No.681815

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第31話

黒天さん

今回は糜姉妹と夏侯姉妹の話しと、翠の話し、紫苑と璃々ちゃんの話しの3本です。

2014-04-27 00:32:59 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:6861   閲覧ユーザー数:5186

「天泣! 私と本気で手合わせしろ!」

 

華琳さんに下がるよう言われた春蘭が、扉から出るなり天泣に詰め寄った。

 

多分あの時負けたのが納得行ってないんだとおもうけど

 

「ヤですー!?」

 

さっと私の後ろに隠れてしまう天泣、って私を盾にしないでよ!?

 

「秋蘭さん……」

 

「お前たちの離反や、華琳様の手傷についてはどうにか華琳様と2人がかりで納得してもらったんだが、

 

こればかりはどうしても再戦したいと聞いてくれなくてな」

 

そういってため息、まぁ、春蘭さんの気持ちは分かるけど、不意打ちもいいところだったし。

 

「というわけだ、今度こそ負けないからな!」

 

「どういうわけですかー!?」

 

これは多分どうあっても折れてくれなさそう、

 

秋蘭さんも何だか諦めた感じの顔になってるし……。

 

「うぅ、私の本気はあんまり人に見せるものじゃ無いですー。姉さん助けてー……」

 

私に縋られても困るんだけど……。

 

「私と天梁だけが立会なら問題ないだろう? どちらもお前の本気は知っているのだし」

 

「天泣、勝負してあげたら……?」

 

ぶんぶんと首を横に振って涙目でこっちをじーっと見つめてくる。

 

春蘭さんと勝負するのがよっぽどイヤみたい。

 

「なら自分で断ればいいじゃない」

 

私がそういうと、天泣も一つため息をついて春蘭さんに向き直る。

「私は漢から援軍として派遣されて来たので、模擬戦で怪我をするわけにはいかないですー。

 

それは、これから戦があるので春蘭さんにも言えるとおもいますー。

 

なのでせめて戦の後ではいけませんかー?

 

刃を潰した武器での模擬戦であったとしても、当たりどころが悪ければ華琳さんのように

 

後遺症が出るような大怪我になる場合もありますからー」

 

「む、むぅ……」

 

天泣の言い分はまぁ正論。

 

勝負がしたい云々は言ってしまえば単に春蘭さんのワガママだし。

 

春蘭さんも言い返せないみたい。

 

それを見て驚いてるのは秋蘭さん。

 

「なぁ……、天泣は確かこういってはなんだが、アホの子じゃ無かったか……?」

 

「あー……、アレで頭の回転は悪くないですよ?

 

あの間延びした口調は、油断を誘うために演じていたら抜けなくなっちゃっただけですし。

 

戦でも状況判断はきっちりしますし」

 

「そうだったのか。少しうらやましいな、ウチは姉者があれだからな……」

うん、私も春蘭さんが猪過ぎるのは気になってたし、そこはちょっと同情しちゃうかも。

 

確かに春蘭さんは強いけど、戦で無策に突っ込んでいってしまう可能性が高いのはいただけないし。

 

秋蘭さんが制止役(ストッパー)として傍に居ればその欠点も補えるんだろうけど。

 

「もっとも、そんな姉者が可愛いんだがな」

 

秋蘭さんが、天泣にさらに理詰めで追い詰められて頭から煙を吹いてる春蘭さんに視線を向けて

 

「そういえば季衣ちゃんはどこに?」

 

「季衣なら今は警邏に出ている。もうしばらくすれば戻るはずだ」

 

「お土産買ってきたんですよ、お菓子ですけど。

 

紫青ちゃんと華琳さんのお話が終わったらだそうかと」

 

確かクッキー、というお菓子。小麦粉と豚脂と卵と砂糖を練って焼いた物。

 

「もう少しすればかえってくるハズだから、それから、だな」

 

「そうですね」

 

それからしばらく、春蘭さんと天泣の舌戦を秋蘭さんと2人でのんびり眺めて過ごすことにした。

───────────────────────

 

「え? 護衛?」

 

「そうそう、護衛。要人の護衛だよ」

 

「何であたし?」

 

「戦があるから、主要な将が皆出払っちゃってるからなぁ。それに洛陽の警備隊で一番腕の立つのはお前だからな」

 

「はぁ……、まぁいいけど。じゃあ城の方にいってくるよ」

 

「劉協様のご友人だそうだから粗相のないようにな」

 

警備隊の詰め所から、城に向かったのは翠。

 

城の方から、護衛して欲しい人がいるから人を貸して欲しいという要請があったのだ。

 

確かに、暗殺未遂があったという話しも聞いてるし……。

 

しかし董卓も劉協も前線に出ているというのに一体誰の護衛だろう?

