No.739505

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第385話

2014-11-25 18:31:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1468   閲覧ユーザー数:1340

 

 

 

~温泉郷ユミル~

 

「シャロンさん、買い物ですか?」

「ええ、皆様が鳳翼館で話し合われるとのことですし、厨房をお手伝いしようかと。それと、所用で出かける奥様の代わりに、男爵閣下のお食事の準備もありまして。」

「なるほど……それは助かります。」

「…………”怪盗紳士”や”神速”に加えて”劫炎”まで現れた状況……結社の動きは気になりますが、わたくしは皆様と共にありますわ。どうか、Ⅶ組として悔いのない決断をしてくださいませ。」

現在の状況を改めて思い返したシャロンは真剣な表情でリィンに激励の言葉を送った。

「シャロンさん……ありがとうございます。なんとかみんなで考えてみます。」

「ふふ、応援していますわ。」

「(それにしても父さんの食事か……俺も手伝ってみるかな?)これから父さんの食事を用意するみたいですけど、俺にも手伝わさせてもらえませんか?その、今のうちに少しでも親孝行をしておきたいですし。」

「リィン様……ふふ、男爵閣下もさぞお喜びになりますわ♪それでは買出しを済ませて厨房に参りましょうか。」

リィンはシャロンと共に屋敷の厨房に向かい……ルシア夫人が所用で出かけている間に、シュバルツァー男爵の食事作りを手伝うのだった。

 

~シュバルツァー男爵邸~

 

「へえ、作るのはユミル風のボルシチですか。野菜もたくさん採れますし身体が温まりそうでいいですね。」

「ふふ、それにお肉のタンパク質は男爵閣下の怪我の回復にいいはずですわ。では、リィン様はお野菜のカットを。わたくしはその間にお肉の下ごしらえとスープの味付けをしておきますわ。」

「ええ、了解しました。」

そして二人は手分けして食事を作り始めた。

 

「~~~~~~♪」

「(……なんだかこうしていると本当に穏やかだよな。第3学生寮でのシャロンさんを思い出すというか……実は結社の執行者なんてのも本当じゃないような気がして……)痛つ………っ!」

鼻歌を歌いながら料理をしているシャロンを見ながら野菜を切っていたリィンは余所見をしていた為、包丁で指を切ってしまった。

「まあ、リィン様。いかがなさいましたか?あらあら、大変ですわ。指を切ってしまわれて……」

リィンの様子に気付いたシャロンはリィンに近づいて血を流しているリィンの指に視線を向けた。

 

「……はは、すみません。ちょっと考え事をしていて。大丈夫です、そんなに深くありませんから。」

「いけませんわ。すぐに血を止めませんと。じっとしていてくださいませ。」

シャロンの言葉にリィンが首を傾げたその時シャロンはリィンの指を自分の口に咥え込んだ。

 

「あむっ。」

「シャ、シャロンさん!?(う、うわ……)」

(ふふふ、昨夜あの軍人の”全て”を奪って何度も彼女の身体を貪った上、自分の将来の”妻”の一人にしたばかりだというのに”この程度”で慌てているとは、ご主人様の感覚は相変わらず理解できませんね。)

(ご主人様の初心な所はいつまで経っても直らないのが可愛くて素敵よね♪)

(クスクス……だからこそ今の状況になったのかもしれないわね。)

(ア、アハハ……た、確かにアイドス様の推測は一理あるかもしれませんね……)

シャロンの行動に慌てているリィンの様子をリザイラとベルフェゴールは微笑ましそうに見つめ、アイドスの推測を聞いたメサイアは冷や汗をかいて苦笑していた。

 

「はい、これで大丈夫ですわ。」

「シャ、シャロンさん。いくらなんでもそれは……」

「ふふ、どうかいたしましたか?絆創膏を持ってきますからそちらのお部屋でお待ちください♪」

リィンが焦っている様子を面白がるかのようにシャロンは微笑み

(からかわれているな……多分。ふう、心臓に悪いというか。)

自分がからかわれている事に気付いたリィンは疲れた表情をした。その後別室でシャロンの手当てを受けた。

 

「これでばっちりですわね。あとはわたくしに任せてリィン様は休んでいてくださいませ。」

「ふう、すみません。お役に立てなくて。」

「ふふ、いえいえ。とても助かりましたわ。アリサお嬢様の幼い頃を思い出してなんだか懐かしい気分になれましたし。お嬢様も転んでヒザをすりむいては、泣きながらわたくしの名前を呼んでくださったものですわ♪」

「はは……微笑ましいですね。(アリサは恥ずかしがりそうだけど。)確かラインフォルト家には7年ほど前にいらしたんですよね?」

シャロンの話を聞いて思わずその光景を思い浮かべて苦笑したリィンはある事を思い出して尋ねた。

 

「はい、旦那様―――お嬢様のお父上がお亡くなりになってからでしたわね。雇っていただいたイリーナ会長には、感謝してもしきれませんわ。わたくしに”メイド”という道を与えてくださった恩人ですから。」

「それじゃあ……ラインフォルト家に来てからメイドを始めたんですか?それ以前は――――あ。」

シャロンの話を聞いたリィンは驚いた後シャロンの正体を思い出して気まずそうな表情をした。

 

「……ふふ、そうですわ。わたくしはそれまでずっと”執行者”としてのみ動いていました。最初にラインフォルト社へ来たのも、結社に与えられた使命の一つとして……そこでイリーナ会長と出会い、ヘッドハンティングされまして。それからはメイドと執行者の二足のわらじになりますわね。」

「結社の人間をスカウトって……イリーナ会長って、やっぱり只者じゃありませんね。」

「クスクス……会長だけでなくヨシュア様を引き取り、”光”の道へと導いたカシウス様とエステル様……そしてあのレーヴェ様をも”光”の道へと導いたプリネ様も只者ではありませんわよ?」

「た、確かに言われてみれば……」

シャロンの話を聞いたリィンは自分が知る元執行者達―――ヨシュアやレーヴェ、二人を結社から抜けさせた人物達を思い出して冷や汗をかいた。

 

「話を戻しますがイリーナ会長のおかげでわたくしは、ようやく自分の道を見つけられました。もはや後戻りはできない身ですが、それでも……」

「シャロンさん……」

「ふふ……何でもありませんわ。とにかく、これから何があろうとわたくしの愛と献身は揺るぎませんわ。ラインフォルト家のメイドとしてだけではなく、Ⅶ組のみなさんのために誠心誠意尽くさせていただきますから♪」

「……はい、よろしくお願いします。俺達もそれに応えられるよう、精一杯頑張らせてもらいます。」

その後、シャロンは手早く料理の下ごしらえを済ませ……結局ルシア夫人が戻ってくるまでできる限りの手伝いだけしてからその場を後にしたリィンは郷の見回りに戻り、宿酒場にセリーヌと共にいるエマに話しかけた。

 


 
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