「つまりここにさっき求めた数式の答えを代入するんだな?」
「そうそう。そんでこの括弧内の計算を行うと…」
「おお!!答えが出たぞ!!」
「この問題に関しては、ここの数式を求められなけりゃ解くのは無理って事だ」
「そうかそうか……理解出来たぜ。サンキューな、モブ」
既に新年が明け、3学期が始まっております。
今日も無事に授業が終わり、ただいま放課後。
現在学校の教室にて俺は転生者の吉満に勉強を教えている最中です。
理由はコイツが高校進学するのに今の学力じゃ不安らしいからとの事で。
自分から進んで勉強を……しかも俺に教えを請うなんて以前の吉満からは想像も出来なかったんですが、コレは紛れもない現実です。
ちなみに今教室に残っているのは俺と吉満を含め数人程。シュテル達はいつもの仲良しメンバー全員で一足先に翠屋へ行った。
正確な面子はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、テレサの11人。
この後は俺も合流する予定。
「これで数学は自信がついたぜ」
「そりゃあ何よりだ」
コッチとしても教えた甲斐がある。
「けど帰ってから一応復習しとけよ」
「分かってらぁ。一度理解したからって油断するつもり無えよ」
笑顔で答える吉満。
ホント、コイツとここまで普通に話せる日が来るなんて当時の俺からすれば想像すら出来なかったぞ。
吉満は教科書とノート、筆記用具をカバンに仕舞い、帰り支度をし始めたので俺も椅子から立ち上がり、翠屋へ向かう準備をする。
「じゃあなモブ。また分からない事があったら聞くからよ」
「あいよ」
上機嫌で教室を出て行く吉満を見送ってすぐに俺も教室に残ってる連中に挨拶し、学校を出た………。
「そう言えば…」
翠屋…。
客は俺達以外誰もいない。
「勇紀、貴方が勉強を教えている吉満ってどこの学校を受験する気なの?」
テレサがふと思い出した様に尋ねてきた。
「何?興味あんの?」
「『何処を受けるのか?』ぐらいには」
正直に言うテレサ。
その言葉が聞こえた他のメンバーも一旦会話を止め、コチラを見る。
「まさか風芽丘じゃないでしょうね?」
『だとしたら最悪…』と表情が語っているアリサ。もう女性陣は吉満のこれまでの行為を水に流す事は出来ないみたいだ。
今のアイツは女性に対して無害なのに。
「今のアイツの学力なら風芽丘を合格出来るけど、受験する高校は別の高校だな」
「じゃあ、海鳴市外にある高校なのかな?」
なのはの問いに俺は小さく頷く。
海鳴市に存在する高校と言えば『私立風芽丘学園』と『私立聖祥大附属学校高等部』の2つの学校がある。
もっとも、聖祥の高等部は完全な女子高となっているので、男子が海鳴市内の高校に通うとなると必然的に風芽丘に行く事になるのだ。
「アイツが受けるのは『文月学園高等部』だって言ってたぞ」
「……マジ?」
テレサの短い言葉に俺は頷く。
「文月学園って…あの文月学園?」
すずかも確認する様に尋ねてくる。
「???そこってそんなに有名な学校なの?」
「進学校の中では有名な学校よレヴィ。何でもちょっと独特なシステムが採用されて学力低下が嘆かれる昨今に新風を巻き起こしたもの」
「へえ~」
アリサの返答にちょっと興味持った様な反応で返事するレヴィ。
「独特なシステムって何なん?」
「確か『試験召喚システム』って言われてた様な気がする」
「『召喚』?何か呼び出すって事?」
「詳しい事はよく分からん」
レヴィに続いてはやて、アリシアが聞いてきたので俺は答えておいた。
試験召喚システムとかいうヤツが何なのかは実際に入学してみないと分からんだろうなぁ。
「それにしてもあの塵芥がなぁ…」
ディアーチェは吉満がそこまで有名な進学校を受験するのが信じられない様だ。
「言っとくけど吉満の今の学力はここにいる面子のほとんどを上回ってるからな」
ピタッ×11
その言葉に反応し、手が止まる女性陣。
その表情は皆信じられないと言わんばかりだ。だが現実とは時に非情であり残酷なのだよ。
この場にいる面子で吉満の学力を上回ってるのは俺、アリサ、すずか、テレサの4人だけだろう。
「そんな学力の高い勇紀君は進学校いかないの?あ、これ、おかわりのカルピスね」
「どうもです美由希さん」
カルピスを持ってきてくれた美由希さんに礼を言い、俺はカルピスを飲み始める。
「ングッ……ングッ……ふぅ。俺は別に進学校には興味無いですね。このまま風芽丘を受験しますよ」
何たって近いもん。
「むしろアリサ達は進学校行かないのか?」
もしくは聖祥の高等部に行くとか。
「私も風芽丘の普通科受けるわよ」
「私ももう願書出しちゃったし」
「私立の割には学費安いもの」
アリサ、すずか、テレサの順に答える。
風芽丘なら確実にコイツ等は合格出来るよな。
「ま、油断さえしなけりゃ充分受かれるだろうし、受験まで徹底的に復習しておけば大丈夫だろ」
「そうだね。高校になっても同じクラスになれたらいいね」
「そん時はよろしくな」
「うん♪えへへ…//」
…まだクラス発表はおろか受験すらしてないのに嬉しそうに言うすずか。
「わ、私だってよろしくしてあげるんだからね!感謝しなさいよね!」
「ん、アリサがいれば心強いな」
「っ!!……そ、そう?まあ、当然よね!(こ、心強いんだ。私がいたら心強いんだ)////」
アリサ、あくまで受験に合格して同じクラスになれたらの話だからな。
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
魔導師組の皆さん、何故にジト目?
