異空間に作れれた戦闘用の世界。そこではどんなに派手な事をしても構いません。使い捨ての空間なので思う存分どうぞ」
(ほう、思いっきりやっていいのか)
「ですが・・・平和島さま」
「あ、なんだよ?」
いきなりグレイフィアに名前を呼ばれ静雄は怪訝そうに視線を向ける。
「貴方様の封印は一つ目のみです。間違っても二つ目の封は外さないように・・・」
いきなりのグレイフィアの言葉にイッセーとアーシアは訳がわからなそうに二人を交互に見ているが、静雄は気にせず顔を背けた。
「チッ・・・ンな事は分かってるよ」
「それならばよろしいのですが・・・。それと、今回の『レーディング・ゲーム』には両家の皆さまも他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります。さらに魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されます。それをお忘れなき様に」
魔王がこの戦いを直接見に来るという事実にリアスは心底驚いた表情を浮かべた。
「お兄さまが?・・・・そう、お兄さまが直接来られるのね」
そのリアスの言葉に真っ先に反応したイッセーは信じられないような顔をしながらリアスの方を向いた。
「あ、あの、いま、部長が魔王さまの事をお兄さまって・・・。俺の聞き間違いでしょうか?」
かなり動揺しているイッセーに祐斗はさらりと答えた。
「いや、部長のお兄さまは魔王さまだよ」
「っつーか知らなかったのかよ?」
「初めて聞いたんですけどっ!?って、魔王ぉぉぉぉぉっ!?部長のお兄さんって本当に魔王なんですか!?」
「ええ」
イッセーの質問にリアスは即答した。
そこでイッセーはある疑問を持った。リアスの兄と魔王の名前が一致しないことに、その所為で軽い混乱状態に陥り始めたが、
「部長のファミリーネームと魔王さまの名前が違うから混乱したりする?」
「ああ、まあな」
そんなイッセーに祐斗が訊いてきた。
「先の大戦で魔王さまは致命傷になられてね、すでに亡くなられているんだよ。しかし、魔王なくして悪魔はありえない。そこで――――」
祐斗の説明では悪魔たちは魔王の名前を残し、強大な名を持つ悪魔にその名を継がせる。つまりは初代から名を受け継いだ最上級悪魔である。今では魔王の名前は役職名なのである。
そして、神、堕天使、悪魔の三竦みの状態で悪魔の陣営が一番力を持っていないのだが四大魔王の力のおかげでなんとかその均衡を保っているそうだ。
そして、その四大魔王の一人サーゼクス・ルシファー―――――『
故にリアスがグレモリー家を継がなくてはならないのだ。
「そろそろ時間です。皆さま、魔法陣の方へ」
グレイフィアに促され静雄達は魔法陣に集結する。
「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔法陣への転移は不可能となります」
そして、静雄達を光が包み転移を始めた。
静雄side
転移された先は先ほどと変わらない旧校舎のオカルト研究部だった。
最初は転移失敗かと思ったがどうやらここが今回のレーディングゲームの会場らしい。
そんで、俺達の本陣がオカルト研究部部室、焼き鳥野郎が生徒会室らしい。
そして、
キーンコーンカーンコーン。
ゲーム開始のチャイムが鳴り響いた。
「おい、リアス。何で俺は待機なんだよ?」
今、部室(ここ)には俺とリアスそれにアーシアしかいない。
他のメンバーはリアスが立てた作戦を実行するために、移動してここにはいない。そして俺は一人だけここで待機命令を受けている(アーシアは元々戦闘要員じゃないのでカウントしていない)。
「静雄には出来るだけ体力を温存してもらいたいの。ライザーを倒すために貴方のその出鱈目な強さが必ず役立つはずだから」
「だがよぉ・・・」
「少しはあの子たちの力を信じてあげなさい」
「信じちゃあいるが・・・」
やっぱりこうじっとしてんのはどうも性分に合わねぇ。
『部長、準備できましたわ』
「そう。イッセー、小猫。聞える?私よ」
朱乃からの通信を聞きリアスは体育館で戦っているイッセーと小猫に連絡した。
『はい!俺も小猫ちゃんも無事です!つーか、いまのところいい感じです!』
ほう、マジかよ。修行の成果がちゃんと出てんだな。
「それは結構。でも朱乃の準備が整ったわ!礼の作戦通りにお願いね!」
「しっかし、お前もえげつねぇ作戦思いつくな」
「あら?策としてはとても有効でしょ?」
ドォォォォオオオオオオンッ!!!!
『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、「戦車」一名、戦闘不能!』
遠くで轟音が鳴り響き、それと同時にグレイフィアの声が響いた。
「一番アイツがえげつねぇな」
体育館が跡形もなく消滅したのを確認しながら俺は率直な感想を述べた。
「皆、聞える?朱乃が最高の一撃を派手に決めたわ。これで最初の作戦はうまくできたわね」
「まあ、『兵士』三人に『戦車』一人は戦果としては上出来だろうな」
「あの雷を一度は放ったら二度目に撃つのに時間がかかるの。連発は不可能。まだ相手の方が数では上。朱乃の魔力が回復ししだい、私たちも前に出るから、それまで各自にお願いするわね。次の作戦に向けて動き出してちょうだい!」
・・・・ちと今の状況はマズイな。
戦闘で最も危険なのは敵を倒した後だ。特にこういった集団戦の時、作戦が上手くいくと否応が無く浮き足立っちまう。レーディングゲーム初めての俺たちなら尚更だ。現に目の前にいるリアスは表情には出ていないが作戦が上手く行き興奮しているのがわかる。それに、一番危ないのは最初の作戦を担当したイッセー達だ。朱乃はそう言ったことは無いがイッセーと小猫が気掛かりだ。
「おい、リアス―――――」
そのことを指摘しようとした瞬間、
ドォンッ!!
遠くから爆砕音が響き、そして・・・
『リアス・グレモリー様の「戦車」一名、リタイア』
「なっ!?小猫が!?」
「チッ・・・遅かったか」
校内アナウンスで小猫が敵にやられたことにリアスが驚愕し、俺は自分の迂闊さに舌打ちした。
自分の眷属を犠牲にしてこちらの駒を取りに行く、か随分とクソみたいな考え方をしてんなあの焼き鳥。
「おい、リアス。俺も出るぞ」
ソファから立ち上がると、リアスを一瞥してそう言うと俺は部室のドアに向かって歩き出した。
「静雄?何を言ってるの貴方は―――」
「ウルセェ、ンな事知ったことか」
制止させようとするリアスの言葉を遮り、俺はリアスの方へ振り返った。
「小猫をやった奴ならどうせ朱乃が潰すだろう」
アイツは小猫の事を妹みたいに思ってるからな。
「だが、だからといって仲間がやられてジッとしてられるほど、俺は大人じゃねぇ」
そうだ、アイツ等に分からせなくちゃならねぇ。誰を敵に回し誰の仲間に手を出したのかを。
「だから、アイツ等全員ぶっ殺す!」
バンッ!拳を掌に打ち付け、俺は部室を後にした。
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平和島静雄の肉体に悪魔の駒の『戦車』の能力をプラスしたら?という妄想で書いた小説です。