No.495280

IS 白い翼/可能性の獣

さん

自分自身忘れていたこの作品にbiohaza-dさんからコメントを受けて書いてみましたがデータが消えていて時間がかかりました。

よかったらコメントお願いします。

2012-10-12 12:10:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2260   閲覧ユーザー数:2181

プロローグⅢ 盗聴と密談

 

場所は変わって竜胆が入院している病室の前

そこには真剣な表情で病室の扉に聴診器を当てている奇妙な二人の美女がいた。

 

「あのー、お二人サン。そろそろ病室に入りたいんですけど?」

「「・・・・」」

 

星治の呼びかけに全く反応しない二人の女性は未だ聴診器に集中している。

一人目は更識家当主の楯無である。

二人目はこの病院の医者で竜胆の担当医でもある笹野芽衣(めい)だ。

芽衣は星治の二つ年下で幼馴染である。医者としてはとても優秀であり人望も厚い、もちろん星治が暗部の人間であることも知ってる。

 

暗部の家系でもある更識家の任務では危険なもの多く必ず無傷で戻ってこれる保証はどこにもないのだ。

暗部の任務で負った傷を一般の病院で治療出来る訳もなく、更識家の事情を知っている病院が必要であり竜胆が入院している病院こそがそれにあたる。

もちろん病院なのでナースもいるが芽衣と楯無の奇行は今に始まったこともなく、何ごとも無かったかのように通り過ぎていく。

 

星治はこれ以上この場に留まるのも精神的にダメージがくるので病室の扉を軽くノックする。すると二人の体がビクッと反応した。

 

「セイジ何するのよ!ビックリしたじゃない!」

「そうよ、星治!当主に対してこんなことしていいと思ってるの?」

「え~っとまず、聴診器を使って盗聴している変態二人に説教を受ける道理はないです」

「わたしと当主がいつ盗聴してたのよ!ちょっと聞き耳立ててただけじゃない!」

「そうよ、星治。私達はただ盗み聞きしてただけよ!」

「ん~っと、二人ともそれを盗聴と言うんです。それよりも早く入りましょうよ」

「まだ早いわ、セイジ。何ごとにもタイミングって大事でしょ?」

「はぁ、じゃあ芽衣。どのタイミングで入るんだ?」

「それはお嬢たちが自分の発言で墓穴を掘って恥ずかしさで悶えているときよ!」

「甘いわよ、芽衣ちゃん。最高のタイミングは竜胆君のラッキースケベが発動した直後よ!」

「あの~、当主。竜胆がラッキースケベを発動するのが前提ですか?」

「・・・さすが当主。尊敬します!」

「なぁ、芽衣。その敬意はおかしいだろ」

 

当然のことを言う星治に対して変態二人は星治に向けて軽蔑の視線を向けて星治を批判し始めた。

 

「・・・当主、当主。なんかセイジが真面目ぶってますよ?」

「芽衣ちゃん察してあげて。星治は構ってもらえなくて寂しかったのよ」

「え~っと、当主。変な察し方やめてください。それと二人とも少し自重してくれると個人的に非常に助かります」

 

楯無と芽衣の奇行は度々行き過ぎる時があるが仕事関して優秀でほぼ完璧にこなしてしまい文句を言い辛いので暗部の殆どの人が強く注意できないのだ。

なのでこの二人に奇行に対してここまで注意できるのは星治くらいである。

 

「なによ、娘たちの運命の人かも知れないのよ?」

「ん~、それでも最低限のプライバシーは守りもしょうよ」

「ちょっと待って!当主、お嬢たちの運命の人ってどういう意味ですか!?」

「まだ芽衣ちゃんには言ってなかったわね。説明するわ」

 

竜胆が見た夢で更識姉妹の特徴に合う女の子と遊ぶ夢、更識姉妹がこれまでに竜胆と思われる男の子と遊んだことがないについて説明すると

 

「当主!なんでそんな面し・・・じゃなくてとても面白そうなこと黙ってたんですか!」

「なぁ、言い直すところがおかしいよな?」

「だってセイジ!こんなの興奮する決まっ・・・・」

「「ええええぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」」

 

芽衣が反論しようとした瞬間、病室から更識姉妹の声が響いた。

すると楯無と芽衣の変態二人は目を輝かせて

 

「「ラッキースケベかぁぁあ!!」」

 

と叫びながら思い切り扉を開けて変態二人は病室に突入していった。

 

「ん~、当主は自分の娘たちがラッキースケベの被害に遭ったかも知れないのになんで嬉しそうなんだ?」

 

星治は独り言を呟いた後、普通に歩いて病室に入っていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

時はわずかに戻り病室ではなんとか上体を起こした竜胆が更識姉妹に様々な質問をしていた。

二人とも最初のころに比べれば普通に話せるようになったが未だ緊張していた。

 

「へぇ、じゃあ二人のお母さんはお父さんよりも強いんだ」

「わたし達、母さんが負けたところ見たことないもん」

「お母さん、叔父さんたちと1対5でもみんな倒しちゃうくらい強いよ」

「すごいね。あ、そうだ二人は桐谷って人知ってる?」

「え、桐谷叔父さん?」

「桐谷おじさんは知ってるけどなんで?」

「一緒に住むことになった」

「「・・・・」」

「・・・・」

「「ええええぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」」

 

