No.691008

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百二十一話 再会

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-06-02 00:59:35 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:25111   閲覧ユーザー数:21977

 「行ってきまーす!」

 

 「「「行ってらっしゃーい」」」

 

 メガーヌさん、ルーテシア、ジークの3人に見送られて家を出る。

 今日は風芽丘の入学式。

 午前中だけで学校が終わるので昼食は家で食べる事になるか。

 俺は家を出た所で

 

 「おっはー勇紀♪」

 

 「お、おおおおおはようございます勇紀さん!!」 

 

 アミタとキリエの2人に挨拶された。

 

 「2人共、おはよう」

 

 俺も挨拶し返す。

 すると2人は呆然としてコチラを見ている。

 どうかしたのだろうか?

 

 「そ、それだけ!?他に何か言う事無いの!?」

 

 キリエの言葉にアミタもコクコクと頷いている。

 他にか?

 うーん…………ん?

 

 「…………チョットマテ」

 

 俺は改めて視線をアミタ、キリエに向ける。

 …………うん。

 

 「何で2人が地球(ココ)にいんの!!?」

 

 そうだよ!エルトリアにいる筈の2人がここにいるのに驚くのが先じゃないか!

 

 「そうそう!そういうオーバーリアクションが欲しかったのよ私は!」

 

 「あまりにも普通の反応でビックリしちゃいました」

 

 すんません普通の反応で。

 

 「それよりも何でここにいんのさ!?」

 

 エルトリアの復興はどうしたよ?

 

 「エルトリアの事ならもう心配はいりません。博士の作り出したワクチンの精製方法を他の人達にも伝えたので、私達がいなくてももう死蝕に怯える事はありませんから」

 

 「いざとなったらすぐに戻れる様に準備もしてるしね」

 

 2人の話を聞く限りでは少しずつエルトリアから出て行った人たちも戻って来てるらしく、俺が以前行った(というより強制的に行かされた)時よりも自然が増えてきているという。

 

 「他にも色々話したい事とか聞きたい事があるのよ。あの後私達がどう過ごしてきたとか、何で勇紀があれからエルトリアに来てくれなかったのかとか…」

 

 ……あー。

 確かに『また会おう』って言った覚えはあるな。

 

 「出来れば今すぐにでも語りたいけど、喋ってたら遅刻するからこの話は学校終わってからね」

 

 「遅刻?」

 

 あれ?よく見たらコイツ等、風芽丘の制服着てね?

 

 「私とキリエも新入生ですよ」

 

 「はー…受験受けた時はお前等の姿見掛けなかったんだけど…」

 

 「勇紀と違う教室で受験受けたって事じゃないの?」

 

 キリエの返答に納得。

 風芽丘受験する人結構いたもんなぁ。

 受験の際いくつかの教室に分けられて受けたから、俺が受けた教室とは別の教室で受けたんだろう。

 ……あれ?

 

 「キリエ、お前って俺より年下だったよな?」

 

 1歳下だった筈だぞ確か。

 

 「飛び級扱いで通したわ」

 

 「マジで?」

 

 「キリエは私より頭良いですから」

 

 アミタも認める程か。

 

 「てかお前等2人が来てるって事はグランツさんも…」

 

 「当然来てますよ。博士は私達の保護者ですから」

 

 「博士、今は寝てるわよ。研究資料の整理で深夜まで作業してたもの」

 

 キリエが俺の家の隣に視線を向けて答える。

 まさかお隣さんがコイツ等だったとは…。

 

 「ま、詳しい事は学校終わってからで良いでしょ?」

 

 「そうだな」

 

 聞きたい事聞いてたらとても時間が足りんだろう。

 

 「じゃ、じゃあ一緒に行こっか////」

 

 キリエがやや顔を赤らめながら腕を組んできた。

 

 「ちょ!?キリエ!!な、なな、何をしてるんですか!!?」

 

 「何って…勇紀と一緒に学校へ行こうかと」

 

 「だだ、だからって…」

 

 アミタが視線をぶつけているのは俺とキリエが組んでいる腕の部分。

 

 「ふっふっふ~♪こういうのは早い者勝ちなのよアミタ」

 

 「うむむむむ……」

 

 頬を膨らましてキリエを睨むアミタ。

 

 「こ、こうなれば逆の腕に…」

 

 「いや…コッチはカバン持ってるから」

 

 「……………………」

 

 アミタ撃沈。

 両手両膝を地について項垂れた。

 ……俺は悪くないのに罪悪感を感じるのは何故?

