「クローン5」 しんいち (原案:いとうせいこう)
|
「クローン5」
しんいち
|
まずしばた的イチ押しはコレ。「ヤングマガジンUppers」10/2 No.19(講談社)からスタート。「超学校法人スタア學園」「右向け右!!」などで知られるすぎむらしんいちの最新作である。物語の主人公は、身体はデカいけど大馬鹿者な青年・忠次。左翼だかなんだかの活動組織の下っ端だったが組織内でも浮いてしまい、ヤケクソになって暴れているところに突如謎の女が現れて彼をかっさらっていく。彼女は自分も忠次も同じ遺伝子から作られたクローンだというが……。今のところお話はこんな感じ。ハッキリいって、今のところこれから何が起きるかまったく予想がつかない。しかし、すぎむらしんいちの天才的といってもいい演出力、展開力のおかげで、何がなんだか分からなくても問答無用にハイペースで面白い。すぎむらしんいち作品はちゃんと読んでみると、まったくといっていいくらいハズレがない。この作品もかなり期待できそうだ。
「ORANGE」 能田達規
|
「ORANGE」
能田達規
|
第15回で触れたとおり、「おまかせ!ピース電器店」が今年連載終了した能田達規の最新作。女子高生がオーナーを務める愛媛県の弱小サッカークラブに彗星のごとく現れた天才ストライカー・ムサシ。存亡の危機にあるチームを彼は救えるか!?……というサッカー漫画である。能田達規としては「GET!フジ丸」以来のサッカー漫画となるこの漫画だが、リーグのディビジョンがそもそも2部リーグであるあたりがシブい。1部リーグ昇格に向けての苦闘というドラマもあることだし、面白くなりそうだ。弱いチームをイチから押し上げていくというのは、なんとなくゲームの「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!」に近い感覚かもしれない。「週刊少年チャンピオン」9/20 No.41(秋田書店)から。
「STREGA!」 米村孝一郎
|
「STREGA!」
米村孝一郎
|
「ウルトラジャンプ」10月号(集英社)から連載開始したSF漫画ファン待望の一作。この作品の場合、正直ストーリーについてはホントにつかみづらい。しかし描写がなんといっても素晴らしい。今どきの漫画ではすっかり見なくなったスペースシップなどが空気をかき分け、雲をつんざきすっ飛んでいくさまは文句なしのかっこよさ。その作画品質の高さ、メカのカッコよさは存分にSFごころを刺激してくれるだろう。いきなり60ページというボリュームで始まったが、問題はきちんと連載が続くかどうかだ。
「Rainbow Life」 里見満 (本宮ひろ志プロデュース)
|
「Rainbow Life」
里見満
|
「オールマン」10/3 No.19(集英社)から連載開始。このところ本宮ひろ志は、後進作家の作品に「プロデュース」という形で関わり始めている。「原作」よりも作画者は縛らず、それでいながら後輩作家の作品にベテランならではの骨太なエキスを注入し、連載機会を与えるというのは有益だと思える。個人的にはベテラン作家については、今後歳をとっても作品を描き続けていくのもいいが、例えばプロ野球の解説者やコーチのように、後進作家の指導に当たっていく人が出てきてもいいんじゃないかと思っていた。本宮ひろ志の「プロデュース」の仕方がどの程度なのかは分からないが、こういう試みもなかなかに面白い。で、この「Rainbow Life」だが、題材は意外にも「ゲイ」である。とはいってもやおいのようにナヨっちいものではないし、毛むくじゃらの男がガシガシからみ合うマッチョなものでもない。普通の男がリアルにからむゲイ漫画である。というと引く人もいるかもしれないが、これがけっこう面白い。本宮ひろ志の味であろうか、力強く人情味もあるけれどもサバサバした読み口を持っていて抵抗なく読める。
「フリージア」 松本次郎
|
「フリージア」
松本次郎
|
「マンガ・エロティクスF」(太田出版)で「熱帯のシトロン」を完結させたばかりの松本次郎が、「ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI」に登場。11/1 No.6からの新連載である。気のふれた母親を抱え、自分にしか見えない幽霊のような女と会話しながら暮らす内向的な青年が主人公。ところがある日、彼が就職した会社で、今までバーチャルな存在でしかないと思われていたその女が現実に現れる。松本次郎が読者をこれからどんな地平へと連れていってくれるかはまだ分からないけれども、荒々しくも非常に美しい妖艶な描線はこの作品でも健在で期待を持たせる。
「STONe」「命+紅」 ヒロモト森一
|
「STONe」
ヒロモト森一
|
「要塞学園」「SEX★MACHINE」のヒロモト森一が新連載を2本一挙開始。「STONe」は「アフタヌーン」11月号(講談社)、「命+紅」は「ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI」11/1 No.6よりそれぞれ連載開始。「STONe」は砂の海で覆われた地球で、砂クジラやジョーズなど海獣と格闘しつつ生きる人々の物語で、主人公は砂の海=「沙海」の中を見通すことができる不思議な少女・ジジ。感覚的には「DUNE 砂の惑星」に近いかもしれないSF作品。また「命+紅」のほうは、現在428歳と言い張り、暴虐の限りを尽くす極悪ヒーロー・不知火死郎を主人公とするバイオレンスアクション。どちらの作品についても、ラフで激しい作画の迫力がスゴい。好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、当たればその衝撃度は強烈な作家である。要注目。
「鉄人」 作:矢作俊彦+画:落合尚之
|
「鉄人」
作:矢作俊彦+画:落合尚之
|
「月刊サンデーGX」10月号(小学館)からスタート。矢作俊彦といえば、漫画ファンにとってはなんといっても「気分はもう戦争」の原作者として知られている。落合尚之は「ダンデライオン」「黒い羊は眠らない」の作者だ。両方とも実力者であるだけに今回の作品も面白くなりそうな気配は十分。出だしはロボット技術者である女性と、アイボのようなロボットペットを友達として可愛がっている息子が、研究のために中国入りするところから始まる。そこで謎のロボットが出現しそうな気配だが……。このところ大風呂敷なロボットものは流行らなくなっているけれども、うまくハマれば需要はまだまだけっこうあるはず。先行者だって大流行りしたくらいだし(関係ないか)。そんなわけで期待してます。
「F……the alternative」 五十嵐浩一
|
「F……the alternative」
五十嵐浩一
|
最近リバイバルものが流行っているということはこの連載でも何回か書いたとおりだが、「キングダム」10月号から始まったこの作品にもびっくりさせられた。これは五十嵐浩一の代表作の一つであるバイク漫画「ペリカンロード」の2である。今回は今に舞台を移し、トーマという少年が主人公。かつての「ペリカンロード」の登場人物もまたお話にからんでくるのだろうか。
「ふたつのスピカ」 柳沼行
|
「ふたつのスピカ」
柳沼行
|
本連載の第6回で取り上げたこの人の「アスミ」という作品を取り上げたが、「ふたつのスピカ」はそのシリーズの作品で、「コミックフラッパー」10月号(メディアファクトリー)から本格連載化された。かつてロケット事故で母親を失った少女が、宇宙飛行士を志していくというお話である。柳沼行の丁寧で優しい作風にはしみじみとした暖かみがあるし、宇宙に憧れるロマンチシズムも宇宙好きには共感できるところ。これからの展開が非常に楽しみな作品である。
というわけで新連載10本を紹介いたしました。今ならまだ間に合うので、ぜひチェックしてみてくだされ。それではまた。◆
page 5/5