固い絆で結ばれた、片翼の悪魔カルンと片翼の天使ラミエの姉妹。その昔、カルンをかばって片翼を失ったラミエの為に、カルンは自ら片翼を切り落としたと言う。
「ラミエにあげようと思ってた綺麗な花が、この崖の上にあるの。他にも探し回ったけど、あそこにしか咲いてなくて…」
切り立った崖を見上げながらカルンは言った。
「ふむ、わたしの視力ではここから花は見えませんな」
冴えない顔の騎士が目を細めながら、断崖絶壁を見上げる。
「ほら。私、翼が片方しかないから飛べないでしょ?取りに行けなくて…」
「ロッククライミングの訓練なら騎士団で受けておりますので。まあ、大丈夫でしょう」
「こんなこと、団長さんにしか頼めないよ…」
「はは、レディーの頼みとあらば、断れませんな」
「私、レディーって柄じゃないけどね…」
騎士団の訓練は命綱を付けて行う。だが、今は命綱などない。団長は細心の注意を払いながら岩壁をよじ登る。その時、横殴りの強い突風が吹いた。団長は手元が狂って崖下へ転落した。
「団長さんッ!大丈夫…?しっかりして」
カルンが団長を揺さぶった。頭から生暖かい血がドクドクと流れ落ち、首はダランと力なく垂れ下がり、もう意識はなかった。
「あーあ、死んじゃった…。ピプル族って死んだら生き還れないんでしょ?バカだなぁ」
「誰だッ!お前は…?」
頭に花の髪飾りを付けた男とも女とも区別のつかない容姿の少年が、蝶の翅を背に羽ばたかせながら宙に漂っている。
「ハーイ!お姉さん。ボク、妖精のカイト。よろしく」
「カイト、君はここで何をしてるの?」
「ここ、ヒトの世界と妖精の世界の境界線だから、妖精は交代で見張り番してるんだ。ヒトが妖精の国に入って来ないようにね?」
「そう…、それは知らなかったわ。妖精の国に入るつもりはないから、安心して。それより団長さんをなんとかしないと…」
「まあ、ボクもよく無茶して死んでるから、ヒトのこと言えないんだけどね。妖精は死んでもすぐ生き還れるし…」
「どうしたら良いの…。団長さんが死んだこと姫が知ったら、きっとすごく悲しむよ…」
「うーん、どうしよっかなぁ。世界樹の力を使えば生き還らせることは出来るんだけど、妖精の国の掟でヒトを生き還らせるのは禁じられてるし…」
「頼む!カイト…。団長さんを生き還らせて。私は何でもするから…」
「お姉さんってすごく綺麗なオーラの持ち主だね。今まで見たことない色してる。このおじさんも不思議なオーラ持ってるし」
「オーラ?妖精には相手のオーラの色が見えるのか…」
「うん、悪いこと考えてる奴はすぐわかるよ」
カイトは団長に近づくと、ヒラヒラ飛び回って鱗粉を振り撒いた。すると団長の指がピクリと動いて、目を醒ました。
「カルン殿の膝枕で目醒めるとは…。いやはやツイてますな」
「バカッ!ツイてなんかいないよ?団長さん、さっきまで死んでたんだから…」
「わたしが死んでいた?それはどう言う意味でしょうか…」
「お姉さん、ボクが世界樹の力を使ったこと、誰にも言わないでね?」
「わかった…、誰にも言わない。ありがとう、カイト」
to be continued
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オオカミ姫の片翼の姉妹の二次創作ストーリーです。