No.682154

鬼島津一刀と猫耳軍師 2週目 第32話

黒天さん

今回で対袁紹軍の戦は終了となります。

2014-04-28 00:20:01 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:7748   閲覧ユーザー数:5685

「そろそろ頃合いかな?」

 

「こっちが動くのはまだよ、華琳の方が動くのはそろそろだと思うけど」

 

袁紹を暗殺しにかかってからしばらく、ようやく華琳の方に派遣していた軍が引き返してきたらしい。

 

その間に漢は準備を整えていた。

 

「さて、どうする? 天華」

 

「私から出せる指示は無いよ、お世辞にも軍略に明るいとはいえんからな。それに、どう動くかは決まってるのだろう?

 

それなら予定通りに進めつつ『見敵必殺』だ。殲滅しろ」

 

「投降者は?」

 

「認めよう、ただし、逃げる者には追いすがれ。深追いしすぎん程度にな。

 

期待してるぞ? 『冥府の御使』」

 

「うわぁ、そのとおり名はやめてっ、恥ずかしいからっ」

 

両手で顔を覆う一刀。忍者隊からの情報なのだが、袁紹軍の中で一刀は冥府の御使として恐れられているらしい。

 

一刀的にはとても不本意らしいが。

一刀達の隊はいわゆる囮、メンバーは、天華、桂花、霞、華雄の5人。

 

率いる兵の数は1万。

 

両翼で伏兵として伏せているのは、愛紗、鈴々、朱里、紫苑が左翼、涼音、静里、優雨、璃々が右翼で伏せている。

 

率いる兵はそれぞれ2万。

 

璃々は、桂花を始めとする軍師勢に学力を見てもらった結果、軍師として及第点をもらったので本人の希望もあり、勉強の意味も込めて参戦することになった。

 

さらに、遊撃隊として包囲が成った後に逃走する敵に追いすがるのが菖蒲、椿花、星、詠の4人。

 

恋と冬花は洛陽で留守番だ。

 

「さて、そろそろ始めましょうか。堰を切れ!」

 

最初に指示を飛ばしたのは華琳。鎌に変わって剣を持ち、それを掲げて声を張り上げる。

 

今回華琳が用いた策は史実でも曹操が得意とした水攻め。

 

気候が暖かくなり始めるこの季節、雪解け水により川は増水するため、堰き止める事ができたならその破壊力は絶大となる。

 

堰を切った水は一気に川を駆け抜け、丁度川を渡ろうとしていた袁紹軍を直撃し、大きく二つに分断する。

 

押し流されていった兵はおそらく1万程度か。

当然水攻めだけで終わらせるはずもなく、水によって分断されて混乱の只中にある袁紹軍の、曹操領側に取り残された兵に突撃を仕掛ける。

 

先鋒は春蘭と天泣、そのすぐ後ろを季衣の隊が続く。

 

「行きますよー!」

 

「さぁ、曹孟徳が一の家臣、夏侯元譲が相手だ! 死にたい者からかかってこい!」

 

「行くよー!」

 

大剣を振るう2人が敵陣に突撃し、次々に兵を打ち倒し、撃ち漏らしを季衣がその鉄球でもって片付けていく。

 

「ふふ、予定通り、顔良と文醜はこちらに取り残されたようですよ。

 

敵兵の数は少ないですが、こちらが激戦区になるでしょう、秋蘭さん、援護をしっかりしてあげてください。

 

川の水位が下がる前に、一気に決着をつけてしまいましょう」

 

「言われずとも分かっている。弓兵隊前へ! 一矢たりとも無駄にするな。全軍構え! 射て!!」

 

秋蘭の隊が次々に矢を放ち、敵兵の勢いをそぐ、それに合わせるように前衛が敵兵を川へ押し込むように責める。

 

そこへ上流から川沿いに下ってきた華琳と天梁が横撃を仕掛ける手はずとなっていた。

 

華琳達は予定通りに一気に川沿いを駆け、袁紹軍の横腹に突撃を仕掛ける。

 

