ルリに案内されてゲートをくぐると、クレスの診療所の裏庭にあるルリの墓石の真裏に出ました。
「こんなところがゲートになっていたとは…」
「妖精の花が咲くのはゲートの近くだけだよ?ここに花が咲いた日にゲートが出来たんだけどね」
「もっと早くに知っていれば…。お前は何でわざと俺の困るような事ばかりしてくるんだ?」
「別に困らせようなんて思ってないよ?聞かれなかったから言わなかっただけだし」
ジンは深くて大きな溜息を漏らしましたが、これ以上、言い争っても無駄だと悟って諦めました。
「クレス先生、ただいまー」
「ルリじゃないか?それにジンと…こちらの騎士殿は誰ですか」
「申し遅れました。私はディル・イノンドと言う者でして…。ウォーター・クレス殿、あなた様のご高名はかねがね伺っておりますよ」
「これはこれはご丁寧に…。ジンとルリが大変お世話になったようで本当にすみません」
クレスとイノンドが何度もお辞儀を繰り返して固い握手を交わしていました。ルリはいつもの特等席のクレスの肩に停まって、ジンは頭をポリポリ掻きながらうそぶきます。
「俺は世話になった覚えなんかないんだけどなぁ」
「そうですなぁ。世話になっていたのは私の方でしたから」
「ところでジン、旅先で僕の偽名を使っただろう?役所から調査の者が来ていたよ」
「ああ、宿屋に泊まる時に何度かね」
「なぜ勝手に人の名前を使ったりしたんだ?」
「念の為だよ?このおっさんが指名手配になってたから、俺までとばっちり受けたくなくてさー」
「飛んで来た火の粉が僕に降りかかっても良いと言うのか?他の名前を考えろ」
「パッと思い付ける名前がなかったんだよ?悪ぃな、クレス!」
「はぁ…、一時期役所には僕の名前で手配書が出来ていたんだが、人相書きが全く違うので取り下げられたよ」
「ありゃ、そんな事になってたとはねー」
…つづく
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処女作の復刻版、第56話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。