No.589978

GGO~剣客の魔弾~ 第18弾 本選へ

本郷 刃さん

第18弾です。
前回のあとがきで言ったとおり、今回は一種の説明回になります。

どうぞ・・・。

2013-06-22 09:34:26 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9947   閲覧ユーザー数:9074

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第18弾 本選へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シノンSide

 

GGOへとダイブした私の出現ポイントは総督府前の広場。

BoB本大会を対象にしたトトカルチョの影響か、GGO内の通貨の半分が飛び交っていると言っても過言じゃない。

少し気になったので、倍率が表示されているホロウインドウを見てみると、私は高倍率だった。

ちなみにキリトやハジメ、アスナは大穴であったり。

とにかく総督府に行って精神集中でもしておこうと思い、中に入ってしばらく歩いていると…。

 

「シノン! 遅かったじゃない、心配したよ……どうかした?」

「ううん。さっきリアルで会ってた人と、すぐにこっちで顔を会わせるのが変な感じがして」

 

声を掛けてきたのはシュピーゲルこと新川君だった。

大会の熱気にあてられたのか、僅かに顔を紅潮させている。

 

「僕は何処かの酒場で中継を観るつもりだけど、どう? 作戦とかあるの?」

「索敵・狙撃・移動の繰り返しになると思う。大会が終わったら、その酒場で祝杯か自棄酒に付き合って」

 

私の皮肉を含めた言葉に苦笑して頷いた彼、だけど次には真剣な表情になった。

 

「うん、シノンが勝つって信じてるよ…。それと、公園での言葉、信じていいんだよね?」

「え、う、うん…」

「僕、本当に、朝田さんの事が…「ゴメン、今はやめて」…」

「いまは、大会に集中したいから…」

 

真剣な彼には悪いけれど、大会に勝てなくては乗り越える事も、強くなる事も出来ないから。

そんな私のことを察してくれたのか、シュピーゲルは申し訳なさそうな表情へと変えた。

 

「ゴメン…でも、信じて待ってるから…。大会、頑張ってね」

「ええ、ありがとう」

 

彼の言葉にぎこちないながらも笑みで返し、エントランスホールへと向かう。

シュピーゲル、新川君の気持ちは素直に嬉しい。

だけど、私が好きなのはケイだから……だから、ちゃんと断ろう…。

戦いへの高揚感、僅かな緊張感を解す為に深呼吸をして、エレベータに乗り込もうと思ったら…。

 

「シノン」

 

また声を掛けられた。振り向けば、昨日知り合い、そして今日、死力を尽くして戦うべき3人のプレイヤーがいた。

 

シノンSide Out

 

 

 

キリトSide

 

俺が降り立ったのは総督府近くの路傍の一角、さすがに3人揃って同じ場所、というのはなかったか。

総督府に向けて歩いていると、アスナとハジメと合流したので、階段を上りながら話をする。

 

「ようやくという感じがしないでもないな…」

「……昨日の今日で本大会だが、そう感じてもおかしくないかもしれない」

「さすがにそう思うかもね。予選も大変だったし…」

 

振りかえるのは昨日の流れ。

GGOにログインし、シノンと出会った装備を整え、俺はギャンブルで金を稼ぎ、大会に出場、

予選で手古摺ったりしながらも、決勝で俺はアスナと対戦、ハジメはシノンと対戦し、

それぞれ本大会への出場を決めた。怒涛の展開だと思えるな…。

 

「……キリト、『死銃(デス・ガン)』の正体については報告したのか?」

「勿論。ただ、標的自身が当時のキャラ名を言ったわけじゃないから、いまの段階では捜査に踏み切れないらしい。

 一応、裁判所に情報を開示させる為の手続きは行っているみたいだが…」

「あと一押しができない、なんだね…」

 

ハジメの問いかけに俺は菊岡に簡単ながら報告した事を告げ、アスナはもどかしそうに言葉にした。

実際、相手がどんな方法で殺しを行っているのかも不明だし、アイツが死銃なのかすらも分からない以上、

後手に回るのは仕方がないのかもしれない。

 

「とりあえず、まずは本大会へのエントリー手続きを済まそう。昨日みたいにギリギリっていうのは避けたいからな」

 

苦笑しながらそう言えば、2人も苦笑していたので歩みを早めることにした。

すると、見知った背中を見かけたので、声を掛ける事にした。

 

「シノン。キミもいまからエントリーか?」

「ええ、ということはそっちもみたいね?」

「昨日はギリギリになっちゃったから…」

「……今日は早めに、とな…」

 

彼女に聞いてみればやはりそうであり、アスナとハジメも次いで言葉を掛ける。

俺達は揃ってホール1階の端末でエントリーを済ませた。

 

「ねぇ、シノン。良かったらなんだけど、本大会のこと教えてもらっていいかな?

