No.739462

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第384話

2014-11-25 14:14:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1588   閲覧ユーザー数:1452

 

 

 

郷を見回る前に実家を見回っていたリィンは書斎にいるアリサを見つけて声をかけた。

 

~シュバルツァー男爵邸~

 

「アリサ……?何をしているんだ?」

「その、工具の場所をおば様に聞いたらここにあるとおっしゃったから。ちょっと導力バイクを整備してあげようと思ってね。」

「導力バイクの整備、できるのか?」

導力バイクがジョルジュ達によって創られた物であり、通常の導力機械の整備とは異なる事を知っていたリィンは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「まあ、エンジン周りの整備くらいならできると思うわ。アンゼリカさんの大切なバイク……後輩の私が万全にしておいてあげないとね。」

「(俺も手伝った方がいいかもしれないな。)アリサ、よかったら俺にも手伝わさせてくれないか?先輩からバイクを譲り受けた者としての、役目でもあると思うから。」

「リィン……ふふ、そうね。だったら二人でやりましょう。せっかくの導力バイク、ベストな状態にしてあげないとね。」

そして二人は導力バイクの整備を始めた。

 

「うん、導力エンジン周りはこれで問題なさそうね。そのうち走行テストも兼ねて再整備の必要はありそうだけど……あ、可動部にもちゃんとオイルを差してあげないと。」

「はあ、すごいな。アリサが導力関係に強いのはわかっていたんだが。まさかここまでちゃんとした整備ができるなんて。」

導力バイクの整備を手際よくしているアリサをリィンは感心した様子で見つめていた。

 

「まあ、あくまで応急的な処置だけどね。士官学院で何度か見せてもらっていたし。」

「いや、十分すごいって。以前、ノルドの実習でも導力車の故障原因を見抜いたり、迫撃砲の型番を言い当てていたし……さすがラインフォルト社の令嬢――――って片付けるのはちょっと浅慮に思えて来たな。たゆまぬ努力の結果だろうな。」

今までの経緯でアリサが見せたアリサが持つ導力関係の知識を思い出したリィンは苦笑しながらアリサを見つめた。

「ふふ……確かに導力関係は士官学院に行く前から猛勉強していたわね。RFの人間である立場を利用して各部署の工場を見学させてもらったり、工科大学の授業に参加したり。独学なりに、やれるだけんことはやってきた自信はあるわ。」

「……何となく努力の理由はわかる気はするな。やっぱり、イリーナ会長への対抗心みたいなものか?」

「まあ、身も蓋もないことを言ってしまえばね。……父様が亡くなって母様は”家族”を省みなくなった。挙句、お祖父様を追い落としてRFグループ会長にまで上り詰めてしまって……私はそんな母様の鼻を少しでも明かしたかったのかもしれない。」

リィンに図星を言い当てられたアリサは当時の自分を思い返しながら答えた。

 

「……そうか。それで……少しは鼻を明かせたのか?」

「……いいえ、全然ね。この内戦で母様が行方不明になって、それどころじゃなくなってしまったし。でも―――今はみんなと。とことん前に進むと決めたから。前の実習で母様に言った、自分の道を示すという約束を果たすためにもね。」

「アリサ……」

導力バイクの整備を終えたアリサが立ち上がるとリィンはアリサの頭を優しく撫でた。

 

「え……」

(うふふ、さすがご主人様♪釣った魚にもちゃんと餌を与え続けているのもご主人様の良い所よね♪)

(つ、”釣った魚”って……)

(ふふふ、だからこそご主人様に惚れた女性は皆、ご主人様が新しい未来の伴侶を増やして怒っても、結局最後は許しているのではないですか?)

(フフ、そうかもしれないわね。)

(いいな~、アリサ。頭を撫でてもらうのって凄く気持ちいいんだよね~。)

呆けているアリサを見たベルフェゴールの念話を聞いたメサイアは表情を引き攣らせ、リザイラの念話を聞いたアイドスは微笑み、ミルモは羨ましそうな表情をしていた。

 

「はは、一生懸命にやってて頭に雪が積もってたからさ。……俺も、負けていられない。絶対にこの内戦を乗り越えて、自分の道を見つけてみせる。一緒にがんばろう、アリサ。」

「リィン…………」

リィンを見つめたアリサの脳裏にふとある出来事が思い浮かんだ。

 

そんなに泣かないで……ほら、これで元気だしなよ。

 

ぐすっ……雪でできたうさぎちゃん……?

 

ほら、頭に雪が積もってるよ。だいじょうぶ、僕が君を郷まで送り届けるから。しっかりついてきて。

 

う、うんっ……!

 

「―――ああああああっ!?」

幼い日の出来事を思い出したアリサは突如声を上げた。

「!?ど、どうした!?」

「お、思い出したの!9年前の家族旅行でユミルに来たあの時……私、誤って一人で雪山に迷い込んでしまって!そこで男の子に会って、郷まで送り届けてもらった……!あれ、間違いなくあなただわ!」

(あらあら♪とても素敵な事実が発覚したわね♪)

(ふふふ、二人の場合だとむしろ過去にそのような出来事があってもおかしくないですね。)

(まあ……フフ、それがお二人の”運命の出会い”だったかもしれませんね。)

(そうね………そして再会して結ばれるという素敵な”運命”が待っていたようね。)

アリサの話を聞いたベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、メサイアとアイドスは微笑ましそうに見守っていた。

 

「言われてみれば、なんとなく覚えがあるような……その翌年くらいに例の事件もあって、記憶も曖昧になっていたし……その、じゃあ……俺達、本当に昔会っていたのか?」

「そ、そうかも……怖い思いでだったからか、私もすっかり忘れてたけど……」

二人は黙り込んだ後やがて苦笑し始めた。

 

「……はは。なんて偶然だ。運命……なんていうにはちょっと恥ずかしいけど。」

「フフッ、そうかしら?あの時出会った私達はそれぞれの”道”を見つける途中で再び出会って、将来結ばれる事になったんだから、”運命”だと思うわよ?その……私、リィンがあの時の男の子だって思い出した時、凄く嬉しかったわ……」

「ア、アリサ……」

頬を赤らめたアリサの言葉にリィンが顔を真っ赤にしたその時

「リィン……ん……大好き…………ちゅ……れる……」

(アリサ……)

(えへへ、二人は相変わらず仲良しだね~。)

アリサはリィンと深い口付けを交わし、その様子をミルモは嬉しそうに見守っていた。

 

「そ、その、改めてになるけど、これからもよろしくお願いするわ。」

「あ、ああ……こちらこそ!」

その後、照れた心地になりながらも協力して導力バイクの整備を済ませ……一緒にシュバルツァー男爵の書斎に工具を戻したリィンは郷の見回りを始め、雑貨屋にいるシャロンを見つけるとシャロンの行動が気になり、声をかけた。

 

 


 
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