 

 「あー……アミタさん?帰りで良ければ腕位組んであげるので元気出して下さいな…」

 

 「ホントですか!?」

 

 アミタは一瞬で立ち上がって俺に詰め寄って来た。

 顔近っ!?

 俺の視界に映るのは超アップされたアミタの顔。

 少しでも顔を近付けたらキスしてしまうぐらいに近い。

 

 「や、約束する。だからちょい離れようか…//」

 

 「あっ!すす、済みません…////」

 

 今度は慌てて離れるアミタ。

 あー…ビックリした。

 

 「……………………」

 

 ギリギリギリ…

 

 「痛っ!?イタタタタタ!!!」

 

 俺の腕に圧迫感が!!

 

 「き、キリエさん!?少し力強くないですかね!?」

 

 「そう?」

 

 間違い無いです!!腕が悲鳴上げてます!!

 俺が抗議してみると腕の力を緩めてくれた。

 

 「それより早く学校に行きましょ。遅刻するわよ」

 

 遅刻する程遅く出てはないんだが…。

 正直に言ってしまうと俺の腕がまた締め上げられそうなので黙っておく。

 それに……

 

 「(この柔らかい感触は役得と思って良いんだよな?)」

 

 腕を組まれた時から僅かに当たるオムネ様の感触。

 キリエもアミタも、もう見た目は完全に『なのはGOD』時の容姿と遜色無いからな。

 出るトコはしっかりと出てます。服の上からでもその膨らみの大きさが分かります。

 俺はキリエに腕を引かれながら、柔らかい感触を多少堪能しつつ、アミタも含めた3人で学校に向かうのだった………。

 

 

 

 「あっ!!やっと……来た……わ……ね……」

 

 「おはよう……ゆう……き……くん……」

 

 「あら」

 

 今日から通う事になる風芽丘の近くまで来ると良く見知った顔……アリサ、すずか、テレサの姿を発見した。

 ただ、アリサとすずかは何かを言う前に言葉を途中で止めてしまったが。

 テレサがどこか呆れた様な表情を浮かべる中、アリサとすずかの2人は大きく目を見開き、次には思いきり睨んできた。

 

 「ちょっと!!どういう事よ!?」

 

 どういう事よって……何が?

 

 「ソレよ!!」

 

 アリサが指差したのは俺とキリエが腕を組んでいる部分。

 

 「何う、腕なんか組んでんのよ!!」

 

 「ていうかその子達は誰なのかな?」

 

 コッチに向いたアリサとすずかの目が俺に訴えてきている。『正直に話せ』と。

 

 「……詳しくは後でキチンと話すから。とりあえず今言えるのは俺の知り合いでお隣さんです」

 

 腕を組んでいるキリエと隣を歩いているアミタに自己紹介させる。

 

 「キリエ・フローリアンよ。よろしくね(この子達が勇紀の幼馴染みなんだ)」

 

 「アミティエ・フローリアンです。アミタと呼んで下さい(向こうの2人は双子でしょうか?いずれにせよ3人共可愛いです。強敵ですね)」

 

 「アリサ・バニングスよ(むうぅぅぅ……腕組んで一緒に登校……羨ましい)」

 

 「月村すずかです(この2人も勇紀君に惚れてる……よね。……せっかくなのはちゃん達やシュテルちゃん達が引っ越してチャンスが回って来たと思ったのに……)」

 

 「アリサ・ローウェルよ。ソッチのアリサと名前が同じだから私の方はテレサって呼んでちょうだい(これ、他の皆が知ったらまた揉めるわね。……今度私とも腕組んで貰おうかしら?)」

 

 アリサ、すずか、テレサも2人に自分の名前を告げる。

 

 「自己紹介済んだよな?ならもう学校向かって良いよな?」

 

