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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第17話

今回は調子よく早く投稿する事ができました。

今回は英雄譚キャラ劉協が登場しますが、他の作品と違い登場の仕方が違いますし、劉協の事は説明文でしか知らないので劉協をよく知られている方に取っては違和感があるかもしれません。

それでも良ければ読んで下さい。

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2017-02-24 14:00:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5746   閲覧ユーザー数:4434

一刀から和睦承諾の返事を受けるとそこから漢の動きが早かった。

 

表向きは和睦交渉を早く成立させて黄巾党討伐に専念したいという話であるが、別のところでは何太后が邪魔者である劉協を一刻でも早く一刀の元に放出したいという意向が働いている話や別の噂では父親の劉宏が劉協の身の安全の為に秘密裏に早急に動く様に指示を受けたというという内容の物もあり実際にはどれが真実か分からないが、劉協の降嫁は予想より早く進んだ。

 

涼州に出発する前に劉協は父であり皇帝でもある劉宏の御前に召し出され、改めて一刀への降嫁を言い渡される。

 

劉協も既に話を聞いているので断るすべは無く

 

「御意にて御座います。協は涼州に赴き漢のため、父上のため尽くしたいと存じます」

 

「うむ、流石は協じゃ。立派な返事じゃ」

 

溌剌とした返事を返す劉協の姿を見て一部の臣は劉弁より劉協の方が優秀であったので内心では降嫁を惜しんでいたが、十常侍派と何進派共に次期皇帝について劉弁の方針であったため、これを反対することが出来なかった。

 

ここで劉宏はある事を告げる。

 

「皆の者、最後に協と親子で話をしたい。しばらく二人きりにして欲しい。そしてここには誰も近づくな」

 

普段の劉宏と違い威厳のある声で言われると十常侍を始め、何進、何太后などは劉協との親子の最後の会話なるかもしれない事を流石に反対する事などできず、素直にこの場を下がるが、下がる際に何太后は

 

「まぁせいぜい最後の親子の会話をするが良い。どの道、次の皇帝は弁の物。弁が皇帝になった暁には再び『天の御遣い』を討伐する兵を上げて、その時は『天の御遣い』と一緒に手を下してやるわ。フフフフフフフ……」

 

「お母さま~もう謁見終わったでしょう。お菓子食べたいから部屋に戻っていい~」

 

何太后を母と呼ぶこの少女、次期皇帝と言われている劉弁、真名を空丹であるが、この少女見た目は悪くないのだが、政治などほとんど顧みず後宮に籠り側近である穆順の美食に浸っている日々が続いているため、心ある人物は劉弁が皇帝になった時には漢が滅ぶのではないかと囁かれていた。

 

劉宏も劉弁の日頃の行いを見て何度か劉協を皇帝にしようと考えたが、周りの反対もありその考えを断念するしかなかった。

 

「もうすぐ貴女は皇帝になるのでしょう、少しは我慢しなさい」

 

「…はい」

 

何太后から言われると劉弁は不服そうな表情をして返事をしたが、

 

(「はぁ…我が娘ながら何故食にしか興味がいかないのかしら…皇帝になった後、婿を取る事を考えねばならぬがどうすればよいかの…まあ取りあえずは私が後見となって色々好きにさせて貰おうかしら」)

 

何太后は劉弁の今後に多少の不安を抱いていたものの、結局は自分の都合の良い様に国を牛耳る事を考えていなかったのであった。

 

劉宏と劉協の二人きりになると劉宏は

 

「協…すまぬ。お前は涼州という辺境の地に追いやるだけでは無く、『天の御遣い』という訳分からずの者に嫁がせる事になるとは…」

 

「あ、頭を上げて下さい。お父様!」

 

「いやお前の母親が殺された時に私が何太后をしっかりと処罰しておけば、本当ならお前では無く弁を代わりに涼州にやったものを…」

 

「いいえ…お父様が何とか私を守っていた事に感謝しています。それに…今回私を洛陽から出してくれた事により、これで漸く義母からの目から逃れる事ができますから逆に良かったと思っています…」

 

