No.433406

IS 白い翼/可能性の獣

さん

更識姉妹登場です。
ISはしばらく出せません。
6,7話ぐらいには出したいと考えています。

2012-06-06 14:16:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4473   閲覧ユーザー数:4327

プロローグⅡ 夢と偶然

 

 

 

廊下を歩きながら星治は病室を出る前に竜胆が言っていたことについて考えていた。

竜胆が言っていた特徴と一致する人物を知っているからだ。

 

(水色の髪で顔がとても似ていて竜胆と同じくらいの歳の二人の女の子、ね)

 

「ん~、さすがにこれを偶然で済ますには無理があるよなぁ」

「貴方が独り言なんて珍しいわね、星治」

 

星治に声をかけてきたのは桐谷家が仕えている更識家の現当主更識楯無だった。

まさに大和撫子と言う言葉が似合う女性だ。

その後ろには水色の髪をしていて瓜二つの容姿をした二人の女の子。

楯無の娘、姉の更識結(ゆい)妹の更識簪。

竜胆が夢で見た二人の女の子の特徴の塊である。

 

「まぁ、これはこれはご当主。どうしました?こんなところで」

「それが娘たちが竜胆君の見舞いに行くっていかなくて、その付添で来たの」

「おぉ、竜胆はモテモテだなぁ」

「「ち、ちがうよ!?」」

「でも、二人とも見舞いに行きたいから今日の訓練頑張って早く終わらせたじゃない」

「「うぅ~」」

 

更識姉妹はあからさまな動揺を見せた

二人は2週間ほど前に見舞いに来てからよく見舞いに来ている。

下手をしたら星治よりも頻繁に見舞いに来るほどだ。

 

「あぁ、でもここは病院だから静かにな」

「「はい・・・」」

 

星治に注意されて少し気落ちした声で返事を返した。

そこで星治は二人にはおそらく吉報であろう竜胆の意識が回復したこと、彼には記憶がなく名前しか覚えていないことを伝えると

 

「なんでもっと早く教えてくれなかったの!?」

「お姉ちゃんの言うとうりだよ!それは一番最初に言うべきことだよ!?」

「あ、あぁ、悪かったよ」

 

星治は更識姉妹からものすごい剣幕で怒られて思わず謝ってしまった。

それでも竜胆が目を覚ましたのはうれしいのかすぐに笑顔になっていた。

だが楯無も違う意味で笑顔だった。

 

「二人ともそれ以上うるさくしたら楯無の力を使ってでも見舞いに来させないわよ」

「「・・・・・・」」

 

反論を許さない笑顔と底冷えした声の警告に二人とも瞬時に口を閉める。

この光景と見ていた星治はさすがに楯無の力を使ってまで見舞いを妨害をするのは大人げないだろと内心で呟くと

 

「星治、失礼なこと考えてると過労死するまで働かせるわよ?」

 

普通の感性を持つの男なら惚れてしまうほどの笑顔で星治の心を読んできた。

状況が状況だけにそんな感情を抱けない。

これには更識家の右腕とも呼ばれている星治も背中に冷や汗が流れる。

楯無が冗談抜きでやりかねないのがまた恐ろしい。

 

「まぁ竜胆君が目を覚ましたっておめでたい事もあったわけだし、ここで水を差すのも気が引けるから今回は許してあげる。でも次はないわよ?」

「「「わかりました」」」

 

三人とも考える間もなく即答した。しなければならない状態だとも言えるが

返事を聞いた楯無は怒りの矛を収めた。

すると楯無はすぐにいつも通り笑顔になった。

 

「竜胆君が起きたらな早く挨拶に行きましょ」

「「うん!」」

「あぁ、ご当主。すいませんが少しお話が」

「あら、デートのお誘い?私には夫もいるし、娘たちの目の前で星治って以外に大胆ね・・・でも、略奪愛は嫌いじゃないわよ?」

「おぉ、その情報すごくどうでもいいですね。」

「ぶー、もう少し乗ってくれてもいいじゃない」

 

頬を膨らまして明らかに不満げな表情で文句を言っていた。

今の楯無の冗談に乗っって更識家当主を口説いたりしてみたら星治でも冗談抜きで更識家に仕える他の家に抹殺されるだろう。

星治はこれ以上楯無に構っていると話が進まないので話を変えるために二人に話しかけた。

 

「ん~、二人は先に竜胆に会って来てもいいぞ?」

「ホント?母さん行っていいの?」

「えぇ、でも竜胆君は起きたばかりで、しかも記憶が無いそうだからだからあんまり五月蠅くちゃだめよ?」

「うん!行こ、簪ちゃん!」

「待ってよ、お姉ちゃん!」

 

二人は竜胆の病室に向かって走って行った。

楯無は二人の姿が見えなくなるとさっきまでの笑った表情から真剣な表情になっていた。

 

