第8魔 取り戻す為に
アスナSide
ユイちゃんが顔を出してから体を出し、わたしの右肩に乗った。
「可愛い~///! アスナさん、その子ってプライベート・ピクシーですか?」
「ナビゲーション・ピクシーっていうことらしいよ?」
「はいです♪」
リーファちゃんが可愛いものを見つけたといった表情で聞いてきたので、
わたしが答えるとユイちゃんも元気良く答えた。
しかし、ルナリオ君の様子は違った。
まるで信じられないものを見るかのように。
「あの、アスナさん。その子、SAOで一緒に居た…」
「うん、ルナリオ君が思っている通りだと思うよ…」
「え、どういうことなの?」
ルナリオ君の問いかけに答えると、リーファちゃんは不思議そうな表情を浮かべた。
わたしは取り敢えず紹介しようと考えた。
「ユイちゃん。男の子がルナリオ君で、女の子の方がキリト君の妹さんのリーファちゃんだよ」
「SAOで見かけただけっすけど、ルナリオっす。よろしくっす」
「リーファです、よろしくね」
「はじめまして、ルナリオさん、リーファさん。
アスナママとキリトパパの娘で、ユイといいます。よろしくお願いします」
わたしは2人にユイちゃんを紹介したけど、ユイちゃんの娘宣言にリーファちゃんはかなり驚いた表情をしている。
「え、えぇ!? む、娘って、キリトはお兄ちゃんのことですよね!? お兄ちゃんとアスナさんのこども~!?」
「リ、リーファ、落ち着くっすよ!?」
驚いたところではなく混乱してしまったようだ。
ルナリオ君が必死に彼女を宥めており、
ユイちゃんはよく分からないといった表情をし、わたしは苦笑を浮かべるしかなかった。
リーファちゃんが落ち着いてから、今回のことについて話しをする為に近くの村へと飛んで移動した。
スイルベーンの街はシルフ領の街なので、シルフ以外の種族は問答無用でPKされることもあるらしい。
しかもリーファちゃんは領から出たレネゲイドというのに分類されていて、あまり街へは近づきたくないとのこと。
それと補助コントローラ無しでの『随意飛行』を教えてもらって、それを行って移動した。
リーファちゃんはマスターするのにそれなりに時間を要したけれど、ルナリオ君があっさりとマスターし、
わたしも少し練習しながら飛んだだけで出来るようになったので彼女は少々落ち込んでいた。
村へと着いたわたし達は手近な宿を取って、その一室で話し合うことになった。
「それじゃあ、まずはユイちゃんのことを説明するね?」
ルナリオ君とリーファちゃんが頷いたのを確認して、わたしはユイちゃんと共にSAOでの彼女の一件を話し始めた。
ユイちゃんが本来はSAOのメンタルカウンセリングAIであったということ、負荷の末に心を宿したこと、
キリトくんとわたしが彷徨っていた彼女を拾って共に過ごしたこと、
死神との戦闘の果てにSAOから消滅しかけたところをキリトくんがプログラムを分離させて救ったこと、
そして先程再会を果たしたことを順番に説明していった。
ルナリオ君は真剣に聞き続け、リーファちゃんは後半から涙を滲ませていた。
「………と、それがわたしとキリトくんとユイちゃんの出会ったお話しだよ。
ごめんね、ルナリオ君。あの時は詳しく話せなくて…」
「いえ、そういった事情があったのなら納得っす…」
SAOでユイちゃんが消滅した後、結局わたし達は黒衣衆の皆に事情を話すことが出来なかった。
それについて謝るとルナリオ君は納得してくれたようだ。
「(ぐす)でも、本当に良かったです。
アスナさんとユイちゃんが再会出来て……あとは、お兄ちゃんが目を覚ましてくれれば…」
滲んだ涙を拭うリーファちゃん。彼女が最後に言った言葉を聞いて、わたしは話すことを決意した。
「ルナリオ君、リーファちゃん……これから話すことは、2人にとっても、とても大切なことなの…。
聞いてもらえるかな?」
「実は、パパのことについてなんです」
「お兄ちゃんの、ですか…?」
「それは勿論っすけど…」
リーファちゃんもルナリオ君もいきなりキリトくんについてのことで話題を出されたものだから戸惑っているけれど、
わたしはそのまま続けることにした。
「まずは単刀直入に言わせてもらうけど、キリトくんは……このALOに囚われているの…」
「「なっ!?」」
わたしの言葉に驚愕する2人。
「ど、どういうことなんですか!? アスナさん!」
「リーファ、落ち着くっす……なにか、事情があるみたいっすね。しかも大きな…」
狼狽しながら聞いてくるリーファちゃんをルナリオ君が宥め、冷静に訊ねてきた。
「リーファちゃんには、先に謝っておかないといけないの…ごめんなさい…」
「……まずは、話してもらえませんか?」
頭を下げるわたしを見て、リーファちゃんは多少冷静になったのか、そのまま続きを促してきた。
もしかしたら須郷に監視されているかと思ったけれど、
茅場がカーディナルの監視に掛からないようにしてくれたと言っていたので問題無いと思い、
改めて全てを話すことにした。
そして語る、須郷という男のこと、彼がわたしを庇い須郷の手によってALOに囚われたこと、
彼と299名のプレイヤーの命は……須郷の掌にあることを…。
「な、なんですか……それ…、なんで…そんなことが…!」
怒りの表情を浮かべるリーファちゃん、椅子に腰かけているルナリオ君は静かに瞳を閉じ、
しかし静かな怒りを滲ませている。
ユイちゃんはというと、カウンセリング能力が無くなったとはいえ、
やはり人の負の感情に対しては辛そうである……それでも、父親と慕うキリトくんを思ってか、
耳を塞がずにこの場に残っている。
「ごめんなさい。わたしのことなのに、お兄さんを巻き込んで…」
「っ、そんなこと言わないでください!」
再び頭を下げようとしたわたしにリーファちゃんが大きな声で叫んだ。
「アスナさんはお兄ちゃんの大切な人なんです!
お兄ちゃんが貴女を守る為にそうしたのなら、あたしはお兄ちゃんを誇りに思います!
だから、そんなことを言わないでください…!」
「リーファちゃん…」
「……そうっすね。アスナさん、そう思うのならキリトさんを助けて、お礼を言うのが筋だと思うっすよ」
「ルナリオ君…」
わたしは彼だけでなく、彼の大切な家族にも、友人にも、これほど思われていたことが凄く嬉しかった。
「ありがとう、2人とも…」
わたしは心の底から深くお礼を言った
アスナSide Out
To be continued……
後書きです。
ユイちゃんのカミングアウトにリーファ混乱w
そしてアスナが語る今回の下種郷による一件、怒りのルナリオとリーファ。
次回までアスナの説明がありますが、キリトさんも登場しますよ♪・・・下種郷もだけど。
それでは次回で・・・。
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第8魔です。
今回はユイの自己紹介と事件の説明をアスナが行います。
どうぞ・・・。