No.894792

真・恋姫無双 ~今度こそ君と共に~ 第12話

今日は何故か筆が進み、1年ぶりにこの作品を更新します。

何せ1年以上更新していなかったので、恐らく読者の方もどんな内容か忘れているかもしれません…すいません、私のせいですね(汗)

取りあえず読んで思い出していただけたらと思います。

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2017-02-24 20:07:43 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8287   閲覧ユーザー数:5933

桃香との会談を打ち切った一刀たちは桃香の暴言によって傷ついた流琉の様子を見ていたが、何とか落ち着きを取り戻したもののまだ精神的な不安定状態で声を掛けにくい状況であった。

 

そんな中、席を外していた冥琳が現れ

 

「一刀、官軍の盧植将軍が面会に来たぞ」

 

一刀はこの場を離れていいものか一瞬躊躇するが

 

「ここは私が見ておくから、一刀はそっちに行きなよ」

 

梨晏が流琉の面倒を見てくれるということで、流琉の事は梨晏に任せて一刀らは盧植のところへ向かった。

 

「盧植将軍、申し訳ありません。御用であればこちらから行きますのに…」

 

「いいえ~こちらこそ勝手に来て申し訳ありません~。それでちょっと落ち着いたところでお話がしたいのですが…」

 

一刀たちは別の天幕に場所を変え雪蓮は兵たちにこの場に誰も近づけさせない様に厳命する。

 

「それで盧植将軍お話とは…」

 

「お話の前に…先に北郷さんにお詫び申し上げます。実は先ほど劉備との会話を外で聞いていて、私の弟子である劉備が北郷さんたちに失礼な発言をして申し訳ありません。劉備に代わって師匠の私がお詫び申し上げます」

 

盧植は一刀より上位の将軍にも関わらず謝罪の言葉を述べながら頭を下げる。これには一刀たちも驚いた。

 

「盧植将軍が弟子の為に態々謝罪するとは…劉備さんは盧植将軍の弟子として学んでいたのですか?」

 

「ええ…私は以前私塾を開いて劉備とか公孫讃たちと共に学んでいたのですが、劉備は当時から正義感は強く争い事が嫌いなのですが、いざ理想と現実の区別となると自分の都合のいい理想を追い求めてしまって…」

 

盧植の説明を聞いて一刀たちも複雑な表情を浮かべる。

 

「そんな常識の無い馬鹿な弟子を持つと師匠も苦労するわね」

 

「雪蓮、口が過ぎるぞ」

 

雪蓮の口調に冥琳は流石に口が過ぎると窘める。

 

「いいえ、その方の言うとおり否定できませんわ。でも馬鹿な子ほど可愛いと言いますし、それにあの子はまだ自分の才能が生かしてきっていないだけと思っています。もし何らかの切っ掛けさえあれば成長できると思うのですが…」

 

盧植は雪蓮の発言は当然の意見だと敢えて咎めもせず、何とか劉備を立ち直らせたいという表情を見せる。

 

「それで北郷さん、ここから本題に入るのですが実は今回の城攻めで私たち官軍が北門を攻撃担当していただきたいのです。そして他の三門を我ら禁軍、曹操軍と孫堅軍で受け持つのですが、それで貴方のところに桃香…劉備軍をそちらに加えていただきたいのです」

 

「はぁ!?冗談じゃないわよ。あんな子入れて戦できる訳ないじゃない」

 

「……」

 

雪蓮ははっきりと反対し、冥琳は無言であるが渋い表情を浮かべ何処からどう見ても乗り気ではない。

 

「何故自分のところに話を持って来たのですか?先程見たように彼女がこちらに来ても素直に指示に従ってくれると思えないですし、他の軍に回す事はできないのですか?」

 

「官軍本隊では義勇軍が使うのに色々と問題があって、かと言って孫堅軍や曹操軍では練度に差がありすぎて劉備軍と連携できない。北郷軍であれば他の軍と比べ兵の数が少ないので劉備軍を加えれば数の上では他の軍と遜色なくなるでしょうし、それにあの子の謝罪を自分の身をもってやらせたいの」

 

「それに私、さっきあの子の手を触ったのだけど手に剣を握っているタコとかがないの。そんな口だけな者が一軍の将として北郷さんに対して言ったことについて許すことができないわ」

 

それを聞いて皆、驚いた。一軍の大将という者が剣をまともに扱えるかどうか分からないとは。

 

「それであの子の間違った信念を正す為に勝手なお願いで申し訳ないのですが、劉備軍を貴方のところで使って欲しいのです。勿論ただとは言いません」

 

盧植の説明を聞いたものの、流石に納得できるものではない。どう見ても体のいい押し付けであるからだ。ただ引き受けるメリットと言えば劉備に対して戦場の本当の恐ろしさ見て泣いて貰って溜飲を下げる事と劉備軍を犠牲にして兵の損害が少しは助かるかというくらいしか無かった。

