「なんやねん。ちょこっと遊んでただけやん。一刀は頭カタイなぁ」
「そうだ。あれは完全に遊びだった」
「お前らなぁ……」
離れた場所で一刀君はゲンナリしている。
僕が今にもやられそうな時に一刀君と恋ちゃんが来てくれて、戦闘はお開きとなった。
この二人は、人質になった女の子をそのご両親に届けたあと、
騒ぎを聞きつけて来てくれたんだとか。いや~頭上がらないね、ホント。
ま、それにしても霞さんと華雄さんのあの言い訳はなぁ、疲れるよなぁ。
ご愁傷様です、一刀君。
すると、僕の側にいた恋ちゃんが僕に聞く。
「……どうして、高順はあの二人と、戦うことになったの……?」
「あ~、それはだね」
恋ちゃんに今までのいきさつを簡単に説明する。
それを聞くと、恋ちゃんは驚いた様子で
「……じゃあ、高順はあの二人を相手に、互角に渡り合ったってことなの……?」
信じられないというように、僕に聞く恋ちゃん。
「あのね恋ちゃん。誤解しないで欲しいんだけど、僕があの二人を相手に出来たのは
本当に偶然と奇跡が重なっただけの事なんだよ。そうじゃなかったら、僕はここで、
君と話すことなんか出来ないだろうから」
「……でも……」
「華雄さんはまぁ、頭に血が上ってたのと、一回どんな速さで、どんな力で攻撃してくるのが
分かってたから、いなす事が出来んだよ。それでも、少しでも失敗すれば、
まず間違いなく、頭を叩き割られてたね」
僕は続ける。
「問題は霞さんだったんだよ。なにあの速さ。一瞬躱すのが遅かったら、今頃僕の首は、
この身体と繋がってないよ。本当によく生きてたよ」
僕は言う。
正直、死ぬことも視野に入れてたんだけどな。わざと斬られることも、力を抜く事も出来ないから、
全力で戦って死ななきゃならない。霞さんも華雄さんも十分可能性があったんだけどな。
まだ、だめなのか。
成程、ゼウスさんは『加護』だって言ってたけど、とんでもない。
これは『呪い』だ。しかも、とんでもなくタチが悪い。
「ハァ・・・・・・」
溜め息が、自然と口から吐き出される。
「……どう、したの……?」
「ううん、なんでも」
恋ちゃんが心配そうに聞いてくる。いい子だなと思う。
いい子だからといって、僕の苦しみが、理解できるとは思わないけど。
「お~い、高順。恋」
一刀君が呼んでいる。その後ろには霞さんと華雄さん。
僕と恋ちゃんは、彼らのところに歩いて行った。
「すまなかったな、高順。霞と華雄がお前に迷惑をかけた。大丈夫か?」
すまなそうに、僕に謝る一刀君。
別に、君が謝る必要は無いのに。
「まぁ、なんとかね。頬の骨が折れたかもしれないけど」
「いや、それは大丈夫じゃないだろ……」
さらにゲッソリとする一刀君。面白いな、君は。
「まぁ、話は霞と華雄から聞いた。この事も報告しなきゃだから、俺たちと城に行こう。
そこでなら、治療もできるから」
う~ん、ありがたい申し出だが。
「いや、別にこのくらい平気だよ」
「全然平気じゃなさそうだぞ。顔青いぞ」
「ああ、それはこの血のせいだよ」
首から血が滴り落ちている。いや、結構凄い量が出てる。激しく動いたからか。
「おい!?ちょっ、これやばいぞオイ!?」
「……高順っ……!?」
「アカン。すっかりその傷のこと、説明するの忘れとった」
「失念していたな」
「オイ!!!」
僕を除いた四人が、それぞれ驚いている。
やば、意識が。
ああ、結構出てるな。
これで、死ねるかな。
もう、いいのかな。
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第二十話です。