「星治が私を呼び止めるなんて珍しいわね。で、どうしたの?」

「まぁ、立ち話もなんですし歩きながら説明しますよ」

 

そう言って二人は更識姉妹と逆の方向へと歩き出した。

 

 

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竜胆のことを聞いた二人はもしかしたら友達になれるんじゃないかと更識姉妹は期待をしていた。

更識姉妹には友達と言うものが少なかった。

友達と言えたのは桐谷家と同じ更識家に仕えている布仏家の幼馴染たちくらいのものだった。

特に男の子の友達は皆無と言っても過言じゃないくらいだ。

理由は家が暗部という特殊な家系であり、そして父親が超が付くほどの親バカで二人が通っていた幼稚園も当時は珍しい女の子しか居ない幼稚園に入園していた。

結はこの年で小学校に上がったが、父親が私立の女子小学校に入学していた。

余談だが更識姉妹が通っている幼稚園と小学校に入園、入学のとき7桁ほどの寄付をしていた人物がいたらしい。

 

そして楯無と星治たちと別れて更識姉妹は竜胆の病室の前に立っている。

友達が少なく、もしかしたら竜胆が初めての男の子の友達になるかどうかの瀬戸際なのだ。

緊張しまくりでもしかたない。

最後に結は妹である簪に確認する

 

「・・・準備はいい簪ちゃん」

「・・・うん。いつでもいいよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・・ねぇ、簪ちゃん」

「どうしたの?お姉ちゃん」

「なんて言って入ればいい?」

「えぇ!?決めてなかったの?」

「だってぇ。簪ちゃんなんか無い!?」

「なんかって何!?」

「わかんないよぉ」

 

さっそく二人とも涙目である。

一分もしないうちに更識姉妹は精神的にぼろぼろになり始めた。

 

「・・・誰かいるの?」

 

病室の扉の向こうから男の子の声が聞こえてきた。

その時結は何を思ったのか声が聞こえた瞬間、病室の扉を思いっきり開けた。

 

「・・・」

「あ・・・」

 

今までずっと目を覚まさないでいた竜胆が顔をこちらに向けて驚いた表情で見ていた。

そして結は自分の起こした行動を思い出し恥ずかしさでトマトのように顔が赤くなった。

両者とも当然といえば当然の反応だ。

けれど竜胆の第一声は全く予想していなかった言葉だった。

 

「もう会えた」

「え?」

 

反射的に声を出しのは妹の簪だった。

『もう会えた』まるで前に会ってそして再開を待っていたような言い方。

実際、更識姉妹たちはほぼ毎日会いに来ていたがその時に竜胆が目を覚ましたことは無かった筈だ。

 

「君たちと遊ぶ夢を見た」

「私たちと・・・市崎君が?」

「うん、もしかして前に会ったことない?」

「ううん・・・こうして話すのは・・・初めて」

 

こんなに緊張しながら話したのは初めてだ。

お姉ちゃんは顔を赤くしたまま俯いて動かない。

あぁ早くお母さんか桐谷のオジサンどっちでもいいから戻ってきて。私が初対面の男の子と話すなんて・・・難しすぎるよ。

簪は心の中でここには居ない大人たちに助けを求めていた

 

「ねぇ」

「ふぇえぇ!?」

「急にどうしたの?」

「ちょっと・・・ビックリした、だけ」

「そっか、ねぇ君の名前をしえて」

「え?・・・あぁ、私は更識簪」

「更識、簪。覚えた。で、扉を思いっきり開けたその子は?」

 

扉を開けてから結はずっと固まっていた。

簪は肩をたたきながら話しかけた。

 

「あぁ・・・お姉ちゃん!」

「ふぇえぇ!?」

「簪とビックリの仕方そっくりだね」

「姉妹・・・だから」

「お姉ちゃん、市崎君が名前教えてだって」

「あ、あぁ私は更識結。簪ちゃんのお姉ちゃんよ」

「更識結。覚えた。ねぇ結?」

「な、何?」

「なんであんな勢いよく扉開けたの?」

「そ、それはぁ・・・」

「覚えてないの?」

「まぁ、なんであんなことしたのかは覚えてない、かな?」

「なら俺と同じだな」

「・・・記憶、ないんだっけ」

「うん、名前しか覚えてない」

「「・・・・・」」

「どうしたの?」

「市崎クンは・・・辛くないの?」

「何が?」

「その、家族や友達ことも忘れちゃって市崎クンは平気?」

「平気かな」

「・・・なんで?」

「だって辛くないからね」

「・・・友達と遊んだこととか、きっと楽しいこといっぱいあったのに・・・忘れちゃうなっちゃうなんて・・・そんなの、悲しいよ」

 

段々と沈んで俯く二人に竜胆はある提案をした。

 

「じゃあ二人とも俺の初めての友達になってよ」

「「・・・え?」」

「あれ?なんか変なこと言った?」

 

二人は俯いた顔を上げて

 

「ううん!全然!市崎クンとはこれから友達だね!」

「よろしくね!市崎君!」

「うん、あと二人ともこれからは竜胆って呼んでよ。俺も二人のこと結と簪って呼ぶから。ダメ?」

「う、うん。り、竜胆・・・」

「よ、よろしく竜胆ぅ・・・」

 

((今日初めてしゃべった男の子を呼び捨てしちゃった!?))

