No.692617

紅と桜~桜色の季節~

雨泉洋悠さん

今日も22時30分という時間が私の心を惑わします。
楽しみだけど、後4話しか無いなんて寂しいですよね…。

にこちゃんと真姫ちゃん。
本編の中でも未だ出会えなかった、0の時代があります。

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2014-06-08 21:22:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:789   閲覧ユーザー数:789

   紅と桜~桜色の季節~

              雨泉 洋悠

 

 まこちゃんへ

 お久しぶりです、でもないかな、最後に会ったの、つい先月の事だもんね。

 そちらの学校はどうですか?

 私の方は、実際に入学してみたら、桜の花が凄く綺麗で、意外にも気に入り始めちゃってます、オトノキ。

 その場に立って、初めて解ったの。

 

 桜の花って、すっごく素敵な、良い香りがするのね。

 

 桜の木の、花びらの密度が凄くて、桜の香りが辺り一面に立ち込めて、包み込まれるような感覚になってしまう。

 そんな感覚を、オトノキに入学して、生まれて初めて感じたの。

 あんな風な桜の香りが一杯の中に、いつまでもいられたらなあって、思ってしまうぐらいには、私は桜が好きになっちゃいました。

 何て言うのかな、桜の香りって、一本だけだと本当に花に顔を近づけても、感じ取れない事もあるぐらいに弱いでしょ?

 それが沢山の仲間と一緒になることで、優しくて、暖かくて、甘い香りのまま、その香りを強くするの。

 

 素敵よね、私本当に、オトノキのお陰で、桜の花が大好きになっちゃったみたい。

 

 あ、そうそう、そう言えば今日は変な人に会いました。

 放課後にちょっとだけと思って、音楽室でピアノを弾かせてもらっていたの。

 そしたらね、いつのまにかドアのガラスから覗いていた人がいて、いきなり拍手されちゃった。

 しかも、その後直ぐに音楽室に入ってきて、何か凄い褒められちゃって、思わず別にって言っちゃった。

 

 本当は、褒めて貰えて、嬉しかったはずなのにね。

 

 とにかく何だか、歌も上手で、ピアノも上手で、アイドルみたいに可愛い、だなんて言われて、何かもう物凄く恥ずかしかった。

 しかもね、まこちゃん。

 その後、その人何て言ったと思う?

 

 アイドルやってみたいと思わない?だって、意味わかんないよね。

 だから私、思わずそこで話打ち切っちゃって音楽室を出ちゃった。

 

 私がアイドルだなんて、そんなの絶対変だし、似合わないし!

 まこちゃんだって、そう思うでしょ?

 

 

 

 真姫ちゃんへ

 真姫ちゃんが久し振りじゃないって言うから、いつも通りに行くね。

 私も久し振りって感じがしないし、いつもと変わらずにおはようとかこんにちはとかこんばんはとかだね。

 真姫ちゃんがこれを読んでいるのが夜だとしたら、おはようだと芸能人みたいだね。

 それこそアイドルだね。

 そうそう、その話の前に、真姫ちゃんありがとう。

 手紙の中だけでも、名前で呼んでもらえて嬉しいよ。

 今度はもちろん、久々に会った時に、ちゃんと言葉でも呼んでもらえることを期待しているからね。

 後、誕生日もおめでとうだね。

 今度会えたら、ちゃんとプレゼント渡すからね。

 それにしても、オトノキってそんな桜が凄いんだね。

 でも確かに、ちらちらとしか記憶に無いけど、この時期は桜が凄く咲いていたような気がするね。

 中に入って、直接満開の桜を真姫ちゃんが見れるようになったのも、オトノキに入ったからこそだね。

 やっぱり納得はさせたつもりだけど、真姫ちゃんとオトノキに行けなかったのは、残念だな。

 

 私も、そんな満開の桜の中で、桜の香りを感じたかったな。

 

 あ、でもでもね、今の学校が嫌いなんじゃないよ?

 凄く素敵な学校なの、校舎は綺麗だし、雰囲気も落ち着いてるし、真姫ちゃんがいないことだけが不満点です、えへへ。

 真姫ちゃんだったら、うちの学校も直ぐに気に入ったんじゃないかな?

