No.751202

リリカルなのはZ 第二話 『傷だらけの獅子』。その表と裏。

たかbさん

 第二話 『傷だらけの獅子』。その表と裏。

 説明会。
 転移してきたガンレオンの対処を追う者。追われる者達の説明回です。

2015-01-13 19:06:26 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2281   閲覧ユーザー数:2117

 第二話 『傷だらけの獅子』。その表と裏。

 

 プレシアとリニスが作り上げたシステム。自分の動きをロボットに反映させるモビル・トレース・システムというもので、事実上着ぐるみを着た作業員である。

 日本の防衛省に『ダイガード』の設計図を特許と共に早い段階で出しているが、人型ロボットで作業するより重機でやったほうが早いし、整備にも手間がかからない。

 だが、今回のように使徒とケルビムのような存在が世間にも知られるようになると考え方が変わってくる。

 怪物と戦いながらも、戦闘後は戦災にあった場所へ赴き、地面や建物の修理。そして、治安維持に効果を発揮したガンレオンの姿に世間は踊らされるように人型ロボットを作れといってくる。

 

 とりあえず、日本国では『ダイガード』の後継機『コクボウガー』を作ることが決定した。勿論、そのロボ名を命名したのは高志である。

 

 と、同時に巨大人型ロボット。エヴァンゲリオンがネルフと言う組織にあるという事が知れ渡る。

 この世界は十五年前にセカンド・インパクトという正体不明の大爆発が起こり、北極が消滅。現地で生き残った人達の証言からその大爆発はそこに突如現れた巨大生物が起こしたものであり、それがもう一度起これば人類は滅びるとも言われている。

 そんなことを世間一般に知られれば世界はパニックに陥るだろう。

 だが、ガンレオンという自分達の心強い味方。わかりやすい希望を同時に発表すればパニックも無くなるだろう。

 

 ガンレオンの所有権をめぐって、

 

 A国『あれは我々が管理するのにふさわしい!』とか、

 C国『あれは我々の国の技術の結晶だ!』とか、

 K国『あれは我々が作り出したものだから我々の物だ!日本がパクリやがった!』とか、

 

 そんな論争があった位である。

 

 日本国に散々な要求を今も繰り返しているが、そこはスーパー助手のリニスが穏便に対応している。うちに手を出したらただじゃおかないと円盤状のチャクラム。SPIGOT(1メートルサイズ)で各国のお偉いさんに脅迫も植えつけて・・・。

 UFOのごとくプカプカ浮かぶその円盤が近くにあった机をバターを切るかのごとくすっぱり切り取った。しかもそれはステルスで搭載されているのか、金属探知機も反応しなかった。

 いつ、どこから襲い掛かってくるか分からない円盤をみた彼等はフローリアン研究所においそれと接触しようとは思わないだろう。

 というか、ガンレオンを作れるのなら最初から作ってみやがれと言いたい。

 ガンレオンの設計図を知っているのはプレシアとリニス、アリシアのみ。

 教えたのは劣化コピーの『ダイガード』のみ。フローリアン親子だって知らない。

 知れば狙われることが分かっているのでお互いにそこは不干渉を徹底している。

 ちなみに日本国からも「『ダイガード』の設計図通り作っているけど、ガンレオン程滑らかかつ頑丈に作れないんだけど・・・」と、再三お願いされているが作る人とパイロットの技術次第だ突っぱねていた。

 

 

 そんな世界の注目を浴びているガンレオンは今、沖縄で使徒とケルビムの被害にあった町で自衛隊の皆さんと共に復興作業に勤しんでいた。

 

 「よーし、これで避難民全員の仮設住宅は設置完了だ!でかいの、お疲れさん!」

 

 『いえいえ、そちらこそ。食料の配給やライフラインの復旧作業ありがとうございます』

 

 「何言っていやがる。その資材を持ち込んだのはお前だろうに!」

 

 『準備してくれたのはそちらですし、ここはお互いさまと言う事で』

 

 「それもそうだな!がっはっはっは!」

 

 気のいい自衛隊の隊長と巨大なロボットがお互いに自分達の作り上げたつぎはぎだらけだが人が住める街並みに満足感が溢れていた。

 怪物に壊され、焼かれ、住む場所を失い、愛すべき家族を失った人達。それでもこの大地に誰かが生きている。

 それを支えるのは自分達であり、守るべき人達だとお互いにわかっていたからこそ笑いあえたのだ。

 ひとしきり笑いあった後、小隊長は静かに語りかける。

 

 「もう、行くのか?」

 

 『はい。これ以上ここにたら権力(ちから)を持った馬鹿が来ないとも限りませんし、下手な扱いをされる前に東京に戻ります』

 

 突如現れた鋼鉄の巨人だったが自分がどういう存在かをよく知っていた。

 絶大な力を持ちつつも驕らず、誇らず、自分を必要以上に語ろうともせずに元からそこにはいなかったという事にしてくれと戦災復興時にお願いしてきた巨人に自衛隊は難色を示した。