 何だか不穏な空気が場を支配しつつあるので、とっとと学校に行く様促す。

 こうして新たに3人のメンバーを加え、風芽丘に向かって歩き出す。

 …と言っても、もう風芽丘は目と鼻の先。

 校舎自体は視界に収めてるし、段々と正門らしき門も見えてきた。

 一歩一歩近づく度に人目……特に男子の目を惹き付ける俺達一団。

 まあ、アミタ、キリエ、アリサ、すずか、テレサの5人はいずれも美少女だからなぁ。

 ただ、キリエと腕を組んでいる俺には殺意の籠もった視線しか向けられていないが。

 小学生の時も中学生の時も同じ体験してるよな俺。周りにいる女の子の容姿レベルが高過ぎるせいで。

 学校の正門を潜り抜け、クラス発表が行われている掲示板に向かいたいのだが…

 

 「やっぱり人、多いなぁ…」

 

 掲示板周辺は在校生である2・3年生の先輩方と俺達同様の新入生が群がっている。

 

 「誰か代表で見に行く?」

 

 アリサが言うが俺は首を振ってその案を拒否する。

 

 「ここは奴に頼るとしよう」

 

 俺は携帯を取り出し、電話を掛ける。

 小学校、中学校全学年で同クラスだった腐れ縁の幼馴染み、謙介なら既に把握してるかもしれない。

 電話を掛けて数コールで謙介と繋がる。

 

 『もしもし?』

 

 「あー、俺だ」

 

 『知ってるよ。ディスプレイに名前が表示されてるからね。で、用件は何だい?』

 

 「このタイミングで掛ける理由なんて言わずとも分かるだろう?」

 

 『まあ、予想は付くね。クラス分けが知りたいんだろう?』

 

 流石。コチラの考えはお見通しの様で話す手間が省けて助かる。

 

 「そういう事。で、お前今どこにいんのよ?」

 

 『学校の食堂だよ。今日は朝ご飯を抜いたんでね。現在腹を満たしている最中って訳さ』

 

 食堂……。

 近くにあった校舎の案内板を見る。

 ふむふむ…。

 食堂までの行き方を確認し、携帯を切ってから皆に確認を取ってから移動しようとしたその時…

 

 「しいいぃぃぃぃ………」

 

 何処からともなく声が聞こえ

 

 「っ!?」

 

 コチラに向いている殺気を感じ取った。

 

 「ねえええぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 見聞色の覇気を無意識の内に用いていた俺はそのままキリエを引き寄せ、その場から飛び退く。

 …と、同時に俺の背後から来た何者かが俺が今立っていた場所に跳び蹴りをかまし、そのまま空振りに終わりつつも綺麗に地面に着地した。

 着地した何者かはすかさず俺の方に向き直り

 

 「避けるな!!!」

 

 理不尽な事を言ってきた。

 

 「いや、普通避けるだろ。俺が一体何したよ?」

 

 突然の襲撃者に聞き返す俺。

 ん?よく見たらこの襲撃者……女の子じゃん。

 この子に何か恨まれる様な事したか?記憶に全然無いんだが。

 

 「今もしてるだろうが!!」

 

 そう言ってビシッと俺達の方を指差す女の子。

 今してるって…

 

 「////////」

 

 顔を真っ赤にしてるキリエを抱き締めてるだけなんだが?

 

 「こ、ここ、公衆の面前で不純異性交遊してるじゃんか!!////」

 

 女の子は顔を赤らめつつも吼える様に言ってきた。

 不純異性交遊……。

 

 「………はあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!?」

 

 イキナリ何言ってんの!?

 

 「人前で惜しげもなく堂々とだ、抱き合うなんて不純異性交遊以外の何だって言うんだ!!」

 

 「いや、ちょう待てや!!」

 

 俺はキリエを放し、女の子の方に向き直る。

 

 「あのな…俺は不純異性交遊なんてしてないし、キリエを抱き締める様な形になったのはアンタのせいだろ?」

 

 飛び蹴りしてこなきゃこんな事にならなかったんだぞ。

 

 「五月蠅い!!言い訳すんな!!」

 

 言い訳じゃねえよ!