「ていうかここにいるメンバーのほとんどは引っ越すのよね?」
テレサの言う通り、魔導師組は全員卒業式を終えたら、春休みの間にミッドへの移住が決定している。
ウチのシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリもだ。
まだ向こうで住居を構えていないからしばらくは首都防衛隊の女子寮に泊まる事になるだろうけど、早めに良い住居を見つけて4人で暮らすらしい。
俺は引っ越さんけどな。さっきも言った通り受験受けて合格して風芽丘の高校に通う気満々だし、任務が入ったら今まで通り転移魔法使ってミッド行けばいいし。
シュテル達も高校に通う気はあったみたいだけど、ここ最近成績が下降気味のコイツ等で風芽丘は厳しいんだよね。
レヴィに関しては100パー無理だと断言出来る。
後、出席日数。これも問題になってくる。
中学までは義務教育のおかげで欠席が多くても卒業は出来るが、高校になるとそうもいかない。
中学と同じ頻度で休んでたら多分出席日数が足りなくて留年するだろうし。
ソレ等を理由に挙げて4人には受験を断念させた。
「でも勇紀だって魔導師なんだから任務で呼び出しとかあったら休むんでしょ?」
「大丈夫だフェイト。祝日はともかく、平日に関しては大きな事件や任務が無い限りミッドに行く事は無いし、上の人もそれで納得してくれてる」
反対意見なんて一切出なかったから。
レジアス中将を始めとする地上本部上層部の皆さんは理解が良くて良い人達だ。
それにシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリだけじゃない。亮太、椿姫、澪も高校には行かず、管理局員として仕事に専念するんだ。
これだけ首都防衛隊に戦力が常時揃っていたら俺が出向くまでも無いでしょ?
転生者3人だけでも過剰戦力なんだから。
「つー事で受験に合格さえすれば俺は高校生活を満喫するさ。何より……」
「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」
俺が一旦言葉を区切ると皆、続きを待っている様だ。
カルピスを少し飲んで喉を潤してから続きを言う。
「西条の奴も高校に通わないという事は平穏に過ごせそうだし♪」
コレ、超重要!!