 奴は一体、何が狙いだろうと怪しんだ人達もいたがこちらの返答も聞かずにがれきの撤去に移ったガンレオンを止めようとする人間はいなかった。

 いや、むしろそうする力が無かったかもしれない。中にはまた自分達の街を壊しに来たのかと罵声を浴びせる輩もいたがそんな人達にも避難所が設立された場所を教えたり、他に人がいそうな場所はいないかと、尋ねるガンレオンの姿に自衛隊だけではなくそこにいた住人達も見て見ぬふり。もしくは協力するようになった。

 

 「化け物退治に戦災復興か。・・・震災にセカンド・インパクト。俺は自衛隊に入隊してから二十年は経つが俺らが活躍する時は、いつも誰かが辛い時なんだと思うよ」

 

 『・・・』

 

 「俺は無用の長物でいたい。お前は自分の事をどう思っている?」

 

 今は自分達を助けてくれている存在を少しでも知りたい。

 いつの間にか、他の自衛隊の人達。被災した人達までもがガンレオンの周りに集まっていた。

 

 『・・・俺は自分が惚れた女の傍にずっといたい。そうなりたいと思っています』

 

 「・・・そうかい。それじゃあ、精々その女のご機嫌取りをしないとな」

 

 『今のあなた達を見れば十分ですよ』

 

 その言葉に小隊長は安堵した。

 人々に罵声を浴びせられ、いずれは世界中から狙われる。その事を理解しながらも鋼鉄の巨人は自分達を助けてくれた存在は敵に成り難い存在と言うことが分かっただけでもいい収穫だ。

 転移する為の魔方陣を足元に広げると自衛隊だけでなく避難してきた人達も驚いた。

 これから転移しますので離れてください。近づくと危ないですよ。と、伝えると小隊長が魔方陣から離れると同時にガンレオンに向かって敬礼をする。

 

 「貴君の助力により、我々はここの人達の多くを助けることが出来た!彼に向かって敬礼!」

 

 その声に従って敬礼をする自衛隊員にガンレオンも敬礼して返す。

 緑色の光に包まれながらガンレオンはその場から転移していった。

 

 後に、沖縄の狛犬。シーサーのデザインが犬というよりも獅子の風貌に変わり、自衛隊のような縞模様が彫られた彫像が建てられるのはそれからしばらく経っての事であった。

 

 

 グランツ研究所に設けられた会議場で、そこでのロボット開発責任者のプレシア・テスタロッサと研究所所長のグランツ・フローリアン。

 時空管理局側から、クロノ・ハラオウン。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。

 そして、NERVという組織から赤城リツコ。葛城ミサト。

 日本の防衛省長官、日ノ本始(ひのもとはじめ)。

 そして、各護衛としてSPやボディーガードを集めた会議場で今回起きた事件。

 髑髏の仮面をかぶった使徒や骸骨を思わせるケルビムの風貌を見てSKL(スカル)事件と銘打った内容について話し合いがされていた。

 

 「では、あれは既に国に提出されている物。と言われるのですね。ですが、こちらではあなた方の黄色いロボット。ガンレオン程の出力が出ません。それについてお答えできませんか?」

 

 「あれは今も我々の研究所で回収作業している『ダイガード』の整備ロボットです。『ダイガード』を作るのにはそれ以上の力を必要とする物でしょう。いわば回収型。『ダイガード・試作機』とでも言いましょう。アレはコストパフォーマンスがとても大きいので、そちらにお渡ししたのはコスト的には改良した物です。パワーを上げたいのならそちらのNERVでしたかしら、そちらのロボットが扱うエンジンでものせればいいじゃないですか」

 

 つまり、ガンレオン程の出力があるものを作りたかったら自分で金をかけて作れと言っているプレシアに渋い顔を見せる代表者達。

 というか、フェイトとクロノが使徒と戦う前に紫色のロボットが使徒と交戦。だが、海上と言う不慣れな場所で戦闘の所為で、大した戦果も上げられずに撤退。しかもパイロットが負傷。その間、代わりのパイロットが育つまでガンレオンを貸してほしいというのがNERVの用件。

 それに対してプレシアはきっぱりNOと言い放った。

 理由として、訳の分からない機関にガンレオンを預けたくない事。

 パイロットである高志。アリシアの情報を取られたくないという事だった。

 

 「防衛省の作っている『コクボウガー』についてはアドバイスや助言などの支援は致します」

 

 「なっ?!いつ使徒が襲ってくるか分からないのにそんな由帳な事を言っている場合ですか!」

 

