No.642682

Need For Speed TOHO Most Wanted   第五話  再始動

五話です。因みにうp主は陸のACより空のACの方派です。

萃「じゃあなんで歌わせたし」

主「むしゃくしゃしてやった。歌えれば誰でもよかった。今は反省しt(ミッシングパワー。アッー!!」

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2013-12-04 21:20:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:749   閲覧ユーザー数:742

 クルマを奪われて数日後、私は警察署の外にいた。どうして何事もなくこんなすぐに出れたのかというと・・・。

「!」

 警察署の目の前に見覚えのある黄色いクルマが停車した。あのFDは・・・。

「アリス・・・」

「乗って」

 アリスに促されるまま、私はFDの助手席に乗り込む。私がシートベルトを締めたのを確認すると、FDはホイルスピンを起こして急発進。おいおい、ここ警察署前だぜ?

「この前はごめんなさい。あなたを助けられなくて・・・」

「いや、それはいいけどさ・・・。なんで私が出てこれたって知ってるんだ?」

「そんなことだろうと思ってね。証拠不十分だったんでしょ?クルマが無いのにストリートレースの容疑はかけられないからね」

 アリスの言う通りだった。あの後逮捕され取調室にブチ込まれた私だったが、クルマのキーもピンクスリップも持たない私にストリートレースの容疑がある可能性は皆無に等しいと警察署長が言い出し、そんなはずはない。私はコイツがクルマに乗っているのを見たと反論するレイムだったが、警察側に私がクルマを所持しているという証明は何一つない。元々余所者だった私は署内にもデータベースがないため証拠がないのだ。

 これらの条件が重なり私の容疑は冤罪であると判断され、私はあっさり釈放されたのだ。おまけに私が逮捕されたときにあの包帯女に無理やり引き倒され、精神的・肉体的苦痛を受けたと苦情を申し立てると、その謝罪金として1万ドルも貰えてしまった。

「それで、」と会話を切り出すアリス。「あなたを嵌めた、ミスのことだけど」

「ん?嵌めた?おいおいちょっと待て。どういうことだ?私はM3のエンジンブローで・・・」

「違うわ」

 言い終わらないうちに、アリスに遮られてしまった。

「あなたは負けるべくして負けたの。あなたと同じとこ出身のお友達がいるでしょう?ホシグマって言ったかしら?あの金とオレンジのコルベットの」

「ホシグマ?ああ、勇儀のことか」

「あの人の仲間内にミスのグループに潜り込んでるスパイがいるらしくて、その人から情報が入ったの」

 アリスが、正確には勇儀の仲間が入手したという情報は、信じられないものだった。

「あの女、あなたのクルマが壊れるように事前に細工してたらしいの」

「!?」

 私は驚くあまりダッシュボードに足をぶつけた。ミスが私のクルマに細工しただと・・・!?

「奴らは勝つためには手段を選ばないわ。どんな手を使おうと勝利は手にする。そんな奴等よ。私があいつらを敵対視する理由が分かったでしょう?」

 そんなくだらない連中のために私はクルマを奪われたのかと思うと、今更ながらに怒りがこみ上げる。

 怒りで体が震えていた私を「落ち着いて」とアリスが諭す。

「続けるわよ。今あいつはブラックリストのトップにいるわ。あなたのクルマで勝ち上がって行った。あいつからクルマを取り戻したいのなら、ストリートレースで勝ち進んでいかないとダメよ。でもその前にクルマを手に入れないと。それから、セーフハウスの用意も必要ね」

「せーふはうす?」

「後で説明するわ」

 と、アリスはドアポケットから携帯電話を取り出した。どこかに電話をかけているらしい。常識ある読者様は分かってると思うが、運転中の携帯電話は厳禁だぜ。警察のお世話になるか事故りたいっていうのなら話は別だが。