 

 「この女の敵め!!やっぱりお前に飛白姉様は似合わない!!」

 

 「意味の分からん事を…」

 

 「今度こそ…死ねえええぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」

 

 再び襲撃しようとしてくるので止むを得ず迎撃しようとしたその時

 

 「飛鈴、お止めなさい」

 

 また別人の声が割って入って来た。

 けどその声のおかげで目の前の襲撃者はピタッと動きを止める。

 

 「飛白姉様!」

 

 パアッと表情が明るくなる襲撃者。

 …また新たな人物が現れた。

 

 「全く…いきなり駆け出していくのだから何事かと思えば……貴女は何をしているのですか…」

 

 「決まってるじゃないですか姉様!!この人目も憚らない女誑しに制裁を加えようとしただけです」

 

 「誑しじゃねえよ!!」

 

 『むぐぐ…』とお互い睨み合う。

 

 「飛鈴、貴女は少し黙ってなさい」

 

 「で、ですが姉様…」

 

 新たな女性がジロリと睨むと襲撃者の方は小さく身を縮こまらせ、一歩下がる。

 ……力の上下関係が分かり易い。

 

 「コホン…妹が失礼しました」

 

 「いえ、お気になさらず」

 

 この人の妹だったのか、あの襲撃者は。

 

 「……………………」

 

 ジーッと見てくる女性。

 あ、この人、左右の瞳の色が違う。オッドアイだ。

 

 「…こうして会うのは10数年ぶりですね長谷川勇紀。元気そうで何よりです」

 

 「へ?」

 

 今何つったこの人?

 『こうして会うのは10数年ぶり』って聞こえたんだが。

 俺と昔に会った事あるのか?

 10数年っていう事は俺と会ったのは小学生以前の頃って事になるけど…。

 ……待てよ。

 俺は襲撃者と目の前の女性の僅かな会話から出た単語を思い出す。

 『飛鈴』……『飛白姉様』……それにオッドアイ………いや、獣の目?

 もしかして…

 

 「……各務森……各務森飛白さんですか?」

 

 「っ!!……覚えていてくれたのですね」

 

 覚えていたというより…

 

 「今思い出したんですけどね」

 

 ていうか、こんな所で再会するとは思わなかった人だからな。

 中越の鬼斬り役『各務森家』の当主である人物がここにいるなんて想像すらしなかったし。

 

 「さっきの飛白さんの会話からすればあの子が飛鈴ちゃんって事ッスよね?飛鈴ちゃんもお久しぶり。元気してた?」

 

 襲撃者である飛鈴ちゃんの方に振り返って尋ねる。

 

 「女誑し風情が気安く話し掛けんな!!」

 

 「君さっきからやけに攻撃的だよね!?」

 

 俺がホントに何したよ?

 

 「飛鈴…」

 

 飛白さんがジロリと睨むと飛鈴ちゃんは『ひっ!』と小さく悲鳴を上げ、身を竦ませる。

 

 「久しぶりに再会したのです。まずは挨拶ぐらいしたらどうなのですか?」

 

 「で、ですが…」

 

 「二度は言いません」

 

 「……久しぶりだな女誑し」

 

 「その女誑しって呼ぶの止めてくれない!?」

 

 何か昔以上に性格がキツくなってね?

 

 「はぁ……申し訳ありません長谷川勇紀。妹の口の悪さについては後で本人に言って聞かせますから」

 

 『そ、そんなぁ…』と嘆いてる飛鈴ちゃんを余所に俺は苦笑する。

 

 「「「「「………で」」」」」

 

 そこへ響いてくる5人分の声色。

 

 「その人達は誰なのよ!?」

 

 「勇紀君とどういう関係なのかな?」

 

 「私も知りたいわねぇ~」

 

 「教えて下さい!」

 

 アリサ、すずか、キリエ、アミタの順に俺に詰め寄ってくる。

 

 「小さい頃に出会った知り合いだよ」

 

 「……また貴方の知り合いなのね」

 

 そんな呆れた様な表情浮かべて言うなよテレサ。

 俺だって予想外の出来事なんだからさ………。

 

