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「アンタが怖い」
そう言われた僕は、この子はなかなか目の付け所があると思った。
とりあえず、理由を聞かせてもらおうかな。
「僕が怖い、ね。理由は?」
「単純よ。アンタの真意を測りかねてるのよ、ボクは。一体、何が目的?」
「単純だよ。君達の力になりたいと思っただけさ」
「嘘だね」
「嘘じゃないさ」
「嘘かどうか分からないほど、ボクの目は甘くないよ」
「君の目が甘いかどうかは知らないけど、嘘じゃないよ」
僕の余りにも白々しい態度に、賈詡ちゃんのイライラがドンドン募っていくのが分かる。
他の皆もハラハラして僕達の会話を聞いている。
見かねたのか、一刀君が助け舟を出してくれる。
「お、おい。詠?」
「アンタは黙ってて!!!」
「ハイ……」
助け舟は沈んだ。
「霞と華雄を相手にして互角以上の戦いを繰り広げ、あのダメ男と恋を理由もなく救った。
それも一歩間違えば死ぬような状況で。
そんなアンタがボク達と一緒に戦いたいだなんて、不気味以外のなにものでもない」
そう。君はそういう風に考えるのか。
「そして、ボクの気のせいならいいんだけど、アンタの月を見た時の反応がそこの
御遣いと一緒なのよ。アンタ、ひょっとしら」
「そこまでだ。賈駆ちゃん」
僕は止める。
「か、賈詡ちゃんって……」
賈駆ちゃんが狼狽している。
「あ、アンタなんかにちゃん付けで呼ばれたくない」
ボソボソ呟いているが、気にせず話を続ける。
「まず一つ目。僕が張遼さんと華雄さん相手に互角以上に戦えたって言うけど、そうじゃない。
結局、張遼さんにやられたわけだしね。華雄さんのはまぁ、まぐれだよ。
二つ目。一刀君と恋ちゃんを助けたのは、この街に案内してもらおうと思ったからさ。
決して義侠心に駆られたとか、そういうわけじゃない。
さらに理由をつけるなら、そうだね。恋ちゃんが可愛いかったからかな。
あんなクズ共に、恋ちゃんみたいな子が好きにされるのが嫌だったんだよ」
僕の隣に座っている恋ちゃんが頬を赤くして俯くのを視界の端に捉えた。
別に俯く必要はないと思うよ、恋ちゃん。
僕にこんなこと言われたって嬉しくないだろうに。
「……そう」
うわ~、信じられないって顔してるな~。しょうがないのかもしれないけど。
「それに、僕が御遣いだって?冗談言わないでほしいな。僕はただの……」
おっと、これは今この状況で言うことじゃないな。
「ただの……、何?」
「いや、なんでもないよ」
「ふ~ん」
「これで理由の説明は終了だよ。それでもまだ僕のことが気に入らないなら、無理に君達の仲間に
入れてくれなくてもいいさ。拒絶されるのは慣れてるからね」
そう言い切ると、沈黙がこの場を支配する。
「……条件があるわ」
賈駆ちゃんが唐突に切り出す。
「何かな。条件って?」
「二つあるわ。
アンタは、戦うことに関してはかなり強いと思う。
その力を、ボク達の為に存分に振るうこと。これが一つ目。
それともう一つ。
霞と華雄を相手に出来ているから。それほど強いなら今すぐにでも将軍にしたいところなんだけど、
あいにく今は空いている軍馬が一頭しかなくてね。その馬を手懐けること。
これが二つ目の条件」
それを言った瞬間、僕と賈駆ちゃんを除いた全員が絶句する。
え?なに、この空気?
「・・・・・・じょ、冗談やろ?賈詡っち?」
張遼さんがその綺麗な顔を苦笑させて言う。
「そ、そうだよ詠ちゃん。他の軍馬はいいかもしれないけど、あの馬は・・・」
なんだろう、そんな凄い軍馬なのか?
「この条件は譲れない。どうする、高順?」
「いいよ」
「「「「「高順(さん)!?」」」」」
即答した僕に五人が反応する。そんなに大声出さなくても。
月ちゃんは僕のことをさん付けで呼んでくれる。いいね、かなり。
「大丈夫だよ、皆。馬を手懐けるだけでいいんだし、死ぬことはないでしょ?」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
え?何この沈黙?
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第二十三話です。