No.508689

落日を討て――最後の外史―― 真・恋姫†無双二次創作 幕間2

ありむらさん

幕間の2です。
わかっちゃうかな? 大丈夫だと思いますけれど――念のため。
何となく察した方。ネタバレ厳禁でお願いいたします。

独自解釈独自設定ありの真・恋姫†無双二次創作です。魏国の流れを基本に、天下三分ではなく統一を目指すお話にしたいと思います。文章を書くことに全くと云っていいほど慣れていない、ずぶの素人ですが、読んで下さった方に楽しんで行けるように頑張ります。

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2012-11-15 23:57:52 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6171   閲覧ユーザー数:5086

【幕間2】

 

 店内には、ポール・モーリアが流れている。

 外史の狭間の店の片隅で、貂蝉は琥珀色の酒を舐めていた。

「ねえ、マスターちゃん」

「なんでしょう」

「運命ってわからないものねん」

 言ってしまってから、詮のない問いかけだと思った。ただそれでも店主は淡く笑んで「そうですね」と肯定してくれる。

「いらっしゃいませ」

 ふと、店主が貂蝉から視線を外してそんなことを言った。

 振り返れば、そこには煌めく白いふんどしがあった。

「ひさしぶりねん――卑弥呼」

 そう言うと、ふんどし漢女は豪快に笑いながら、隣の席に座った。

「何になさいますか」

「貂蝉と同じものをくれい」

 太い声で注文すると、卑弥呼の前にすぐグラスが置かれた。

 卑弥呼は以外にもそれをつつましげに啜った。

「裏方、ご苦労さまねん」

「ああ、まあ、問題はないぞ。監視役はどうだ。外史の同化率はどうなのだ?」

 貂蝉は僅かに言い淀む。

「良くないのか」

「逆なのよん」

 話の気配を察してか、店主はさり気なく店の奥へと消えていく。

「どういうことなのだ」

「外史の統一が順調すぎるの。本来であれば摩耗してしまうはずのところが残ったまま、同化してしまっているわん」

「本来であれば摩耗――よもや」

「ええ。ご主人様には――本当に残酷な運命になってしまうわん」

 卑弥呼苦々しげに酒を啜る。

「調整が甘かったか――ッ」

「あなたのせいではないわん、卑弥呼。これは外史に生きる者たちの意思。よりよい未来、より良い世界を志向する強い想いのなせる業。それに」

 それにきっと。

 彼ならば。

「ご主人様なら、きっと最善の方向へ統一外史を導いてくれる筈よん」

「信じるしかない、ということか」

「そうねん」

 笑むように言って、貂蝉は一気に酒を煽った。二杯目を頼む気にはなれなかった。

「少し――」

「歯がゆいか」

「見ているだけしか出来ないというのは、思った以上に辛いものよん。ご主人様と大陸を回ったあの外史が懐かしいわん」

「あれは楽しかった。わしと貴様と、ダーリンとご主人様と」

「ええ。そうねん」

 太い指先で、グラスの氷を弄ぶ。

 グラスの中を転げまわっているこの氷は、まるで向こうにいる彼のよう。

 自分の思うようにならない外からの力を受けて、運命に翻弄されならが傷付いている。

 その運命の渦の中に放り込んだのは自分だというのに、何もできない己が歯がゆい。

 貂蝉はそっと、氷から指を離した。

「そういえば聞いておらなんだが、今回、ご主人様はどこに落ちたのだ。監視者でないとはいえ、これくらいは訊いても良いだろうが」

「――曹操ちゃんのところよん」

 答えると、卑弥呼の動きが止まった。

 

「何? ――また、だと」

 

 今度は貂蝉の動きが止まる番だった。

「何を言っているのん、曹操ちゃんのところは初めての筈よん」

「お主こそ何を言っておるのだ。ご主人様は一週目に曹操のところに落ちたではないか」

「おかしいのは卑弥呼の方よん。一週目は孫権ちゃんでしょう」

 卑弥呼は強く首を横に振る。

「それは二週目ではないか。おぬし――そうか……ッ!!」

 途端、卑弥呼は何かに気づいたように眉間に皺を寄せた。

「卑弥呼、嫌な冗談はやめにして頂戴。気味が悪いわん」

「違うのだ、お主は――」

 

「記憶の修正を受けておるのだ!」

 

 そんな、ことが。

「ありえないわん! 私は外史の案内人。記憶の修正は受けるはずないもの」

「その通りだ貂蝉。常に案内人であったなら、お主は記憶の干渉を受けることはなかった。だが――いや覚えておらんのなら」

 柄になく、卑弥呼が逡巡する。

「なんなのん、卑弥呼」

「本当に覚えておらんのか?」

「分からないわん」

 そうか、と卑弥呼は息を吐いた。

「言って……くれないかしらん」

「……うぬぬ」

「――卑弥呼」

「事ここに至れば、致し方あるまい」

 卑弥呼はひとつ、深呼吸した。

 

「お主は――消滅の危機に瀕したご主人様を救う際、外史に触れたではないか」

 

 やはり。

「覚えがないわん」

 卑弥呼は寂しげに瞑目する。

「一週目の時、ご主人様はあまりに大きく歴史を変えすぎた。その頃は外史の柔軟性も乏しかった。硬い外史は、歴史に背こうとするご主人様を消滅させようとした。おぬしはそれを辛うじて防いだ。――そんなことがあったのだ」

「ご主人様の消滅だなんて――ありえないわん」

「それが、一週目ではあったのだ。だから、お主は例外的に外史へ干渉した。ゆえに、一週目に関わる記憶に付いて世界からの修正を受けておるのだ」

「それ、じゃあ。ご主人様は――」

「うむ。曹操のもとに降りるのはこれで二度目だ。わしはてっきり董卓か馬騰のところにでも降りたものと思っておったのだが」

 

 運命とは分からんものだ、と卑弥呼は呟くように言った。

 

 卑弥呼は嘘を言っていない。

 それは彼女の眼を見れば一目瞭然なのだ。

 とすれば。

 そうだとするのならば。

「なんてことに、なってしまったのん……ッ!」

「致し方あるまい。それでも、ご主人様ならばやってくれるだろう」

 そんな卑弥呼の言葉を聞きながら、貂蝉は静かに嗚咽にくれるしかなかった。

 

 本当に、ごめんなさいねん、ご主人様――ッ。

 

 

《あとがき》

 

 

 

 ありむらです。

 

 

 まずは、ここまで読んでくださっている読者の皆様、コメントを下さったかた、支援をくださった方、お気に入りにしてくださっている方、メッセージをくださった方、えっとそれから……兎に角応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。

 

 

 

 皆様のお声が、ありむらの活力となっております。

 

 

 ここで幕間を挟んでおこうかと思います。

 次回は洛陽篇の続きを進めていきます。

 

 コメントなどどしどしください。

 いつもよろこんでよんでいます。

 

 それでは今回はこの辺で。

 

 ありむらでした。


 
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