No.750296 リリカルなのはZ 第一話 ユーキャン、始めました。たかbさん 2015-01-10 13:31:43 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2786 閲覧ユーザー数:2580 |
第一話 ユーキャン、始めました。
グランツ・フローリアンが経営するグランツ研究所は荒れに荒れていた。
元は子ども達に明るく楽しんでもらおうと視覚や聴覚などリアルに感じさせるVR型のゲームを作っていた研究所である。
だが、その研究所が大々的に知られるようになったのは一年前、彼等が空から落ちてきてからだった。
まだ、研究所の土台となる開発が進むか進まないかの状態で、グランツ・フローリアンは未だに更地の状態の場所に妻と二人の娘で見学に来ていた。
四方を見渡しても見える建物は背が高いビル群。都会のど真ん中に広大な砂漠が存在しているかのごとく何もない所にフローリアン親子は訪れていた。
ここに立つだろう研究所。施設に将来は子ども達が押し寄せるテーマパークを作る。
それがグランツの、彼の夢だった。
「見事に何もないわね~。これから先が少し心配よねん」
「何を言っているんですかキリエ。ここに私達の、お父さんの研究所が、夢が作られるのですよ!夢と希望と情熱がモリモリあふれてくるじゃないですか!」
ピンク髪の少女キリエに赤髪のアミタは握り拳を作りながら熱く語る。
ここから始まるのだ!夢と希望に満ち溢れた研究所が!私達の夢が作られるのだ!私達の夢はここからだ!と、
「アミタ。それじゃあ、最終回になっちゃうわよ」
「何を言っているんですかお母さん!これからじゃないですか!」
「そうだね。僕たちの戦いはここからだ!」
「フラグ乙~。…て、あらん?何か聞こえない?」
自分の妻に注意された長女につられてコメントした自分に妹のキリエが自嘲気味にツッコミを入れるが彼女自身、この場所に研究所が出来るのが楽しみで仕方がなかった。
そんな時、轟音と共に空から鋼鉄の巨人が落ちて来た。
キリエが聴いたのはその巨人が落ちてくる轟音だった。
最初は小さな星の光程度だったが、轟音が大きくなるにつれてどんどん大きくなっていた。その光も赤く強くなっているではないか。
思わず耳を塞ぎたくなる轟音。そして、目がくらむほど赤く発熱した状態で落ちてくる鋼鉄の巨人。
危険を感じたグランツは自分の妻と娘達を抱きしめ庇うようにその場に伏せた時、巨人は研究所が建設される土地のど真ん中に落ちた。
だが、その時には既に巨人の体は墜落中の衝撃に耐えきれなかったのか空中で瓦解、大気圏突入の熱で体の大部分が燃え尽きていた。
その為に墜落した時には巨人の胴体部分のみ。人が数人に入れるかどうかの大きさのコンテナ状の物だった。
妻と二人の娘に怪我がない事を確認したグランツは巨人が落ちて出てきたクレーターにの中心で淡く光る物体に興味が引かれた。
弱々しく、まるで電気が切れかけた電球のように。それでもその光の中にあるものを守る繭のように光っていた。
そして、その光が消えた時、そこには傷だらけの男性とその体に覆いかぶさるように呻いている金髪の女性が繭の代わりに現れた。
「・・・これは、一体?」
グランツがクレーターの淵を乗り越えようとした時、娘二人に止められた。
好奇心旺盛の父を止めようと二人の娘が彼の体を後ろから押さえつけると同時にクレーターの中心にいた二人の男女に目を向けると、娘達もまたクレーターの中にいた男女に興味が、いや、既視感が湧いた。
「お父さんっ、危ないですよ!…て、あれ?」
「パパ!爆発したらどうするの!って、あれ?」
この二人。どこかで見たことがある。
ただそれは実際にあったわけではない。手紙や文字だけのやりとりをしたわけでもない。
しかも、こんなに大人の彼等ではない。幼い顔の・・・。
そう、研究所が建てられると同時に留学生として預かると約束してい四人娘に出会った時の既視感。
そう、夢で出会った事がある気がしたのだ。
あの留学するあの四人娘を探していたキリエ。それを追ってきたアミタ。