 

 

 「入学早々新しい女の子を引っ掛けるとは……流石は勇紀だね」

 

 「いや、引っ掛けてねえし」

 

 あの後、食堂にいた謙介に模写したクラス分け一覧表を見せて貰い、各々自分のクラスに移動した……のだが……

 

 「これで君と同じクラスになるのは10年目に突入だよ」

 

 「……もう俺達、それぞれが別の学校に通わない限り離れられないんじゃないか?」

 

 「凄く同意するよ」

 

 男性陣の謙介、誠悟、直博も含めてまさかの全員同じクラス。

 ……笑えねぇ。

 

 「「「「「「……………………」」」」」」」」

 

 女性陣の方は無言だし。

 飛白さんだけは3年生だからここにはいない。

 あの人いないと飛鈴ちゃんのストッパーになりそうな人がいないんだけど…。

 

 「で、あそこにいる僕の知らない女性の方達は?」

 

 「知り合い」

 

 「…何だか空気が悪い様な気がするんだが?」

 

 「……言うな」

 

 皆さん、警戒し合ってるというか何というか…。

 

 「こんな時になのはがいればこの状況どうにか出来たかもしれないのになぁ…」

 

 「あ~……高町さんなら確かにねぇ」

 

 俺が呟いた言葉に謙介も同意してくれる。

 

 「新しいクラスの皆さーん。おっはよーございまーす!!」

 

 「「「「「え!?なのは!?(なのはちゃん!?)(高町さん!?)」」」」」

 

 教室の出入口付近から聞こえてきた聞き覚えのある声色に俺、アリサ、すずか、テレサ、謙介の5人が反応する。

 しかし俺達が向いた場所にいたのは、オレンジ色の髪を黒いリボンで両サイドに結んだ女の子であり、なのはじゃなかった。

 

 「お、おはようございます…」

 

 先程の女の子程の大きさの声ではないものの、頭を下げて挨拶をしたのは青いショートカットに白いヘアバンドを着けた礼儀正しそうな女の子。

 ………分かってた、分かってたさ。風芽丘と統合した学校に『聖チェリーヌ学院』があったんだから彼女達も存在してるんだという事は分かってたさ。

 流石に同い年とまでは見抜けなんだが。

 しかし教室に入ってきた途端、見知らぬ顔もいるであろうクラスの連中に大声で挨拶する女の子と、逆に人見知りして遠慮がちに挨拶する女の子。

 全くもって正反対なキャラ達だねぇ。

 2人の女の子は教室に入ってすぐ近くの席に腰を下ろす。

 

 「今の声、なのはにそっくりだったわよね?」

 

 「うん。『なのはちゃんも風芽丘に来てたの!?』って思っちゃったよ」

 

 「思わず反応しちゃったわ」

 

 アリサ、すずか、テレサの声が聞こえてくる。

 確かになぁ…。

 正確にはシュテルも対象になるんだが、あの声色の明るさはシュテルというより、なのはに近いものがある。

 だから俺もシュテルじゃなくなのはが思い浮かんだ訳だし。

 

 「勇紀勇紀、なのはって誰?」

 

 俺と謙介の方に顔を向けたキリエが尋ねてきた。

 

 「中学校まで同じ学校に通ってた奴の事だよ。小学校5年の時からの付き合いなんだ」

 

 「私とすずかは小学校1年の時ね。この中では一番付き合いが長いわ」

 

 「その方と今の方の声ってそんなに似てるんですか?」

 

 「まあな」

 

 アミタも会話に加わって来た。少しは女性陣の間に張り詰めていた空気の悪さが改善されてる。これを機に仲良くなってくれたら良いのだが。

 で、アミタの疑問に答えた訳だが声色が似てるのは当然だろう。中の人同じなんだし。

 そして相方は『なのはViVid』の覇王様ときたもんだ。

 

 「てか名前から察するに、その子って女の子よね?…アンタやっぱり女誑しじゃない」

 

 「飛鈴さん。お願いですから俺の事『女誑し』と認識するのは止めて下さい」

 

 グサグサと心にくるのよ。

 

 「その意見には同意だね。何人誑せば気が済むのだか」

 

 「おい変態(けんすけ)。ちょっと表出ろやコラ」

 

 「僕に対しては暴力で対応!?差別だよ勇紀!!暴力反対!!」

 

 暴力?何を言ってるのかね?

