No.81736

真・恋姫無双after~蜀の日常・その11~

第11弾でございます。今回ついにあの2人が運命の再会を果たします!

2009-06-29 23:35:21 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:7934   閲覧ユーザー数:6273

身分違いの恋に悩む少女・朱莉の姿は彼女の住む許昌から遠く離れた蜀の都・成都にあった。彼女の右隣りには主君である曹操、そして曹操のさらに隣には彼女が恋焦がれる人―――の母である蜀王・劉備が。

(この方が、劉永様の母君・・・)

自らが一・二度しか拝謁したことがない主君・曹操と親しげに話す想い人の母に視線を向けて、自らが恋した人の世界と自分の世界に大きな壁がある事を思い知らされた。しかし出立する前に上司から送られた言葉を胸に刻みなおす。

(秋蘭様、私は恋の戦から逃げません!この戦に最終的に勝つ礎を築くために、まずは―――!)

まずは劉永様とお友達になる!これが今回の曹操の護衛に随伴が決まった時に、彼女が決めたことだった。

華琳率いる魏の一行が成都城に滞在用として本城の西に建築された御殿、通称『西の丸』に入城すると、華琳は同じく随伴してきた春蘭・稟・風・季衣・流琉達将軍クラスの将を連れて本城で開かれる懇親会及び晩餐会に参加するために出て行き、朱莉達警護の兵には待機という名の事実上の自由行動が許された。

朱莉は街に出ていくという同僚の少女達の誘いを断って、本城の中庭にあるという樹齢500年になる大樹を見に行くことにした。本城の兵に案内してもらって大樹の前にたどりつき、その大きさに圧倒され、同時に安らぎを覚える。

「・・・以前、風様が寝心地を絶賛しておられた理由がわかるな・・・ちょ、ちょっとだけ横になってみようかな。ちょっとだけ、ちょっとだけだ・・・」

どうせこの後、自分の仕事は曹操たちが帰ってきて彼女達が寝るまでないのだ。深夜から明け方の警護に備えて仮眠をしなければならないのだから今ここでしておこう・・・

そんな考えが彼女の頭の片隅にあったのかもしれないし、許昌から成都への旅路で疲れがあったのかもしれない。

張り出している木の根っこを枕にして横になるや否や、一気に彼女は睡魔に身を委ねることになった。

劉永は自室で自分が隊長を務める警備部隊の報告書にひとしきり目を通すと椅子から立ちあがり、「う~ん」と伸びをする。

「結構疲れたな~。そうだ、あの木で昼寝をしようかな・・・」

成都城に『木』は数あれど、『木』と一言で表す木はただ一本しかない。

中庭にそびえる、樹齢500年を誇る大樹である。

劉永は着用していた上級武官用の礼服から普段着に着替えると、すれ違う兵や女官たちから頭を下げられるのを背に中庭に出た。お気に入りの昼寝スポットを視界にとらえ、自然と鼻歌も出てくる。

「ふんふふふ~ん♪・・・お?」

スキップも出だして劉永のご機嫌も最高潮になってきたころ、大樹の根元に先客がいることに気がついた。

「誰だろう・・・林はあそこで寝たりはしないし、苞姉さんは鈴々母さんと一緒に漢中に新城の普請奉行として出向いてるし・・・」

頭をひねりながら眠っている人物に近づいていく。

そして――――

「あっ・・・」

劉永があの時、あの場所で会ったその時から頭から離れない、恋焦がれた女(ひと)――

「やっと、出会えた―――」

自分の中で、何かの歯車が動き出した。そんな気がした。


 
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