何故か、その四人娘と戦い、いくつかの困難を乗り越えるという夢と言うにはあまりにも濃厚すぎる夢。
しかも姉妹どころか、後に会う留学生の四人もまた同じ夢を見たという。
それを後から知る姉妹だった。お互いにそれを口にしようとした時、呻いていた女性の方がこちらに気が付き、流暢な日本語で声をかけてきた。
助けてください。と、
元々、お人好しなフローリアン親子は二人を保護。
二人の事情をかいつまんで言うと二人はこの世界とは違う時間軸。並行世界、パラレルワールドの住人である。
しかも、この世界に来るきっかけが衛星一つを粉砕するほどの攻撃で起こった時空のひずみに巻き込まれてだという。
あまりにも荒唐無稽な話。
だが、重症の男性。高志が意識を取り戻し、手に握られていた小さなレンチの形をしたキーホルダー。
それはデバイスと呼ばれる異世界の魔法を使う物の道具。
そこには今までの戦闘データが詰まっている。それを解析してもらえばわかると手渡されたグランツ。
そんな大事な物を渡してもいいのかと思ったが、アリシアと高志は自分達を保護してくれたグランツを信じてみることにしたのだ。というか、彼等に頼らないと身動きも取れない状況も後押ししたかもしれない。
その中にあったデータは彼等が話した通りの事の顛末が記録されていた。
その中にあったスフィアという代物。
それをめぐる死闘は見ているだけでも手に汗を握る映像だった。
その映像の証拠として高志の傷だらけの体。疲労しきった肉体はまさに『傷だらけの獅子』のスフィア・リアクターというにふさわしい体つきだった。
そして、それから一ヶ月後。自己修復で完全に直ったガンレオンをセットアップした瞬間。
巨大なロボットがグランツ研究所予定地に再び降りたった。
その巨大さにフローリアン親子は驚きのあまり呆然としていた。研究所職員も呆然としていた。が、グランツさんと男性職員の何人かは子どものように目を輝かせていた。
その隣にいた高志とアリシアも呆然としていた。
なんで巨大化しているの?
いや、ガンレオンと言うのなら四十メートルオーバーになるのは元に戻ったというべきか?
相棒が知らぬ間に急成長した事に驚きを隠せないアリシアと高志。
ゴルディオン・クラッシャーをぶっ放したから非常識とファイナルフュージョンしたのか?それとも天元突破か?ザ・グラッシャーの影響でガンレオンの成長限界をぶっ壊したのか?
これを詳しく説明できる人。・・・あ。
ここにきてようやく、自分達の保護者であり理解者のプレシア。『揺れる天秤』のスフィア・リアクターのリニスの存在を思い出した高志。
完全回復したガンレオンでプレシアとリニスに連絡を取ろうとしたら、着信履歴がずらり。
約一カ月前からこちらに向けてのメッセージが山ほど送られていた。
自分達と同じ時期にこちらの世界にやってきて、激戦をくぐり抜けた後だからか、ボロボロな次元航行艦アースラは月の裏側からメッセージを発信していた。
あちらは自分達がこちら側の世界に転移したのは分かってはいたが、アースラがオーバーテクノロジーであることは高志でも分かっていた。しかも、自分達は過去の世界に来てしまったらしい。下手にこの世界に干渉して自分達の世界に何らかの影響を与えたらやばいので、このメッセージを見たら返信することとあまりこの世界に干渉しないようにと綴られていた。
・・・うん。ばっちり干渉しています。俺等。
ガンレオンのデータをグランツさんに見せたお蔭でグランツ研究所のデータ処理のスピード向上。戦闘データを見せて人工知能達の自己防衛システムの向上。更に彼等が作っているゲームに協力。もっぱらアリシアがミッドで培った疑似スフィア。D・エクストラクターの技術を応用。というか、ほとんどそのまま転用して、自立型思考を持った機械人形。プロトタイプのちっこいガンレオンことチビレオンを生産。研究所の建築に従事させようと検討中です。はい。
なにより、メールの五通に四通はアリシアの無事を聞いてきている。
さらにそのうちの三通は二人きりを良い事にヤラカシテないかを聞いてきている。
ヤラカシタラ、ヤ(殺)られる!