アイツ高校に通わないんだ。
ま、当然だな。受験に合格出来る学力無いし
『学校なんて面倒臭いトコに通ってられるか!ミッドに移住する俺様の嫁達が寂しがるじゃねえか!!アリサ、すずか、テレサには寂しい思いさせるがStsの地球帰還イベント時に思いきり可愛がってやるから問題無いぜヒャハハハハ!』
とは本人談。
地球帰還っていうのはサウンドステージの内容の事だろう。
「「「それ本当!!?」」」
その地球組のアリサ、すずか、テレサが声を張り上げて聞いてきたので頷き返すと、その表情は喜色満面。
言うならば『
「何ですかそのボーナスステージは!?(あの男がいなくてユウキと一緒に学校で過ごせる日々……羨まし過ぎます!!!)」
目を見開いてユーリが声を上げ、他の魔導師組もアリサ、すずか、テレサを『良いなぁ…』と言うかの様な目で見つめる。
『西条がいない』という事実が余程羨ましいのだろう。コイツ等にとってボーナスステージとは正しい表現であると言わざるを得ない。
「それは朗報ね♪(もうアイツに付き纏われずに済むのね♪)」
「今から高校生活が楽しみだよ♪(もう西条君に付き纏われずに済むね♪)」
「受験に受かれば…だけどね(もうあの男に付き纏われずに済むなんて…最高じゃない)」
「「「「「「「「(本当に羨ましい…)」」」」」」」」
何つーかテンションの差がハッキリと分かるなぁ。
「後は新しい友達も出来るだろうしな。他の中学出身の奴いっぱいいる訳だし」
風芽丘は結構……というかかなり大きな学校だ。
俺がまだ小さい頃…『リリカルなのは』の原作が始まるよりも前の時期にいくつかの学校と統合された。
『とらハ』シリーズの原作知識では『私立海鳴中央高校』と合併され、1つの敷地に2つの学園の校舎が存在している事になっていたが、この世界じゃ海鳴中央の校舎は完全に無くなっている。
後は……確か『桐陵学園』『聖チェリーヌ学院』だったかな?海鳴中央以外に統合された学校の名前は。
他にもあった様な気がしたけど、ちょっと思い出せないな。
「とりあえず目先の問題としては受験合格……だな」
カルピスをグイッと一気に飲み干してから話題を切り替え、俺は皆との雑談に華を咲かせるのだった………。
「「「「「卒業おめでとー!!」」」」」
俺、謙介、誠悟、直博、澪の5人は翠屋で打ち上げを行っていた。
つい先程海鳴中学の卒業式が終わった所で、無事に卒業できた事を俺達は分かち合っていた。
「皆、おめでとう」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
美由希さんからの祝辞をありがたく受け取る。
「勇紀君、なのは達はどうしたんだ?」
「告白ラッシュに巻き込まれてます」
恭也さんに尋ねられたので俺は正直に答える。
小学校の時、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、テレサ、亮太、椿姫にも出来た告白する男子、女子達の行列は中学でも健在だった。
今回はそこになのは、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、リンディさん、プレシアさんも追加されている。
澪は改心する前の性格、態度が影響して告白してくる男子はいなかったが
『むしろ余計な事に時間取られないで助かりました』
との事で俺達と一足先に翠屋へ来ていた。
ちなみに西条はシュテル達に告白しようとする男子達を排除しようとしてたらしいが、魔法を表立って使えない以上、数の暴力には勝てず、ボロ雑巾の様に変わり果ててどこかに棄てられてた。
「受験も無事合格したし、俺達は4月から通う高校も同じだからあまり寂しさを感じないな」
「「全くだ(本当だね)」」
「俺は推薦入学だけどな」
「私は引っ越しますけど」
誠悟の言葉に澪以外は肯定する。
俺、謙介、誠悟は普通に風芽丘を受験し、見事合格した。
直博は受験を受けず、スポーツ推薦で入学を果たした。コイツサッカー上手いもんな。
澪は言うまでも無くミッドへ引っ越すため、誠悟の言葉に頷く事は無い。
「俺達以外に風芽丘行く奴って誰かいたっけ?」
「合格出来た奴は何人かいたと思うぞ。まだここに来ていないバニングスさん、月村さん、ローウェルさんを除いてだが」
「他の奴は全員市外の高校に通うんだよなぁ」
「その中の1人、あの吉満が文月学園の受験に合格したのは今でも信じられないけどな」
うん。マジで合格しやがったよ吉満の奴。
受験を受けるまでは禁欲生活してたらしいし。
阿部先生と愛し合えないという現実に必死に耐え、発狂する事無く乗り切ったおかげで合格出来たんだとさ。
その分、受験を終えて今日に至るまではひたすらヤリまくってたらしい。
……そう嬉しそうに吉満は俺に語ってくれたんだが、俺にとっては知りたくなかった事実だ。男同士の絡みに興味を持つ人間じゃないんだよ。
「何にせよ4月からもよろしく、だな」
直博の言葉に澪以外は頷き返し、残りのメンバーが翠屋に来るまでの間は5人でワイワイと騒いでいた………。
「じゃあねすずか。行ってくるから」
「うん。お姉ちゃんも元気でね」
「忍お嬢様。お気をつけて」
「頑張って下さい忍お嬢様」
「ま、程々にね」
忍さんに対してすずか、ノエルさん、ファリンさん、イレインが声を掛け
「父さん、母さん、美由希。行ってきます」
「行ってらっしゃい恭也」
「向こうでも鍛錬を疎かにするなよ」
「次会う時には恭ちゃんより強くなってるって事、証明するからね」
恭也さんに対しては桃子さん、士郎さん、美由希さんが声を掛けていた。
……一足早い春休み。
今日、俺達は朝から羽田空港に来ていた。
これから
この2人、先日親族と親しい友人だけを招いた小さな結婚式を挙げ、晴れて夫婦となりました。
恭也さんが月村に婿入りする形だったので今の恭也さんは『月村』の姓に変わっている。
そんな新婚さんを見送るため、空港に来てるのはなのはを除く高町家とすずか、ノエルさん、ファリンさん、イレイン。
……そして何故か俺。
何故ここにいるのかは俺自身も分からない。ただトントン拍子に話が進んでいて気が付いたら来てたのだ。
本当に何でだろ?
