No.858849

IS ゲッターを継ぐ者

第二十三話です。

2016-07-16 23:43:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:853   閲覧ユーザー数:850

「かれこれ二週間ぶりかぁ。ダルいわー」

 

「帰ってきて、しかも教師の前で言う第一声がそれか馬鹿者」

 

 

 学園の正門。早速バカなこと言った光牙に千冬の出席簿アタック炸裂。帰って来てから一時間も経たずにである。

 

 

「なんかサ○エさん症候群的な感じでして」

 

「あれですか。私も週明けはダルくなります」

 

「賛同してどうする馬鹿者ども」

 

(……実は私もだなんて言えない)

 

 

 光牙とアヤは、迎えにきた千冬と真耶と共に教室へ向かっていた。二週間離れていただけはあり、学園が少しだけ懐かしく感じられる。

 

 やがて一年一組に到着。

 

 ここでちょっと躊躇ったりするだろう。どんな顔でとか、何言おうかとか、どんな気持ちで行けばいいとか。

 

 

「ほい」

 

 

 しかしこの光牙(主人公)、普通に開け入っていった。

 

 

「ドーモ、お久しぶり」

 

「あ、滝沢君?」

 

「本当だ!」

 

「一組よ。僕は帰ってきたぞぉ!」

 

「何を言っとるんだ」

 

「これ言わなきゃいけない気がして」

 

 

 バシン。二回目の出席簿。

 

 

「アホか貴様」

 

「そうですよ。二週間休んでるのと三年待ったソモンを一緒にしたらいけません」

 

「違うわ!」

 

 

 ずれているアヤにも出席簿が放たれたのは言うまでもない。

 

 一組メンバーが休んでいた光牙やアヤの姿にざわざわと騒ぎ出すが、千冬がいたのに気づくと席へ急ぐ。光牙とアヤも、ちょっと懐かしく感じる自分の席について千冬へ向き直る。

 

 

「SHRを始める。今日から滝沢とケントンが復帰する。二週間ぶりだから、勉強とかでは周りがフォローしてやれ。それと、月末のタッグリーグマッチも近くなってきている。各自、相手を見つけて手続きを済ませておけよ。では授業に入る!」

 

 

 

 

「こーくん、おひさー」

 

「おひさー」

 

 

 休み時間。光牙の所には早速、本音を始め仲良し三人組(谷本、相川、鷹月)やシャルル。そしてアヤが集まってくる。

 

 いつも通りに話しかけられて光牙は少し嬉しく、同時に安堵した。

 

 

「二週間も休んでたけど大丈夫?」

 

「病気か何か?」

 

「確かに病気の治療かな。僕じゃあないけどね」

 

 

 光牙のぼかした言い方に、本音ら仲良し連合は?と首を傾げる。

 

 

「でも元気そうでよかった」

 

「ケントンさんもいなくなるからビックリしちゃったよ」

 

「すみません。外せない用事が入ってまして」

 

「かんちゃん達も心配してたよー? 何かあったのかって」

 

「なら後で説明しないとな」

 

 

 本音達と和気藹々と話す光牙は、横目でクラスをちらりと見渡す。一組の皆が遠巻きに見ている。その表情はこっちを怖がっているというか、疑問に思っている感じ。

 

 

(仕方ないよね)

 

 

 原因はラウラとの喧嘩騒ぎだろう。あの時は今までの気持ちが爆発して、喚いて物を蹴ったり殺気飛ばすわで皆を怖がらせた。

 

 だがら、アヤはともかく見ていた本音やシャルルが前みたいに話しかけてくれるのは本当にありがたかった。

 

 

「光牙」

 

「あ、箒さん。お久しぶりです」

 

「二週間も学校を休むとはな。この不良め」

 

 

 訂正、箒もだ。口ではそうは言いつつも光牙がいるのに笑顔を浮かべている。

 

 

「あれ、そう言えばセシリアさん一緒じゃあないんですか?」

 

 