そんな意図が読み取れる内容だったメッセージを見た高志は震えていた。
ま、まだ健全な関係だし…。グランツさんとこにお世話になっている上に留学生の娘さん達がいる場所でそげなことできんとですよ。
というか、あの激闘の前に告白にプレシアさんも納得したのでは?という、俺の意図を知ってか知らずか、『心では分かっても体は正直だから』。そこまで嫌か!俺とアリシアの交際が!
震える指先で返信の操作をして、十分後。
巨大時空戦艦アースラが建設中のグランツ研究所の上空にステルス状態で舞い降りてきた。
人払いの結界をブラスタに乗って現れたリニスが展開すると、ステルスを解き、船から出てくるリニスとそれに抱えられたプレシアが皆の前に降り立つ。
そこにはフローリアン親子と高志、アリシアといった主要関係者だけがいる結界内で高志とアリシアは並行世界で共に戦った家族と再会する。
その際、高志の顔を踏みつけ自分の娘に抱きついたプレシアの姿がとても印象的だったとキリエは語る。
母と娘の再開に涙を流しながら頷いているアミタをよそに、寝癖が立っているリニスを見る限り彼女が寝ている時にメッセージが届き、プレシアに叩き起こされ、急遽アースラを移動させたのだろう。
アリシアの毛先が『傷だらけの獅子』スフィアが放つ緑色に染まっていることにプレシアとリニスは戸惑っていたが、二度の死からアリシアを救ったスフィアに戸惑いはしたものの害はないと判断した二人は、アリシア達がお世話になったフローリアン親子にお礼を言った。
困ったときはお互いさまと言うフローリアン親子に何度も頭を下げる高志達。
さて、これからどうするのか?と、尋ねたフローリアン親子に彼等が答えたのは元の世界に帰るという事。
して、その方法は。この世界に来た時同様に時空。アビスを作って穴をあけてそこをくぐっていく。
ゴルディオン・クラッシャーの費用。
スフィアのエネルギーの応用機関。
さらにそれによっておこる時空震に対する防壁を成すエネルギーフィールド形成のための費用。
更にはボロボロのアースラの修理費用。などなど。
総合の運用費用を見積もると・・・。
那由多って、数の単位ですか?と、高志が尋ねるほどの額にプレシアはもとよりフローリアン親子まで頭を悩ませた。
しかも、いきなりぶっつけ本番を行い失敗するわけにもいかないので試験運用も考えると更に倍となる。
そんなお金を持っているわけがなく、というか異世界の人間なので事実上無一文の自分達だけでは帰れない。
だが、この世界に干渉しすぎれば元の世界に戻れない可能性も出てくる。
とにかく、お金と時間。設備を整える環境が無さ過ぎる。その事を告げるプレシアとリニスに救いの手を差し伸べたのもフローリアン親子だった。
とりあえず、オーバーテクノロジーを所有していると勘ぐられない程度に自分達が持っている技術を親子に提供。その時に発生した利益の何割かをプレシア・リニスに渡す。
プレシア・リニスは科学者としても優秀なので研究所の手伝いをしてもらいながら元の世界に帰る為の研究。及び従業員として働く。
アリシアもそれなりに科学者として働ける技量は持っている。
そんな中で最終学歴が小学校中退と言う履歴を持つ我等が『傷だらけの獅子』は土木作業員兼ガンレオンの劣化バージョン。作業用ロボット『ダイガード』のテストパイロットを務めることにした。
戦う(体を動かす)事でしか自分に価値が見いだせない現『傷だらけの獅子』は静かに涙をこぼすのであった。
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『傷だらけの獅子』がゴルディオン・クラッシャーを放ち巨悪を叩き潰した際に発生した次元振動により過去の世界に飛ばされたアリシア達。
そこは自分達が知っている世界とは少し様子が違う世界だった。