「あれが汜水関か・・・。前の世界のものとほぼ同じだな」
俺は隣に居る愛紗に話しかける。
「はい、ですがここに来るまで華雄の奇襲がなかったので、今回の戦も前の世界のものとは違うものになりそうですね」
愛紗は冷静に答える。
あの劉備との会談の後、俺と愛紗は雪蓮と冥琳に俺達の世界の孫策と周喩について説明し、(二人ともだいぶ驚いていた。主に自分達が俺達の世界では男であることに)ついでにこの戦で華雄と張遼を捕虜にすることも提案した。
結果、孫呉独立の助けになると説得したところ、二人とも了承してくれた。
そして進軍が開始して今汜水関に居るというわけだ。
「やれやれ、こんな砦を力攻めしようなんて、普通思わないでしょうに・・・・」
「その普通思わないことを実行しようとするあたり、袁紹には呆れてものもいえないな」
隣で雪蓮と冥琳がそんなこと話していた。
まあこの世界の袁紹が前の世界と同じなら、な・・・。
「さて、もう劉備達は敵の挑発を始めているころかしら?」
「だろうな、と、劉備軍から二騎出てきたぞ」
冥琳の声を聞いて、俺達が劉備軍を見ると、劉備軍から関羽と趙雲、この世界の星が出て来た。
そういえば星、軍議の時いなかったけどどこにいたんだ?
「敵将華雄!!我が名は関雲長!!劉玄徳の一の家臣である!!」
「同じく劉備が家臣、趙子龍!!」
「貴様も武人ならばいざ尋常に我等と勝負せよ!!」
「それとも貴様の武は寡兵にしか振るえぬのか?我等の相手は恐ろしいのか?」
「もしそうならば臆病者に用はない!早々に汜水関から逃げ失せるがいい!!」
と、関羽と星は言いたい放題言った後、自軍に引き返していった。
「色々言ってたわね~。あの子達。それにしてもあの白い服の子、劉備軍にいたっけ?」
「いや、私も見てないな。しかしなかなか名のある武将かもしれないな」
雪蓮と冥琳は隣で星のことを話題に話している。
まあそれはいいとして、出てこないな・・・。
愛紗が話した華雄の印象からして、即出てくると思ってたんだけど。
大方霞あたりが引き止めたんだろうな。
「出てこないな、雪蓮、冥琳」
「ふむ、中で誰かに引き止められたか・・・。まあこの程度で出てくるとは思っていないが」
「ふ~ん・・・ねえ冥琳」
「何だ雪蓮?」
冥琳が雪蓮の言葉に返事を返すと雪蓮が笑顔を浮かべていた。
「ちょっと袁術のところに行って出陣の許可を貰って来るわ」
「ん?もう劉備の加勢に行くのか?」
冥琳の質問に雪蓮は頷いた。
「そうそう、それに華雄誘い出すなら私のほうが適役でしょ?」
そういえば雪蓮は孫堅さんと孫栄さんの娘だっけ。
確かに挑発にはもってこいだ。
そういうわけで雪蓮は袁術の所に行って出陣の許可を貰ってきた。
そして俺達は劉備軍の加勢に向かった。
「は~い、劉備、大変そうね」
「孫策さん!?」
劉備陣営に着いた俺達はまずは劉備達にあいさつに向かった。
劉備の周りには関羽と鈴々、星、朱里、鳳統ちゃんがいた。
「手こずっているみたいだから、手伝いに来てあげたわよ」
「手伝い、ですか?」
劉備が雪蓮に問いかけると、雪蓮は星に目を向ける。
「ところで彼女は誰?軍議の時に居なかったけど」
「あ!彼女は趙雲さんって言います!槍の使い手で愛紗ちゃんと同じくらい強いんですよ!雪蓮さん達が来たときには、連合軍の陣地を回っていて居ませんでしたけど」
劉備が紹介すると星が前に出てきて頭を下げて挨拶をする。
「お初にお目にかかります。私の名は趙雲、字は子龍と申します。
先ほどの軍議には出席できずに申し訳ありませんでした」
「別にいいわよ。そんなこと気にしてないし」
星と雪蓮の会話が終わると、突然星は俺と愛紗に目を向けてきた。
「ほう、貴殿等が天の御使い殿と天将殿ですか。なるほど天将殿は愛紗に瓜二つですな。
服も同じなら見分けがつきますまい」
星は物珍しそうに俺達を見ながら言った。
まあ同一人物(居る世界が違うが)だから似ていて当然だろうな。
しかしそんなにじろじろ動物園の動物を見るように見られると、ちょっとな・・・。
「趙雲殿、そう我等をじろじろ眺めるのはやめていただきたい。
我々は見せ物ではないので、そういうことをされると多少気分が悪くなりますので」
愛紗は厳しい視線で星をそう嗜める。星は一瞬、驚いた顔をしていたが、やがて笑い出した。
「はっはっは、これは申し訳ない。前々から天の御使い殿と天将殿には一目お目にかかりたかったものでして、つい。許されよ、天将殿」
「いえ、分かっていただければいいのです」
星の謝罪に愛紗は厳しい視線を和らげてその謝罪を受け入れる。
と、突如星は俺に顔を向けた。
「ところで御使い殿は天将殿といかなる関係で?」
「?どういう関係って?」
俺の質問に星はいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「いえ、天将殿とは恋人の関係なのか、と思いまして」
「なあああ!!!!????」
星の言葉に愛紗は顔を赤らめる。が、
「そ、そそ、そうだ!私とご主人様とは恋人同士だ!わ、悪いか!!」
・ ・・・完全に開き直った。前の愛紗より少し、成長したのかな?