そんな中

 

「私は条件付きなら承諾してもいいかな」

 

「何言ってるのよ、包!!」

 

「包、説明してくれるかな」

 

雪蓮は驚きの声を上げ、一刀は包の真意を聞く為に事情を聞く。

 

「まず劉備軍を加えていい条件だけど、劉備たちには作戦の拒否権はない。作戦失敗した場合、私たちに責任を問わない。そして劉備の面倒を受け持つという事で官軍からそれなりの補給を頂けるという条件なら受けてもいいですわ」

 

包の発言は完全に劉備軍を捨て駒する気満々で、これは包自身も先程の劉備の発言については怒っており、完全に意趣返しのつもりでもあった。ただ引き受けるにあたって物資の補給も要求するあたり抜け目がないところであるが、包自身この話自体潰れても良いと思っていた。

 

「分かりましたわ。その条件、私の権限で了解しますわ」

 

「本気ですか!?」

 

盧植があっさり承諾したことに流石の包も驚き、一刀や雪蓮、それに冥琳までも驚きを隠せない。

 

「ちょっと待って下さい。自分らに預けるという事は劉備軍を捨て駒しても構わないということですよ!?」

 

「ええ構いません。あの子があのような甘い考えを治すにはこれ位の荒療治をしないと治りませんから」

 

一刀の質問に盧植は覚悟を決めて返事をした。それを聞いて一刀もある事を覚悟に決めて言う。

 

「盧植将軍それでしたらもう一つ条件があります。聞いていただきますか?」

 

「伺いましょう。一体どのような条件でしょうか?」

 

「それは…」

 

一刀の説明を聞いて皆は難色を示す。

 

「一刀、貴方それ本気で言っているの?」

 

「それが失敗したら向こうだけでは無く、私たちにも被害が出るかもしれないんだぞ」

 

「下手すればあの子の心が折れてしまうかもしれないわね」

 

「ですが、彼女が本当の意味で目を覚まさすのであればこれ位やる必要があると思うのです」

 

「……分かりました。その条件も飲みましょう。それに口約束では何ですので後で書状にしてお渡しします」

 

盧植は一刀の意図が分かったので劉備の反論を押さえる為、敢えて書状にして明文化することにした。

 

一刀が上げた追加条件だが、雪蓮たちは勿論盧植もその条件を聞いて驚いた。だが一刀は今の劉備たちには荒療治が必要で今のままではこの乱世を生き抜くことはできない。だからこそ一刀は劉備に嫌われて構わない覚悟で条件を付けたのであった。

 

「どうしてあんな事を引き受けて、条件を加えたの?」

 

盧植が去ってから雪蓮は一刀が出した条件に疑問の声を上げる。

 

「彼女を見ていたら、以前の自分と重なってね……俺自身は雪蓮や冥琳たちに助けて貰ったが彼女も何とか助けてみたいと感じてね」

 

包がいるので過去の外史での話はできないが、雪蓮と冥琳は一刀の中では以前の外史の自分と今の劉備とが何か重なる部分があると感じたからであろうと思い、そして一刀は劉備の誤った考えを何とか修正させたい気持ちがあった。

 

「だが一刀、お前が最後に追加した条件はかなり厳しい物だ。向こうがこの話を蹴ったらどうするつもりだ」

 

「冥琳、恐らくそれは彼女に取ってしたくてもできないと思うよ。曲がりなりにも彼女たちは国を救う為に義勇軍を立ち上げたのだ。その命令が嫌だから戦をしませんとは言えないはずだ。だけど俺が最後に上げた条件は彼女がこの乱世に生き抜く為には必ず通過しなければならない道、それを踏まずに彼女が言っていた理想をなんて叶うはずがない。もしそれくらいで潰れるくらいなら今潰れてくれた方が犠牲は少なくて済むよ」

 

「フッ…それもそうだな」

 

冥琳は一刀の答えを聞いて納得した。

そして翌日、各将が集められ作戦の内容を告げる。

 

昨日盧植が一刀に説明した様に官軍、そして曹操軍、孫堅軍、北郷軍などの各軍がそれぞれの門を担当する事を告げ、最後に盧植が

 

「皆さん、この作戦に異議ありませんか?」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい。先生!」

 

「劉備、ここでは先生ではありません。盧植将軍と呼びなさい」

 

「あっすいません、盧植将軍。何故私たちがこの人の配下として動かなければならないんですか!?」

 

「劉備、その事で話があるから残りなさい」

 

軍議を終え、各将が天幕から出ていくと天幕には盧植、劉備の二人が残る。

 