敵が川と春蘭達とに挟まれて身動きが取れない事をいいことに、長蛇陣で攻めかかる。

「この曹孟徳に敵対したことを後悔するといいわ、

 

さぁ、顔良、その首は私がもらうわよ!」

 

敵陣深くにまで一気に押し込んだ所で華琳は顔良を見つけ、ニヤリと笑う。

 

「うぅ、ここでやられるワケには……

 

でも、本調子じゃないって聞くし、ここで仕留めてしまえば……!」

 

華琳の首を落としてしまう事を考え、顔良は馬上の曹操に一気に走りこむ。

 

当然、天梁がそれをさせるわけもなく、その前に立ちふさがった。

 

「あなたの相手はこちらですよ? 顔良さん」

 

「弓使いなら……!」

 

顔良はその姿を見て一気に距離を詰めようとする。

 

天梁は慌てた風もなく、矢筒から鉄の矢を取り出し、顔良の接近に合わせて踏み込み、それを振り上げる。

 

その鉄の矢は返しが大きく、斬撃、刺突ともに対応出来るような作りになっている。

 

「!?」

 

その矢を大金槌の柄で受け止め、軽く後ろにとんで距離を取る。

 

そのとんだ着地を狙うように、天梁は容赦なくその鉄の矢を打ち込んだ。狙いは脚。

 

顔良はとっさに横に跳んでそれを避ける。

「不意打ちを避けられてしまいましたか、まだまだ鍛錬が必要ですね」

 

そう言いながらも、顔良の逃げた先に木製の矢を連射するが、それを危うい所で避け、

 

顔良が再度接近する、重い武器では不利と見てか、今度は目前でその金槌を捨て、蹴りを放つ。

 

その蹴りを鉄の矢で受け止め、蹴りを返す。元々蹴り技も使う天梁は靴に鉄板を仕込んでいるためその蹴りは重い。

 

腕でその蹴りを受け止めた顔良が、苦痛に顔を歪める。

 

「ふふ、引き出しの多いのはいいことです、でも、私に勝てますか?

 

それに、武器を捨ててはこの矢は受け止められないと思いますけど」

 

蹴りを放ち、矢で斬撃を行い、距離を離せば一方的に射撃に晒せる事もあり、距離を取れなくなった顔良を追い詰めていく。

 

この時点で勝負の主導権を握っているのは天梁。天梁はこのまま一気に決めにかかる

 

「決めます、ハァ──!!」

 

矢を袈裟懸けに振り下ろし、それを避けた顔良の足元へ深く踏み込み、背から顔良に体当たりを行い、いわゆる鉄山靠を食らわせた。

 

ただの体当たりではあるため、手傷は負っていない物の、顔良は転倒する。

 

「勝負ありよ? 顔良」

 

転倒した地点……、天梁が体当たりで顔良を飛ばした方向に華琳が待ち受けており、その首に剣を突きつけた。

 

「大人しく捕まるならそれでよし、まだ歯向かうならその首を落とすわ」

 

「うぅ……、麗羽さますいません……、降参です……」

 

その頃……、文醜は春蘭に身も蓋もなく一撃でやられていた。

 

「……何かさー、あたいの扱いひどくない?」

 

「諦めましょうー♪」

 

「うむ、人生諦めも肝心だぞ」

残る大半を引き受けた一刀達漢の本隊だが、

 

こちらは特に見せ場らしい物も無かった。

 

簡単に言ってしまえば、将を失った袁紹軍は釣り野伏にものの見事に引っかかり、

 

瞬く間にその戦力をすり潰されていった。

 

この戦に劉備が来ていなかった事も大きい影響としてあるのだろう。

 

また袁紹がここしばらくまともに政をやっていた影響か、

 

投降するものは少なく、逃走しようとするものはでたものの、それは菖蒲率いる遊撃隊に次々に潰されていった。

 

袁紹はこの戦に現れはしたものの、兵数は僅わずか5000で、現れた時は既に先に戦っていた隊は壊滅していたため、

 