「ああ、パチェ?アリスよ。今から友達をそっちに連れていくんだけど、面倒見てもらえるかしら?・・・うん、ありがと。また借りが出来たわね」

 私たちは都心部を外れた田舎町、ローズウッドへ向かう。その町で中古車屋を営んでいるアリスの友人がいるらしく、そこなら上質なクルマを安く売ってくれるという。

「さ、着いたわ。私はまた別の用意があるから先に行くわね。買うクルマが決まったら、連絡ちょうだい。じゃ、また後でね」

 その中古車屋で私を降ろし、アリスは走り去った。とにかくクルマが無ければ話は進まない。とりあえず私はアリスの友人が経営しているという中古車屋に足を踏み入れる。

「あら、いらっしゃい。あなたがアリスの言ってた子ね。待ってたわ」

 私を待っていたのはアリスと同年代くらいの女性。紫のロングヘアを先の方でリボンでまとめ、髪と同じ紫色のゆったりした服を着て、ミスのかぶっているものと似たような帽子をかぶっている。私を見るなり読んでいた本を閉じ、かけていた眼鏡を外した。

「私がここの店主のパチュリー・ノーレッジ。あなたのことはアリスから聞いてるわ。大変だったみたいね」

「あ、ああ。霧雨魔理沙だ、よろしくな。で、早速だけど・・・」

「ええ、クルマの話ね。ちょっと待ってて」

 パチュリーは店の前に停めてあったフェラーリ、あれはF355か?に乗り込んでエンジンをかける。あれも売り物なのか?

 F355を店の奥にしまい、パチュリーは展示場らしいガレージのシャッターを持ち上げる。

「あのフェラーリは?」

「ああ、あれは売り物じゃないわ。私のクルマよ。悪くないでしょう?」

 まぁ、これだけの規模のクルマ屋を開いているんだ。これくらいのクルマに乗れてても不思議はない。

「ああ、イケてるな」

 パチュリーの真っ赤なフェラーリもいいが、本題は私の新しいクルマだ。

「とりあえずだけど、今手持ちはいくらあるの?」

 私はバッグの中を見る。

「とりあえずクルマに使えるのは5万ってとこだ。もう3万は改造費に使いたい」

 ベイビューでの貯蓄とミスにクルマを持ってかれる前までのバトルの賞金、そして冤罪で支払われた1万の謝罪金。こう考えると思ってたより金持ちだったんだな、私。

「そう。それだけあれば結構な上物が買えるわ。そうね・・・、この子なんてどうかしら?」

 そういってパチュリーが見せたのはメルセデス・ベンツSL 500(R230前期型)。一見すると普通の黒いSLだけど・・・。

「んあ?」

 内装を見ると、なぜかマニュアルミッション。このベンツにはATのグレードしかないはずだが・・・。

「前乗ってたオーナーが余程マニアックだったんでしょうね。どこのを乗せ換えたのかは分からないけどマニュアル換装と、後期型のブラックシリーズのカーボンルーフ移植、その他いろいろと改造多数よ。ミッションの出所がわからないからこの値段になってるけど、それを除けばかなりお買い得よ」

 値札を見てみると48000ドル。何とか予算内で収まる範疇だ。

「試乗ってできるか?」

「もちろん。これが鍵ね、適当にその辺を一周してくるといいわ」

 パチュリーから鍵を渡される。

「サンキュー。んじゃちょっと遊ばせてもらうぜ」

 私は早速ベンツに乗り込み、道路へ出ていく。

 

 数十分後。

「いいなこれ、気に入ったぜ」

「気に入ってもらえたようで何よりよ。それじゃ、この子に決めるのかしら?」

「ああ。こいつに決めた」

 試乗中にもいろいろと試してみたが、エンジンも調子いいしパチュリーが懸念していたミッションも全く違和感なく動いている。そのほか不満なところは後々チューニングで解決していけばいいだろう。

