全く反省の色も見えないジンに、クレスは呆れて物も言えなくなりました。ルリはクレスの顎ヒゲにスリスリしています。
「顎ヒゲがチクチクするだろう?ルリ…」
「このチクチク、懐かしいー。イノンドさんはモフモフになってるからね」
「ルリ殿はモフモフしているヒゲよりもチクチクしてるヒゲの方がお好きなのでしょうか?」
「ううん、ヒゲが好きっていうより、チクチクするとクレス先生の事思い出すから、前にイノンドさんがチクチクだった時も、スリスリしてたでしょ?」
「なるほど、それならば私もチクチクなヒゲに戻しますよ」
「マジか…。俺はヒゲがツルツルだからダメだったとは!盲点だったよ?」
「みんな同じにしなくても良いよー?クレス先生だけチクチクだから良いの!」
クレスは苦笑いしています。妖精についての資料を本棚から引き出しました。不老不死の薬の作り方なども載っています。
「この絵、全然ボクと似てない」
可愛くない妖精の挿絵をルリは見つめていました。
「ハハハ!この本は医療関係の書物だから絵の美しさは求められてないからね」
「クレス先生はボクに会えなくて寂しかった?ボクは毎晩、寝る前にクレス先生の事、思い出してたんだよー」
「もちろん、僕も毎晩寝る前にルリの事を思い出していたよ?」
「本当に?嬉しい!クレス先生、女の患者と浮気とかしてなかったかなー」
「お前がイノンドと浮気してたんだろが?その腕に付けてるのはエンゲージリングだと言ってなかったか」
ルリの左腕にはエルフの涙の指輪が嵌められています。ジンは右腕を失ったので返してあげたのです。
「浮気じゃないよー。本気だもん?」
「二股を認めたな?クレス、何とか言ってやってくれ」
「その指輪は…。もしやエルフの涙ではないのか?この深みのある真紅は普通のルビーとは違う気がする」
「おっ、流石クレスだな!よくわかったなー」
「確かエルフの涙の相場は二億だったと記憶してるのだが…。どうやって手に入れたんだ?」
…つづく
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処女作の復刻版、第57話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。