No.693950 真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第四十三話2014-06-14 21:08:14 投稿 / 全10ページ 総閲覧数:7002 閲覧ユーザー数:4974 |
~???~
「お呼びでございますか?」
「『お呼びでございますか?』ではないだろうが!一体何時になったら我々は中原に討って
出る事が出来るのだ?お前はその地ならしをするという条件で我々の下に来たのではなか
ったのか?役に立たない老人にただ飯を食わせる余裕など無いと前にも言ったはずだぞ?」
そう言い放たれた『老人』は唇を歪ませながらも答える。
「も、申し訳も…今、全力を挙げて協力者に連絡を取っておりますれば、そう遠くない内に
吉報をお届け出来るものと…」
「その言葉も既に十回は聞いている。一月以内に何かしらの動きが無い場合はお前達の身の
安全は保証出来ないからな」
主らしき男はそう言って席を立つ。言われた老人は苦々しげな顔をしながらもそれをただ
見送る事しか出来なかった。
・・・・・・・
「くそっ!何故この儂が蛮族如きに…それもこれも全ては劉弁と死んだ劉宏のせいだ!」
自室に戻った老人はそう苛立ち紛れにに叫んで椅子を蹴飛ばす。
「…ただいま戻りました」
「おおっ、戻ったか。どうであった?儂が戻ったらどれだけの兵が呼応するのだ?」
そこに戻って来た部下に老人はそう問いかける。しかし、
「…呼応すると約束してくれた者は全部で千人程、しかも私がこっちに戻る前に全て禁軍と
諸侯の軍により壊滅させられました」
その報告に老人は固まるしかなかった。
「なっ…そもそも千人とはどういう事だ!?お前は誰に話を持ちかけたんだ!?」
「…話を聞いてくれたのは并州にいた黄巾党の残党勢力のみでした。それでもようやく千人
まで集めた矢先に禁軍に攻められて…その軍を率いていたのは北郷という者だそうです」
報告の中に一刀の名を聞いた老人は忌々しげに唇を震わせる。
「なっ…くそっ、またしてもその北郷とかいう奴か!おのれおのれ…奴のせいで儂は皇帝へ
の道も益州すらも失ったのだ!見ておれよ…いずれお前の首はこの劉焉が引っこ抜いてや
るからな!」
おそらく既に分かっていた事とは思うが、この老人は劉焉である。一刀によって劉璋が救
い出され、その下で益州が制圧された後、ほとんど身一つで落ち延びた劉焉は這う這うの
体で旧知の五胡のとある部族の長の下に身を寄せ、中原制圧の為の地ならしをするという
条件で保護を受けている状態であったのである。
「…劉焉様、それと南蛮の連中からこちらに協力するという返答が届いております。そう遠
くない内に行動を開始するとの事です」
「南蛮の連中か…奴らが一体どこまで役に立つのか皆目見当もつかんがな」
「…あんな連中でもこちらが動き出すまでの時間稼ぎ位にはなるかと」
「そうよな、精々我らの決起の為の時間稼ぎの為に頑張ってもらわなくてはな…孟達、すま
ぬがその事を部族長殿に伝えておいてくれ」
「…了解しました」
(見ておれよ、今度こそ儂が覇を唱える時ぞ!)
