No.76547

真・恋姫無双after~蜀の日常・その3~

第三弾です。少し戦闘シーンが物足りないかなーとか思ってます。
続くかなぁ・・・ちょっと自信がなくなってきました。

2009-05-31 16:21:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:12894   閲覧ユーザー数:9670

蜀・成都城の中庭で2人の幼い戦士が手に己の得物を、心の中に乱世において無敵を謳った母の誇りを胸に対峙していた。

一人は『美髪公』関雲長の娘たる関平。母の得物『青龍偃月刀』を模した木刀を手に相手を睨みつける。

「張苞、準備はよいか?」

「いつでもかかってくるのだ!関平姉者!」

対峙するのは幼い容貌ながら、はち切れんばかりの元気を内蔵した赤毛の少女だ。

少女の名は張苞(ちょうほう)。『燕人』張飛こと鈴々の娘で一刀にとっては六人目の子である。

母譲りの冗談のように長い『蛇矛』―――の木刀を手に異母姉と対峙する。

「・・・・2人とも、準備はいい?」

審判役を務めるのは、蜀を代表する腹ペコ将軍たる呂布・・・恋である。

「恋様、合図をお願いします!」

「恋お姉ちゃん、苞はいつでもいいのだ!」

「・・・(コク)」

頷いた恋は右手に持った赤い小旗を振り上げ―――

「・・・始め」

振り下ろす。

「はぁぁぁぁ!」

「にゃぁぁぁ!」

あたかも弓の弦から放たれた矢のような素早さで接近した2人の少女が、勇を奮う―――

「いくのだー!苞!ほら、ガツーンって平をやっつけるのだー!」

勇を奮う2人の少女を見守る母2人。一人は『燕人』張飛―――鈴々。張苞の母である。腕をぶんぶんと回して元気よく愛娘に声援を送る。

「平、何をしている!ご主人様の御前で無様な姿を見せるな!」

愛紗も義妹に負けじと大声をあげて娘を叱咤していた。一刀は2人に近づき、声をかけた。

「愛紗、鈴々、おはよう」

「お兄ちゃん、おはようなのだ!」

「ご主人様、おはようございます」

一刀のあいさつに振り向いて、座ったまま返事をする鈴々。一方真面目な愛紗は立って挨拶をしようとするが、一刀はそれを押しとどめた。

「愛紗も立たなくていいよ」

「ですが・・・」

「お腹の子の調子はどう?」

「は、はい。あと二月ほどで生まれるそうです」

一刀の慈しむ様な視線は愛紗の大きくなったお腹に向けられた。愛紗はそのお腹を愛おしげに撫でる。

「もう名前は決めてあるのかー?」

鈴々の視線も自然と義姉のお腹に向けられる。その顔には『鈴々もお兄ちゃんの子供がもう一人くらいほしいのだー』と書いてある。

「ああ。この大陸が盛んになってほしいという祈りを込めて『興』とつけようと思っている」

「関興か・・・いい名前だな」

愛紗の穏やかな顔に、一刀も笑みがこぼれる。

関平と張苞による白熱した仕合が繰り広げられるなか、2人の小さな影がとてとてと何かを持ってやってきた。

「鈴々ちゃ~ん、愛紗さ~ん、お菓子が焼けたので持って・・・あ、ご主人様もいらしたんですか~」

「お、お父様、こんにちゅわ!」

「あ、朱里と贍(せん)か。お菓子を持ってきてくれたの?」

お菓子を持ってきたのは薄いピンクのエプロンをはおった諸葛亮こと朱里。そしてその娘の諸葛贍である。一刀にとっては七人目の子になる。

「はい!ご主人様、この『クッキー』、ほとんど贍が作ったんですよ!」

まるで我が事のように娘をたたえる朱里。

「へー、すごいなぁ贍は!」

ナデナデ

「はわわ、お母様、褒められちゃいました!」

一刀に褒められて恥ずかしいのか、真っ赤になった諸葛贍はクッキーの皿をテーブルに置くと素早く母の背に隠れてしまった。

「贍は朱里そっくりなのだな~」

「う~ん、否定ができないですね・・・」

鈴々が指摘すると、否定ができない朱里は苦笑して娘の頭を撫でた。

「まだまだだな、苞」

「うう~、今度は負けないのだ!」

「・・・2人とも、動きが良くなった」

仕合に決着がついたらしい2人と、審判役の恋が戻ってきた。

「3人とも、お疲れ様。朱里と贍がクッキー作ってくれたから、お茶にしよう」

そろ~っ

「入るよ~」

「あ、ご主人様・・・し~」

桃香の部屋にそっと入った一刀。入り方は正解だったらしく、桃香が右手の人差し指を立てて左手で寝台を指さす。ゆっくり歩いてそこまでいくと、そこには寝台で眠る劉禅とその隣の揺り籠で眠る赤子の姿があった。

「気持良さそうだよね~」

「そうだね・・・」

少しの間の沈黙を挟んで、桃香が口を開いた。

「ねぇ、ご主人様。この子―――劉永に『永』って名付けたの?」

桃香の眼差しは揺り籠の中の赤子、一刀によって劉永と名付けられた2人目の我が子に注がれる。

「・・・『永』っていう字は『永遠』の『永』、『永久』の『永』に宛てられるよね」

「うん」

「多くの人たちが流した血で築かれたこの大陸の平和を永遠に、永久に護ってほしいって願いを込めたんだ。もうあの乱世なんか迎えない、平和な世を次世代の彼らに永遠に続けてほしいから」

「そんな意味があったんだ・・・私、よかったな」

「何が?」

桃香はそっと一刀に寄り添い、彼に顔を近づけた。

「あなたが天の御遣いで、私たちと出会ってくれて、だよ」

二つの影は寄り添いあい、そして一つになった。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
124
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択