第9魔 不屈の意志を持つ者
アスナSide
2人の想いに感謝を述べて、もう一度話を始めることにした。
「それじゃあ、続きを話すね…」
エギルさんからの情報でこのALOにキリトくんがいることがわかったこと、
これをプレイした時に茅場と再会して話しをし、幾つかのアドバンテージを得たこと、
そしてさっきの状況に至ったということ。
「………こんな感じかな?」
「……まさか茅場が居て、しかもキリトさんと手を組んでいたなんて…。驚くにも程があるっす…」
「その人、敵…だったんだよね?」
話し終えるとルナリオ君は驚きと共にどこか呆れており、
リーファちゃんもSAO事件の黒幕だったはずの人物の行動に不思議そうな表情を浮かべている。
「わたしも話をして驚いたよ…。それよりもルナリオ君…もしかしてなんだけど、携帯電話のメール確認してない?」
「へ?」
「エギルさんから、キリトくんの情報がきてると思うんだけど…」
わたしが聞いてみるとルナリオ君は少々考え込み、顔を上げると汗を流し始めた。
「……休憩の時に携帯の確認するのを忘れてたっす…」
あれま、それじゃあ知らなかったのはルナリオ君だけかもしれないなぁ。
彼はそのままガックリと項垂れてしまい、わたしとリーファちゃん、ユイちゃんは苦笑するしかなかった。
「まぁ自分の不手際ということにしてくださいっす…。あと思ったんですが、もしかしてボクの容姿と武器も…」
「多分、茅場だと思うよ……わたしがあそこに転送されたのも、ルナリオ君がいたからだと思うの。
あるプレイヤーの近くにって言われたからね」
「なるほど」
ルナリオ君は自身の容姿がリアルと同じであることと武器の『ヴェンダイヤ』、
先程は使っていなかったけれど『ロードメテオ』を所有出来ていたことに納得した様子。
と、そこで…、
「あ、もうこんな時間! あたし、明日学校に行く用事があるんでした!」
リーファちゃんが驚きながら時間を確認する。
わたしも時間を確認してみると既に時刻は深夜の2時を越えようとしていた。
このゲームをすることを許可されたとはいえ、さすがのわたしももうやめなければならない。
「それじゃあ、続きは明日の午後3時頃からで大丈夫かな?」
「OKっすよ」
「あたしもそれでいいですよ」
リーファちゃんの予定があるので、
話し合ってから明日の予定を決めてルナリオ君とリーファちゃんはそれぞれの部屋へと移動した。
わたしもログアウトしようと思い、装備を解除して軽めの服装になってベッドにユイちゃんと一緒に横になった。
最適なログアウト方法は『寝落ち』らしく、VRMMO内でそのまま眠ると自動的にログアウト出来るらしい。
「……明日までお別れですね、ママ…」
「うん…。でも、明日も必ず来るからね……パパを一緒に取り戻そうね…」
「はい、おやすみなさい…ママ…」
「おやすみなさい、ユイちゃん…」
そうやってわたしとユイちゃんはお互いの温もりを感じながら眠りについた…。
今度はキリトくんも一緒に3人で眠りたいと、心に思い描きながら…。
アスナSide Out
キリトSide
ふぅ~……いくらVRMMOの中とはいえ、
鎖で雁字搦めにされて吊るされているうえに体のあちらこちらに剣を刺されていれば俺とて疲れるものがある。
まぁ痛みを与えるペインアブソーバーがレベル8程度で済んでいるのだから大した痛みではない。
そんなことを考えていると、いつも通りに奴が来た…。
「やぁキリト君、体調の方はどうかな?」
「アンタのお陰で
「それは良かった、それと…ここではオベイロンと呼んでくれ、よ!」
「ぐっ!」
皮肉を言ってきた妖精の姿を取る須郷に皮肉で返すと、体に刺さっている剣を抜かれ、再び突き刺してきた。
「まぁ、今日の僕は機嫌が良いからこれくらいにしといてやるさ。聞きたいかい?」
「俺には聞くことしか出来ないさ…」
「そうだったね。僕が結城家の養子になることが決まったよ、明日奈君の配偶者としてねぇ!」
奴は甲高い笑い声を上げてそういった。なるほど、ね…通りで機嫌が良いはずだ。
「だから?」
「なに…?」
俺のあっさりとした返答に須郷は笑みをやめた。
「あのなぁ……お前、明日奈に会ったっていっていたよな? なら分かるだろ?
今のアイツにそんことを話せば、アイツお前を殺すぞ?