1人で考えていても一向に答えは出ない。
「「勇紀君」」
「はい?」
下を向きながら思考の海に浸っていたら恭也さんと忍さんに同時に呼ばれたので顔を上げ、手招きしている2人の方へ近寄る。
「すずかの事お願いね。一応一族云々についてはさくらの方に任せてるんだけど、絶対安全とは言い切れないから」
「お願いされました。時折さくらさんと連絡取り合ってそれとなく注意しておきます」
ノエルさん達がいても対応出来ない事態に陥る場合はすぐにでも手を貸そう。
「なのはの事も頼む。アイツは自分で何もかも抱え込む事があるから」
「俺、本局所属じゃないから会う頻度は低い…というか無いかもしれないですけど、もし会う様な事になれば注意深く見ておきます」
恭也さんの言葉にも頷く。
本局に行くなんて神様からの呼び出しで行くぐらいだしなぁ。そん時にでも様子見たら良いか。
それから二言三言会話を交わし、飛行機に乗る時間が迫ってきたので入場ゲートに向かう恭也さんと忍さんの後ろ姿を見送った後、すずかがポツリと呟く。
「皆、海鳴から去っていっちゃうね」
「だなぁ…」
「なのはちゃん達も引っ越しちゃったし、何だか寂しいな」
そう……中学の卒業式が終わった次の日。
なのは達オリジナル娘とシュテル達マテリアル娘はミッドの新居に引っ越した。
なのはとフェイトは同居、はやては八神家全員同じ家で住所は『なのはViVid』で住んで居る所と同じ場所っぽい。
プレシアさん、リニスさん、アルフさん、リンディさん、エイミィさんは変わらず海鳴のマンション住まいだが、内勤とはいえ仕事が忙しくなるとの事でプレシアさんとリンディさんは高校には通わず。
これはStsで機動六課設立のための準備が原因だな。
それで俺の家族であるシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの4人は新居を見つけるまでは首都防衛隊の女子寮に寝泊まりする予定だったが、その必要が無くなった。
ミッドにあるメガーヌさんの自宅を使う事になったのだ。
メガーヌさんとルーテシアが長谷川家で住む事になってからは、一度も寄っていなかったミッドのアルピーノ宅だが、定期的に清掃業者が清掃していたらしく、誰も住んで居なかったのにもかかわらず清潔感が保たれていた。
清掃業者に依頼してたのはレジアス中将がオーリスさんに頼んでの事だ。いつでも戻って来れる様にとの事らしい。
面倒見良いよなあの人。
ただ、家の鍵が無いから強引に開けた後、新しい鍵に変えたらしい。
『これ、犯罪になるんじゃね?』と思ったが事前にメガーヌさん本人に許可は取っていたらしく、問題無いとの事。
そんな事があり、シュテル達は現在ミッドのアルピーノ宅で暮らし始めている。
「勇紀君はなのは達みたいにミッドに住まないの?」
美由希さんに尋ねられたので俺は答える。
「俺はどれだけ
「「そうなんだ…(良かったぁ)」」
美由希さんと俺の側に立っていたすずかの2人がホッと安堵する様に息を吐く。
「恭也と忍ちゃんも見送ったし、私達も帰りましょうか」
「では私は車を回してきますね」
ノエルさんが俺達の元から離れ、車を取りに行ったので俺達も空港の入り口まで移動する。
海鳴市に戻ったら翠屋で昼食にしようかな………。
それからというもの…。
シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの4人がミッドに移住したという事以外は特にいつもと変わらぬ日常を過ごし…
「明日から俺も高校生か…」
リビングのソファに座っている俺は感慨深げに声を漏らす。
「私も4月から小学2年生だよ」
「
同じくリビングで先程までテレビを見ていたルーテシアとジークも俺の言葉に反応する。
「勇紀君、高校の制服のサイズはもう確認したの?」
「はい。ピッタリでした」
メガーヌさんは洗濯を終えた衣類のアイロン掛けをしながら聞いてきた。
先日家に届いた風芽丘の制服……サイズは問題無く着心地も良かった。
「今年もすももや伊吹と同じクラスになれるかなぁ…」
「
こればっかりは運を天に任せるしか無いわな。