「くっくっく、いやいや左様ですか。いや、からかって申し訳ない。
仲があまりにも良さそうでしたのでな、ついからかいたくなってしまったのですよ」
「はあ・・・そうなんだ」
この世界の星も前の世界の星同様、人をからかうのが好きらしい。
この世界の関羽もきっと星に振り回されているんだろうな。
「はいはい、仲良く話すのは後にして。今の私達はあの汜水関から華雄を引きずり出さなきゃならないんだから」
「で、でも愛紗ちゃんと星ちゃんが挑発しても出てこなかったんですよ!?」
「まあまあ、見てなさいって」
笑顔で劉備にそう返すと、雪蓮は一部隊を率いて前方に突出する。
そして汜水関のすぐ前まで着くと雪蓮は大声を張り上げた。
「華雄よ!私が誰だか分かるか!!かつて貴様が戦って大敗を喫した孫堅が娘、孫伯符である!!この私が来ているのにまだ亀のように閉じこもっているのか!!それとも親子二代に渡り敗北するのが恐ろしいのか!!そうか、恐ろしいのか!!親子二代に渡り敗北するのは惨めであろうからな!!ならばここは引いてやろう!!さらばだ臆病者!!!」
と、まあボロクソ言って引き上げていった。
「・・・随分とボロクソ言ったな、雪蓮」
「あそこまで言わないと出てこないわよ~。まあ少しいいすぎたかな~、とは思うけど」
と、俺達が話している時に汜水関の城門が開いて華雄の軍が出てきた。
「っと、来たみたいよ。それじゃあさっそく戦闘開始といきますか」
「では私は華雄を捕らえてまいります」
愛紗はそう言って華雄の軍勢に向かっていった。
「ねえ、一刀、関平は本当に大丈夫かしら?華雄、話で聞いただけだけど、かなりの武の腕らしいわよ?」
「ああ、大丈夫だよ雪蓮。関平を信じて」
雪蓮の言葉に俺はそう言って返す。
今の愛紗なら華雄も倒せるさ、きっと。
なにしろ今の愛紗は、単純に一対一の戦いなら恋にも勝てるほど強いからな。
関平side
「!おのれ関羽!!先ほどはよくも私を愚弄してくれたな!!?」
華雄は私を見るや否や自らの獲物である戦斧を振るい、怒り狂う。
・ ・・やれやれ、劉備軍の関羽に勘違いされたか。まあ実際そっくりだからしかたないが・・・。
「華雄殿、私はあいにくと関羽ではありません。実際関羽とは獲物も服装も違うでしょう?」
私が華雄にそう言うと華雄は少し落ち着いたのか私をじっと見ていた。
「むう・・・確かに。では貴様は何なのだ?」
「私の名は関平。天の御使い北郷一刀様にお仕えする天将である。
華雄殿、貴殿も武将ならば私と一手お手合わせ願おう」
私が華雄に自己紹介をすると、華雄は不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、貴様が孫策の元に降り立った天将か!・・・面白い!聞けば貴様の武勇は天下無双と聞く!貴様を倒せば私が最強ということか!!」
華雄は不適に笑いながら武器を構えた。・・・しかし天下無双とは・・・。
いったい誰が広めたのだ、そのような話を。正直恥ずかしいぞ・・・。
「ふう・・・簡単に私に勝つと言わないほうがいいと思うぞ」
「戯言を!!参るぞ!!天将関平よ!!」
私が華雄に少しばかり嗜めると華雄は怒号を上げつつ戦斧を振るって斬りかかってきた。
速い!
私は紙一重で斬撃を回避する。
「ほう・・・!かわしたか!・・・ならばこれはどうだ!!」
と、華雄は横薙ぎに戦斧を振るってくる。
私はその斬撃を見切り、かわす。
確かに速い、そして重い。だが
「ご主人様のお父上やお爺様のものに比べれば、遅すぎて欠伸が出るわ!!」
そう叫んで一気に距離を詰め、冷豔鋸を振るう。
「何!?」
華雄は私の斬撃をとっさに受け止める。
・ ・・が、甘い!
私は冷豔鋸を捻り、華雄の戦斧に絡ませるようにすると、一気に戦斧を華雄の手から弾き飛ばした。
「ば、馬鹿な!!」
華雄はじぶんの手を見て呆然としていた。が、その隙を突いて私は華雄の腹部に当身を打ち込む
当身を食らった華雄は一瞬はっとした顔をしたが、やがて気絶した。
「敵将華雄!!天将関平が捕らえた!!」
私が叫ぶと、自軍から歓声が響き渡り、敵の軍勢は恐れ、逃げ始めた。
ふう・・これで私の任務は達成か・・・。
これでご主人様に褒めていただける。
あとがき
第二十二話、投稿しました。
一騎打ちシーン、あまりよく出来てませんね・・・。
もうすこし他の小説読んで研究するかな・・・。
さて、この世界の設定なのですが、一刀の爺ちゃんと父親は、剣術の達人で、恋や貂蝉、卑弥呼
より強いです。
一応愛紗や一刀も爺ちゃん達の本格的な修行を受けたため、かなり強くなっています。
では次回作もお楽しみに。
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二十二話、急いで投稿です!
一騎打ちシーン、どこか手抜きっぽくてすみません・・・。実際書くのこれが初めてなので・・・。これからどんどん書かなきゃならなくなるのに、不安ですね。