劉宏は劉協に涼州に行かせる事に本意ではない事を告げて頭を下げるが、劉協は逆に劉宏が何太后から守っていた事や涼州に出る事により何太后から命を狙われる可能性が大きく減少する事に安堵している表情であった。

 

劉協の表情を見て、取りあえず安心した劉宏は

 

「そうか…お前には苦労掛けるな。それでだ、お前に頼みがある」

 

「……頼みですか?」

 

劉宏は懐から1通の書状を出す。

 

「これは?」

 

「この書状、お前に預ける。もし儂が死んだ時、お前の目から見て『天の御遣い』となる者がこの国の事や民の事を憂う者ならこの書状を見せなさい。そしてやり方は全て任せると言いなさい」

 

「ちょっと待って下さい。お父様そんな大事な事…」

 

劉協がただ事ではないと察し反論しようとするが、劉宏は手を上げて反論を許さず

 

「協、もう私の体は暴飲暴食が祟り、私の命もそんなに長くないだろう。これは私の遺言になるかもしれないからよく聞きなさい。このまま弁が私の跡を継いだ場合、恐らく十常侍と何進との間に争いが起きてこの国は更に乱れ、より多くの民が泣く事になってしまうだろう…仮にお前が継いだとしてもこの状況があまり変わらず、何れは漢が滅びてしまうだろう…。今まで漢は400年あまり好き勝手にやってきたのだ、滅びても惜しくはない。だが民の事を思うとこのまま死んでも死に切れん。それでだ。もし『天の御遣い』とやらが本当に御遣いであるならばこの手紙を託して欲しいのだ…」

 

劉宏のただならぬ気配を見て劉協は姿勢を正し

 

「では私から見てそれがそぐわぬ人物であれば、この書状どうすれば良いのですか?」

 

「その時はその書状を燃やして無かった事にしなさい。そしてお前には何とか幸せな人生を送って欲しい…私の勝手な願いだが聞いてくれぬか」

 

「……分かりました。微力ながらお父様の力になりたいと思います」

 

「すまぬ…協。頼りならぬ父で最後までお前に迷惑を掛けて…」

 

劉宏の最後の願いをもう出来ないであろう親孝行という形で劉協は引き受けたのであった。

そしてしばらくして劉協は涼州に向けて出発したが、その行列は華やかという物は一切なく物々しい物と言っても良かった。何せ黄巾党が各地で反乱を起こし、それに乗じて小規模な賊も各地で暴れ回っていたため、劉宏は何進に必ず劉協を西涼の地に安全に送り届ける様厳命した。流石の何進も劉宏から言われるとこれに従うしか無く、劉協の身の安全を考え禁軍の一部を護衛に付ける事とし、そして護衛の将は盧植を付けることとした。

 

盧植自身は個人的な武勇は無いものの持ち前の能力をフルに生かし、各地の太守などと連絡を取り合い無事西涼との国境近くまで劉協を護り務めた。

 

使者からの連絡を受け一刀たちは、国境近くには碧、渚(龐徳)が劉協出迎えの為、軍勢と共に待ち構えていた。

 

盧植は碧たちの軍勢を見て、単騎で近寄り

 

「劉協様お迎えの方をお見受けします。ここで劉協様をお引き渡しいたします」

 

「何だ…お前が来たのか、風鈴(盧植の真名)」」

 

「ええ、劉宏様が必ず無事劉協様を無事西涼に送り届ける様にと厳命が下って、何進様が私に無事届ける様、丸投げしたの」

 

「チィ…あの女、相変わらずだな」

 

碧が何進を嫌うのには理由があった。

 

元々、碧と風鈴、そして前回戦った皇甫嵩こと楼杏(ろーあん)とは漢の軍部の重鎮として何進の下で働いており仲が良かった。しかし何進の物事の責任を他人に押し付け、手柄は自分の物というやり方に碧は幾度か苦い経験をしており、これに怒った碧は何進を罵倒した書状を送り付けたが、何進は書状について黙殺した。何進のこの態度に激怒した碧は少数精鋭の兵と共に西涼を無断で離れ洛陽に乗り込み何進に直接面会に行った、これに驚いた何進は碧が会うのを恐れ居留守で逃げ回り、痺れを切らした碧は何進の屋敷に直接乗り込み

