悪魔的少年ヨハンの命を救ったことから始まったDr.テンマの物語もついに最終局面。最後の最後までゾクゾクさせてくれる緊張感のある作品だった。最終18巻は2月末発売。筆者もこの機会に全巻まとめ読みするつもり。
(「ビッグコミックオリジナル」1/5 No.1 小学館)
漫画的男子しばたの生涯一読者■恐るべき16歳 〜単行本未収録作品それでは単行本未収録作品の中からいくつか。まずは大型連載の最終回の話題から。 「MONSTER」 【最終回】 浦沢直樹 [bk1]
悪魔的少年ヨハンの命を救ったことから始まったDr.テンマの物語もついに最終局面。最後の最後までゾクゾクさせてくれる緊張感のある作品だった。最終18巻は2月末発売。筆者もこの機会に全巻まとめ読みするつもり。
(「ビッグコミックオリジナル」1/5 No.1 小学館)
「サユリ1号」 【新連載】 村上かつら
迷走する青春模様の類まれなる描き手・村上かつらの新連載。この作品の主人公は、イベント系のナンパなサークルの部長をつとめる男・ナオヤ。彼には昔から架空の少女「サユリ」を思い描いてオナペットとしていたのだが、ある日サークルに「サユリ」にそっくりな女の子が入ってきていっぺんで心を奪われてしまう。しかしナオヤの昔からの女友達である児玉知子はその様子を不安視していて……といったところからスタート。きちんと痛み・苦みを見据えながら、丁寧に繰り広げられていくストーリーは、一見穏やかな絵柄ながらも刺激的。この人はこの作品以前にも「天使の噛み傷」や「いごこちのいい場所」などなど、単行本未収録の力作がけっこうあるので、この機会にブレイクしてそれらの作品が単行本化されてくれないかな……と切に願っている。
(「ビッグコミックスピリッツ」1/5+8 No.2+3 小学館)
「甘い水」 【新連載】 松本剛
こちらも期待の大きい青春モノ。公園で初めて出会った戸田少年と転校生の沢俣さん。なんとなく甘酸っぱい恋愛ムードが芽生えそうでいい雰囲気なのだが、沢俣さんの家庭環境は劣悪で、どうもヤバいことをしているらしい……といったところからスタート。展開としては一筋縄ではいかなそうだが、爽やかな作画など面白くなりそうな気配が漂いまくっている。例えば二人が出会うシーン。戸田が落とした小銭が転がっていくのに対し、ブランコに乗っていた沢俣さんが反射的に脚を伸ばしてしまい、ちょっとお転婆な振る舞いに顔を赤らめる……なんていう、自然でかつトキめくシーンを、言葉は最小限に抑えながらさりげなく語る腕前など非常にうまい。青春好きな人は要注目。
(「別冊ヤングマガジン」1/20 No.027 講談社)
「エマ」 【新連載】 森薫
かつて厳格な教師であった老婦人に仕えるメイドのエマが主人公。第一話は、老婦人の教え子だったウィリアムがエマに一目ぼれするところからスタート。最近では「メイド=萌え」という感じだけど、この作品ではそういったギラギラした感じにはならず、雰囲気は上品で優しく、物腰が非常に柔らかい。きめ細かな作りがとても気持ちいい、今後とも楽しみな作品。
(「コミックビーム」1月号 エンターブレイン)
「そっと好かれる」 【新連載】 小田扉
「こさめちゃん」(→bk1)などでマニア筋の注目を集めつつある小田扉の新連載。窃視癖があり、なぜかお気に入りな課長の言動をノートまで作って克明にメモし続けているヘンなOLさんの日常をナンセンスに描く作品。やってることは異常なんだけど、あんまり害がなく、タッチもサバサバしてて気楽に読める作品。脱力テイストな作画には絶妙な味がある。なお、小田扉は12月発売の「まんがくらぶ」2月号(竹書房)に読切「子供で雪の子」で登場したほか、1月発売の「COMIC CUE」(イースト・プレス/→bk1)で読切を執筆、2月発売の「日経クリック」(日経BP社)、「Quick Japan」(太田出版)で連載を開始するなど、徐々に活動範囲を広めつつある。
(「マンガ・エロティクスF」Vol.11 太田出版 [bk1])
「ファミリーペットSUNちゃん」 【新連載】 岡崎二郎
SFショートの名手・岡崎二郎の新作。今回の作品は、100年生きていて人間の言葉を話すことができる不思議なオオサンショウウオが家にやってくるところから始まるペットもののホームコメディである。ほのぼのとした味のある作品。(「ビッグコミック」1/10 No.1 小学館)
