「メリルも『アレ』買って帰るねー」
「しかし無駄遣いすると、シープルさんに叱られたりしませんか?」
「大丈夫!おねぇちゃんも『アレ』は大好きだからー」
メリルは団長と同じ物を三つ買いました。
「おねぇちゃんが待ってるから、メリルはもう帰るねー。だんちょーさん、ばいばーい」
「団長さん、さようなら!」
メリルとビーグルンは森の方へ、帰って行きました。そこへ、ロジェが飛び出して、開口一番にこう言います。
「わたくしにも同じ物を一つください!」
「ロジェ殿、いつの間に…」
店主は白くて丸い物をロジェに手渡しました。
「まさか、このような庶民の食べる豆のジャムが詰まった、米のケーキが姫様の大好物だと言うのでしょうか…」
「豆のジャムではなく、あんこですよ?米のケーキではなく、餅です…。ロジェ殿」
「これが、あんこ…。初めて食べましたが、この味をユーリカ姫はお好きなのですね?」
「先日、わたしの母が手作りの苺大福を送って来たのですが、城の者にお裾分けしたら、どうやら姫様の口にも合ったらしく、すっかり気に入ってしまわれまして…」
「ほれ、騎士さん。いつも買ってくれとる苺大福だべ。栗大福もおまけにつけとぐから、味見に食べとくれ?」
「店主殿!どうか、この苺大福のレシピを教えてはくれませぬか?わたくしのパティシエに作らせなくては…」
「別に教えても良いんだけども、あんこ作りはなぁ、豆の皮がやぶけたら味が落ちっから、付きっ切りで混ぜなきゃなんねぇんだが、熱々の鉄釜の前で長時間汗だくんなって混ぜるのが辛ぐてさ、後継者がいねぇんだべ」
「色んな店を見て回りましたが、姫様の口に合うのはこの店のあんこだけなのですよ。後継者がいないとなると姫様が残念がりますな」
「わたくしが後継者になりましょう!愛しのユーリカ姫の為とあらば…このロジェ、例え火の中、水の中どこでも、修行致します」
「そりゃ本当だべか?そんならうちの店は大歓迎だべさ!」
「ロジェ殿が立派な、あんこ職人になられますように祈っておりますぞ。では、わたしはこれで…。姫様が城でわたしの帰りを待っておられますからな」
「ああ、団長殿!お待ちください。わたくしも一緒に麗しの姫様の元へ参ります…」
「何、言ってんだべ?あんこ職人の道はそんな甘いもんじゃねぇぞ!これからあんこ作りの特訓すっからなぁ」
ロジェの首根っこを掴んで、あんこ職人は店の奥へと消えて行きました。
「おねぇちゃん、ただいまー」
「あら、遅かったのね?心配したわ…」
「えーとね、街にだんちょーさんがいて、姫の大好物のいちごだいふく、買ってきたのー。ビーグルンの分もあるよー」
「まあ、苺大福?さっそくいただきましょう」
「わーい!ボク、苺大福食べるの初めて」
苺大福を美味しそうに頬張る、メリルとビーグルンを、シープルはニコニコしながら眺めていました。
おしまい
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
オオカミ姫の羊の姉妹の二次創作ストーリー、完結編です。この作品はオオカミ姫でお世話になってるギルマスさんに捧ぐ。