 

「この糞豚女!テメエ人の手柄を取るとはどういう了見だ!事と次第ではテメエぶっ殺すぞ!!」

 

碧は何進を直接脅し、これに驚いた何進は泣きながら見え見えの言い訳をして土下座して碧の許しを乞い、漸く手柄に見合う褒賞を渡したという過去があった。

 

流石にこの件について何進に非があり、何せ相手が「西涼の狼」と恐れられた馬騰である。殴り込みについては箝口令が引かれ、これ以後何進は碧を恐れ、流石に碧の褒賞については素直に渡す様になったものの決して直接会おうとはしなかった。

 

この後の始末に風鈴や楼杏が動いて碧の行為が不問になったというものあり、3人自体の仲は悪くなかった。

 

「碧、劉協様をよろしく頼むわね…」

 

「ああ劉協様の境遇は俺も分かっている。決して悪い様にしない」

 

碧の言葉を聞いて風鈴は一先ず安堵し、軍勢と共に洛陽に戻った。

 

そして碧たちに護られ劉協は無事武威に入った。

 

劉協と対面することになった一刀たちは出迎えの為、城門前で待ち構えていた。

 

軍勢の先頭にいた碧が無事に劉協を送り届けた報告の後、一刀に小声で周りに聞こえない様

 

「本物の劉協様で間違いない」

 

とだけ囁いた。以前翠が言っていた偽物の劉協を送り届けるのはという懸念がどうしても一部の者の間で囁かれていたので、劉協の顔を知る碧が敢えて出迎えに行った経緯があった。

 

そして劉協を乗せた馬車が一刀の前に着き、一人の少女が馬車から降り一刀の前に立つ。

「わ…私は皇帝劉宏の次女劉協だ。『天の御遣い』とはそなたか!?」

 

劉協は幼いながらも漢の皇女として一生懸命に皇女らしく威厳を持って振舞おうとするが、言葉とは裏腹に既に顔は引き攣っており、更に足も震えていた。

 

一刀は劉協の姿を見て幼い頃の璃々を思い出すと共に、まだ幼さも残し健気に皇女として振舞おうとしている痛々しい姿を見て、一刀は自分の膝を折り曲げて目線を劉協に合わし優しい声で

 

「初めまして劉協様。何故か周りから一応『天の御遣い』と呼ばれているけど、北郷一刀と言います。ここには北郷姓が3人いるし、真名が無いから一刀と呼んでくれたら嬉しいな」

 

一刀の挨拶を聞いて劉協は驚いた。何故なら劉協の頭の中では辺境の地に現れ、漢の軍勢に勝った『天の御遣い』という男は厳つく怖い者だと勝手に頭の中で変換されていた為、見た目が普通で言葉も優しそうな一刀を見て驚き、更に一刀という真名に等しいいきなり初対面の自分に預けたのだから。

 

「ちょっと待って!それ真名に等しい名前でしょう!?」

 

「別に俺が居た所では真名の風習が無いから気にしなくていいよ。逆に名前で呼んでくれた方が親しみやすいし、これから劉協様も家族の一員になるのだから」

 

「家族…」

 

劉協の頭の中で今まで言葉では聞いた事があるものの実際には母親の愛情を知らずに父親ともほぼ接せずに育ってきたから、一刀の言葉を聞いて戸惑いがあった。

 

「横から失礼します、劉協様。私は北郷紫苑、紫苑と呼んで下さいね。北郷一刀の妻でもあります。発言してよろしいでしょうか?」

 

「うん、許す」

 

劉協は紫苑の名前は当然知っていた。一刀の第一夫人で、先の戦いで韓遂を射殺し、「今李広」という綽名で都でも一刀と共に噂になっている人物でもあるからだ。

 

「私たちは劉協様の境遇については噂でしか聞いたことが無いですが、でも今まで頼れる人が居なく苦労なされてきたと思います。でももう大丈夫ですよ。

ここにはご主人様と私もいます。そして私だけは無く妹の璃々もいます。そして他にも家族や仲間もいます。だから私たちと共に家族になりませんか?」

 

