漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■まだまだあるぞ 〜単行本2

「アグネス仮面」 1巻 ヒラマツ・ミノル (小学館) [bk1]
アグネス仮面
「アグネス仮面」 1巻
ヒラマツ・ミノル
アツい男のプロレス漫画。メキシコに武者修行に行かされていた若手プロレスラー・山本仁悟が主人公。5年ぶりに日本に呼び戻されたものの、所属団体は倒産。元社長夫人によって道場破りに行かされる羽目になったかと思ったら、アントニオ猪木ライクなライバル団体の社長に返り討ちに遭い、今度はそちらの団体で覆面レスラー「アグネス仮面」として働かされることに……といった具合に、あれよあれよとお話は展開。ヒラマツ・ミノルは「REGGIE」「ヨリが跳ぶ」など真っ向勝負なスポーツ漫画の名手として定評のあることころだが、随所にギャグを折り込むのもうまい。その持ち味が、プロレスという格闘技のテイストにばっちりマッチしていてやたら面白い作品となっている。たぶんプロレスはそんなに好きでないという人でも楽しめるんではなかろうか。 (小学館「ビッグコミックスピリッツ」で連載中)
「犯罪交渉人 峰岸英太郎」 1巻 記伊孝 (講談社)  [bk1]
犯罪交渉人 峰岸英太郎
「犯罪交渉人 峰岸英太郎」 1巻
記伊孝
テロリストによって制圧された国内便に乗り合わせた警視庁所属の犯罪交渉人・峰岸英太郎が、乗客だけでなく犯人も含めた全員の生還を目指して丁々発止の息詰まる交渉に臨む……というストーリー。暴力的な手段に訴えることなく、洞察力と話術を駆使して展開される交渉の模様は、緊迫感があって読んでいてぐぐっと力が入る。また、これが初単行本となる記伊孝の作画も良い。緊張感はしっかり出ているけれど、どこか伸びやかで気持ち良く、懐の深さを感じさせる。 (講談社「別冊ヤングマガジン」で連載中)
「貧民の食卓」 1巻 おおつぼマキ (新潮社) [bk1]
ロードス島戦記 ファリスの聖女
「貧民の食卓」 1巻
おおつぼマキ
父一人、娘息子一人ずつの貧乏家庭・赤柿家。父ちゃんは無職で日がな一日パチンコをやってるようなぐうたら者だが、料理の腕は一級品。お金はないながらもうまい料理を連発して家族は満足、気楽で平和な家庭生活が営まれていく……という料理漫画。1食の原価を100円以内に限定というのがコンセプト。調理法もいい具合にテキトー感が出ていて、「これなら自分でも」とかつい思ってしまう。けっこう実用的かも。濃厚な漫画の多い「コミックバンチ」の中では珍しく肩の力が抜けていて、いい箸休めになっている。 (新潮社「コミックバンチ」で連載中)
「細腕三畳紀」 あさりよしとお (講談社) [bk1]
細腕三畳紀
「細腕三畳紀」
あさりよしとお
毎回、三葉虫がなんらかの形で出てくる連作短編シリーズ。内容は料理漫画だったり、怪獣モノだったり、プロレスモノだったりと自由自在。そのどれもがヒネリの利いたギャグになっていてとても楽しい。あさりよしとおのパロディ精神がいかんなく発揮された一作。
「下町狂い咲きキネマ」 猪原大介+おおしまひろゆき (少年画報社) [bk1]
下町狂い咲きキネマ
「下町狂い咲きキネマ」
猪原大介+おおしまひろゆき
「アワーズライト」に掲載された短編を収録した作品集。内容は切ないラブストーリーあり、ドタバタコメディあり、ハードボイルドありとバラエティに飛んでいる。この本の一番の魅力は、なんといっても迷いなく自由闊達な作画。伸びやかで健全で、見ていてすごく気持ちがいい。実にスタイリッシュ。これまではH漫画誌の表紙など、カラーの仕事で定評を得ていたおおしまひろゆきだが、モノクロでもまた味のあるいい絵を描いている。お話のほうもテンポが良く、スルスルと楽しく読める。
「私がいてもいなくても」 1巻 いくえみ綾 (集英社) [bk1]
私がいてもいなくても
「私がいてもいなくても」 1巻
いくえみ綾