 

首をかしげながら城の門をくぐり、指定された場所に向かうと、そこに居た人物を見て驚き、目を見開く。

 

灰色の髪をポニーテールにして、黒を基調にした服に、メガネをかけた人物。

 

「華歆……?」

 

夢で見たことがあるため、華歆の事は知っていた。知っていたからこそ、洛陽に華歆がいた事に驚いたのだが。

「わざわざ呼び立てて申し訳ないわね、あなたが護衛の人でいいのかしら?」

 

「あ、ああ……、あなたの護衛をすれば?」

 

「護衛して欲しいのは私じゃなくて、娘の方よ。まだ傷が治ってないのに、どうしても行きたい所があると聞かなくて……」

 

「というと?」

 

「暗殺未遂があって、けが人が出たって話しは伝わってるでしょ? そういうことよ。

 

もう無いとは思うけど、一応ね……」

 

そういって、華歆は麗を連れてくる。

 

「華偉容です。お願いします」

 

ぺこりとお辞儀するメイド服姿の女の子。華歆と同じ腰まである灰色の髪が印象的だ。

 

こちらは翠はしらない。

 

「私は馬孟起だよ、よろしく」

 

「体調が優れないようなら、首に縄をつけてでも連れて帰ってきてください」

 

そう言う華歆に見送られて城を出る。

 

翠が行き先はどこかと問えば、墓だというので連れて行く。

 

墓、といえばあそこしか無い。前の世界にもあっただれでも参れる墓だ。

 

そういえば華歆は未亡人だったか、と、胸の内で考える。

 

おそらく父の墓参りなのだろうと。

 

しかし翠の予想に反して麗が向かった先はその墓のすぐ近くにある馬騰の首塚だった。

「あれ、そっち?」

 

「はい」

 

そういって麗は首塚に手を合わせ、黙祷する。

 

「ここの人と知り合いなのか?」

 

「ええと……」

 

麗が何か言いにくそうに言いよどむ、その様子に首を傾げる翠に、麗がおずおずと口を開く。

 

「あの、笑わないでくれますか?」

 

翠が頷けば、麗はゆっくりと話し始める。

 

ここで天華……、劉協を庇って死にかけた事。

 

そして生死の間を彷徨っている時に現れた人物の事。

 

「背が高くて、なんていうんでしょう? いかにも武人さんっていう感じのちょっとこわい顔の人でした。

 

その人のことをお母さんに話したら、おそらくこの首塚に眠ってる、馬騰さんだって言ってましたので……」

 

衣服や持っていた武器等の細かい話しを聞くうちに、翠にはそれが馬騰だと理解できた。

 

「すごく強い人でした。何もない所を歩くうちに川にたどり着いて、そこには鬼がいたんです。

 

私おっかけられたんですけど、その人が鬼を川に突き落としちゃって」

 

川に鬼を蹴り落とす父の姿を想像し、翠は思わずふきだしてしまった。

「笑わないでくださいっていったのに……」

 

「ごめん、川に鬼を蹴り落とす父上を想像するとおかしくて」

 

「やっぱり、お父さんだと思いますか? 夢ででてきたあの人は結局名乗らなかったんですけれど……。」

 

「そうだよ、多分。聞く限り父上としか思えないし。

 

もう少し、その話を聞かせてもらえないか?」

 

「いいですよ。でも、帰ってからにしませんか? ここで立ち話では冷えますし……」

 

「ん、あー……、でも城に戻ったらあたしは警備の仕事に戻らなきゃだから」

 

「なら……」

 

麗の発案で、手近な飲食店に入り、暖を取り、お茶を飲みながら話しの続きをする。

 

麗が実際意識を失っていたのは一日ちょっとなのだが、どうもその馬騰と出会った夢では数日間を過ごしたらしい。

 

「色々な話しを聞かせてくれました。家族の事や故郷の事。孟起さんの事も聞きましたよ」

 

「父上はずいぶんと偉容の事を気にいったんだなぁ……」

 

「そうでしょうか?」

 

麗の疑問符に翠が頷く。

 

「ああ、そうだ。父上がそこまでしたぐらいだし、偉容には私の真名を預けとくよ、私は翠。改めてよろしく?」

 

「私は麗です。今日はそろそろ帰らないとだめですけど、また馬騰さんの事を聞かせてもらってもいいですか?」

 

「もちろん。非番の時に顔を出すよ」

 

「お願いします」

 

麗がにこりと笑い、それを見た翠は少し照れくさそうな顔をするのだった。

───────────────────────

 

「おかあさーん!!」

 

「璃々!」

 

体当たりでもするように、紫苑に突撃していく璃々。

 

それを受け止めてしっかり抱きしめる紫苑。

 

「感動の再会だなぁ……」

 

「水をさすのは野暮よね。すごくツッコミ入れたい所はあるけど」

 

「……だなぁ……」

 

それを遠巻きに眺めているのは俺と詠。

 

『何かおっきくない? 璃々ちゃん』

 

結局耐え切れずに、俺と詠がツッコミを入れたのは同時で、見事にハモった。

 

「だよね……、前より明らかに大きいよね……」

 

そう……、実年齢は分からないが体がでかいのだ。

 

今日合流してさっきはじめて見たんだけど、思わず誰?って言っちゃいそうになった。

 

つれてきた忍者隊の者に聞いたら璃々ちゃんで間違いないっていうし。

 