劉焉は暗い眼をしながらそう思っていたのであった。
その頃、洛陽にて。
「どうしたどうした!二人とも、そんなのではまだまだ安心して戦場を任せる事など出来な
いぞ!」
そう言っている空の前で膝をついて肩で息をしているのは…華雄と霞であった。
「はぁっ、はぁっ…まさかこないに手も足も出んて、まるで悪い夢でも見てる気分や」
「く、くそっ、あの人は本当に人間なのか…張遼と二人がかりなんて武人としての矜持がな
どと思ってる場合では無かったという事か」
二人はそう悔しさをにじませながら呻くように言っていた。
「まさか此処までなんて…あの人一人でもう全部の敵を葬れるんじゃないの!?」
「詠ちゃん、軍師がそんな事言ってたらダメだよ」
それを見ていた詠がそう呟くのを月が横でそう言ってたしなめていた。
・・・・・・・
「そういうのがあるんだったら恋も参加したかった」
次の日、朝議の席で話を聞いていた恋の第一声がそれであった。
「そうか、呂布が相手ならさすがの李通殿も手こずったかもしれんな」
「何を言うのです!恋殿なら李通殿など鎧袖一触なのです!」
華雄の言葉にねねがそう反応するが、
「ほう、そうなのか?ならば是非一度手合わせ願いたいものだな」
「えっ!?ええっと、その…れ、恋殿ぉ」
当の空がその場に入って来た途端にしどろもどろになって恋の後ろに隠れてしまっていた。
「さて、皆揃ったな。では朝議を始める」
半刻後、皆が揃って玉座の間に揃うと、命のその一声で朝議が始まる。
「まずは、幽州・冀州方面の報告から…」
・・・・・・・
そして特にこれといって変わった報告も無く、このまま解散になるかと思われたその時、
「申し上げます!益州の劉璋様より火急の使者が参っております!」
その報告に場は騒然となる。何故なら基本的に定時報告は全て連絡役である燐里と李厳さ
んを通じて行われているからだ。それがわざわざ直接の使者、しかも火急という事は間違
いなく只事では無いという話だからだ。
「まずはその使者に会おう、此処へ通せ!」
・・・・・・・
「…劉璋様より以上を仰せつかってまいりました」
使者の人の話を要約すると、西方の五胡と南方の南蛮の動きが活発化し、特に南蛮の連中
が交州方面を窺う動きを見せているが、鈴音達は五胡の備えで精一杯の為、南蛮の方はこ
っちで何とかしてもらえないだろうかという事であった。
しかし鈴音からそういう報告が来る以上、交州に派遣した役人や武官達は既に南蛮の手に
落ちたか逃げ出したかという事なのだろう。幾ら辺境の地に行かされたからとはいえもう
少し頑張ってほしいものだが。
「ふむ…南蛮の連中が何の目的で動いているかは分からんが、このまま野放しというわけに
もいくまいの。此処はこちらより正式な討伐軍を出すべきと妾は思うが、皆はどうじゃ?」
命の言葉に異を唱える者はいなかったが、
「南方ばかりに眼を向けている隙に北方でも動きが出るかもしれません。余力はしっかりと
残しておくべきかと」
瑠菜さんのその進言が入れられ、交州組と洛陽残留組とに分けられる事となった。
・・・・・・・
それから数日後、潁川郡にて。
交州行きの軍は俺が指揮を執る事になった加減で、此処は交州へ行くメンバーの集結地点
となり、続々と各軍が集まってきていたので当然の事ながら俺達北郷組の面々がその世話
役に回っていた。
「一刀様、これよりしばらくよろしくお願いします!」
「凪が来てくれるなら心強い限りだ、よろしく!」
「…ウチもおるんやけど」
「ごめん、ごめん、真桜も頼みにしてるよ。ところで沙和は?」
「沙和は洛陽に残留です。樹季菜様が残る以上、三人共がこちらにとはいきませんもので」
沙和一人か…それじゃさすがにサボるわけにもいかないだろうな。
「恋もいる…」
「ねねもいますぞ!董卓軍からは以上四人が交州行きに参加なのです!」
霞と華雄が残留か…あの二人なら率先してやってきそうな気もしたが。
「霞殿と華雄殿は北方の五胡と対峙する時に備えて詠が残したのです!」
…これは丁寧な説明痛み入ります。
「北郷、今回はあなたの指揮下に入るわ。よろしく」
今度は曹操さんが俺に挨拶をしてくる。
「よろしくお願いします、曹操さん。でもあなたご自身がまさか来られるとは思いませんで
したよ」
「ふふ、それは是非一度あなたの事をすぐ近くで見て見たかったからよ」
えっ!?俺の事を…まさか…いやいや、そんな意味じゃないだろう。軍の指揮とかを見た
いとかそういう意味だろう…でも、わざわざ俺の指揮なんて見る価値も無いだろうし…。
「何をぶつぶつ言ってるの?」
「へっ!?…いえ、何でも」
「そう?ふふふ、変な北郷」
曹操さんはそう笑いながら自軍の方へと戻っていった。
ちなみに曹操軍からは曹操さんの他は許褚ちゃんと典韋ちゃんが参加する事になっている。
・・・・・・・
「ほ、北郷様!この度はお世話になります!!わ、私は、孫策の名代として参りました妹の
孫権です!よろしくお引き回しの程を!!」
…相変わらず孫権さんは堅いな。今からそんなんじゃ交州へ着く前に倒れてしまいそうに
も思うが…おや?