「そ、それ本当なの?」

 

「うん、そうだよ、劉協様。あっ私、北郷璃々、璃々と呼んでくれたらいいから。私、劉協様みたいな妹欲しかったんだ~」

 

璃々が紫苑の話の途中で割り込んで来た形になったが、璃々が劉協の事を妹として扱ってくれる事と共に戸惑いもあったが、嬉しさもあった。異母姉でもある劉弁とは異母でもある何太后のせいでほとんど接触がなく交流が無かったというのが事実である。だから劉協は恐る恐る一刀たちに確認を取る。

 

「一刀、紫苑、璃々…。本当に私が家族に加わっていいの?」

 

「はい。私たちや馬騰様たちも皆家族や仲間ですよ。劉協様も私の事を母親のつもりで甘えてもいいですよ」

 

紫苑の言葉を聞いて、劉協は今まで我慢して来たのか両目から涙がぽろぽろと零れ始めると

 

「ウヮヮヮヮヮ――――ン」

 

劉協は紫苑を劉協の中で微かに残っていた母親の匂いという物を感じ取っていた。だから

劉協は紫苑の元に飛びつき泣き始めた。

 

「わ、わ、私は今までお母様の姿も言葉も聞いたことは無かったのじゃ。そして紫苑の体からお母様みたいな匂いがするのだ、だから一刀や紫苑、璃々の言葉を聞いて嬉しかったのじゃ。だから紫苑、お母さまの代わりとしばらくこうして甘えて泣かせてくれぬか」

 

「くれぬかとは他人行儀ですよ。幾らでも甘えてくれてもいいわよ」

 

「ウヮヮヮヮヮ――――ン」

 

紫苑の言葉を聞いて感動したのか、劉協は再び紫苑の胸元で泣きじゃくっていたが、誰もその場から立ち去ろうとせず多くの者が密かに涙を流していた。

 

それを一緒に見ていた孫策の元に碧が現れ

 

「おい、孫策あれを見て劉協様を斬れるか?」

 

「……あれを見てそんな事出来る訳ないでしょう」

 

碧は孫策に対し、前の会議で一刀に言った言葉に対しての反論の言葉を投げかけると、孫策は苦々しい表情をしながらぶっきらぼうに答える。

 

元々孫家自体は血の繋がりを大切にする一族でもある。人質という考えなら孫策は躊躇なく斬るかもしれないが、家族として扱うのであればそのような事が出来るはずはない。まして一刀たちは堂々と皆の前で劉協を家族の一員と扱っていく事を宣言すれば、斬るという事などできるはずも無い。

 

「フッ…それが分かればいいのよ。まあ一刀さんと一度腹を割って話し合う事をお勧めするわ」

 

碧はそう言って立ち去り、孫策は碧の問いに無言で何も答えなかった。

 

そして漸く劉協は落ち着き、さっぱりした表情で

 

「よし!一刀、紫苑、璃々。それにここにいる者に改めて私の名を紹介するぞ。

私の名は劉協、字は伯和、真名は白湯(パイタン)!皆には白湯と呼んで欲しいだもん!!」

 

劉協は堂々と自分の名と共に真名を告げるが、気を抜いた時の癖でもある「~だもん」を口に出すが、そんな事より皆に真名を告げるに皆は驚きの声を上げる。

 

そして碧が劉協に声を掛けてきた。

 

「劉協様、我々にも真名を預けるのですか?」

 

「馬騰、私も皆と家族や仲間になりたいのだもん!だから皆に真名を預けるもん!!」

 

「御意で御座います、白湯様。私の事は『碧』と呼んで下さい。私の真名です。それと紫苑さん同様、私の事も母親と思っていただけたら」

 

「うん!嬉しいぞ、碧!!」

 

「あっ!私もご主人様の嫁だから、皆と家族だからな!!」

 

「蒼も!蒼も!!」

 

「あっ!翠お姉さま!!蒼抜け駆けずるい!!」

 

母親である碧が真名を交換すると翠たちも白湯と真名を交換することとなり、一刀たちはこれからしばらくは白湯を嫁というより家族として扱っていくことになった。

 


 
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