喉が裂けんばかりの大声を出し驚いた。

更識家と更識家に仕える家は暗部の関係上、家同士の交流が多くそれは桐谷家にも当てはまり、桐谷家には二人ともよくお世話になっていたりする。

 

だが実際には二人の身を身内から守るという意味が強い。

暗部も一枚岩ではなく隙があれば暗部を取り仕切っている更識家を蹴落とそうという家も少なからず存在するのが実態で、楯無もその存在は認識しているがすべての不安分子を粛清するのは難しいことを理解しており暗部の仕事で家を空ける時には最も信用できる桐谷家か布仏家などに二人をよく預けている。

 

しかも二人を預ける時は3日間くらい世話になるのはザラで長いときは1か月世話になったこともあるのだ。

なので、竜胆が桐谷家に住むということは必然的に一つ屋根の下で寝食を共にするということになるのだ。

 

「「ラッキースケベかぁぁあ!!」」

「ん~、当主は自分の娘たちがラッキースケベの被害に遭ったかも知れないのになんで嬉しそうなんだ?」

 

更識姉妹が叫んだ直後またしても病室の扉が大きな音たてて病室に飛び込んできたのは更識姉妹と同じ水色の髪で着物を着ている女性と白衣を着た女性、その後ろから呆れ顔の星治が歩いて病室にはいてきた。

楯無と芽衣は更識姉妹と竜胆を交互に見て一言

 

「「・・・ラッキースケベは?」」

「「「・・・・」」」

「あぁ、二人とも変態だがそんな目で見てやるな」

「・・・母さん、なに言ってるの?」

「・・・芽衣さんもどうしたの?」

「二人とも竜胆に変なことされなかったの?」

「うん、私も簪ちゃんも何にもされてないよ」

「お母さん。なんでそんなこと聞くの?」

「「・・・・」」

「え~っと、それは―」

「「フェイントだとぉ!」」

 

簪の質問を代わりに答えようとした星治の言葉を遮り結から事実を知らせれた変態二人はその場で膝と手を床に着けて四つん這いの状態で絶望していた。

 

「や、やるわね。竜胆君、私を騙すどころか当主まで騙すとは」

「・・・えぇ、末恐ろしいわね」

「いや~、二人が勝手に騙されただけでしょ」

「・・・桐谷の知り合い?」

「まぁ、不本意だけどな。二人とも自己紹介くらいしてください」

「まだ自己紹介をしてなかったわね。私は更識楯無、結と簪の母親よ。よろしく、竜胆君」

「わたしは笹野芽衣。ココの医者で竜胆君の担当医だから調子悪くなったらすぐに言ってね?」

「初めまして、市崎竜胆です」

 

それぞれ軽く自己紹介をした後、芽衣が竜胆にそば近づき膝を曲げて目線を合わせ話しかけた。

 

「行き成りで悪いんだけ軽く診察するけどいいかな?」

「はい」

「じゃあ、私達は帰るわね。」

「「え~」」

「帰るわよ?」

「「・・・はい」」

「よろしい」

 

更識姉妹は楯無の発言に対して不満の声を上げている。

しかしそんな不満を本日二度目の満面の笑みで黙らせその場は解散となった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

時は少し進みとある部屋

 

そこにいるのは二人の男性。

高級感が漂う机に向かって書類に目を通すビスト財団現当主カーディアス・ビスト。

元軍人でありボディガードも務める屈強な男ガエル・チャン。

 

「失礼します当主、ご報告が」

「どうした?」

「市崎竜胆が意識を取り戻したそうです」

「そうか。容態は?」

「はい。事故による怪我はほとんど完治したそうですが、記憶喪失だという報告が」

「・・・そうか、記憶がない方が彼にとって良いのかもしれん」

「こちらの手のものに引き取らせますか?」

「いや、これで本当の意味で彼は血の呪縛から解放された。無理に手を出す必要もあるまい」

『そんなこと言っちゃうんだ~』

 

二人しかいない部屋に女性の声が響く。

 

「・・・ミスラビット、何度も言っているがハッキングはやめて欲しいとお願いしたはずだが?」

『いやぁ、ごめんね。竜胆クンが起きったって聞いて居ても立ってもいられなくてね』

「・・・ミスラビット、当主に対して何たる言い方だ」

「いいガエル。それでミスラビット、わざわざハッキングまでして来たという事は何か用があるのだろ?」

『察しのいい人は好きだよ。こっちの基礎理論はほとんど完成したよ。あとはそっちが材料を少し分けてくれればオッケ~』

「・・・分かった。できるだけ早く手配しよう」

『じゃ、頼んだよ』

 

そこで女性の声が聞こえなくなった。

静寂が部屋を支配する中で口を開いたのはガエルだ。

 

「・・・当主。ラッビトという女はやはり信用なりません」

「だが腕は確かだ。ここにハッキング出来る技術があるのだからな」

「しかし奴は〔ラプラスの箱〕について知っています。処理すべきかと」

「多少のリスクは承知の上だ。ラビットの持つ可能性に私は賭けてみようと思う」

「承知しました。では準備に入ります」

「頼む」

 

そう言ってガエルは部屋から出て行った。

 

「すまない、安奈(アンナ)。こんな私を許してくれ」

 

一人になったカーディアスの口から洩れた謝罪の呟きは部屋に霧散していった。

 

 

 


 
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