「顔見知りと同じクラスになるのも良いけど、俺としては新しい出会いの方が楽しみだ」
何せ風芽丘には海鳴市外からも多くの同年代が来るだろうからな。
「新しい出会いかぁ…。そう言えばお兄ちゃん、お隣の家に明かりが点いてたよ」
「え?マジで?どっち?」
「右隣」
ルーテシアの言葉に反応する俺。
「左隣の家にも電気が点いてたわよ」
「本当ですか?」
続いてメガーヌさんの言葉にも聞き返す。
実は俺が高校受験を受ける少し前に俺の家の両隣に住む一家の人達が揃って引っ越していった。それぞれ旦那さんの仕事の都合という事らしい。
それからすぐに工事が始まり家が更地になったかと思えばすぐに新居を建てる工事が始まった。
けど家が完成したのが卒業式直前だったのにも関わらず、両隣の新居の住人の姿は一度も見た事が無かったのだ。
「どんな人達が引っ越して来たんだろうね?」
「
む?ジークは既に接触済みだったのか。
「何や名前聞いたけど『ジェレミア・ゴットバルト』さんて言うらしいんよ」
「ぶっ!!」
その名前が出た途端俺は噴いた。
「「「???」」」
メガーヌさん、ルーテシア、ジークの3人は俺を見て首を傾げるが、俺は隣に引っ越してきたという『ジェレミア・ゴットバルト』さんの事で頭が一杯一杯だった。
アレですよね?某反逆王子の作品に出てきた『オレンジ』さんの事ですよね?
この世界にゃ、ブリタニアは存在しないんだが……。
……やべ、何か一目見たくなってきた。
時間は午後8時過ぎ……挨拶しに行っちゃ駄目かな?
「お兄ちゃん、挨拶するのは明日にしたら?」
「そうね。引っ越してきたばっかりで荷解きやら荷物の整理やらで忙しいと思うわよ」
むむ。ルーテシアとメガーヌさんに俺の心中を見抜かれていた。
けど確かに引っ越してきたばっかで大変そうな時に挨拶しに行って邪魔するのは気が引けるな。
「……分かった。会うのは明日にしよう」
ココは素直に引き下がっておこう。
「じゃあもう一軒……右隣の人達については何か知らない?」
それについては誰も知らないみたいで3人共首を左右に振るだけ。
どんな人達なんだろうか?
……明日になれば分かるかな………。
~~士郎視点~~
今日は商店街の店主達と夕食を摂り、家に帰る前に翠屋に寄った。
店はもう閉店してる時間帯だけど、桃子が店の後片付けをまだやってるかもしれないからだ。
もし後片付けをしてるなら僕も手伝った方が桃子の負担も減るし、早く家に帰る事が出来る。
で、翠屋の前に来た訳だが案の定、入り口のドアに『CLOSED』の札が掛けられているのにも関わらず、店内の明かりはまだ点いていた。
僕は入り口のドアを開ける。
「桃子、ただいま」
「あら士郎さん、お帰りなさい」
僕の顔を見ると桃子は笑顔で出迎えてくれる。
「まだ後片付けをしてるのかい?」
「ええ。後はフロアの清掃と食器を洗うだけだから」
「じゃあ僕がフロアの清掃をするよ」
「別に1人でも出来るから大丈夫よ。先に家に帰ってくれてても良いのだけど」
「いや、2人でやった方が早く終わるだろ。だから手伝うよ」
「でも…」
「それに家に帰っても今の時間帯、美由希はランニングに行ってるから誰もいないんだ。1人は流石に寂しいからね」
「……じゃあお願いしようかしら」
桃子がそう言ったのを確認して僕は近くのテーブルに箱を置く。
「???士郎さん、ソレは?」
「ああ……雑貨屋の店主さんが僕にくれてね」
僕は箱のフタを開ける。
「……ティーカップ?」
「店主さんも知り合いに貰ったらしいんだけど、使う機会が無いって事らしくてね」
「へえ~…」
桃子は品定めする様にティーカップを箱から出して見て、ゆっくりと箱に戻す。
「もう良いのかい?」
「ええ」
じゃあ…と言って店内の清掃を行おうとした時だった。
「ん~~……何だか良い匂いがしますよ~~……」
「「っ!!?」」
僕と桃子以外の声が聞こえたので辺りを見渡したら
「「えっ!?」」
先程箱に戻したティーカップがフワフワと宙に浮いていた。
次の瞬間、店内を眩い光が包み込み、光が少しずつ収まっていく。
収まった後には