「さて…桃香ちゃん。先程の事ですが貴女たちの軍勢はこの中でも1番少ない。そうなるとどこかの軍勢に加われないといけない。だから北郷さんのところに加えたの。それに昨日の桃香ちゃん、失礼な発言を北郷さんにしたでしょう。そのお詫びを口だけでは無く行為で示さないといけないと思うの先生は」

 

「あっ、桃香ちゃん、もし嫌だったらこの命令断ってもいいのよ」

 

「じゃあ…」

 

「だけど、この話を断ったら貴女たちはこの戦場から離れてちょうだいね。指揮官に従えない義勇兵なんて何の価値もないからね~」

 

「そんな先生!何とかなりませんか!?」

 

「それは無理な話ね。私も昨日の貴女の言葉には落胆しているから」

 

桃香は盧植の言葉を聞いて呆然とするしか無く、結局渋々引き受けるしかなかった。

 

先に陣に戻った一刀は

 

「戻ったよ、雪蓮」

 

「どうだったあの子の様子は」

 

「ああ盧植将軍に文句言っていたけど、最終的には引き受けるしかないだろうね」

 

「さて私の出番だね」

 

「ああ任せるよ。だけど喧嘩はしないでくれよ」

 

「さてどうかしら、一刀が悪役になれない代わりに私が悪役になって存分に掻き回してくるわ」

 

雪蓮は面白い物を見つけたとばかりに人の悪い笑顔で陣から出た。

一方、遅れて自分の陣に戻った桃香は北郷軍の配下として行動する事を愛紗や張飛こと鈴々に説明していた。

 

「くそ!何故私たちが北郷軍の指揮下に入らないといけないのだ!!」

 

「お姉ちゃん、心配しなくていいのだ。鈴々が大暴れすればあんな敵などあっという間に倒してしまうから安心するのだ」

 

愛紗は怒りを覚えるが、鈴々は少しでも桃香を安心させるために勇を振うことを誓う。

 

「あ~おちびちゃん、その願い叶えられないわ」

 

「誰だ!!」

 

「鈴々はおちびじゃないのだ!!お前こそ誰のだ!!」

 

「私は孫伯符、北郷一刀の副将よ。劉備殿、貴女にこの戦いの命令を与えるわ」

 

「……お聞きします」

 

「劉備殿、この戦いへの先陣を命ずるわ。だけどその戦いあなたが一人で兵を率いて戦いなさい。この二人を始め誰の力を借りることは許さないわ」

 

「そんな横暴おかしいのだ!!」

 

「そんな無茶、誰が聞くか!明らかに越権行為だろう!!」

 

「黙れ二人とも!これについては盧植将軍の許可も得ている。劉備殿、我が主北郷一刀に対して行った侮辱への贖罪して戦うと聞いている。それなら自らの失態を自ら晴らし、そして私たちがやった行為が正しいか間違っているか自ら戦って判断して貰おう」

 

一刀が盧植に出した条件とは劉備自身に戦いの指揮を取らせるという事であった。劉備自身は物事が話し合えば解決するという信念を持っている様だが、ところが関羽や張飛など猛将を従えて賊を鎮圧しており、劉備自身は愛紗たちに護られ戦場でまともに指揮を取っていない可能性が高い。それではまるでお姫様と変わらず、その様な立場で理想を唱えても現実を知らない理想主義者と一緒で何の感銘も受けない。

 

一刀も前の外史では雪蓮たちに理想と現実の違いを思い知り何とか修正できた。だから一刀は一度だけ劉備たちに自ら修正できるチャンスを与えた。これで修正できれば良し、もしできなければ自分たちが何れ理想主義者劉備を滅ぼす覚悟を持って。

 

雪蓮や冥琳は一刀の甘さは分かっていたが、確かにこのままの劉備と戦っても興ざめするので敢えて何も言わなかった。

 

「分かりました…自ら剣を取って戦います」

 

ここで漸く自分の迂闊さについて少し分かった桃香は、自ら戦場に立つことに覚悟を決めて雪蓮に告げる。

 

「駄目です、桃香様!そんな危険な戦に桃香様だけを背負わせるなど、孫伯符殿頼む!せめて私だけでも…」

 

「愛紗ちゃん……」

 

尚も雪蓮に食い下がろうとする愛紗の肩に、そっと桃香が手を置い

 

「大丈夫、愛紗ちゃん、それに鈴々ちゃん。これは私一人がやらなくちゃいけないの。今まで先生に散々言われてきたことを分かっていなかった罰を受けなければならないから。仮にこれで私が戦死したとしても決して先生と北郷さんを恨んでは駄目だよ」

 

桃香の表情は緊張しているものの、瞳は確固たる意志が秘められており、そして万が一の為に愛紗と鈴々に因果を含んでおく。

 

「宜しい。劉備殿、その覚悟をこの目で見させてもらうわ」

 

これを見た雪蓮は戦場でも桃香の覚悟が本物か否か言葉にしたのであった。

 

 


 
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