漫画的男子しばたの生涯一読者
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■ちょっとH系 〜単行本その3

それでは単行本編の3ページめはちょっとHな描写が含まれる作品を紹介していきます。

「エイケン」 1巻 松山せいじ (秋田書店) [bk1]
エイケン
「エイケン」1巻
松山せいじ
ネット上でも話題爆発の問題作。学園イチのFカップ美少女や、小学生なのにバスト111cmの娘、上背ありまくりの巨乳先輩、マッドサイエンティスト、着ぐるみ娘、チャイナ服娘と萌え要素をモリモリ盛り込んだハーレム状態の「エイケン部」にむりやり入部させられてしまった三船伝助くんのドタバタ学園生活を描くという作品。パンチラ、巨乳などの過剰なお色気サービスがこの作品の主眼。というと普通興奮しそうなものだろうけど、この作品ではそれがあまりない。大盛りつゆだくねぎだくギョクといった感じのてんこ盛りな萌え要素が、なんだかみんなうまくなくて、バランスを欠いている。だからやればやるほどキテレツな印象ばかり与えてくれるという特異な存在だ。小学生の小萌ちゃんの111cm超巨乳がばゆんばゆんと揺れ、伝助が「でかっ!!!!」と叫ぶシーンは今や伝説的でさえある。みんなその畸形っぷりにお腹いっぱいになると思う。個人的にはこの漫画、「イタいコスプレアイドル」みたいな存在と位置づけております。
「花園メリーゴーランド」 1巻 柏木ハルコ (小学館) [bk1]
花園メリーゴーランド
「花園メリーゴーランド」1巻
柏木ハルコ
先祖代々伝わる刀に興味を持って父の故郷へ向かった中学3年生の少年・相浦くんが、道に迷って「柤ヶ沢(けびがさわ)」と呼ばれる集落に迷い込んでしまう。かつて日本には「夜這い」や夏祭りにおいて若者が性的な交渉を自由に持ち合う風習など、今と違った性にオープンな文化が存在していたわけだが、柤ヶ沢はそういう文化を根強く持ち続けていた土地だった。そしてよそ者に対しては一見フレンドリーでありながら、けしてある一線以上には心を許すことがない。そんな中で相浦くんは、自分が異物であるという居心地の悪さを感じ続ける。現代人からは、淫祠邪教といわれているような世界を覗き見ているみたいなうしろめたさ、罪悪感的なものがあって、からみつくようなエロチックさを醸し出している。掲載誌の「ビッグコミックスピリッツ」の中では多少地味めかもしれないが、力の入った読みごたえのある作品である。
「内向エロス」 1巻 陽気婢 (ワニマガジン社) [bk1]
内向エロス
「内向エロス」1巻
陽気婢
中性的で滑らかな身体のラインを持つ少年少女の、甘酸っぱく心地いいエロスを描かせると抜群の腕前を発揮する陽気婢の最新単行本。普段は平凡な高校教師だけど、影でコッソリエロ漫画家をやっている竹井先生、ペンネーム「陽気婢」のエピソードを描く連作がまず柱としてあって、それと竹井先生が描いているエロ漫画らしき作中作が交互に進むというちょっと変わった構成になっている。まとまったストーリーもやりつつ、自由に読切もやっていくというスタイルはけっこう楽しそう。まあどちらにせよ、陽気婢の描く柔らかい少年少女はたまらなく魅力的で、これだけでもやられちゃうような力を持っている。
「無軌道メルヘン」 朔ユキ蔵 (コアマガジン) [bk1]
無軌道メルヘン
「無軌道メルヘン」
朔ユキ蔵
最近、そのエモーショナルな作風でぶいぶい言わしている朔ユキ蔵の短編集。今回はちょっと古目な作品も入っていて、朔ユキ蔵の作風の変遷が楽しめる。とにかく朔ユキ蔵の描くキャラは、なんでもない顔をしながら得体の知れない悶々とした表情を、内面で肥大させ続けている。そしてそれがある日突然大爆発。言葉なんかは追っつかない衝動に身を任せて、感情を爆発させる。例えば「ムズムズのリズム」。みんながいやいや校歌を歌わされている「トチノキジオラマ専門学院」の集会で、少女が一人壇上に向かって歩き出し、理事長に「抱いてください」と呼びかける。理由なんかないけどやらずにはいられない。自暴自棄ではなく、正々堂々とあるがまま、ごくごく立派に無軌道です。非常に端整な絵柄なのにやることはまったく予想がつきません。大したもんです。
「LOVE MY LIFE」 やまじえびね (祥伝社) [bk1]
LOVE MY LIFE
「LOVE MY LIFE」
やまじえびね
すごくオシャレでストイックなレズビアンラブストーリー。いちことエリーという二人の女性が出会って恋をして、二人寄り添って生きていく。いちこの父母も実はレズとゲイのカップルだったのだが、そのおかげでいちこたちはだいぶ救われる。自分たちは他人とは違うという意識に悩まされる同性愛者たちの姿を、とても真摯に描きあげている。ちょっと美しすぎる、オシャレすぎるところはあるものの、その分ピュアさは増幅されている。読みごたえのある力作だ。なおやまじえびねは、レズビアンものの新作「インディゴ・ブルー」を「FEEL YOUNG」11月号(祥伝社)から開始している。「LOVE MY LIFE」を読んで気に入った人はこちらも要チェックだ。
「社会不適合者の穴」 1巻 田村マリオ (太田出版) [bk1]
社会不適合者の穴
「社会不適合者の穴」1巻
田村マリオ
「マンガ・エロティクスF」連載作品。この作品の舞台は2187年ニッポン・ゴシックタウン。孤児収容施設から脱走した3人の少年が、実体のない魚の影を追いかけるうちに、地下に広がる奇妙な街に迷い込む。そこから、孤児収容施設を使って何かを企む政府、レジスタンス的な組織など得体の知れない複数の思惑が絡み合う中で、少年・少女たちの冒険が展開されていく。この作品で目立つのは、田村マリオのえらくかっこいい作画。光のない目、その目線の泳がせ方、首筋のラインの色気などいずれもゾクゾクさせられる。謎めいたストーリー展開もとても興味深い。オシャレでミステリアスで、雰囲気は非常にいい。 >>次頁
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