 

二人ともこの短時間でここまでドキドキしたのは初めてだった。

それからは星治たちが二人の悲鳴を聞いて病室に突入してくるまで更識姉妹は緊張が解けないまま会話をしていた。

 

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更識姉妹たちと別れた星治と楯無はエレベータに乗っていた。

二人とも真剣な表情でエレベーターの中の空気は張りつめていた。

その中で先に口を開いたのは楯無だ。

 

「まず、これが彼の個人情報よ」

 

そういて星治に白い封筒を渡した。

内容は住所、名前、生年月日はもちろん家族構成から仲の良かった友達の名前まで記してあった。

すべての資料に目を通した星治は小さく言葉をこぼした

 

「・・・どこにでもいる普通の子供じゃないか」

「そうね、歳は結と同じで竜胆君には特に目立った点もないわ」

「竜胆のことで親族はなんか言って来ましたか?」

「竜胆君のことよろしく頼むって」

「そうかですか・・・」

 

竜胆の親族からそちらで竜胆を引き取ってくれと頼まれたのだ。

叔父や叔母、祖父、祖母も誰も竜胆ことを引き取ろうとはしなかった。

親族が全員竜胆のことを引き取らない理由を含めて楯無は竜胆の情報を集めた。

 

 

「ただ、竜胆君の両親に少し問題があったみたい」

「問題?」

「そう、竜胆君の両親は3年から豹変したように親族との関わりを絶ってたらしいの。それこそ絶縁を申し込むほどにね」

「それは狂気の沙汰でしょ。その理由は?」

「それがわからないのよ。変な宗教にハマったわけでもなさそうだし」

「そうですか」

「それで竜胆君にはいつ言うつもり?」

「何をです?」

「星治が竜胆君のこと引き取る話をいつ彼に話すのかってこと」

「もう話しましたよ。竜胆からも了承を得ました」

 

これには楯無も少し驚いたようだった。

星治は心配性だと思われるくらい慎重に動くのでこんなに早く動くとは楯無は予想外だったのだろう。

 

「ちょっと急ぎすぎじゃない?そんなに急ぐことでもないでしょ」

「確かに俺も少し急ぎすぎたかと思いますがなんで自分でもこんなに急いだのか俺も少し驚いたくらいでしたよ」

「そうなの、ならいいじゃない。終わり良ければ全て良しってことで」

 

そう言って楯無は真剣な表情から笑顔に変わった。

だが星治は真剣な表情を崩してはいなかった。

 

「・・・当主あなたが知っている範囲で昔、竜胆と更識姉妹が遊んでいたことはありませんか?」

「それは無いわね。あなたも知っているでしょ?ウチには超がつく親バカがいるのよ?それにはじめて見舞いに行った時もそんな二人は素振りを見せなかったわ」

「そうですか・・・」

「理由を聞かせてもらうわよ。私の娘たちが関わっているみたいだから」

「病室を出るとき竜胆が“水色の髪で顔がとても似ていて竜胆と同じくらいの歳の二人の女の子”と遊ぶ夢を見たって言ったんですよ」

「それって・・・」

「さすがに俺も驚きましたよ。それにこれを偶然じゃ片づけるのはどうかと」

 

これには楯無も驚いていた。

自分の娘たちの特徴と酷似している姉妹がもう一組あるなんて考えづらいだろう。

 

「・・・これで竜胆君の夢で見たのが娘たちだったら運命っていうものを感じるわね」

「二人の運命の人だったりしたらどうします?」

「う~ん、まだ竜胆君と話してもないし何とも・・・でもあの親バカはきっと竜胆君の息の根を止めに行くでしょうね」

「その時はちゃんと止めてくださいよ」

「息の根を?」

「自分から未亡人になるつもりですか?」

「真に受けないでよ。1/3は冗談よ」

「半分以上は本気じゃないですか」

「間違えたわ。3/2は本気よ」

「悪化してますからね。もう100%超えてますから」

「それぐらい本気ってこと」

 

楯無は笑顔だったが星治は苦笑いである。

冗談だと思いたい会話を終えた竜胆たちはエレベータを降りて行った。

 

P.S

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