ローラとおばあさんは休み休み長い道のりを歩いてマルヴェールに到着した時には日が暮れかけていました。フラウの執務室に通されます。
「このおばあさんが移住希望者なの」
「遠路遥々、徒歩で来られてお疲れでしょう?今日はとりあえず私の家に泊まってください。明日新しい家をご用意しますので、帰りは一緒に馬車でお送りします」
「お母さんもべっぴんさんじゃのぉ。娘を見てわかっとったが」
「お世辞でも嬉しいです。もう五十歳なので若い頃のような美しさはないですが…」
「五十なんぞわしから見たらまだまだ若いよ?六十以下なんて娘みたいなもんじゃ」
「失礼ですが、おばあさんは今おいくつなんですか?」
「わしは七十六じゃよ?最初に産んだ息子は五十九になっとるはずだから、お前さんより歳上さ」
「そのお子さんはおばあさんと一緒に暮らしておられなかったんですか?」
「一緒に暮らしてたんだが、嫁がわしを邪魔者扱いするから家出したんじゃ…」
「えっ…!どんな風にお嫁さんから邪魔者扱いされたんです?」
「嫁からは風呂に先に入るな!湯が汚れると言われたり、わしは年寄りで歯が弱いからと言って、わし一人だけ美味そうな肉料理を食わせてくれなかった…」
「それは酷いですね…。あなたの息子さんは何も言わなかったんですか?」
「息子は嫁の味方だよ?わしがいなくなっても清々しとる事じゃろう」
「おばあさんは歯が丈夫そうだよね」
「歯も丈夫だし、胃も丈夫だから、腹を壊した事も一度もないわい!」
「じゃあ今夜は肉料理にしましょうか?おばあさんの歓迎会をしなきゃね」
「本当かい?楽しみじゃな。肉料理なんて久しぶりに食べるよ」
「晩ごはんはリリムお姉さんと一緒に私も頑張って作るね」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第362話。