『似ている二人は省かれて』(チータSide)
ベールが打ち出した提案、それはファイナル・ハード・フォーム(以下F・H・F)の合体と言う前代未聞の試みだった
二人以上の女神がハードフォームとなって合体することにより、理論上一人の時や同時に使っている時の数倍の威力になるらしい
一つ目の条件は心を一つに、つまり全員が一つの事を考える事、二つ目は同系統、つまり武器型は武器型同士、乗物型は乗物型同士の合体である事
そして三つめは使い手が武器を使える事だ。
一つ目はクリエとあのヤロウを助けるという一点を考えている今ならクリアでき、二つ目はプルルート(当然俺も)以外全員武器型なためこれもクリア
「殿方に障らせるのはちょっと…」という理由で俺、合体には適さない上に使い手としても色んな意味で危ないプルルート、そもそも武器を使った事のない(クローやグローブ以外)ピーシェの三人は除外された
こうして計画がまとまった中、いざ尋常と思っていたのだが……
「だから私が使うからアンタ達は武器になりなさい!私は一応基本的な武器を使えるわ!」
「偉そうに言うな!てめぇらじゃあの壁ぶち破るには力不足だろ!ここは力が強い私が!」
「いいえ!力だけではあれを打ち破れません!一点集中による貫通攻撃が出来て機動力を活かした突撃が出来るわたくしが行きます!それにお二人が合体すると丁度ハルバートみたいになるかと……」
…… こ れ で あ る ( 呆 )
そう、皆自分が使いたがっている為、各々が主張し合って誰が使い手になるかの口論になってしまっていた
……ぶっちゃけ
世界の危機なのに何このグダグダっぷり、コイツ等の一存で世界を書き換えられる世界じゃなくて良かったよ、マジで
って言うかどうすんだよこれ、このまま座り込んでたら時間が過ぎるだけだ。
ヤロウならまだしもこのままじゃクリエが……クリエが……!
「……ふうっ」
「おっふぅっ!」
突然耳元に息を吹きかけられて驚いた。吹きかけられた方を向くと、してやったりな表情で笑っているプルルートが
「あにすんだよお前は」
「だって暇なんだも~ん」
「ぴぃ助と遊んでりゃ良いだろ!」
「ぴーちゃんは今おねむでーす」
そう言ってとなりで気持ちよさそうに眠っているピーシェを撫でた。
……ったくコイツはこんな時に何やってんだか。色々焦る所じゃねぇの!?実際
「こんな時にしんきくさい顔して考えたってな~んにもならないじゃん、そんな暇があるならあたしにかまってよ~」
と言ってプルルートは俺の腕を組んで寄り添って来た。
普通ならDTでなくてもこの状況に興奮を覚えない奴はいないだろう……だが俺は違う!
「ふっ……前にも言ったろ?俺はそんなちんちくりんなちみっ子ボディなんぞに興味はなばっ!!」
殴られた、言いきる前にグーで殴られた……痛い上に辺り所が悪くて鼻血が、鼻血が……
「てべぇ……(てめぇ……)」
「ふ~んだ、ヘタレのくせに選り好みなんて生意気~」
「うるせぇこの暴力サド女!」
「ナンパする癖にいざ付き合おうとなると固まるんじゃ話にならないね~」
「いい線いってたとこもあったっての!その度に邪魔しやがって!」
「だってそれで止められたら遊び相手いなくなるも~ん」
「あの三人がいるだろうが」
その言葉を聞いたプルルートの口が止まった。
その後俯いて、ぼそぼそとつぶやいた
「…………だって、あたしが本気になったら皆怖がるもん……」
「え?今なんて?」
「……………………なんでもないっ」
ぶっちゃけ聞こえていたが聞き直そうとすると、案の定ふてくされた
……よ~っしこれまでやられっぱなしだし仕返ししてやれ
そんで弄るついでに一言言って置かなきゃな
「え~教えろよ~」
「だからなんでもない」
「な~な~」
「………………」
「な~ってば~」
「なんでもないって言ってるでしょ!!……あ」
とうとう我慢できなくなったプルルートは叫びその直後に我に返って口を塞いだ。
そして意地悪された子供の様に、やや涙目なふくれっ面で俺を睨みつけた……若しかしたら俺、無意識に顔がニヤけていたのかもしれない
……もしかしたらこれが、プルルートという女なのかもしれない。
これまで思っていた所があったのかもしれない
これまで言いたかったことがあったのかもしれない
そしてこれまで、イライラムカムカを我慢してきたのかもしれない
人形や敵等にぶつけきれない分があったのかもしれない
友達に意味のない怒りをぶつけまいとしていたのかもしれない
……コイツも俺と同じように、取り繕って生きてきた、ツギハギなのかもしれない。
そう思ったら、思わず顔がニヤけてしまった。
「……………………?」
そんな俺を見て首を傾げたプルルートを、俺は撫でた。
すると「子ども扱いしないで」と言わんばかりの目で俺を見つめた
「……やれば出来るじゃねぇか」
「む~……」
「そうやって自分の気持ちを打ち明けるのも大事だと思うぜ?」
「………………」
「アイツらだってずっと前からの友達なんだし、俺よりもお前に酷い目に遭わされてんだし、それでも友達な奴らが、ホントの本気のお前の怒りを怖がるわけねぇだろ?」
「…………そんなこと……」
「今のように、ぶつければいい、調教とかしつけとかお仕置きとか、そんなの頼らなくても普通に怒れるんだからさ」
「…………バカ」
そう呟いたプルルートは、俺のとなりから俺の後ろに回り込み、のしかかって来た
「ああついでにさ……ありがとな、大分落ち着いた」
「…………今さらだけどど~いたしまして(むっ」
「そんじゃ~そろそろ行きますか……プルルート、
「は~い……それじゃあちょぉっと待ってなさぁい、アンタ好みに仕立てれば良いんでしょぉ……?」
そう言って女神したプルルートは、気分よく鼻歌を鳴らしながら、未だに口論が続いている三人にゆっくりひっそりと近づいて行った
その時のプルルートが全身に纏っていた紫電は、これまで見た事が無い位に激しく強く濃厚だった
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