 メールは読んだけど、一応確認ってことで…」

「構わないよ。それじゃあ、地下の酒場に行きましょ」

 

アスナが本大会の情報について、どうやら自信がないようなのか、シノンに訊ねると彼女はOKした。

俺としても出来るだけ正確な情報にしておきたいので、ありがたいな。

俺達地下1階にある酒場に向かった。

 

 

酒場とはいうがかなり大きなゾーンと化している。

俺達は奥まったブース席に座り、金属板のドリンクメニューからそれぞれがドリンクを注文する。

注文したものを少し飲んでから、シノンが口を開いた。

 

「それじゃ、メールにも書いてあったと思うけど説明させてもらうわね。まず……」

 

本選はバトルロイヤル制で参加者30人による同一マップでの遭遇戦となり、

開始位置はランダムで他のプレイヤー達とは最低でも1000m離れ、

本選のマップは直径10kmの円形で山あり森あり砂漠ありなどの複合ステージ、

参加者全員には『サテライト・スキャン端末』というアイテムが自動配布され、

15分に1回は上空を監視衛星が通過するという設定らしく、

その時全員の端末にマップ内の全プレイヤーの存在位置が送信されて、

輝点(ブリップ)に触れれば名前まで分かり、

敗北した場合は大会中の情報のやり取りを防ぐ為にログアウトが出来ず、

中継画面を観ながら決着がつくのを待つ、以上が主な内容であるそうだ。

 

「………こんな感じね。他に聞きたいことはある?」

「大丈夫だよ。ありがとう、シノン」

「……私も問題無い。ありがとう」

「そう、なら良かったわ」

 

彼女の分かりやすい説明にアスナとハジメが礼を言い、シノンは笑みを浮かべた。

俺も礼を言おうとしたところで、1つ聞こうと思った。彼女ならば信頼できるから…。

 

「シノン。俺から、1つだけいいか?」

「? ええ、いいわよ…」

 

彼女から了解を得ると、俺は左手でメインメニューを呼び出し、ウインドウを可視モードに切り替え、

本選出場者30人の名前が載っているページを表示した。

 

「ここに載っている30人、キミを除く29人か…この中で知らない名前は幾つある?」

「それって、どういうこと?」

 

訝しむシノン、その気持ちは分かるが、まずは聞き出しておきたい。

 

「頼む、重要な事だから教えてくれ」

「まぁ、構わないけど…」

 

俺が頼み込むとシノンは取り敢えず了承してくれた。ハジメとアスナも俺と同じで真剣な面持ちである。

 

「んっと……ほとんどの人は顔見知りね。

 『のりしおポテチ』、『紅羽』、『アサシン』、『リョウトウ』、『サイト』、『クレナ』、

 この人達に会った事はないけど、最近レアアイテムを手に入れに行ったりするっていうので有名ね。

 それに貴方達3人を除くと……3人、『銃士X』と『ペイルライダー』と…これは、『スティーブン』かな」

 

最初に挙げた6人は最近になって名が売れてきた者達なので除外、さらに俺とハジメとアスナも除外。

『銃士X』は日本語表記、残り2人はアルファベット、この3人の誰かが……『死銃』…。

 

「ありがとう、シノン。助かった」

「それはいいんだけど……一体なんなの?」

 

礼の言葉を掛けるが、シノンは少し不機嫌な様子。

それはいきなりこんなことを事情も話さずに聞かれたら、いい気はしないだろう。

俺はハジメとアスナにアイコンタクトを取ってから、話すことを決めた。

 

「あまり人には聞かれたくない。出来れば人がいないところ、他言無用で頼む」

 

俺が少しだけ威圧を込めて聞くとシノンは真剣な様子になり、少し逡巡してから頷いた。

俺達は待機ドームにある控え室へと移動した。

 

キリトSide Out

 

 

 

シノンSide

 

空いている控え室へと入り、ロックを掛けてから、キリトとハジメは何かに集中するかのように瞳を閉じ、

少ししてから目を開き、キリトが話しを始めた。

 

「俺達が初めてシノンと会った時に、なんでこのゲームをプレイしたのか聞いたのを覚えているか?」

「覚えてるわ。サイバー的なゲームをやりたいとも、別のゲームでどれくらい実力が通用するかっていうのも…。

 あとは、『死銃』の噂に興味を持ったって…」

 

理由はどうあれ、このゲームをやってくれるのは嬉しいと思ったし、現に3人とも強いから目的をこなせていると思う。

けど、理由が違うのかしら?

