「リンク・ワーカーは
今日は休日だ……実を言うと私は何かやっていないと気が済まない性質で、やる事があまりにも無いから今この時をどう過ごすか困っている。
人は私の事を
街中をぶら付くと、猫型種に声をかけられた。
……どうやら人間の教担任教師が寝込んだらしく、代わりを探していたらしい。此処に住んでる人間の人数は意外と少ないのだ。
小学生の担任教師……教える側と言うものに興味が湧いたので、引き受けることにした……他にやる事無いしね
「えー山下先生が風邪で欠席している為、臨時担任を務める事になったリンク・ワーカーだ、よろしく頼む。」
『はーい』
……思いのほか、普通の反応で受け入れられてしまった。
まあ低学年に国の事情とか世間とかの話をされてもハテナだから致し方なし、気にしないで済むと思い、授業を始めた
そして帰りのホームルーム、ここで生徒の為になる気の利いた話をしなければ……
国壊しの基本三大要素、情報、手段、協力者の話でもしようか……いや、こんな小さな子供にそんな話理解できるわけないししたら色々とこの学校に迷惑が……
だが『選ばれる者になるな、選ぶ者になれ』とその内容を延々話しても飽きてしまう……はっ!そうだ、これなら!
「えー……今日一日担任をやらせてもらっていい経験になった、ここでの私の役目も終わりになるその前に、ちょっとした話をしようと思う」
国壊しの基本三大要素は、国を壊す以外にも重要な要素がある、これを小学生低学年に分かりやすく簡略化し、伝える。
将来未来に羽ばたく少年少女たちに対する最後の教育を、最大のエールとして送ろう……それが一日担任の最期の務めだ
「先生は別の仕事でリーダーをやっていてね、そこで大事にしている事が大きく三つあるんだ。」
生徒たちは首をかしげる……掴みに失敗してしまったか。だがこのまま続けるしかない。
「一つ目は良く見て聞く事、二つ目は何をするか決める事、そして三つめは仲良くなる事だ」
情報収集、手段の計画、協力者を作る、果たしてそれぞれを分かりやすく説明出来ているだろうか
「特に三つめは重要だけど、どうやったら仲良くなれると思うかな?分かった人は手を上げてね」
生徒たちは考え込んだ後、直ぐに元気な声を出して手を上げた。私は一人の生徒に指を指す
「それは、仲良くなりたい人の長所を見つけるとこです」
「う~ん……惜しいっ!」
実に良い答えだが、それでは決め手にかける、良い部分を見つけてもそこが自分とは合わない事もあるからだ
「答えは……仲良くなりたい人と自分の同じ所を見つけるんだ。」
「どうして?」
「同じ所を両方分かれば、そこから気持ちが通じやすいんだ。」
……最も、同族嫌悪という言葉があるように、必ずしもこれが通じるわけではないのだがね
「趣味や、癖、好物、特技、生年月日……皆も暇なとき、隣にいる子から自分と似ている所を探して見てくれ、そこから通じ合える事もあるかもしれないからね」
……こうして臨時担任、リンクワーカーの授業は終わった。
そして夕方、帰宅すると待っていたのは息子のユウザと親友の源、ユウザは源に厳しい稽古を付けてもらっており、そのお陰か短期間で強くなっていった(本当は根を上げてもらうために源に頼んだのだが……我が子ながらなんと根気強い)
「おかえり義父さん」
「ワーカーさん、お邪魔してます」
「やあ、君も相変わらず元気そうで何よりだよ」
「そりゃ貴方の代理やってますからね……」
「ははは」
「笑い事じゃぁないっ!アンタはこれ以上勝手な事をだな」
「義父さん義父さん、新聞を見たんだけど、ここの近くにお月見が出来る崖があるんだって、明日行ってみたいな」
「あっ!」
「どれどれ……」
源が取り上げようとした新聞紙を素早く手に取り、読んでみると、付近の峠でアポロスライヌなる超高温を内包している巨大スライヌの群が占拠しているとの知らせが
「コラユウザ!そこは今危険だから行けないんだって言っただろう」
「だって義父さんに『困った事があったら聞かせて』って言ったから……」
「これはワシらの仕事だから……明日の早朝、日が沈んで奴らが大人しくなった時に討伐に向かう予定ですから、ワーカーさんはゆっくりと……」
その時既に私は手紙で源にユウザ事を頼み、現地に向かっていた
『源へ、用事を思いだしたからちょっと行ってくる。ユウザを頼んだ。追申、ユウザに明日の月見の用意をするように言っておいて。byワーカー』
「……あんんんにゃろおおおおがああああああ!何度言ったのになんでこうなるんじゃああああああああああああ!!!!」
源が叫んでいるその頃、私はアポロスライヌの群の前にいた
……ほんと、子供を持つって良いものだねぇ……いつもよりも……全盛期よりも頑張れる気がするよ
「ヌゥラ!ヌラヌラッヌラヌラヌラヌラヌヌラヌラヌヌラァァ!?(テメェ!ウチらの縄張りに土足で踏み込みやがって何様のつもりだぁ!?」
「……失礼だが、立ち退いてくれないか?ここを利用する者達も多いし……何より明日行く息子との月見の邪魔だからね、まぶしくてしょうがない」
「ヌゥヌヌラァ!ヌラ!ヌラヌララァァ!!(ナメやがって!テメエら!ヤッちまェェ!!」
巨大な高熱スライヌ達が、超小型の太陽の群が、私一人に目掛けて襲い掛かる
「……そうか、どいてくれないか。ならば……君達を始末させてもらおう」
私は投剣を両手に構え、ゆっくりと歩みながら迎え撃った
その夜、明日の月見の為に無傷で群を全滅させた私は死んだように眠り、なんと日が変わって夕日が射すまでには何をされても起きなかったという。
そして今夜、ぐっすり眠って元気があふれている私は、眠たそうなめをこすりながらユウザを連れて月見に向かった
そこで見た月は、これまで見た月よりも美しい純白の優しい輝きを放っていた
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