勉強の時間になった劉禅と別れた一刀は本を書庫に直し、街に出た。向かう先は成都城郊外に建設された競馬場である。競馬場のレーンの中に入ると元気な声が彼を出迎えた。
「よっ、ご主人様」
「遅いよ~ご主人様~」
待っていたのは馬超・馬岱―――翠・蒲公英の馬家の従姉妹。そして―――
「おせーぞ、親父!」
「ダメでしょ、秋!父様にそんな口聞いちゃ」
馬に乗る2人の子供であった。
一刀を『親父』と呼んだ方は翠の娘・馬秋(ばしゅう)。一方『父様』と呼んだのは蒲公英の娘・馬承(ばじょう)である。彼女らはそれぞれ一刀の第三子・第四子である。
「2人とも、普段の訓練の成果をご主人様の前で見せて驚かせてやれよ!」
「オー!」
「解りました、伯母さま!」
翠の発破に気合が入る2人。今日彼女らは馬術の訓練の成果を見てもらうために一刀を呼んだのだ。
「いいか、おれは2人には頑張ってほしいけど怪我だけはするなよ。無理な走らせ方して怪我したら本気で怒るからね」
「大丈夫だって、親父!そんなへましねーよ」
「そうですよ、父様は心配しすぎです」
「2人の言う通りだよ、ご主人様。秋も承もしっかり鍛えてあるから心配なんてないない♪」
娘2人と蒲公英に一刀は心配を吹き飛ばされたようだった。
「そっか、なら心配ないか。頑張れよ2人とも」
試合は白熱した展開になったが、先に生まれた馬秋にやはり一日の長があったのか、試合は馬秋の勝利に終わった。
馬秋と馬承の訓練を見届けた一刀は、4人と別れて城近くの川辺へと散歩へやってきていた。
「う~ん、のどかだなぁ~・・・お?」
のんびり歩いていると、紫の髪の青い瞳の16才くらいの少女が薄い水色の髪の紫の瞳のまだ3才くらいの女の子を膝に乗せて日向ぼっこをしていた。
「お~い、璃々、白(はく)~!」
「あ、お父様!」
「ととさま~!」
そこにいたのは、黄忠こと紫苑の娘である璃々、そして一刀のメイドを務めている董卓こと月の娘である董白(とうはく)である。彼女は一刀の八人目の子にあたる。
「ととさま、だっこ~」
「おいで、白」
ひょいっと董白を抱き上げると、董白はきゃっきゃとはしゃいで喜んだ。この子は一刀に抱っこされるのが大好きなのである。
「璃々、白の面倒を見てくれてたんだろ?いつもありがとう」
「いいえ、妹の面倒をみるのは姉の役目ですし、わたしも好きでやってますから・・・」
一刀に初めての子―――劉禅が生まれた時から璃々は弟妹となった一刀の子供たちの面倒を見続けてきた。その為か、趙統や馬秋といったやんちゃな子達も彼女には頭が上がらないのである。
「今日は何でここに?」
「詠姉さまにお花摘みを頼まれたんです。お2人とも少しお忙しいそうですから・・・」
意味深な微笑みに一刀は「ははは・・・」と苦笑を返すしかなかった。月と詠―――賈駆が忙しいのはほかならぬ自分の責任なのだから。
「とーかさまにあかちゃん、うまれるんだよねー!」
「そうだぞー、白はお姉ちゃんになるんだぞー」
桃香が再び身籠ったことが分かったため、普段は一刀付きのメイドである2人は現在桃香の身の回りの世話のために彼女に付きっきりになったため、飾りの花摘みに璃々が散歩がてら董白を連れてきたのである。
「桃香の赤ちゃんの面倒を見てあげるひとー?」
「はーい!」
元気よく挙手する董白の姿に、一刀と璃々の顔に笑みが広まった。
注:このお話では馬岱の子として出てきている馬承ですが、史実では馬秋とともに馬超の子です。
史実の馬岱には子がいないようだったので、馬岱の子にしてみました。
また董白は董卓の孫娘です。董卓に子供はいるのですが、名が明らかになっていないので彼女を子供にしてみました。
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意外と好評をいただいたので、第二弾を出させていただきます。
母親と比べるとすこし性格がおかしいかな?と思うかもしれないですね。