自身の軍がよくしていたように、数の暴力によって押しつぶされた。

 

この戦いでの袁紹軍の被害は、投降したものがたった5000。残りは死亡という凄まじい物となり、漢の圧勝となった。

 

袁紹を抑えたことで傘下にあった諸侯も漢へと下り、袁紹の領土の半分程を取り込む事ができた。

 

この戦を期に、漢を怒らせると、天の御遣いが冥府の御遣い『鬼島津』となって粛清しに現れる、という噂が流れ、諸侯はそれを酷く恐れた。

───────────────────────

 

「で、袁紹達への罰則なんだけどどうする?」

 

「当然斬首だ、と言いたい所だが、一番の被害者の麗と璃々に決めてもらおうと思っている」

 

と、捕縛した3人への罰則を天華に聞いてみたところ、そういう返事が帰ってきた。

 

年齢が近いからか、麗ちゃんと璃々ちゃんは会ってすぐに意気投合したらしく、

 

結構仲良くやってるぽい。

 

それなら、と2人に相談しにいくと……。

 

「そろそろ侍女のお仕事も大変になってきたので、顎で使える人が欲しかったんですよねー」

 

「私も手近に雑用してくれる人が欲しいと思ってたとこだよー」

 

と、要するに雑用係にしてしまおう、という話しらしい。

 

……罰則が軽すぎないか? っていう話しも最初当然でたのだけど、その話しはすぐにされなくなった。

 

まぁ、年端もいかない女の子2人に顎で使われる屈辱もさることながら、

 

業務内容も相当過酷だった。

 

人を人とも思わぬ悪夢のような鬼のような仕事量。

 

朝一番から廊下の掃除に始まり、それぞれが仕事に出れば各部屋の掃除に、洗濯から風呂掃除まで。

 

各々の仕事が終わった後の、訓練所や、蔵書庫の整理等作業は多岐にわたり、朝一から夜に疲れ果てて寝るまで仕事漬け。

 

罰則ということで当分の間休日は無し。

 

姑のごとく細部まで指摘し、袁紹達をこき使う麗ちゃんは『鬼の侍女長』なんていう名前で呼ばれるまでになった。

 

当然、袁紹達はメイド服を着せられてた。

 

袁紹は俺が落としたため片腕が無いけど、主に璃々ちゃんにいいように使われてるらしい。

 

あれ取って来いこれ取ってこい、ってな感じで。

華琳達は顔良、文醜の身柄を拘束して連れてきた功績で、反董卓連合の件を許され、正式に漢に編入された。

 

……洛陽にやってきた時の華琳の様子といったらもうね……。

 

「一刀ー!!」

 

なんて言って全力で走ってきて抱きついてくるという、それはそれは華琳らしからぬ可愛いというか、乙女な反応だった。

 

先に合流した紫青の話しだと、全部思い出したらしいし、俺達が華琳の所を離れてからよっぽど心細かったんだろう。

 

さすがにこの時ばかりは桂花も何も言わなかった。

 

左手については謝ったけど、気にしなくていいの一点張りだった。

 

結局、袁紹との決戦に何故劉備が出てこなかったのか、という謎は謎のままだったが、

 

自分で仕組んだ戦が、思惑通りに行くのを眺めて悦に入っていたのではないか?

 

もしくは、袁紹に勝ち目がないと見て早々に切り捨てたのではないか?

 

なんて予想されている。

 

これからしばらく、劉備と呉の事に頭を悩ませながら戦後処理に追われる事になるんだろうなぁ、なんて思いながら、

 

戦を制した事で得られた一時の平穏を噛みしめる事にした。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

対袁紹戦はこれで終了です。

 

かなりあっさりと終わりましたが、袁紹の相手ならこれぐらいあっさりが『らしい』かなーと。

 

今回で華琳も正式に味方になり、大陸に残った大国は、漢、呉、劉備の3国になりました。

次回からまた拠点にはいっていき、その後に呉の出番、という流れにしようと思ってます。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 


 
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