 光牙の中で、箒とセシリアは一緒にいるイメージとなっている。そのセシリアがいないのを聞いたのだが、箒は表情を曇らせてしまう。

 

 

「どうしたんです?」

 

「セシリアは、な……」

 

「今日はいないんだ」

 

「いない? どうして」

 

「えっと〜。実はね」

 

 

 箒同様に浮かない顔の皆。すると本音が切り出して、セシリアに何があったかを語りだした。

 

 

「え……セシリアさんが?」

 

 

 話を聞いて呆然としていた光牙だったが、直ぐにいてもたってもいられなくなって走り出す!

 

 

「ちょ、こーくん!」

 

「光牙っ!」

 

 

 呼び止める声も振り切って教室から飛び出し、廊下を全力疾走。

 

 

「きゃっ!」

 

「そこの生徒! 廊下は走るな!」

 

 

 途中で生徒とぶつかり教師に怒られながらも光牙は走る。

 

 ただひたすら。

 

 ある場所を目指して。

 

 真実を確かめる為に!

 

 

「セシリアさんっ!!」

 

 

 バァンッ!!

 

 

 目的の場所の前に辿り着き、自動ドアを手動でぶち開ける。

 

 室内のベッド、その上に……セシリアはいた。

 

 

「セシリアさーん!」

 

「えっ、光牙さん?」

 

「滝沢君!?」

 

 

 ……ただし、上半身裸でだが。

 

 

「……あ」

 

「ひ、い、い……」

 

 

 目に入ってくる、白い裸体。胸にある膨らみ二つや変わらず綺麗な金髪に思わず見とれてしまう光牙だが、セシリアの方は顔を真っ赤にしてわなわなと体を震わせ……。

 

 

「イヤーーーーーーーーーーーッ!!!!」

 

「ろぉずっ!?」

 

 

 側にあった国語辞典が、光牙の顔面にめり込んだ。

 

 

 

 

「滝沢くぅん、いくらなんでもいきなり入るのは失礼ッしょ」

 

「す、すみません……」

 

「謝るのはオルコットさんに、でしょ」

 

「ごめんなさい……セシリアさん」

 

「も、もういいですわよ……」

 

 

 頭を下げ謝罪する光牙に、頬や顔に湿布を張り、病人が着る薄い青の服を着たセシリアは顔を赤らめながら許した。

 

 

「にしても、怪我したの聞いて飛んでくるなんて。愛されてるわね、オルコットさん♪」

 

「か、からかわないでください!」

 

「だって本当にビックリしたんですから。僕のせいで怪我したなんて聞いて」

 

「「……あぁ」」

 

 

 セシリアの気持ちを知って保険医サキはからかったのに、光牙は正直に説明するからセシリア、サキは項垂れてしまう。なんと言えばいいのやら。

 

 セシリアが怪我をしてしまったのは光牙とアヤが休んでから数日後。タッグリーグに向け特訓していたセシリア、鈴。そこにラウラが現れ挑発してきた。更に光牙のことを「臆病者」だの「根性なし」だの罵り、キレた二人VSラウラの戦いに。が、機体の相性や連携不足で圧倒され、途中でシャルルと千冬が助けに入るも三人は負傷。ブルー・ティアーズと甲龍は深刻なダメージを負ってしまい、修復でタッグリーグには出れなくなってしまった。

 

 それを聞いて、光牙は検査で休んでいたセシリアへ駆けつけたという訳だ。鈴の方は今日、普通に登校しているらしいので光牙は後で謝らなければ、と思う。

 

 

「でもごめんなさい、セシリアさん。僕のせいでそんな怪我を」

 

「謝まらないで下さい。余計に惨めじゃないですか……」

 

 

 ぷいっと横を向くセシリア。

 

 

「……言える訳ないでしょう。光牙さんをバカにされて悔しかったのなんて……」

 

「え、何か?」

 

「なんでもないですっ! ――あいつつ……」

 