「現役のストリートレーサーにそう言ってもらえると私も気が楽だわ」

「ん?あんたはレースはやらないのか?」

「・・・ええ、降りたの。二年位前かしらね、150マイルオーバーで壁に突っ込んでね。以来、レースを仕切ったりクルマ売ったりの供給業に鞍替えしたわ」

 パチュリーは少し遠い目をしながら書類を出す。

「それじゃこれにサインを頂戴。あとお金も。それ以外のことは、私が適当にやっておくわ」

「ああ、ありがとう。助かるぜ。んじゃ、これで頼む」

 バッグから金を取り出し、クルマの鍵と交換する。

「ハイ、ありがとね。じゃ、アリスにもよろしくね。ツケがたまってるわよとも伝えておいて」

「ハハ、了解。じゃ、ありがとう!」

 私はパチュリーに手を振って中古車屋を後にする。

 

「とりあえずアリスに連絡っと・・・」

 試乗で減らしたガソリンを補給しつつ、私はアリスの番号を呼び出す。

『モシモシ、魔理沙?』

「ああ、私だぜ。クルマは決まった。次は何の準備だ?」

『うん、とりあえずナビのマップに表示されてる緑色の家のマークの所に来て。そこで待ってるわ』

「緑の家?・・・ああ、コレか。ここへ行けばいいんだな?」

『そう。それじゃ、また後で』

「おう」

 ガソリンスタンドを後にし、マップに表示されてるアイコンの位置へ急ぐ。

「ここか・・・?」

 着いた場所は、えらく古びた倉庫だった。どっかの修理工場の廃業した後だろうか。だがマップはこの位置を指している。

 するとクルマの音を聞きつけたのか、ボロボロのドアを開いて中からアリスが出てきた。

「待ってたわ。さぁ、入って」

 言われるがままに私は中に入る。

「なんだ、外の雰囲気に反して中は意外とまともなんだな」

「あいにく、高級ホテルは満室でね。とにかく、ここにクルマを置いておける。いい隠れ家になるわ。警察の追跡も、ここには及ばない。奥には居住スペースもあるから、ゆっくりできるわ」

 奥のドアを開くと、テレビにパソコン、簡易キッチンにシングルベッドとなかなか豪華だった。奥にあるのはシャワールームだろう。

「それじゃあ本題に入るわ」

 その一言で、私の顔が引き締まる。

「ミスからクルマを取り戻したいのなら、やることは山積みよ」

 奥に立てかけてあるボードに、十数人のレーサーの名前とその使用マシンと思われる車名がリストアップされている。おそらくあれがブラックリストランカーなのだろう。

「まずはバトルに勝ち続けること。それからマイルストンを達成すること。そしてバウンティ(懸賞金)を上げること。これら三つが、この世界で評価を上げる方法よ」

「まいるすとん?なんだそりゃ」

 ベイビューでは無かった風習が多いここでは分からないことだらけだ。

「マイルストンっていうのは、簡単に言えば追跡中の記録のことかしらね。たとえば、追跡開始から打ち切りまでの追跡時間や、逆に何分以内に追跡を振り切れるかとか、あとはロードブロックの回避数とかみたいな、そんな感じかしら」

「なるほどね・・・。それらを達成することで、ブラックリストとの勝負条件がそろうってわけなんだな?」

「そういうこと。理解が速くて助かるわ。でもね、いきなり上位ランカーとは戦えないの。下位のランカーから順番に撃破しないといけないわ。そして、今このトップにいるのが、ミスってワケ」

 私はボードに書かれたリストを見る。どうやら私の最初の相手はこの「フリーズ」っていうゴルフ乗りのようだ。

「説明はこれで終わりよ。何か分からないことがあったらまた連絡して。健闘を祈るわ。バァイ」

 心地いい3ローターサウンドを残してアリスは去って行った。それと入れ替わるように、見覚えのあるコルベットが家の前のパイロンを吹っ飛ばしてセーフハウスに飛び込んできた。・・・あと30センチ左にずれてたら私に直撃してたんだが。