「ふわあぁぁ…良く寝ました~」
1人のメイド服を着た女性が立っていた。
女性は身体を思い切り伸ばしてから、徐々に目を開いていく。
そしてその視線が僕と桃子にロックオンされる。
しばらくは沈黙が店内を支配する。
が、その沈黙を破ったのはメイド服を着た女性だった。
「あのー……少々お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「…何かな?」
桃子を庇う様な立ち位置で僕は彼女の言葉に聞き返す。
彼女からは敵意、悪意と言ったものは感じられないが、だからと言って容易に警戒を解く訳にはいかない。
「このお店から何やら良い匂いが漂ってるんですが、もしかして何かのお店だったりするのでしょうか?」
「ここは僕と桃子が経営する喫茶店で翠屋と言うんだが…」
「喫茶店!!!」
その単語を聞いた瞬間、女性は尋常じゃない程に瞳をキラキラと輝かせ始める。
その輝いた瞳で店内を見渡した後、女性は告げる。
「あの!!!不躾なお願いで申し訳ありませんが私をこの店の店員として雇っていただけませんか?」
「「へ?」」
予想外の言葉が飛び出した事で僕と桃子は目を丸くする。
「こう見えても私、お客様に対する奉仕の心得は完璧に熟知しています!!だからお願いします!!私を雇って下さい!!」
深く頭を下げ、告げてくる女性にどうこたえようかと思っていたら桃子が口を開く。
「あの……貴女は一体何者ですか?お名前は?」
「あっ!!済みません、申し遅れました!!」
コホンと小さく咳を入れて彼女は自分の名前を言う。
「私の名前は『リズリット・L・チェルシー』と申します。こう見えて100年生きてきた『紅茶の精霊(自称)』なんです。どうか『リズ』とお呼び下さい」
~~士郎視点終了~~
~~???視点~~
「ふぅ…荷物が多いから整理も大変だ」
「仕方ないですよドクター。妹達がまた増えたんですから」
そうだね。
つい最近稼働し始めた2人の娘はまだ彼にも会わせていない。
「ドクタードクター!!」
「何だいウェンディ?」
その2人の娘のウチの1人、『ウェンディ』が私を呼ぶ。
「あたし、今からドクターの知り合いの人に会って来て良いッスか?」
「止めなさい」
私が止めようとしたらウーノが割って入って来た。
「今日は荷物の荷解きで忙しいのですよウェンディ」
「え~!?」
「ウーノの言う通りだよウェンディ。今日は我慢しなさい」
明らかに不満そうな表情のウェンディ。
「でもお隣なんスから少し挨拶するぐらいなら…」
「もう夜です。こんな時間帯に伺うのは相手方に迷惑でしょう」
「むうぅぅ…ノーヴェ!!ノーヴェはどうなんスか!?あたしと一緒で挨拶したいと思わないッスか!?」
ウェンディは援軍を求める様に、すぐ側で荷解きを行っていた娘『ノーヴェ』に声を掛ける。
「別に明日でいいだろ?ドクターの恩人でチンク姉達が認めてる人ってのに興味はあるけど、今すぐ会わなきゃいけない訳じゃねーんだからよ」
呆れた表情を浮かべながらノーヴェは答える。
その後、トーレ、クアットロ、セイン、ディエチと順に声を掛けるウェンディだが、皆『明日にしなさい』の一言でバッサリと断っていた。
私はそんな娘達を置いて玄関を出、表に『ゴットバルト』と明示された表札を掛ける。
ここが管理外世界とは言え、これまで管理局の目を引く様な事件を発生させているのだ。
念には念を入れ、偽名を使っておいた方が良いだろう。
だから私はこの世界では『ジェレミア・ゴットバルト』と名乗る事にした。
彼……勇紀君から借りたアニメのDVDに登場してたキャラの名前だが、何故か彼には共感できる何かを感じたのだ。それが一体何なのかは分からないが…
「(まあ、いずれにせよ…)」
明日、私や娘達は勇紀君と顔を合わせるだろう。
彼には私達が引っ越す旨を伝えていないから、久々に顔を合わせた時の反応が楽しみだよ。
まさか彼の家の隣に引っ越してきたとは思ってないだろうからねククク………。
~~???視点終了~~
~~???視点~~
「博士、この資料はどこに置きます?」
「僕の部屋に置いといてくれないか」