「ほら騒がないの」

 

 

 思わず強く言い返して痛がるセシリアの背中をさすりながら、サキが光牙に聞いた。

 

 

「そう言えばもうすぐタッグリーグだけど、滝沢君はペアを決めた?」

 

「ペア?」

 

「月末のタッグリーグは二人一組での出場。決まらなかったら抽選で決められるんだけどね」

 

「そう言えば織斑先生がそんなこと言ってたっけ」

 

 

 どうやらあまり聞いてなかったようである。

 

 

「光牙さんの相手は決まってるんですか?」

 

「まだですね。今日帰ってきたばかりですし」

 

 

 うーん、と考える光牙。しかし、大切なことを忘れている。

 

 

「滝沢君」

 

「はい?」

 

「もう次の授業が始まるわよ」

 

「……あ゛」

 

 

 時計に目をやる。授業の開始時刻が目前に迫っていて、しかも次は確か千冬の授業だった筈。

 

 

 ――キーンコーンカーンコーン……。

 

 

 無情かな、鳴り響くチャイム。この瞬間、黒の攻撃が確定された。

 

 

「……アーメン」

 

「ご武運を祈ってます」

 

「……何しに行くんだ僕は」

 

 

 二人のお祈りにつっこむも、当然千冬の出席簿アタックの餌食になったのであながち間違ってない……と光牙は思うのだった。

 

 

 

 

 

「えーと、今日使える整備室って何処だっけ?」

 

「確か第二と第三で」

 

「後は第六でしたね」

 

「第六ならもう許可取ってあるよ〜」

 

「ならばそこに行くか」

 

「「「「うぉっ!?」」」」

 

 

 シャルルにアヤ、本音と歩いていた光牙は、予想外の声に皆と揃って驚いてしまう。

 

 声をかけた箒はというと、光牙らの反応に眉をひそめていた。

 

 

「そんな反応することはなかろうに。失礼な」

 

「あ、申し訳ない」

 

「すみませんでした」

 

「ごめんなさい。びっくりしちゃって」

 

「ごめんね〜」

 

「……いやいい」

 

 

 一斉に謝られて箒もばつが悪くなり、話を変えようと咳払いする。

 

 

「それより、揃って整備室で何をするのだ」

 

「ちょっと確かめたいことがありましてね。それで」

 

 

 話しながら、箒を加えた五人は本音が許可を取っていた第六整備室に到着。中には既に先客の女子、簪がいた。

 

 

「かんちゃーん」

 

「……本音? あっ、滝沢君……」

 

 

 ISの調整をしていた簪が振り返り、光牙に気づくと「ども」と返す光牙。

 

 

「今日、帰ってきたの……?」

 

「うん、朝にね。なんか心配かけてゴメン」

 

「い、いい……元気そうで、良かった」

 

「………………」

 

 

 簪と微笑ましく話している光牙を、ジトーッとアヤは睨んでたが。

 

 まあ光牙は気づく訳なく、簪も加わって六人で本題に入る。

 

 

「あ、これだこれ」

 

「これは、映像か?」

 

「うん。ボーデヴィッヒさんとオルコットさん、凰さんの戦いの」

 

 

 頷いたシャルルがリヴァイヴカスタムⅡを機器に繋ぎ、映像記録を再生させる。ここに来たのは、セシリアや鈴が怪我をした件の事件の映像を見る為であった。

 

 セシリアと鈴VS漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏うラウラ。

 

 爆風の中から現れるラウラへセシリアの援護を受け鈴が向かっていく。

 

 

『食らえ!』

 

『ふっ……』

 

 

 鈴が龍砲を発射。光牙を苦しめた不可視の弾丸だが、ラウラが手をかざすと、まるで見えない何かに阻まれてラウラまで届かない。

 

 ラウラは肩からのワイヤーブレードを使って二人を牽制しながら、両手をかざすとビットを停止させ、セシリアにはワイヤーで捕まえた鈴をぶつけ射撃を潰す。

 