「今回は雪蓮だけでなく冥琳や祭さんも来ないんだね」
(ちなみに一刀はその三人からは真名を預かり済である)
「は、はい!姉様達は建業にて不測の事態に備えると…だ、だから、今回は私が…」
なるほど、だから孫呉からのメンバーは孫権さんの他は甘寧さん・周泰さん・陸遜さん・
呂蒙さんで経験豊富なご歴々は後方待機というわけか。
結局、孫権さんはカチカチのまま自軍の方へ戻っていったのであった。
「あの~…」
「ああ、張勲さん。お身体の方はその後どうですか?」
「はい、この通り元気ですのでそれは問題無いのですが…本当に私達もこっちなのですか?」
何を今更言うのだろうか…袁術軍が交州行きの方に入るのは命からの命令である以上、否
とは言えないだろう事は分かっているだろうに。
「ほら、私達の軍って他の方達みたいに人材が多いわけじゃないですし…あまりお役に立て
ないんじゃないかな~って」
「それは大丈夫です。皆、個人個人の力でなく組織としての指揮を優先してもらいますので。
そういう事なら張勲さんは大陸屈指の能力の持ち主ではないかと思ってますので。この間
の袁紹攻めの時の指揮は素晴らしかったですよ。きっと陛下の傍で待機する事になってい
る袁術さんも張勲さんの活躍を期待していると思いますしね」
俺がそう言った瞬間、張勲さんの顔色が少し変わる。そう、今言った通り今回袁術さん自
身は張勲さんが交州より戻ってくるまで洛陽にて命の近侍を命じられていたのである。表
向きは北方への対処の為という事になっているが、袁術軍の主力はほぼこっちに来ている
ので、ほぼ人質に近い状態ではある。張勲さんもそれが分かっているので何だかんだと理
由をつけて袁術さんの傍にいようとするのだが、そうは問屋が卸さないというわけで。
「…分かりました。ならば南蛮なんかさっさとやっつけて帰りましょう」
張勲さんはようやく渋々ながらそう言って自軍の方へ戻っていった…一応あの人の行動に
も気を付けてはおこう。
「それではこれより交州に向かい出発する!各軍、軍議で決まった通りに行軍する事、良い
ですね!」
それから二刻後、最初の軍議を終え俺達南蛮討伐軍は交州へ駒を進めたのであった。
ちなみに俺達北郷組からは留守居として紫苑と稟が残り、李厳さんは益州への援軍として
他の面々は俺に従って行動する事になっている。そして…。
「まさかこの歳ではるばる交州まで行く事になろうとはのぉ」
「あらあら、義真様は何時も『まだまだ若い者には負けんぞ!』と言ってるではないですか」
「そういう瑠菜は楽しそうだな」
「はい、何せ一刀の近くにいれるのですから」
「ほぅ…本当に恋というのは人を若くするのかのぉ」
禁軍からは義真さんと瑠菜さんが参加している。しかしこれだけの面々が揃っていて俺が
指揮するので本当に良いのかな?
「それは皆で決めた事だ、張勲の件じゃないがそれこそ今更だぞ」
俺の心の中の言葉にすかさずそうツッコミを入れてきたのは…空様だった。
「っていうか空様がこっちに来て本当に良いのですか?」
「何を言うか。命は皇帝だし夢は妊娠中、ならば私がいないとしばらくおかしな事になるの
ではないか」
…空様までがいない事で何がどうおかしくなるのかは何だかメタ発言的な事になりそうな
ので割愛する事にするが。
「それに…戦場が長いと色々タマるだろう?私がいればそれも無事解消だぞ?」
「ブッ!?…ゴホッ、ゴホッ」
突然またとんでもない事を…あまりそれは意識しない事にしよう…集中、集中。
それはともかく、これだけの軍勢で行くんだし色々と大変そうだが、何とか無事に帰れる
ように頑張っていきましょう!
その頃、交州にて。
「みぃさま~、何だかこっちに大軍勢が来てるそうですよ」
「それは大変にゃ」
「どうするんです~?」
「でも、もうたつとかいうやつの話じゃ、みぃ達が此処でもう少し頑張ってればもっと美味
しい物を食べさせてくれるって言ってたにゃ」
「なら頑張るにゃ!」
「頑張る、頑張る!」
「頑張るのにゃぁ~…くぅ」
何だか緊張感があるのか無いのか分からない連中が一刀達を待ち構えていたのであった。
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
とりあえず今回からしばらく…と言っても何回位持つのか
分かりませんが、南蛮との戦いをお送りします。
一応流れとしては一刀達が南方で戦っている間に北方で…
という流れの予定です。
とりあえず次回は本格的に南蛮勢との戦闘の始まりです。
それでは次回、第四十四話にてお会いいたしましょう。
追伸 劉備・公孫賛・馬騰勢の事はまたその内に…一応
北方担当ですが。
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お待たせしました!
それでは今回より本編に戻ります。
命の統治の下で一時の平穏を過ごす一刀達。
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