学校は出たけどやりたいこと、できることがいまいち思いつかず、ぶらぶら暮らしていた女の子・安倍晶子が主人公。晶子の彼氏と、晶子の旧友で今は売れっ子漫画家の神田川真紀、そして真紀の彼氏の4人の青春模様を描いている。お話としては今のところ、そんな大したことが起こっているわけではない。晶子は真紀のところにアシスタントをしにいくようになり、真紀の配慮に欠ける行いにカチンときつつも、自分のやりたいことを仕事としている彼女との差を痛感。それも別に強烈に煮詰まっているとはいえないだが、でもこれが面白い。日常の中でのちょっとした感情のスレ違いを描き出す手腕が絶妙。さらに会話や物語展開の間がとても気持ち良い。自然体なままとても面白く読める作品になっている。いくえみ綾の漫画は本当にハズレがない。 (集英社「別冊マーガレット」で連載中)
「女王の百年密室」 画:スズキユカ+作:森博嗣 (幻冬舎コミックス) [bk1]
細腕三畳紀
「女王の百年密室」
画:スズキユカ
作:森博嗣
森博嗣の小説の漫画化。機械でできたロイディとともに旅している主人公サエバ・ミチルが、広大な枯れ地にポツンと存在している町にたどり着く。そこは女王が統治して、争いも人が死ぬこともなく、完全に壁で囲まれた町の中だけで自給自足を行っている。そんな「できすぎた」「不自然な町」にミチルは違和感を抱く。そして人が死ぬはずのない町の中で起きた殺人事件を通して、ミチルはこの町の本当の姿を見出していく……というお話。新書判の小説を単行本1冊にまとめたということで早足な印象はあるものの、かなり面白く仕上がっている。繊細で透明感のあるスズキユカの作画が、閉じた空間で展開される美しいミステリにうまくマッチしている。スズキユカはこれが初単行本となるが、この起用はハマリ役だったと思う。
「れ・り・び」 1巻 ともち (幻冬舎コミックス B6版)  [bk1]
れ・り・び
「れ・り・び」 1巻
ともち
甘くてハッピーなドタバタウェディングストーリー。「もって半年」といわれていた祖母に嫁さんを一目見せてやりたいと願っていた男と、ずっと好きだった男が母親と再婚することになって家にいづらくなっていた女子高生の利害が一致。一年限りという取り決めで結婚することに。最初はギクシャクしていた二人だったが、一緒に暮らす間にじょじょに惹かれあうようになり……という感じ。これが実に甘くてむずがゆくて、幸せムードが漂っていて、どうにもアテられてしまう。健全なお色気シーンも満載で、読んでいると心華やぐ。甘いオノロケ漫画でトロトロになりたい人はぜひ。(幻冬舎コミックス「コミックバーズ」で連載中)
「魔法少女猫たると」 1巻 介錯 (集英社) [bk1]
魔法少女猫たると
「魔法少女猫たると」 1巻
介錯
主役は魔法少女猫(「まじかるにゃんにゃん」と読む!)たると。猫なのに人間の女の子の形、しかもメイド服を着ているという、実に萌え萌えな存在。そのたるとが大好きなご主人様の庵にごろごろ甘えまくる。極論してしまうとそれだけの漫画なんだが、その破壊力はすさまじい。語尾が「にゃーの」の甘えたしゃべり方、徹底的に開き直った萌えイズム。それが照れもツッコミもなく容赦なくビシバシと展開される様子はまさに圧巻。 (集英社「ウルトラジャンプ」で連載中)
「身想心理」 陽気婢 (講談社) [bk1]
身想心理
「身想心理」
陽気婢
甘酸っぱく爽やかな青春モノH漫画の名人、陽気婢が各所で描いた作品を集めた短編集。収録作品は「MY TURN」「あんぐる〜YOUR EYES ONLY〜」「Lonely Vamp」「おでこ」「ナンパオ」「カリソメ」「振り返れば僕がいる〜Personal Complex’95〜」「極限の愛」「SF恐怖のイソギンチャク人間」「永遠の少年」。かなり古めのものから新しめのモノまで収録されているので玉石混淆なところはあるけれども、アタリの作品は非常にいい。例えば、両目の視力はないんだけど精神感応力で他人の視覚情報を読み取り、ほかの人と同じように生活している少女が主人公の「あんぐる〜YOUR EYES ONLY〜」あたりは、着想も面白いしラブコメとしても秀逸。柔らかく自然体で、流れるような美しさのある作画もとてもいい。 >>次頁
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