 全寮制だと、一日中学校の敷地内にいるから、生活が全部学校生活の一部って感じで、何だか不思議な感じです。

 

 でもね、ちょっとだけ不満なのは、真姫ちゃんが会った人みたいに、アイドルにならない?なんて誘ってくれるような面白い人は、うちの学校にはいそうもないことかな?

 その人、突拍子もない人だなあと私も思うけど、でもその人のその時の気持ちは、解るような気がする。

 

 真姫ちゃんの声を、歌を聴いて、ピアノの音を聴いて、好きにならない人なんて、きっといないよ。

 真姫ちゃんが持っているものは、凄く綺麗です。

 真姫ちゃんが持っている、声も、ピアノの腕も、直ぐに心が動いちゃう真っ直ぐな感性も、凄い素敵な才能だと思います。

 そんな真姫ちゃんの才能は、きっとこれからもその人だけでなく、色んな人を引きつけると思います。

 

 何でそう思うのかって?

 だって、私の方がその人や、これから気付く人達よりもずっと先に、最初に真姫ちゃんの魅力に気付いたんだもん。

 それだけは、これからもずっと、変わらないからね。

 

 真姫ちゃん、真姫ちゃんはきっと今、迷っているのかなと、私は思っています。

 だから、私は敢えて今このお手紙の中で、真姫ちゃんの背中を押しておきます。

 

 やってみても、良いんじゃないかな?

 私は、真姫ちゃんだったら、きっと凄いアイドルになれると思います。

 多分、世の中で私達が体験出来る色んな素敵なことって、何気ないことから、きっと始まるんじゃないかな?

 もしかしたら、今日真姫ちゃんが会った変な人が、真姫ちゃんがもっと素敵な、大切な何かに出会う為の、最初のきっかけを今日くれたのかもしれない。

 そんなふうに考えても、良いんじゃないかな?

 私の真姫ちゃんとの始まりだって、そうだよ。

 もちろん私からしたら、あの時最初に真姫ちゃんに話し掛けるときは、凄く勇気が必要だったけど、傍から見たら、何気ないクラスメートとの初めての会話、そういうものかなと、思うの。

 私は、そう思うよ。

 

 

 

 まこちゃんへ

 今日は前のお手紙の内容に引き続いた、お知らせがあります。

 少しだけ、本当に少しだけ、変な人(穂乃果っていうの、後でびっくり、先輩でした、でも手紙の中でも呼び方は変えずに行こうと思います)のお手伝いすることにしました。

 前のお手紙をまこちゃんに送った後にも、穂乃果がまた誘ってくれたの。

 一年生の教室まで来て(一年生が一クラスなの)、もうびっくり。

 屋上に連れて行かれて、何されるのかと思っちゃった。

 そこで、仲間の先輩の一人(三人組だったの)が書いたっていう歌詞を見せてもらったの。

 

 それがすごく素敵で、ここから始まるの、これから始まるの、私達は、って凄く前向きで、これから広がっていく未来を、感じるような歌詞で、私だったらこの歌詞にこんな曲をつけたいなって思い始めたら、止まらなくなっちゃいました。

 

 その後にも、別の妙な先輩に、良く解らない応援とかされたりして、三人の為の、これからの未来の為の、始まりの曲を描いたの。

 今は、三人の為に曲を描いてあげるだけだけど、いつか私も、自分のつくった曲を、誰かのために、誰かに何かを伝える為に、歌えたらいいかもね、三人を見てて、そんな風に思っちゃいました。

 私にはまだ、そこまではちょっと無理だけど、今のところは三人の、力強い先輩達の事を、陰ながら応援しようかなと思うの。

 まこちゃんも、そんな私の事を、応援してくれると嬉しいな。

 

 これがきっかけで、いつか私がずっと大切にしたいと思える、何かに出会えるなら、それはそれで、とても素敵だなって、まこちゃんのお手紙を読んで、私も思えました。

 今回、まこちゃんも私の背中を押してくれたから、私は先に進むことが出来ました。

 

 まこちゃん、ありがとう。

 

次回

 

 


 
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