 葛城ミサトはガンレオンのデータが取れれば自分達の持つ人造兵器エヴァンゲリオンの強化に充てることができるかもしれないのだ。

しかも、使徒はエヴァでしか倒せない。その仮説を真っ先に砕いたのはガンレオンである。

ガンレオンの劣化コピーと思われる『ダイガード』『コクボウガー』等は訓練次第で誰でも乗れるということはガンレオン自体も訓練次第で乗れるという事だ。

 もし、それが行えるのなら・・・。

 ミサトは自分の中にある感情を抑えきれず椅子から立ち上がりながらプレシアに詰め寄ろうとした。だが、それは小さな杖を突きつけて制止する小型の自立人形によってそれを止められた。

 チビレオンがミサトの喉元に自身よりも大きなレンチを突きつけていた。彼女がそれ以上進めば喉を潰していただろう。

 

 「その為に貴方達、NERVがあるんでしょう。あくまで個々のロボットはレジャー・アトラクション用。兵器の開発がしたいのなら既にお渡しした資料で。私達の研究所はレジャー施設ですので軍事関与は可能な限りしたくないので」

 

 同じ科学者としてのリツコは悟った。これ以上彼女から引き出せる情報はない。

 少なくてもこちらから譲歩。もしくは、盗み出す以外ほかない。と、

 

 「・・・では、そちらの方にお伺いします。時空管理局からおこしのクロノ・ハラオウン。フェイト・テスタロッサ・ハラオウンさん。お二人は先日、使徒と生身と言っていいほどの戦いを挑みましたね?そちらはどのような理論であのような戦闘を?」

 

 「一言でいえば、魔法ですね」

 

 「・・・今、何と?」

 

 「魔法ですよ。魔法。我々魔導師にはリンカーコアと言う特殊な器官のような物が生まれつきあり、そこから発せられるエネルギーを魔法の杖。デバイスを通して発動させることが出来ます」

 

 このようにね?

 と、クロノは自身が持つデバイスS2Uを起動させていくつかの光球を生み出して見せる。

 その光景にミサトとリツコは唖然とした。

 まさに非科学な現象を見せつけられていたからである。

 

 「そ、それは我々にもできるのでしょうか?」

 

 「調べれば可能かどうかはわかりますが、我々としてもその情報に関してはどうすべきか本部で検討しています」

 

 異世界の技術をこの世界に伝えればどうなるか。下手すれば異世界間での戦争になる。そうなれば時空管理局の持つ最大火力、アルカンシェルで地球全体を更地に変える可能背もあるからだ。

 宇宙からの砲撃。しかもそれが地球からでは対処できないほどの物量で攻められてはたまったものではない。

 もちろん、地球からの亡命と形で管理世界に逃げ込むというものがあるが、住み慣れた土地。というか、世界を見捨てるというわけにもいかない。地球に住む人間は百億近い。

 それだけの数の人間を受け入れるにもかなりの期間を要する。

 亡命した後は。彼等の世界観と管理世界の世界観は大きく異なる。それが元で争いになる。そういった事もあり、魔導師の事は箝口令が敷かれた。

 

 

 

 つまりは地球の事は地球でどうにかしろと言うことになる。

 

 

 

 管理局からはその土地に愛着がある。ハラオウン一家と八神一家の関係者のみが支援してくれることになった。が、それでも足止め。いや、撹乱くらいが限界だ。

 決定的な支援。かつ、恒久的な支援を受けるにはグランツ研究所しかなかった。

 そのグランツ研究所もガンレオンの所有権・データをよこせと各国から要求されている。

 それを現在、単独で行動しているリニスが対処している。今頃は、イギリス。もしくはドイツ辺りにいるだろう。

 

 「・・・わかりました。今回はこれで失礼させてもらいます。こちらはこちらで予備のパイロットの訓練を行わなければいけないので失礼させてもらいます」

 

 「いえいえ、御足労ありがとうございました。ところで葛城ミサトさん。赤城リツコさん。そして、日ノ本始さん。お伺いしたい事があるのですが」

 

 「何でしょうか?エヴァのことはこちらからはお話することはありませんが」

 

 「いえ、ね。そちらの工作員は捕えられた時、どのように対処すべきなのでしょうか。と、お聞きしたいのですが」

 

 にこやかに。されど、その瞳の中に宿った怒りの色に三人は気圧される。

 壁に備え付けられたモニターに映し出されるNERV.及び日本の工作員が二投身のロボットチヴィット達に拘束されている姿が映し出されていた。

 

 「未知のモノに対して警戒するのはわかります。ですが、今後このような事があった場合は私の単独であなた達の施設を丸ごと吹き飛ばすのでそのおつもりでお伺いしてください」

 

 先に仕掛けたのはそちら。そして殲滅されてもおかしくはない。と、脅しをかけるプレシア。

 彼女の傍で冷や汗を流しながらも静観していたグランツのお人好しさに付け込まれる隙を与えないプレシアにNERVだけでなくクロノ。そして、フェイトは戦慄を覚えたのだった。

 


 
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