 ちょっと精神的O☆HA☆NA☆SHIするだけだよ?

 非殺傷で攻撃するから痛い思いはせずに済むよ。

 

 「お、勇紀と謙介だ。チーッす」

 

 「直博と誠悟じゃん。おはよう」

 

 「同じクラスになっちまったな。ま、一年間よろしく」

 

 残りの男友達2人がここで合流。

 直博と誠悟にも初対面のアミタ、キリエ、飛鈴ちゃんを紹介し、予鈴が鳴るまで謙介、直博、誠悟の3人と談笑して時間を潰した。

 予鈴が鳴る頃には女性陣も名前で呼び合う程打ち解けており、居心地の悪い険悪な雰囲気は無くなっていた………。

 

 

 

 「私が今日からこのクラスの担任を1年間務める『如月(きさらぎ)(さえ)』だ」

 

 「私は副担任の『西条(さいじょう)節子(せつこ)』よ。よろしくね」

 

 予鈴、本鈴が鳴り、入学式も無事終えて、再び教室に戻って来た俺達。

 教卓の前には自己紹介を終えた2人の教師の姿があった。

 

 「勇紀勇紀、2人共巨乳でメガメだよ。僕達ツイてるね」(ヒソヒソ)

 

 「……ソウダネー、ツイテルネー」

 

 歓喜の表情を隠そうともしない謙介の言葉に俺は超棒読みで返す。

 あの西条っていう先生、自称オリ主の西条と何か繋がりあんのかな?片や転生者、片や他作品の原作キャラだが案外身内とかだったりしてな。

 

 「あー、今日は特にする事も無いからさっさと自己紹介済ませて終わりにしたいと思う」

 

 そんな適当で良いんスか?

 

 「窓側の列の一番前から順に自己紹介してけ」

 

 先生の指示に従い、窓側に座っている生徒から自己紹介が始まる。

 

 「柾木(まさき)泰三(たいぞう)って言います!!『彼女いない歴=年齢』のため、年中無休で彼女募集中です!!ヨロシク!!!」

 

 ……最初の1人はさっそく女子に自分を売り込もうとしていた。

 

 「宮本(みやもと)ッス!!!俺と付き合ってくれる子大歓迎だ!!!イヤオオオオーーーーーーー!!!!」

 

 2人目も女子にアピール。てか吼えるな。後、下の名前は?

 

 「モチョッピィ!!」

 

 3人目は最早日本語ですら無ぇ!!!

 何だよ『モチョッピィ!!』って!!何処の星の言葉だよ!?

 本当にこのクラスは大丈夫なのか不安になってきたぞ。

 

 「天河(あまかわ)優人(ゆうと)です。好きな物はテレビ、ゲーム、映画、ネットです。1年間よろしくお願いします」

 

 4人目はまともな自己紹介だった。

 良かったぁ…常識人がいてくれて。

 

 「……………………」

 

 ん?

 何か飛鈴ちゃんが今自己紹介してた彼の方を見てるけど、どうしたんだろうか?

 

 「九崎(くざき)凜子(りんこ)です。好きなのはスポーツ全般にネコとファッション雑誌、あとお笑い番組です」

 

 ………それからも自己紹介は続いていく。

 全員の自己紹介が終わり、明日の連絡事項を伝えて先生達が教室を出て高校生活の初日は終わりを告げた………。

 

 

 

 「「「「……………………」」」」

 

 「……何ですか?」

 

 ただ今帰宅しようと思い、校舎を出た所。

 俺を睨む4人の女性がいる。

 アリサ、すずか、飛鈴ちゃん、そして合流した飛白さんである。

 

 「…………(この姉妹も勇紀に……)」

 

 テレサは各務森姉妹を見て何やら思う所がある様子。

 

 「……ま、朝の約束だものね」

 

 キリエは自分で納得させつつ何処かご不満っぽい。

 