「分かりました」
ふぅ……荷物の整理もほとんど片付いて来たわね。
何か結構動いたから小腹が空いたし喉も渇いた…。
「アミター!!私ちょっとコンビニに買い物に行ってくるけど何か欲しい物とかあるー?」
「そうですねぇ…牛乳を買ってきておいてくれますか?」
「りょうかーい」
私は靴を履き、家の扉を閉めて外に出る。
そして隣の家……数年前に出会った彼の家をちょっとの間、眺めてからコンビニに向かう。
あの時に『また会おう』って約束したのに、結局一度も来ないままエルトリアの復興を終えたので、私達フローリアン家は彼の住む星、『地球』にまで移住してきた。
もっとも移住してきたのは半年程前で、彼に会うよりもこの星の一般常識を覚える事を優先し、今までは別の街で必死に勉強してきた。
ついでに彼の動向とかもそれとなく調べ、彼が4月から通う学校に私とアミタも通うため、余計に勉強に力を入れたのも懐かしい思い出だ。
後は彼……勇紀を驚かせるために半年もの間会うのを我慢していたが、久々の再会の時の反応が何だか楽しみだわ。
早く明日にならないかしらね………。
~~???視点終了~~
~???視点~~
「ねえねえ優人~」
「どうしたんだ凜子?」
「風芽丘ってどんな学校だろうね?」
「さあ?いくつかの学校が統合した所なんだろ確か」
「『少子化による経営の危機を回避するための統合』だったっけ?」
「そんな理由だったかなぁ」
俺や凜子が小さい頃に『桐陵学園』が『私立風芽丘学園』に統合されたせいで、高校が近隣に無いんだよなぁ…。
もっとも風芽丘自体そんなに遠い距離じゃないから良いんだけどさ。
「凜子は部活何かすんの?」
「んー?私は中学の時同様に助っ人部員かなぁ」
「そっか」
凜子の運動神経は抜群だもんな。
中学の時は各運動部から引っ張りだこだったし。
「それよりも優人、明日は寝過ごしちゃ駄目だからね!私が来るまでにちゃんと起きといてよ」
「善処するよ」
と言うものの、ちゃんと起きないとヤバいよなぁ。初日から遅刻とか洒落にならん。
ま、いずれにせよ…
「新しい学校か…。良い友達が出来ると良いな」
俺は明日から始まる高校生活に期待に胸を弾ませるのだった………。
~~???視点終了~~
~~???視点~~
「ふぅ…」
羽田空港。
私は久しぶりに日本に戻って来た。
「お疲れ様です。『神宮寺くえす』お嬢さんですね?」
そんな私にいきなり声を掛けてくる男性。
「貴方は?」
「どうも。警備局公安4課の『鏑木』と申します。日本でお嬢さんの行動をサポートする様にと上からの命令が下されておりまして」
「ああ…公安の。お母さまから話は伺っておりますわ」
小さく会釈をし、『よろしく』と一言挨拶をしておく。
「今後のお嬢さんの行動の予定などを詳しく伺いたい所なんですがよろしいですか?」
「構いませんわ」
「そうですか。では車を用意してますのでここから移動しましょう」
「ええ」
「それからお嬢さんの滞在場所ですが、お嬢さんの要望通り、海鳴市にある『ホテル・ベイシティ』の一室を抑えてあります」
「ご苦労様」
私を先導してくれる鏑木さんの後に着いて行き、車に乗り込む。
「今日はもう時間も時間ですからホテルで休まれるのでしょう?」
「ええ、行動するのは明日からにしますわ」
今日は疲れましたわ。軽くシャワーを浴びてゆっくり休みましょう。
「それとお嬢さんの言っていた『彼』についてですが、明日から『私立風芽丘学園』に通うみたいですよ」
「……随分呑気に過ごしてるんですのね。あのブラドを倒した以上、裏の世界ではかなり名が上がったというのに…」
けどブラドをたった1人で…しかも完勝したと聞きましたわ。
流石ですわね『ゆうちゃん』。私の許嫁候補だけはありますわ。
「彼自身、進んで裏の世界にはあまり関わってないみたいですからね。命を狙われるというのも今の所無いみたいですし…」
「ブラドを倒す実力者にケンカを吹っ掛ける者なんて基本いませんものね」
「全くですハハハ…」
私の言葉に鏑木さんは苦笑いで答える。
「ああ…後、彼の通う学校に『天河』の血を引く少年も通うそうですよ」
