「───ん?なんか硬い?」
目が覚めて、背中が布団の柔らかさとは違う感触に違和感を覚える。
少し不快な気分になりながらも、青年━━北郷一刀は瞼を開く。
一刀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
━━━━青。
一刀が目を開き、最初に見たものは青━━雲一つない空だった。
一刀「・・・あぁー。今日漢文の小テストだったっけ?勉強忘れてたな、うん。」
予想外の光景に、驚きを通り越して逆に落ち着いてしまった。いや、単に現実逃避しているだけなのだが。
ゆっくりと体を起こす。辺りを見渡す。瞼をこする。もう一度辺りを見渡す。また瞼をこする。懲りずに辺りw(ry
さすがにしつこかったので、やめて思考を巡らせる。
──やがて、一つの結論に辿りついた。いや、願望にかもしれない。
一刀「・・・まさか、戻ってきたのか!?」
景色も匂いも五感で感じる全てが似ていた。あの覇王曹操──強くて弱い一人の女の子、華琳や春蘭、凪達。愛した者達と共に過ごしてきたあの世界に──。
一刀「・・・ほん・・・とう・・・・・・に?」
思うように頭が働かない。けど足はもう動いていた。
ここがどこだか分らない。けど、歩いていた。走っていた。
今はただ、愛した人達と会いたいから──。
雄叫び「ぅおおおおぉぉおおぉおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉおお!!!!!!!!」
一刀「ぉおう!?」
突如として聞こえた歓声、いやむしろ雄叫びともいえる声に俺は尻もちをついてしまった。
一刀「な、なんだよこれ!?野太すぎるだろ!…………………………ってあれ?」
雄叫びの聞こえた方に視線を向けると、この世界に来た当初何度も見た黄色い集団──黄巾党(らしき群れ)が存在した。
一刀「あれって、黄巾党か?いや、でも黄巾党は解散したはずじゃ・・・。」
黄巾党は潰れたはずだった。名のある諸侯が討伐し、華琳が天和たちを保護および徴兵や士気高揚に利用し始めてからは、残党が町を襲う程度だったはずだ。
一刀「───まさかリセットってわけじゃないだろうな・・・。ゲームみたいに最初からってのは勘弁してくれよ?」
けど、否定は出来なかった。二度もこの世界に来るなんて初めての体験だ。
いや、そもそもこの世界の事よく分かってないんだが・・・。
とにかく確認していないことには分からない。
───とにかく行ってみよう。
男「おまえら、もっとだぁぁあああああ!!!!!」
観客「ほわっ!ほわああああっ!ほわああああほああああああほぁぁぁぁぁあああああぁぁぁ!!!!!」
一刀「っ!?」
リーダーらしき人物が号令すると、雄叫びが響く。
先程は遠かったためわからなかったが、この歓声は凄い。大地が揺れているとまで錯覚しそうだった。
それもそのはず。黄色の布の数は20万を超えているのだ。
一刀「───凄いな……。やっぱりただの黄巾党か?」
天和たちのマネージャーをやっている時、何度もライブに同行したがここまで多くなかった。この世界を去る前に見た最後の興行でさえ、5万程度だった。これほどの数は見たことがない。
この規模だと、黄巾党が存在したころの本隊ぐらいだろうか?