 

「確かにそれらの理由は嘘じゃない。ただ、俺達はもっと別の目的の為にこの世界にきたんだ…」

 

それは…大会の賞金が目当てとか、有名人になりたいとか、優越感に浸りたいとか、そういうことを考えた。

けれど、3人の雰囲気はそんなものじゃなかった。

 

「俺達は、このGGOに関わっているある事件(・・・・)の調査をしにきたんだ」

「調査って、言えないのよ、ね…?」

 

キリト達は3人揃って無言のまま頷いた。

 

「ただ、その事件に関係しているかもしれない人物と、ハジメ君が昨日遭遇したの」

 

アスナが真剣な表情のまま、そう言葉を紡いだ。

 

「……昨日、私は待機ドームで、昔同じVRMMOをやっていた奴に声を掛けられた。

 奴も間違いなく本選に出場し、さっきシノンが挙げた3人の誰かがそうだと思われる」

「そいつは、俺達の敵だった奴に違いない。本気で殺し合い、命を奪い合ったほどの…」

 

殺し合った、命を奪い合った、笑えない冗談だと言って鼻で笑えばいい。

そう、そうすれば、まだ引き返せるのに…。

 

「それ、は…プレイスタイルの違いとか、パーティー中でのトラブルとか、そういうゲームでの話し、よね…?」

 

ハジメとキリトの言葉に…興味か、はたまた自身の過去による影響か、聞いてしまった。

そんな私の手を、アスナは優しく握り、しかし悲しそうな表情で首を横に振った。

 

「互いの命を懸けた、本当の殺し合いだ。正義と快楽、2つの暴力が重なり、和解なんて有り得なかった。

 そんな昔の因縁を、この世界で見つけてしまった……だから、決着をつけないといけないんだ…。

 それが、俺達がこの世界にきた本当の目的だ」

 

キリトは、終始自嘲気味に話していた。ハジメは瞑目したままで、アスナは何も語らずに辛そうにしていた。

 

「キリトもハジメもアスナも……貴方達、3人とも、あのゲーム(・・・・)の…っ」

 

そこまで言って失言だったと理解し、私は黙るしかなかった。そんな私の気持ちを察したのか…。

 

「いいんだ。キミの思う通り、俺達は『ソードアート・オンライン』から帰還した者、『SAO生還者(SAOサバイバー)』だ」

 

そう断言、宣言したキリト。ようやく、彼らが強い理由が分かった。

『ゲームであってゲームでない』…その言葉の意味を理解したのは、あのデスゲームが始まった時だった。

死と隣り合わせの世界、現実と同じで些細な事で死が訪れる世界、

この銃の世界とは違う本物の命を懸けた戦場、モンスターだけでなく人とも殺し合うことになる世界。

そんな世界を生き抜いたこの3人は、強くて当たり前だ…。

 

「悪かったな、シノン。こんな話しを聞かせることになって…」

「…う、ううん。私が聞いたんだし…こっちこそ、話させてごめんなさい…」

 

キリトは申し訳なさそうに謝ったけど、逆にこっちが申し訳なくなってしまった。

私達の間に気まずい空気が流れたけれど、こうしているわけにもいかないので話をきりあげる事にしよう。

 

「そろそろ、装備の点検やウォーミング・アップにしましょ。時間もなくなってきたし…」

「……そうだな。そうしよう…」

「「ああ(うん)」」

 

私の言葉にハジメが賛成して、キリトとアスナも応えてくれた。

ロックを開けて控え室から出ようとして、私は3人に声を掛ける。

 

「貴方達にも、事情があるのは分かったわ。だけど、優勝するのは私よ」

 

そう、どんな事情があろうとも、このBoBを制するのは私なんだから。

 

「くくく…お生憎と、俺自身目的以前に負けるつもりはないからな」

「……元より全力で行くんだ。敗北など考えてはいない」

「案外、私が優勝するかもよ~♪」

 

キリトも、ハジメも、アスナも、揃って不敵な笑みを浮かべてきた。

うん、やっぱりこの3人と戦うならこうでなくっちゃね。

私は指で銃の形を作ると、3人に向けて引き金を引く。

笑みを浮かべたまま、私達は控え室から待機ドームへと出た。

 

シノンSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、シノンの説明とキリト達によるカミングアウトでした~。

 

『死銃』については話しませんでしたが、敢えてSAO生還者であることを明かさせました。

 

まぁ、大した変化はありませんけどね(苦笑)

 

キリト達は自分達が生還者であることに対しては気にしておらず、シノンも気にしません・・・みんな良い子w

 

次回は本選が開始します・・・本選に出場が決定していた6人様の内、まずは4人がキリト達と戦いますよw

 

それでは次回で。

 

 

 

 

 


 
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