 そこから腕のプラズマ手刀を展開、ワイヤーブレードを交え鈴へ攻撃。

 

 

『このっ!』

 

『甘いな』

 

 

 龍砲を肩のレールカノンで破壊し、吹き飛んだ鈴へプラズマ手刀が向けられる。

 

 

『鈴さんっ!』

 

 

 それは割り込んだセシリアが、スターライトmkⅢを盾にし防いで、腰からミサイルビットを至近距離にも関わらずぶちかます。

 

 鈴にセシリアは爆風に吹っ飛び床に叩きつけられるが、爆風の中より現れたラウラはほぼ無傷であった。

 

 二人をワイヤーでたぐりよせ、あとは一方的な暴虐だった。

 

 

『あああっ!』『くぅぅっ!』

 

 

 二人の全身に、まるで機械が行うかのように淡々とラウラが拳を叩き込み、機体を破壊し操縦者を傷つけていく。

 

 途中で千冬とシャルルが割り込み止めなければ、間違いなく二人は死んでいたかもしれない。

 

 最後にラウラの攻撃を、生身でISのブレードを振るい千冬が受け止めたところで映像は終了した。

 

 

「……強いな」

 

 

 感想を呟く光牙。最後あたりは気持ちのよくない内容だったが、それを抜きにしてもラウラは強いと感じた。

 

 

「代表候補生二人を圧倒するとはな。恐ろしい奴だ」

 

「武器は肩のキャノンにワイヤー、腕の剣ってところか。全距離に対応してる」

 

「まだ、ある……。第三世代型兵器が」

 

 

 光牙の分析に簪が付け足した。

 

 

「鈴さんの龍砲を止めたのか。バリアでもあるのか?」

 

「違うよ。あれはAIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。慣性停止能力」

 

「PICの発展ですね。エネルギーを操作し、対象の動きを停止させる」

 

「要するに停止結界だね〜」

 

 

 つまり龍砲やビットを止めたのはそのAICだという訳だ。シャルル、アヤ、本音の説明に光牙はふむと顎に手を当てる。

 

 

「一対一で使われると反則だな。そのAICって」

 

「あぁ。インチキ効果もいい加減にしろと言いたい」

 

「おいおい、ホッキーがそれ言っちゃうの〜?」

 

「な、何?」

 

「はいはい、ネタは置いておきますよ」

 

 

 アヤが話を戻している一方、光牙は映像のラウラを凝視している。

 

 動きや戦い様。殴りまくり愉悦に笑みを浮かべる姿に至るまで、全て。

 

 

「滝沢君……?」

 

「あぁゴメン。にしても、織斑先生は相変わらずチートだよな」

 

「っ!?」

 

「確かに……」

 

「生身でブレード振るったら筋肉ヤバイよね」

 

「あれ、でゅっちーどうかした?」

 

「な、なんでもない……」

 

 

 千冬が出てくると苦笑いのシャルル。彼女らに光牙は向き直る。

 

 

「皆、付き合ってくれてありがと。色々参考になったよ」

 

「どういたしまして」

 

 

 お礼言いながらシャルルはリヴァイヴカスタムⅡを機器から引っこ抜いて、首にかける。

 

 

「確かに、そろそろ夕飯時だな」

 

「じゃあかんちゃんも行こ〜。たまには皆で箸つつこうよー」

 

「それは鍋……」

 

 

 とりあえず簪はまだ機体の調整があると簪は残るそうなので、皆での夕食はまた今度ということになった。

 

 

「こーくんにアヤやん、またね〜」

 

「はい、また」

 

「おーう」

 

 

 本音らを見送り光牙とアヤの二人が残る。

 

 

「じゃあ僕らも夕飯に」

 

「滝沢」

 

「あ、織斑先生」

 

「ケントンもいるか。少しいいだろうか?」

 

「「?」」

 

 

 話しかけてきた千冬に、アヤと光牙は顔を見合わせた。


 
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