最初に斬りかかってきたのは華雄さんだった。
その手から繰り出される斧の動きに合わせて、『無銘』をかち合わせる。
華雄さんが笑う。力では勝てると思っているのだろう。甘い。
さっきの交錯で大体の力加減は分かった。合わせた瞬間、一気に『無銘』をカクッと、
拍子抜けな音がする程自分の力を抜いていなす。
「なっ!?」
隙ができた。
お返しだ。その綺麗な顔の左頬を、渾身の力で殴りつける。
「がはっ!!!」
僕はあまり力がある方ではない。
ゆえに、さっきの華雄さんのようにあんなに吹っ飛ばすことは出来ない。
せいぜい、地面に叩きつけ、動けなくするだけだ。頭が揺れ、しばらく立てない。
さっきの僕のようになる。
が、プライドが高い華雄さんにはそれで充分だ。僕が見てきた人間の中で、
プライドが高く、自分の実力に自身を持っている人は頭に血が上りやすい。この女尊男卑の世界なら
なおさらだ。
そして、
「華雄!!!」
おっと、来たな。正直この人が一番怖いよ。この状況では。
どれほどの『強さ』なのか全く分からないからね。
と、思っていたら。
風をヒュンと切るような音がして。
霞さんが振り切った『偃月刀』が。
僕の首元に、大蛇のように伸びてきて、かすめた。
「あれ、おっかしいなぁ。アンタの首掻っ切ったはずやのに、なんで生きてんねん?」
不思議そうに僕を見る霞さん。
あ、危ねぇ。速すぎだろ、おい。華雄さんより全然速いぞ。よく生きてたな、僕。
首からツーっと、血が滴り落ちる。
「アンタ、なかなかやりよるやんけ。やっぱり、ウチの見立ては
間違いやなかったちゅうことやな。」
相変わらずの高評価に、僕はハァと溜め息を漏らしながら
「えらくお気に召していただいたようなんですが、今のは完全にまぐれでしたよ。
ほとんど直感で避けましたから」
「なら、その直感を信じたアンタはやっぱり強いで。まぐれだろうがなんやろうが
避けたのはアンタの実力や。誇っていいと思うで」
霞さんがニヤッと笑う。
「誇るようなものなんか、何も持ってないです。必要もないですし。
あるとしたら……。それは」
口を噤む。
危ない。初対面の人に何を言おうとしてるんだ、僕は。
「あるとしたら、なんやねん?」
「いえ、なんでもないです」
「ふ~ん。な、アンタの名前なんて言うん?ウチ、アンタに興味が湧いてきたわ」
「そうですか。実は僕も、アナタには興味ありますよ」
「嬉しいこと言ってくれるんやな。じゃあ、アンタの名前を教えてくれへん?」
「嫌です」
どうですか、この斬新な切り返し。
霞さんもアングリしてるね。そりゃそうか。
いろいろな顔の表情の変化があって。
気を取り直したのか、霞さんは僕に言う。
「じゃ、そうやな。今からウチがアンタを叩きのめす。アンタが叩きのめされたら、
アンタは名前を教える。どうや?」
飲むわけねぇだろ、そんな条件。
「もしアンタがウチに勝てたら、ウチが華雄が壊した店の修理費払おうたるわ」
「いいでしょう」
は、しまった。つい飲んでしまった。なにせお金がないから、つい。
霞さんはニヤッと笑って。
「ええ覚悟やな。今時珍しいで?アンタみたいな男」
「え、ええ。まぁ」
やばいよ~。逃げ出したい。
そう言うと霞さんは『偃月刀』を構える。
僕も仕方なく『無銘』を構える。
そして。
「それじゃ、いくで!!!」
暴風雨。
彼女の攻撃はまさに、それを体現していた。
一度見れたとは言え、全くついていけてない。当ててるだけだ。
何度も『偃月刀』が頬や腕をかすめ、血が滴り落ちている。
僕は当てるどころか、かすりもしない。
「どうした!?そんなもんかい!」
捌ききれなかった彼女の『偃月刀』の柄による一撃が僕の腹に炸裂。
僕は吹き飛ばされる。
「かはっ、がはっ」
霞さんは興が削がれたように言う。
「なんや、もう少し楽しませてくれるんやと思ったのに。
つまらんなぁ」
僕は言い返す。
「だ、だから、僕は。はぁはぁ。強くないって言ったじゃないですか。ゲホッ」
「まぁ、ええわ。ウチらのことを否定した理由も知りたいし、アンタの名前も知りたいし
とりあえず終わらせよか」
やべぇ。負ける気しかしねぇ。
どうするかな。
するとそこに、聞いたような声が響いた。
「華雄!!!霞!!!何やってるんだよ!?」
まだ若い少年の声。
そして。
「……高順……?」
静かな、それでいてよく通る少女の声。
絶望的な状況に諦めかけたその時、
その二人は、北郷一刀君と恋ちゃんは現れたのだった。
皆さん今晩は。BLADEです。
実はですね、ある読者様から『タグにオリ主を入れて欲しい』と言われたので、
登録タグに『オリジナル主人公』と入れました。
これからも、「真・恋姫†無双~不信の御遣い~」をよろしくお願いします。
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第十九話です。