No.644251

Need For Speed TOHO Most Wanted      第6話 一人目

レミ「あいつから取ったこのクルマ、私好みに赤く塗ろうかしら」

咲「お嬢様・・・、塗りたいのですか!?」

レミ「ふふ、冗談よ」

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2013-12-10 19:46:16 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:763   閲覧ユーザー数:759

 私は昼食を摂るために勇儀が一押ししている和食料理屋にやってきた。

「おっ。うまいなこの茶碗蒸し」

「そうだろう?ここの店主、わざわざノースポイントまで修業に行ってたらしくて、本場の味を学んでるのさ」

 さすがグルメにはうるさいと自負している勇儀がオススメするだけのことはある。少々値は張るものの、この味なら払うだけの価値はある。

「勇儀」

 ふと後ろから声が聞こえた。振り向くと、金髪のショートボブに緑色の瞳をした女性がこちらへやってきた。

「ん?おお、パルスィ。情報収集ご苦労さん。頼んだ情報手に入ったかい?」

 パルスィと呼ばれた女性は勇儀の隣に座り。店員を呼ぶ。

「ええ、もちろん。ああ、関西きつねうどんを一つ。あと天ぷらセットBをお願いできるかしら?」

 注文を済ませつつ、パルスィは持っていたバッグから小さな端末を取り出した。

「魔理沙、紹介するよ。こいつは私の仲間で情報収集屋の水橋パルスィ。こいつともう一人、黒谷ってのが連中の中にスパイとして潜入してる。連中の中にいなかったかい?こんな奴」

 勇儀が見せた写真には、金髪のポニーテールで、少しオーバーサイズの服の上に茶色でクモの巣模様が描かれたのスカートジャンパーを着た少女が写っていた。ああ、そういえばいたなこんな奴。私が負けたとき、大笑いする連中の中でただ一人表情を変えていなかったのをよく覚えている。なるほど、あの女が勇儀の仲間だったというのならあれも説明がつく。

「で、頼んだ情報って何だ?」

「ああそうそう。まぁまずこいつを見てくれ」

 そういって勇儀はパルスィから端末を受け取り、画面を私に見せた。

「ん?この水色の髪の女がどうかしたのか?」

 端末に移っていたのは子供かと思うほど身長の低い少女。萃香とはまた違い、こっちは雰囲気からして子供っぽい。水色のミドルヘアと頭の緑色のリボンが目を引く。

「このバカ女はフリーズ。こいつがまず初めにあなたの相手になるブラックリストランカーよ。本名はチルノ。ローズウッドに住む金持ちの一人娘で、とにかく金遣いが荒い女よ。お小遣いを山ほどクルマにつぎ込んだらしい、貧乏人には妬ましい女よ」

 端末に映された写真には、ボディからホイール、さらにはスモークガラスまで水色や青系に統一されたゴルフGTIが写っていた。確かに使っているパーツを見る限り、かなり金がかかってるように見えるけど・・・。

「クルマばっか走って乗り手の腕がついてけてないとかそういうオチか?」

「ご名答。クルマだけならブラックリストの中堅くらいまでは行けそうだけど、乗り手本人が「腕より道具」を地で行く感じの奴なのよね。クルマさえ完璧にすればうまくいくと思ってるバカの典型よ。あなたのクルマはベンツだっけ?萃香のショップでチューニングしてるらしいし、普通に走れば負けはしない相手よ」

 私は肩を落とす。ブラックリストというから相当な手練れの集まりだと思っていたが、こんなチンケな奴もいると思うと、先が思いやられる。

「ま、こいつもまだリストに入ったばっかの下っ端だしな。軽く揉んでやればいいさ」

 条件を見ると、ストリートレース勝利数3、達成マイルストン数3、必要バウンティは20000だ。

「とにかく、こういった情報は黒谷やこのパルスィが常に仕入れてくれるから、情報には困らないよ」

「ああ。来たばっかの私には嬉しい限りだよ。ありがとな、パルスィ」

「べ、別に私は勇儀の頼みでやってるだけよ・・・。そんなお礼なんて言われる資格は無いわ」

 パルスィは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。あ、こういう事に慣れてないな、こいつ。

 数日後、萃香からクルマが完成したという連絡を受け、私と勇儀は早速彼女のショップを訪れた。

「おー、来たね。なかなかやりがいのあるクルマだったよ」

 改造を始めてから一睡もしてないらしい萃香だが、そうとは思えないほどピンピンしていた。

「んじゃ、お披露目と行こうか。よっこらせっと」

 萃香がガレージのシャッターを開く。その中には・・・。

「これは・・・」

「ほーう・・・」

 買ったばかりの当時とは変わり果てたベンツの姿があった。まるでDTMマシンのように大きく張り出したフェンダー、低い車高を犠牲にしない後期ブラックシリーズの純正可変リアウイング、圧倒的存在感を放つマットブラックのボディカラー。ワンポイントのホイールリムの赤い塗装も完璧だ。

「どんなもんだい?悪くないだろう?」

「ああ、最高だ!」

 私の反応を見て満足そうに笑うと萃香はボンネットのピンを引き抜いてエンジンルームを見せる。

「基本的にエンジン本体は手を付けてないよ。吸排気系は全部取り替えて、HKSのスーパーチャージャーを搭載。あとはコンピューターをちょいと書き換えたくらいかな。それでもシャシダイで650馬力を越したね。NOS追加でもう50馬力くらいは上がると思う」

 私は早速ベンツのコクピットに座る。ロールケージが追加され、元々ついてたDefiの三連メーターにもう一つ、スーチャーのブーストメーターが追加されたのとEVCが追加された以外は特に変わった様子はない。

 しかしエンジンをかけてみると全く別物に生まれ変わっているのがよくわかる。萃香厳選のスペシャルパーツで武装されたエンジンのサウンドは官能的の一言だ。

「足回りはどんなもんなんだい?ブレンボのブレーキがついてんのはよくわかるけど」

 ベンツのリアタイヤを眺めていた勇儀が言う。

「ああ、ベンツは重いからね。ブレンボの大口径のブレーキ総とっかえで、オーリンズの車高調とアーム系はフルピロ化。他にもいろいろ弄ったけど、まぁ何にせよまずは乗ってみないと分かんないね」

 まずは乗って自分で確かめてこいということか。

「いいねぇ、盛り上がった来たねぇ」

 

 クルマも完成し、ようやくスタートラインに立てた。あのまま納得いかない負けを放置していてはプライドに触る。私たちは打倒ミスを掲げ、動き出す。

 待ってろ、ミス・・・!


 
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