「焼きたて!!ジャぱん」 【新連載】 橋口たかし
「週刊少年サンデー」11/7 No.47から5号連続短期集中連載されたが本格連載に。日本の風土に根差したパン「ジャぱん」を作る職人を目指す少年を主人公とする、いっぷう変わった熱血料理漫画。パンを食ったときの強烈な驚きっぷりなど、かなり過剰な演出が目立つ。でも少年漫画だし、このくらい派手にやってくれたほうが面白い。何よりイキが良いのがいい。(「週刊少年サンデー」1/16 No.4+5 小学館)
「パンテオン」 【新連載】 榛野なな恵
「YOUNG YOU」の長期連載「Papa told me」がいったんお休みになり、新連載「パンテオン」がスタート。成金の娘だけど金に頼らない強い意思の持ち主である桃子、その友人の彰子、かっこよくてモテモテだがけっこう複雑な事情を抱えているらしい芹沢くん、それからその彼女である高めな美少女・御蔵さん。この4人を中心に展開される高校青春物語といった感じ。出だしは人物紹介がメインなのでどんな話になるかはまだつかめていないけれども、力のある作家だけに期待は大きい。(YOUNG YOU 1月号 集英社 B5平)
「オレ流忍犬タテガミ」 【新連載】 たくまる圭
第22回で初単行本「吉浦大漁節」を紹介したたくまる圭だが、今度は「ビッグコミックオリジナル」の増刊で連載開始。ふだんは鼻水を垂らしてマヌケを装っているものの、実は訓練を施された忍犬であるタテガミの生活を描く。暖かみのある描線はこの作品でも健在で、ゆったりした呼吸がとても気持ちいい。
(「ビッグコミックオリジナル」1月増刊号 1/12 小学館)
「飛行機」 【読切】 小松菜子
この作品にはすごく驚かされた。第4回フラッパー新人マンガ賞で佳作を受賞した作品なのだが、なんと作者は16歳。そしてこれがうまいのだ。たった二人で自分たちだけの飛行機を作ろうとしている少年少女の姿を描くというものなのだが、ストーリーも爽やかで夢があっていいし、クリアで丁寧な画風も実にいい雰囲気を醸し出している。このまま順調に伸びてバリバリ活躍してほしい逸材。これだけでなく、最近の「コミックフラッパー」は個性的な新人の作品が載ることが多いので、読切好きは要チェックである。
(「コミックフラッパー」 1月号 メディアファクトリー)
「反魂」 【読切】 下村富美
「プチフラワー」(小学館)などで活躍していた、非常に美しい、精緻なペンタッチの持ち主である下村富美が久々に登場。今回は死人を生き返らせる禁断の秘儀「反魂の術」をモチーフとして、滑稽なお話を描いている。かなりの実力者だけに今後もちょくちょく登場してもらいたいもの。なお下村富美の既刊単行本としては、「仏師」(→Amzn)、「首」((→Amzn)がある。
(「ビッグコミックSPECIAL増刊 1/3 小学館)
「ナマイキなあまあし」 【読切】 宮野ともちか
学校ではシカトされている卑屈なメガネくんと、その幼なじみでこちらは学校でも注目を集めているほどのカワイイ娘のラブストーリー。絵柄、お話とも心地よく爽やかで、なおかつちょっとHっぽい雰囲気もある。なかなかうまい人なので、今後もまた登場してもらいたい。
(「ヤングアニマル 1/20増刊 嵐」Vol.05 白泉社)
「俺について来い。」 【読切】 一條裕子
一條裕子が「アフタヌーン」初登場。ヒマを持て余した主婦が、老義父を相手に会社ごっこを繰り広げる。本当に無益なことを本気でやっているさまがおかしく、飄々とした語り口も小気味いい。一條裕子独特の呼吸が冴える芸達者な一作。
(「アフタヌーン」2月号 講談社)
「クラカチットの街」 前編 【読切】 木尾士目
苦くてイタい青春モノを描く木尾士目の最新作。ちょっと太めで何を考えているかよく分からない女の子を巡って、3人の男がハチ合わせ。その真ん中にはホンモノの爆弾が一つ。一触即発な状況下で繰り広げられる駆け引きを描く。この原稿がアップされるころはまだ掲載号も探せば書店で手に入れられると思う。未読な人は、1月25日発売の3月号も入手して前後編まとめて読むと吉だ。
(「アフタヌーン」2月号 講談社)◆
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