 「じゃ、じゃあ帰りましょうか(これは朝の約束ですからね。正当な権利なんです)////」

 

 で、俺の片腕には自分の腕を絡めて頬が赤いアミタの姿があった。

 

 「……何で勇紀君はアミタちゃんと腕を組む必要があるのかな?」

 

 「えーっと……朝の通学時に約束しちゃいまして……」

 

 「何でそんな約束したのよ?」

 

 「朝、キリエと腕を組んだのが原因でして……」

 

 「何でキリエと腕組む事になってたのよ」

 

 ……すずか、アリサ、飛鈴ちゃんからの『何で?』という追及から半端無い威圧感を感じ、精神的にキツいです。

 飛白さんも助けてくれないし…。

 突き刺さる様な視線を背中に受けつつ、学校の正門を出た所だった。

 

 「貴方が長谷川勇紀ですわね?」

 

 見知らぬ女性にいきなり俺の名前を呼ばれたのは。

 黒を基調としたゴスロリ風のドレスに腰元まで伸びている銀色の髪。頭に装着されてるヘッドドレス風のカチューシャ。

 額の部分には三日月の印。

 …………誰?

 見た感じ俺と同年代っぽいけど。

 

 「(俺の名前を知ってるって事は以前出会った事がある……んだよな?)」

 

 目の前の女性から視線を逸らさないまま、必死に自分の記憶を掘り起こす。

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 「…………ちょっと」

 

 見詰め合うまま、何も語らないでいたら痺れを切らしたっぽい女性の方から口を開く。

 

 「何か言ったらどうなんですの?」

 

 「いえ…その…ですね……」

 

 彼女の言葉に言い淀む。

 …思い出せん。マジ思い出せん。

 向こうは俺の名前を知ってる以上、ここで『君誰?』なんて聞き返す訳には行かないし…。

 

 「……勇紀さん、彼女は誰ですか?」

 

 誰?と聞かれても思い出せないんだよアミタ。

 銀髪で三日月の印がある女性なんて……。

 

 「(…………ん?三日月の印?)」

 

 その一点に意識を集中させると記憶に引っ掛かる。

 確か俺が父さんに拉致されて……もとい連れられて色んな所を回っていた際、出会った女の子に三日月の印が額にあった様な……。

 …てかあったわ、うん。

 けど……

 

 「(俺の記憶が確かならあの子は銀髪じゃなかった筈なんだけど…)」

 

 俺が知る子なら髪の色は日本人らしい黒髪だった。

 勿論、髪の色を染めているといった可能性もあるけど、目の前の女の子は特に染めてる訳ではなさそうだし。

 …俺の記憶違いか?

 …まあ、それよりまずは目の前の子に尋ねてみるか。もし俺の記憶にある子と違ってたら謝ろう。

 

 「あの…もしk「天河優人!!」……おーい……」

 

 俺が早速確認しようと思っていたら女性の方が声を上げる。

 女性の視線の先には俺と同じクラスになった天河っていう男子がいた。

 隣にはこれまた同じクラスの九崎っていう女子の姿もある。

 2人は雑談をしていた様子だが、俺達の前にいる銀髪の女性に名前を呼ばれた事で立ち止まり、女性の方に視線を向けていた。

 

 「長谷川勇紀と同じ学校に通ってるのは知ってましたが、ここで会えるとは好都合ですわ。別々に会う必要が無くなったんですもの」

 

 「へ?へ?」

 

 クラスメイトの天河は混乱してる様子。

 

 「長谷川勇紀、天河優人。今から貴方達2人は私に付き合って貰いますわ!異論は認めません!!」

 

 何その横暴!?

