フラウとローラとおばあさんは馬車に乗って家に帰りました。フラウは普段、徒歩で帰りますが、おばあさんの為に馬車を用意したのです。玄関先でリリムが出迎えました。部屋は相変わらず散らかったままです。読み散らかした雑誌やら、クッキーをかじったカスなどが散乱しています。
「汚いところですけど、ごゆっくりどうぞ?」
「このくらいなら汚いとは思わないねぇ」
「お風呂、先に入られますか?」
「わしが先に入ると湯が汚れるじゃろ?あとでええよ」
「いえ、お客様をお先にするのが礼儀ですし」
「もう長い事風呂に入っとらんから、汚れが酷くてね」
「そんなに臭くないですけどね」
「湯を沸かして布を浸して体を拭いてはおったよ」
「おばあさん、一緒に入ろう?背中を流してあげるよ」
「本当に優しい娘じゃなぁ。わしの孫もこんな可愛い娘じゃったら良かったのに…」
「おばあさんのお孫さん可愛くなかったの?」
「嫁に似たのか暴言ばかり吐いてくるよ?臭いだとか汚いから触るなって」
「そんな事を言うなんて酷い…」
「マルヴェールに来て良かった。こんなに歓迎してもらえるとは思わなんだよ」
ローラがおばあさんと楽しく過ごしている頃、ルークは残業をしていました。ステイシーが紅茶を淹れています。懐から小瓶を取り出すと白い粉を入れました。それをルークのデスクに持って行きます。ルークは紅茶をチラッと見ると休まずタイプライターを打ち続けました。
「紅茶、冷めないうちにどうぞ」
「ありがとう。これが終わったら一服するよ」
ステイシーはドキドキしながら、じっとルークの背中を見つめています。オフィスには他に誰もいません。作業がひと段落してルークは手を止めました。
「ところで…この前のデートでアウローラとは上手くいったのですか」
「ん?友達には慣れたんじゃないかな。それ以上にはなれないと思う」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第363話。