「天河優人……ですわね?」
鬼斬り役序列『
正直、コチラは私にとってはどうでもいいのですけど神宮寺家が『光渡し』の能力にも目をつけている以上、私のもう1人の許嫁候補となっている。
「……まあ、一応どんな風に成長してるのか見ておくのは悪くないですわね」
…決めましたわ。
明日は『長谷川勇紀』と『天河優人』。この2人に会うとしましょうか。
ひょっとしたら『猫』もいるかもしれませんけど………。
~~???視点終了~~
~~???視点~~
「飛白姉様。やっと着きましたね」
「ええ。ここが『さざなみ寮』ですね」
中越からこの地…海鳴市に私と妹の飛鈴はやって来た。
理由としては小さい頃に出会った彼…『長谷川勇紀』と同じ学校に通うため。
そして今現在の彼がどの様に成長してるのかをこの目で見るためです。
そのため私は海鳴市に在住してる退魔師『神咲那美』さんに連絡を取り、このさざなみ寮に入寮する様、取り計らってもらった。
「うぅ…疲れました」
「意外に長旅になりましたからね。今日はお風呂だけ頂いて早く休む事にしましょう」
「はい~…」
私と飛鈴は寮の扉を開け、中に入ります。
「済みませーん」
「はーい」
飛鈴が声を上げると奥の方から返事が聞こえ、パタパタと足音を立てながら近付いてくる女性が1人。
「私達、今日から入寮する事になりました『各務森』という者ですが…」
「はいはい。那美ちゃんから話は聞いてますよ。私はこの寮のオーナーで槙原愛と言います。よろしくね」
「「よろしくお願いします」」
そのままリビングに上げられ、自室の鍵を受け取って私と飛鈴は宛がわれた部屋に入る。
「ふぅ…」
トランクを置き、ベッドに腰掛けて一息。
最低限必要な荷物はトランクに入れてあり、他の物については明日、宅配で届く様に手配している。
「替えの下着……」
私は着替えの服と下着を取り出し、早速風呂を使わせて貰うため、浴場へ向かう。
場所は既にオーナーの槙原さんに聞いているので迷う事は無かった。
「(飛鈴はまだ来てない様ですね)」
脱衣所で服を脱ぎ、一足先に風呂に入る。
良い湯加減ですね。旅の疲れが癒されます。
「……彼は私の事を覚えているでしょうか?」
ポツリと私は呟きます。
覚えていてくれたら嬉しいんですけどね………。
~~???視点終了~~
~~???視点~~
「~~♪~~♪」
「随分ご機嫌ですね遥さん」
「うん!明日からの高校生活が凄く楽しみだもん!葵ちゃんだってそうでしょ?」
「そうですね」
葵ちゃんは笑顔で私の言葉に答えてくれる。
『私立風芽丘学園』……どんな所なんだろう?どんな人達が入学してくるんだろう?
そんな事を考えるとワクワクが止まらないよ。
「同じクラスになれたら、その時はよろしくお願いしますね遥さん」
「私の方こそよろしくだよ葵ちゃん」
私と葵ちゃんは笑顔を浮かべ、笑い合う。
早く明日にならないかな。楽しみだなぁ………。
~~???視点終了~~
~~キャラクターステータス~~
NO.0014
八神リインフォース
LV 83/ 999
HP 10000/10000
MP 780/ 780
移動力 7 空 S
運動性 155 陸 S
装甲 1800 海 B
照準値 160 宇 -
移動タイプ 空・陸
格闘 231 命中 250 技量 229
射撃 234 回避 249 防御 244
特殊スキル 援護攻撃L2
援護防御L2
底力L4
ガード
見切り
連続行動
~~あとがき~~
これにて中学生編は終了ですかね~。
次回からは高校生編。
これまでスポット参戦気味だった連中や伏線も何も無かった他作品がいきなり現れる高校生編です。
ヒロインが一新された上に、ハーレムメンバー増員必至です。
というかようやくあの作品を本格的に絡ませる事が出来るぞー。
ミッドに移住した魔導師組については高校生編での出番はほとんど無いかもしれません(『リリカルなのは』なのに…)。
どうせSts原作では嫌でも出るんだから高校生編は出なくても別に良いよね?
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。