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真・恋姫†無双~不信の御遣い~ 第二十二話

BLADEさん

第二十二話です。

2013-01-06 16:46:49 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1956   閲覧ユーザー数:1808

夜だ。月が出ている。

 

ボンヤリ、そんなことを思う。

 

僕があの二人と命懸けの戦いをしたのは昼頃だったから、結構時間がすぎたんだなぁと実感。

 

体が痛い。ギシギシいってる。

 

「恋ちゃん。まだ着かないのかい?」

 

「……もう少し……」

 

「……そうですか」

 

結構歩いたよね、僕。城って広いんだな、まぁいいけど。

 

「そういえばさ、恋ちゃん」

 

「……なに?」

 

「君はどうして、一刀君のことを『ご主人様』って、呼んでるんだい?」

 

気になっていたことを聞いてみる。彼女たちの主人だからなのか。

 

「……恋のご主人様だから。『ご主人様』って呼ばないで、『北郷』とか、『一刀』って、

 

呼んでる人もいる。『ご主人様』って呼ぶのは、恋と月だけ……」

 

「そうなんだ」

 

月?誰の真名なんだろう。

 

僕が今まで出会った中で知ってる武将は……。いや、全員なんだけどね。整理してみようと思って。

 

呂布。

 

華雄。

 

多分、張遼?もいるよね。いや、勘なんだけどさ。

 

霞さんがもしかしたら、そうかもしれないと思って。武器『偃月刀』だったよね。

 

理由の根拠としてはそれくらい。とすると、董卓もいることになるな。

 

…………だ、大丈夫だよね?恋ちゃんだって、いい意味で予想を裏切ってくれたんだし。

 

董卓さんだって大丈夫だよね?ね?

 

僕の様子がおかしかったのか、恋ちゃんがクスッと笑う。

 

「……・大丈夫。月は優しいから……」

 

「そ、そうだよね。うん」

 

すいません。全然実感湧きません。

 

だって、暴君で知られる董卓でしょ。う~ん。

 

僕が不安に思っていると、いつの間に着いたのだろう。扉が目の前にある。

 

その中から、一刀君の声が聞こえる。

 

「恋。高順、連れてきた?」

 

「……うん……」

 

一刀君の声に続いて、物静かな、おっとりした声が聞こえる。

 

「どうぞ。恋さん、高順さん。入ってください」

 

恋ちゃんに続いて、扉を開ける。

 

 

僕と恋ちゃんが扉を開けて部屋に入ると、たくさんの料理と、酒があった。

 

一刀君。張遼さん。華雄さん。恋ちゃん。

 

あとの二人は知らない。そのうちの一人が僕に話しかけてくる。

 

「こんにちは、高順さん。私、この天水の太守をしています。

 

董卓仲穎と言います。よろしくお願いしますね」

 

「はぁ。……え?」

 

今なんて言ったんだ?この子が、あの董卓?

 

「高順さん?どうしてそんな「いやいや、これは現実じゃない」といったふうな

 

顔をしているんですか?」

 

「いや、別に……」

 

「私の印象が、余りにも違っているから驚かれましたか?」

 

「なんで分かったの?」

 

エスパーか。

 

「ご主人様も、同じ様子でしたから」

 

「なるほど」

 

驚いた。恋ちゃんのこともあるから、可愛い女の子が出てくるのはだいたい予想してたけど。

 

これはない。イメージ一瞬で覆された。

 

肌白いし、声は綺麗だし。髪型も短髪だし。

 

僕が思っていた董卓は全然違うね。まぁそれはいいや。

 

っていうか、さっきから凄い嫌悪を僕に向けて睨んでる人がいるんだけど。

 

深い緑色の短髪で、眼鏡を掛けている。可愛いけど、眼光鋭いなぁ。

 

その眼鏡を掛けた女の子は、不機嫌を隠さず董卓ちゃんに言う。

 

「月。こんな素性も知らない男にそんな慣れ慣れしくしちゃダメって、いつも言ってるでしょう。

 

男なんて、皆ケダモノなんだから」

 

ヒドイ言われようだ。

 

「え、詠ちゃん。それは言い過ぎだと思うよ」

 

董卓ちゃんが僕をフォローしてくれる。なんていい子なんだ。

 

「月がそういう態度だから男がつけあがるのよ」

 

「ま、まぁ二人共。とりあえず落ち着いて、高順に自己紹介しようって言っただろ?

 

ほら、詠もちゃんと自己紹介して」

 

一刀君が助け舟を出してくれる。ありがたい。

 

「賈駆。賈駆文和」

 

渋々といった様子で、賈駆ちゃんが自己紹介してくれる。

 

ん?董卓の軍師って、李儒じゃなかったけ。

 

まぁ、僕もよく知らないんだけど。

 

よろしくと返しておく。

 

「まぁ高順は全員知ってるよな?」

 

「まあね」

 

殺されかけたしね。僕はその元凶を見る。二人共、すぐに顔を逸した。

 

すると一刀君は、こう切り出してきた。

 

「ここに来てもらったのはほかでもない。高順はこれからどうするんだ?」

 

 

やっぱりこういう話になるか。まぁ分かってたけど。

 

「俺達の軍に入ってくれるんなら歓迎する。もちろん強制はしない。

 

お前の意思で決めてくれ」

 

一刀君は凄く真剣な表情で僕を見る。

 

他の人達も全員そうだ。

 

僕は答える。

 

「いいよ、別に。僕は全然構わない」

 

「本当か?」

 

「うん」

 

僕は確信していた。

 

戦い続けていれば、僕の命を摘み取ることが出来る人がいるかもしれない。

 

戦うことは、あまり好きじゃないし得意でもない。

 

だからこそ、いいんだ。

 

死ぬには、この選択が正しい。

 

すると、それを聞いた賈駆ちゃんが言う。

 

「ボクは嫌」

 

 

僕と賈駆ちゃんを除く全員が唖然としている。

 

フム、嫌ね。

 

随分嫌われたらしい。

 

皆を代表して張遼さんが聞く。

 

「賈詡っち。なんでや?高順は強いで。それは戦ったウチらが知っとる。

 

なぁ、華雄?」

 

「認めたくはないがな」

 

華雄さんも言う。

 

「そうだよ、詠ちゃん。せっかく高順さんが私達の味方になってくれるのに、

 

そういうことは、本人を嫌な気持ちにさせるよ?」

 

董卓ちゃんが言う。

 

「そうだ。ただでさえ、俺達は人材不足に苦しんでるんだぞ?」

 

一刀君までもが参戦してくる。

 

「……ご主人様の、言うとおり……」

 

恋ちゃんも訳が分からない、といった様子だ。

 

「だから嫌なのよ」

 

賈駆ちゃんがピシャリと言う。

 

「確かにボク達は、人材不足に苦しんでる。霞と華雄を二人を相手にして、

 

五体満足でいることも凄いしね。

 

でも、だからこそ、嫌。

 

ハッキリ言えば、ボクは」

 

賈駆ちゃんは僕に向かって言う。

 

 

 

「アンタが怖い」

 

 

 

 


 
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