天和「みんな、元気ー?」
観客「ほっ!ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
曲を歌い終えて天和がファンに呼びかけ、それに応えるファン。
その歓声は先程よりも凄かった。
一刀「てか、天和達の声凄いな…。電気がないからマイクを通してってのは無理な筈だけど…。」
──この時の俺は知らなかったが、実は会場の至る所に、とある「絡繰師」の開発した『遠くまで届けーぶる8号機』のという拡声器のおかげらしい。
それを知ったときの俺の一言。
───「まぁ、何でもアリだしな。この世界」───
───もう突っ込むのをやめていた。
……だってありえないし。ドリルとかヨーヨーとかガン○ムハンマーとかパイ○バンカーとか…。
地和「全然、聞こえなーい!ほんとに元気ー?」
観客「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
人和「まだ、出せるよねー!」
観客「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
一刀「おいおい、これマジで鼓膜破れるんじゃないか!?」
そんな心配をしつつ前の観客を見ていると、耳から血を流している人が『結構』いた。
……しかも気づいていない。
一刀「……見なかった事にしよう」
まぁ、自業自得?というべきかな…。
彼ら《アイドルオタク》の治癒力を信じよう…。
そんな事を考えながら、天和たちが歌っている姿を目で追う
一刀「3人とも元気そうだな…。」
黄巾党の天和たちなのか、それとも三国による泰平後の天和たちなのかは分からない。
けど、嬉しかった。
──彼女たちの姿を見れたことが。
──彼女たちが元気に舞台を駆け回ってることが…。
気づけば俺の頬には涙が頬を伝っていた。
幸い、だれも気付いていない。
やっぱり泣いているのを見られるはきつい。
俺は涙を拭いながら、天和たちのライブを熱心に見ていた。
そんなこんなで気づけば全ての曲目を終えていたようだ。
天和たちは最後の挨拶を行っていた。
天和「みんなー、今日は数え役満☆姉妹のらいぶに来てくれてありがとー!」
観客「ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
地和「そんな皆に今日はお願いがあるの!聞いてくれるー?」
観客「なんでもいってー!!」
一刀「……?なんだろ?」
人和「今、配布している紙を見てほしいのー!」
…紙?貴重な紙を使って何をしようっていうんだろ?
しばらくすると隣から紙の束が回ってきた。嫌な予感がするのは気のせいか?
男「ほれ」
一刀「あ、どうも」
紙を一枚取り、さらに隣渡す。
その紙には「探し人」と書かれ顔写真が貼られていた。
…ん?写真?
天和「そのしゃしんの人はねー、私たちの大事なモノを見て、さらに大事な『モノ』を奪って姿を消したのー」
地和「そいつをどーしても見つけたいの!」
人和「その人を見かけた、もしくは捕まえた人は情報をくれるか、私たちの前に連れてきて欲しいの!」
地和「そいつを見つけた人には、らいぶの特等席の券とか、特製の『揮毫』とかを進呈しちゃう!」
観客「うおおおおおおお!そいつ、許せねえええ!!!!絶対見つけるぜーーーーーーーー!!!!!」
三姉妹「よろしくねー」
そういいながら天和たちは下がっていく。
一刀「うわぁ…。そいつご愁傷さまって感じだな。天和たちに差し出す前に殺されんじゃないのか?一体、どんな…や……つ……………?」
そして、写真を見る。
ん?あれ…?なーんかこの顔、見たことあるよ…?
最近よく見てたなー?だらしない顔してるなー、こいつ…。
種馬っぽい感じもするし。なんか、隊長っぽい感じもする…。
あー、剣道もやってそうだなー。今日の朝飯なんだっけー?そういえば及川に金かしたまんまだなー。あと…
──え?いつまでやってるのかって?
…わかったよ。では改めて。…コホン。
──これ、俺だよな…。てか、写真があるってことはカメラがあるってことで…。
確か真桜にカメラを作ってもらったはず…。
ということは、ここは華琳の前で消えてしまった後の世界か!?
ていうか、大事な『モノ』って、あいつらの……その…処j(ry…か!?
あれ…?ということは…?
男改めアニキ「あれ、こいつ見たことあんぞ?」
チビ「マジっすかアニキ!?」
アニキ「ああ、最近な…。というかさっき…」
あ、やばい。
アニキ「…確か。」
アニキと呼ばれた男がこちらを向く。
アニキ「あ!こ、こいつまさか!」
チビ「この絵と、そ、そっくりですぜ!」
デブ「た、たぶん、こいつぅ…」
しかも、増えたぞ、おい。
ていうか、お前ら見たことあるぞ!?
三人「「「こ、こいつだー!」」」
────続く!
一刀「いや、むしろ終わりじゃないか!?」
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初SSです。文才は皆無です。暖かい目で見てくれると助かります。
えー、真・恋姫の魏アフターです。
二番煎じとかいう、突っ込みはなしの方向でw
続きを皆さんの反応を見て書こうと思います。
構想は一応あります。
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