 俺が反論しようとする前に、天河の隣にいた九崎が代弁してくれた。

 

 「な、何言ってんのよ!?アンタが誰か知らないけど、そんな事する権利なんて無いでしょ!!アンタ一体誰!?優人の何なのよ!?」

 

 九崎が詰め寄ると銀髪の女性はふんっと鼻を鳴らし、髪を掻き揚げる。

 

 「黙りなさい胸の薄い一般人」

 

 その言葉にビキッ!という擬音が聞こえた気がした。

 あー…九崎って子の額に血管が浮き出てるよ。

 女性の身体的特徴を貶す事を言うのはいけない事だよね。

 ちなみにここにいる他の女性…アリサ、すずか、テレサ、アミタ、キリエ、飛鈴ちゃんに飛白さんは今の言葉に対して無反応。

 皆、それなりにあるもんね。

 特にすずかと飛白さんのボリュームはマジパねえッス。

 

 「こ、こここ、このアマーーーー!!!!」

 

 うがー!!と吼えて銀髪の女性に掴みかかろうとする九崎を天河が背後から羽交い絞めをして抑える。

 

 「お、落ち着いて凜子!!暴力は良くないって!!」

 

 「離して優人!!私は今言葉の暴力を受けたのよ!!なら物理的暴力でやり返してもお相子でしょ!!」

 

 「いや駄目だから!!物理的にやるのは駄目だから!!」

 

 キレてる九崎を必死に抑えながら天河は銀髪の女性に視線を向け、尋ねる。

 

 「君は一体誰なんだ!?俺に何の用があるんだ!?」

 

 その問いに対する答え……。

 

 「…どうやら覚えていない様ですわね。まあ、良いです。名乗らせて貰いますわ」

 

 それは俺の予想の斜め上をいっていた。

 

 「私の名前は神宮寺くえす。鬼斬り役十二家の内の一家『神宮寺家』の跡取りですわ。そして…」

 

 今度は俺の方を向き

 

 「長谷川勇紀、天河優人。貴方達は将来私と共に歩む事を親同士によって決められた許嫁(・・)の候補という事ですわ」

 

 ビキキキッ!!!

 

 その瞬間、周囲一帯の空気が凍り付いた。

 …やっぱり目の前の子は神宮寺くえすだったのか。

 久しぶりの再会って事になるんだろうけど。

 …ていうか今凄い事言わなかった?許嫁って聞こえたんだけど?

 

 「「「「「「「「い……」」」」」」」」

 

 俺が先程の言葉について尋ねようとした所

 

 「「「「「「「「許嫁ーーーーーーーー!!!!?」」」」」」」」

 

 「「うおっ!?」」

 

 アリサ、すずか、テレサ、アミタ、キリエ、飛鈴ちゃん、飛白さん、九崎が一斉に声を上げる。

 俺と天河は思わずビクついてしまう。

 

 「どどど、どういう事なのよ優人!?」

 

 「り、凜子…おぢづいで……ぐ…ぐるじい……」

 

 一瞬で羽交い絞めを解き、振り返って天河の首を締めながら尋ねている九崎。

 一方俺は…

 

 「どういう事ですか!?どういう事なんですか勇紀さん!?」

 

 腕を組んでいた筈のアミタに胸倉を掴まれ、ユサユサと揺さぶられていた。

 周りの女性陣は

 

 「「「「「「「……………………」」」」」」」

 

 無表情かつ瞳から光を消した状態で俺を見てくる。

 どういう事かだって?そんなのコッチが聞きたいよ……。

 親同士が決めたっていう事は父さんなら何か知ってるんだろうけど…

 

 「(何勝手に人の将来決めてるんだよ、父さん…)」

 

 アミタに揺さぶられながら俺ははるか遠くにいる父を恨まずにはいられなかった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 高校生編突入。

 まずは勇紀と色んなキャラの再会……そして許嫁(くえす)の襲来。

 今ここにいないシュテル達が『くえすが勇紀の許嫁』という事実を知ったら……。

 戦争必至かもしれないです。

 まあ、彼女等の顔合わせはSts編になりそうですから、それまでは平和………な筈です。

 尚、この小説では各務森姉妹とくえすは今回が初対面という事にしてますのであしからず。

 それと『野井原の緋剣』が出るのはもう少し先ですかね。

 優人は現在15歳。彼の誕生日は5月30日(公式設定)のため、御守りの効果が切れるのはもう少し先なので。

 

 

 

 ※追伸

 

 キャクターのステータス考えるの止めました。

 理由としては自分が飽きたからです。飽きっぽくてすみません。

 


 
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