よくよく見れば璃々ちゃんを成長させたらこうなるだろうってのはすぐ想像ついたし。

 

前はせいぜい幼稚園児~小学生低学年ぐらい、に見えたんだけど。

 

今は小学生高学年から中学生ぐらい……に見える。当然着てる服も違うし。

 

服装は、飾り気の少ない長袖にロングスカート、色合いは前に着ていたものと同じだけど。

 

全体的に落ち着いた印象にまとまってる。

そしてあの母にしてこの子あり、というか何というか。

 

まだ幼さがかなり残ってるのに既に胸が服を押し上げて自己主張している。この後どこまで成長するかは謎だけど。

 

うちの軍師勢は血涙流しそうだ、優雨と詠をのぞいて。

 

あと、髪は伸ばしてるし。紫苑の背が高い影響からか、身長も以前とくらべて大分成長してるように見える。

 

髪型は頭のリボンはそのままに、ツインテールにしてる感じ。

 

でも璃々ちゃんがああってことは、紫苑の年齢はどうなってるんだろう……。

 

「何に考えが至ったかは想像つくけど、口に出しちゃだめよ」

 

「分かってる。俺だって命は惜しいし」

 

そういえば璃々ちゃんは俺の事覚えてるんだろうか。紫苑はかなり覚えてるみたいだけど……。

 

さすがに璃々ちゃんは泰山に連れて行かなかったから多分覚えてないんだろうな。

 

「ありがとうございます、ご主人様」

 

「ありがとうございます!」

 

考えている間にこっちに2人が来る。近くで見るとやっぱり璃々ちゃんだ。

 

受け答えを見るに少し大人びた感じだけど。まぁ前は見たまんまな感じだったしなぁ。

 

舌っ足らずな感じもなくなってるし。

「璃々ちゃんは俺の事覚えてる?」

 

「ん、んー。少し覚えてるよ。頭を撫でてもらったこととか」

 

「そっか」

 

「そういえば……、愛紗さんも鈴々ちゃんも、ご主人様の事を名前で呼ぶようになっていましたが……」

 

「あぁ、そういえば紫苑にはまだ説明してなかったっけ

 

振り出しに戻った時にさ、どうせだったら大陸の習慣にならって姓名字と真名を持とうと思ってさ。

 

今は、姓は島、名は津、字が北郷、真名が一刀になってるんだ」

 

「あら、そうだったんですね。それならば納得です」

 

「やっぱり、ご主人様っていう呼び方はまずしない感じなの?」

 

「そうですね。真名があり、それを許していただけるなら普通はそちらで呼びますし。

 

真名がなかったからこその呼び方かもしれません」

 

「やっぱりそうなのか。まぁ、紫苑は覚えててくれてることだし、真名で呼んでくれていいよ。

 

当然璃々ちゃんもね」

 

璃々ちゃんの頭に手を置いてなでなでと。ああ、こうして笑ってくれる顔は、以前のままだな。

紫苑から詳しい話を聞いてみると、旦那さんが亡くなってから夢を見始めたんだとか。

 

もし子供の頃から見てた、とかだと下手したら璃々ちゃんが存在しない可能性が出てくるし、都合がいいといえばいいんだけど。

 

でもどうして璃々ちゃんが以前より成長していたんだろう……。

 

いや……これも多分単純な話しなんだろう。紫苑なり璃々ちゃん自身なりが、もう少し大きければよかったのに、と。

 

そう考えていたとしたらそれが反映されていても不思議じゃない。

 

実際の所は、璃々ちゃんが生まれたのが前より少し早かったらしい。

 

あと、聞いた所によれば、紫苑に似て弓の扱いが得意だとか。

 

とはいってもまだ見習いもいいところで、目下練習中だし、弓の練習よりも文官や軍師としての勉強を重視してるらしい。

 

まぁ、実戦でガンガン行けるぐらい弓が使えるなら人質になんてならないだろうし。

 

今回のことを糧にして、強くなってほしいと思う。もっとも……、戦わなくていい世になればそれが一番なんだけど。

 

……、すごく後になってから聞いた事なんだけど、紫苑が夢の中の俺の好みを考えて、武官より文官よりに育てたとか……。

 

「でも、前と違って璃々がこれだけ成長してるんだから、遠慮無く一刀様のお嫁に出せますね」

 

「ぶふっ」

 

「もう、お母さんったら……」

 

「いっとくけど、俺今、太守でも何でもないからね? 一介の将だからね?」

 

「あら、劉協様を真名で呼び捨てる方が一介の将だなんて、何かの冗談としかおもえませんわ?

 

それに、太守だから、とかそういう事で言ってるわけじゃありませんもの」

 

紫苑はそういってとてもいい笑顔で笑うのだった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は翠と麗ちゃんが仲良しになって、璃々ちゃんが大きくなっていたのが発覚しました。

 

戦闘は……、おそらく次回には戦闘を持ってこれると思います。

 

それと、お気に入りが1000人を超えました!

 

とても嬉しいです、これからもよろしくお願いします。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

 


 
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