いや、もしかしたら俺を殺して自分も死ぬとさえ言いかねないな、クックックッ」
「っ、そんなことは…」
「無いとは言い切れないぜ、今の明日奈の様子を聞く限りじゃな…」
須郷の表情が歪み始める。
考えが至らなかったからなのか、捕らえたはずの俺にここまで言われたのが想定外だったからなのか。
ま、俺は明日奈の決断に任せるだけさ…。
「確かにそうかもしれないな……だけどね、キリト君。果たしてキミはどうかな?」
「……どういう意味だ…」
一度は黙った須郷だったが、表情な歪にしてから話し始めた。
「頭の良いキミならこれだけ言えば分かるんじゃないかなぁ~?
電子パルスのフォーカスを脳の感覚野に限定して照射し、
環境信号を与えている……その枷を取り払ったらどういうことになるか……」
「……脳の感覚処理以外の機能…思考、感情、記憶への接触が可能となる……っ、貴様、人を
「あっはっは! 理解が速くて助かるよ、まさしくその通りだ!」
このクサレ外道は…俺だけでなく、300人にもの人間を実験材料にしているのか!
SAOの被害者であるプレイヤー達を隠れ蓑として、そのまま利用すると。
「茅場先輩は天才だが大馬鹿者さ、ゲーム世界の創造如きで満足するなんて…。
ルータに細工をして見事に被験者を300人も手に入れることができた。
まぁ、明日奈君が手に入らなかったのは残念だったけど、キミが来てくれたのはある意味僥倖だったよ…。
キミがこちらの手の内にいてくれれば、キミを盾にして明日奈君を服従させることは可能だよ!」
「巫山戯るな! これだけのことをして、許されると思うなよ!」
「許す? これは既に各国が取り組んでいることさ。
まぁ生きた人間の被験者が必要だから、表だってはいないけどね」
それくらいは俺も理解している。
軍事国家においては重犯罪者などを材料にしているところがあることも、
残念ながらこの年齢で解ってしまっている。
だが何の関係も無い人間を使っていいわけでもない。
「今は吼えていればいいさ、負け犬君。
キミはいずれ僕と明日奈君の前で這いつくばりながら、全てを奪われることとなるさ」
「………」
「それじゃあ、僕はこれから一仕事あるのでね…失礼するよ」
奴はドアを開いてから外へと出て、厳重に閉めてからどこかへと移動していった。
「………だそうだぞ、大馬鹿者」
「失礼なことを言うね、負け犬君…」
須郷が居なくなったのを気配と共に確認すると、俺は
失敬だな、俺はお前に勝っているぞ。
「いや~、まさかあそこまでペラペラと喋ってくれるとは思わなかった。お陰で奴の目的がハッキリとしたな」
「そうだな。私という壁がいなくなって、天狗になっているのだろう」
先程までとは打って変わって軽快な俺。
別に須郷の目的自体は軍事国家やテロ組織の研究者などであれば考え付くことだ、否定はしない。
日本はそういった面で遅れるところがあるのだから、それも仕方がないことだろう。
だからといって、見逃してやるほど落ちぶれてもいない。
「では、そろそろ動くかね?」
「もう少しだけ機を見るさ。奴がここに近づき難くなる時があるはずだからな」
「そうか……だがいいのかね? アスナ君の事情の方は…?」
聞いてくる茅場に俺は答え、もう1つの問いかけには沈黙した。
確かに明日奈のことは心配だ。
だが今の俺に出来ることはたった1つだ。
「俺は明日奈を信じる、それだけだ…我関せず、不屈を持って彼女を待ち、信じるのみ」
「なるほど……それでは私は情報を集めて来るとするよ」
そう言って茅場は姿を消した。
「須郷、今は精々神様を気取っていな。すぐにヘルヘイムの底に叩き落としてやるよ」
俺はそう言って唇の端を吊り上げた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
アスナとユイちゃんのは頑張ってキリトと再会してもらいたいと思う自分ですw
そして本編では初のキリトさん視点、下種郷の言葉を苦にもしていないさすがのキリトさん。
ちなみに本作において、キリトさんと茅場は最初のうちはシリアス&コメディ担当ですw
もう1つ敢えて言わせてもらいましょう、本作の黒幕は下種郷であって下種郷ではない。
真の黒幕はキリトさんである!
え? 違うって? 黒幕を手玉に取ったり、相手にしていない時点でキリトさんが真の黒幕でしょw
次回は和人以外の黒衣衆が揃い踏みます。
それとキャラ設定にキリトさんを加えましたよ~。
ではでは・・・。
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第9魔になります。
前回の続きでアスナの説明から入り、キリトさん側に変わります。
どうぞ・・・。