 コルベットから降りてきたのはやはり勇儀。私を見るなり安心したように肩を落とした。

「魔理沙!心配したよ!なんか色々大変なことになっちまってたらしいけど、大丈夫なのかい?」

「ああ、クルマ以外はな。事情は聞いてるんだろ?」

「ああ。仲間のパルスィから聞いたよ。あの似非お嬢、噂には聞いてたけど想像以上だよ。まさか八百長を働くとはね。その場にいたらあいつをぶん殴ってたとこだよ」

 よほど腹に据えかねてるのか、勇儀は乱暴に倉庫のドアを殴る。・・・鉄板のドアに綺麗にへこみが出来たんだが。

「とにかくだ。まずは動かないことには始まらない。表のベンツが新しいクルマか?」

「ああ。さっきのFDの女の連れの店で安く売ってもらった」

「なら話は早いね。ちょいとあたしについてきな。いいとこ紹介してやるよ」

「?」

 言うなり勇儀はコルベットに乗り込む。私もベンツに乗り、先に出た勇儀の後を追う。

「ここだよ」

 勇儀について向かった先はハイウェイを下りてすぐのチューニングショップ。このエリアのレーサーのマシンを多く手掛けているのか、表には数台のカスタムマシンが並んでいる。

「おーい萃香!いるんだろ?」

「あいよー」

 勇儀の声に反応して出てきたのは少し幼い見た目をした少女。栗色の長い髪を先の方で一つに束ね、後頭部に大きなリボンがついている。どうやらこの少女がショップのオーナーのようだが、ノースリーブにロングスカートってクルマ整備には不向きじゃないか?というかこんな子供みたいなやつがクルマ弄れるのか?

「あれー、ベイビューの稲妻さんじゃん。こっちに来てたのかい」

 スイカと呼ばれた少女は私を見るなりきょとんとした顔になる。因みに「ベイビューの稲妻」っていうのは、向こうで私が呼ばれていた二つ名だ。

「魔理沙、紹介するよ。こいつはあたしの古い友人で伊吹萃香。子供みたいなナリしてるけど、チューニングの腕はあたしが保証する。で、萃香。こいつは噂の稲妻さんの霧雨魔理沙。実は、かくかくしかじかなことがあってね・・・」

「あれまぁ、あの卑怯者集団の餌食になっちまったのかい。それはお気の毒に。で、クルマを取り返すためにニューマシンのチューニングをウチで頼みたいと」

「そういうことになるね。少し癖のあるクルマらしいけど、できるかい?」

 そう聞かれた萃香は無い胸を思い切り張って太鼓判を押す。

「任せなね!うちは何だってやるよ。ミニからフェラーリまで何でも来いさ!」

 どうやら勇儀の保証は確かなもののようだ。なんとなくこいつの発言には説得力があるように感じる。

「んじゃー早速プランを練って行こうかね。ちょいとクルマを失礼するよ」

 私からベンツのキーを受け取るなり萃香はベンツをガレージに入れる。リフトに上げて軽くクルマを見回し、私達を事務所の中に招き入れた。

「とりあえず魔理沙、だっけ?クルマをどうしたいとかいう希望はあるのかい?」

「そうだな、まずは・・・」

 私と萃香、勇儀の三人はベンツのチューニングメニューについて小一時間ほど話し込み、最終的なプランが出来上がった頃には太陽は真上を過ぎていた。

「よし、これで決定だね。じゃー早速私は改造に取り掛かるよ」

「え、もうか?もう昼過ぎてるし、軽くみんなで飯でも食ってからに・・・」

 そう提案した私を勇儀が止めた。

「あいつは物事に取り掛かると周りが見えなくなるクチでね。取り掛かると決めたら飲まず食わず寝ずで軽く一週間没頭するような奴だ。あいつを飯に誘うのはまた次の機会にしな」

「あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪」

 鼻歌交じりに一億人・・・、ではなく。ベンツの外装部品を外し始める萃香。うーん、仕方がない。こいつを飯に誘うのはまた今度にしよう。

「んーじゃ、私達だけでランチにあり付かせてもらうとしようぜ」

「そーさね。いいとこ紹介してやるよ」

 私は勇儀のコルベットの助手席に乗り、ショップを後にする。


 
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